尿素
|
| |||
| 物質名 | |||
|---|---|---|---|
別名 Carbamide, carbonyl diamide, carbonyldiamine, diaminomethanal, diaminomethanone ,amino methanamide | |||
| 識別情報 | |||
3D model (JSmol) |
|||
| バイルシュタイン | 635724 | ||
| ChEBI | |||
| ChEMBL | |||
| ChemSpider | |||
| DrugBank | |||
| ECHA InfoCard | 100.000.286 | ||
| E番号 | E927b (その他) | ||
| Gmelin参照 | 1378 | ||
| KEGG | |||
PubChem CID |
|||
| RTECS number |
| ||
| UNII | |||
CompTox Dashboard (EPA) |
|||
| |||
| |||
| 性質 | |||
| CH4N2O | |||
| モル質量 | 60.056 g·mol−1 | ||
| 示性式 | CO(NH2)2 | ||
| 外観 | 白色の固体 | ||
| 密度 | 1.32 g/cm3 | ||
| 融点 | 133–135 °C | ||
| 107.9 g/100 ml (20 °C) 167 g/100ml (40 °C) 251 g/100 ml (60 °C) 400 g/100 ml (80 °C) | |||
| 溶解度 | 50g/L エタノール, 500g/L グリセロール[2] | ||
| 塩基解離定数 pKb | 13.82[3] | ||
| 構造 | |||
| 4.56 D | |||
| 熱化学[4] | |||
標準生成熱 (ΔfH⦵298) |
−333.19 kJ/mol | ||
ギブズの 自由エネルギー (ΔfG⦵) |
−197.15 kJ/mol | ||
| 薬理学 | |||
| B05BC02 (WHO) D02AE01 (WHO) | |||
| 危険性 | |||
| NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |||
| 引火点 | 不燃性 | ||
| 致死量または濃度 (LD, LC) | |||
半数致死量 LD50 |
8500 mg/kg (経口, ラット) | ||
| 安全データシート (SDS) | ICSC 0595 | ||
| 関連する物質 | |||
| 関連する | チオ尿素 ヒドロキシカルバミド | ||
性質
無色無臭の結晶で、水に容易に溶け、その溶解度は 108 g/100 mL (20 ℃)。潮解性を持つ。非線形光学現象を示す。加熱すると分解し、アンモニア、ビウレット、シアヌル酸に変わる。
尿素の結晶の構造には、小分子が入るのにちょうど良い大きさの空孔がある。そのため尿素は、ヘキサンなど、さまざまな化合物と安定な包接化合物を作る。過酸化水素との包接化合物(尿素-過酸化水素付加体、略称 UHP)は、固体の形で取り扱える酸化剤として市販されている。
製法
工業的にはアンモニアと二酸化炭素を原料として120℃、150気圧以上で合成する[7]、あるいは液体アンモニアと固体二酸化炭素(ドライアイス)を混合して得られる。 反応機構はカルバミン酸アンモニウムを経由する。
また、硫化カルボニルとアンモニアを60 - 100 ℃で反応させても得られる[8]。
ホスゲンとアンモニア(尿素誘導体の合成ではアミン)との反応でも得られる。
生物の窒素の排泄
生物の窒素の排泄は下記の窒素化合物の形で行われる[9][10][11]:
- アンモニア:硬骨魚類、節足動物(水生)
- 最も簡単な窒素化合物だが、生体に有害なため、速やかに水中へ排泄する必要がある。
- 尿素:硬骨魚類、軟骨魚類[注釈 1]、両生類、哺乳類
- 濃縮水溶液として排泄するが、濃縮にはエネルギーを要し、水分補給も欠かせない。
- 尿酸:鳥類、爬虫類、節足動物(陸生)
- 非水溶性の固体の尿[注釈 2]として排泄するので陸生では有利な点がある。
ヒト
ヒトでは、タンパク質などに含まれる窒素のうち、アミノ酸などの代謝によって生じた余分な窒素は、主に肝臓で尿素に変換され(尿素回路)、腎臓から尿中に排泄される。成人の尿素排泄量は、1日約30 gである。
尿酸
一方、DNAやRNAなどに含まれるプリン体は(プリンヌクレオチド)、体内で代謝されて尿酸になる。多くの哺乳類では、尿酸はさらにウリカーゼという酵素によってアラントインに変換され代謝されるが、霊長類では進化の過程でこの酵素の機能が失われているため、尿酸が最終産物となり、主に腎臓や腸管を通じて体外に排泄される。
尿酸には抗酸化作用があり、霊長類の体内では重要な抗酸化物質の一つとして働いている[注釈 3]。しかし、尿酸の生成量が増加したり、排泄量が減少したりすると、血中尿酸濃度が上昇することがある。尿酸濃度が高い状態では、関節などに尿酸一ナトリウムの結晶が形成されやすくなる。この結晶に対して炎症反応が起こると痛風発作が生じる。
用途
日用品として
尿素の用途として、保湿クリーム・肥料などとして広く使われており、ホルムアルデヒド (HCHO) と反応させることで尿素樹脂(ユリア樹脂)も得ることが出来る。高濃度の水溶液はタンパク質、核酸を変性させる作用がある。
皮膚の角質細胞内で塩化して、水分を保持している成分のひとつ[5]。尿素は10%まで皮膚の保湿剤として、それ以上で皮膚の角質融解作用を示す[6]。抗真菌薬や抗炎症薬の浸透促進剤として働く。
窒素を多く含み、植物の葉や茎を育てる化成肥料として、農業でも使用される。(ただし、尿素は微生物による分解・化学変化を経てからアンモニア、硝酸の形での吸収・利用が行われるので、肥料の効果が出るのに多少の時間を必要とする。)
水と混ぜると吸熱効果が現れる。硝酸アンモニウムと尿素の混合物を水の入った袋と同封し、衝撃を加えて混合物を反応させ冷却効果を得る携帯用の瞬間冷却剤としての用途もある。
またディーゼルエンジンでは、尿素を水に溶かした尿素水(AdBlue)を使って窒素酸化物を分解している(尿素SCRシステム)[13]。具体的には、尿素をディーゼルエンジンの排熱で分解し、放出されるアンモニアと排気中に含まれる窒素酸化物を化学反応させ、水と窒素に還元させる。
航空機の機体や滑走路に散布する凍結防止剤として、尿素を主成分とした防氷剤として使用される。一般的に使用される塩化カルシウムと異なり、金属への腐食性が無いため、微細な腐食から重大事故へつながる可能性が排除できない航空機に散布される。
ヘリコバクター・ピロリの感染検査(迅速ウレアーゼ試験、尿素呼気試験)に使用される。
- 叩くと温度が下がる瞬間冷却剤
- フランスのAdBlueスタンド
分析化学における用途
尿素は均一沈殿法において、アンモニアまたはアンモニウムイオンの供給に用いられる。下に示すのは加熱下における尿素の加水分解である[14]。
歴史
尿素は、人間の手によって初めて無機化合物のみから合成された有機化合物として、有機化学の歴史上非常に重要な化合物である。 フリードリヒ・ヴェーラーは1828年にその合成に成功した。彼は、シアン酸アンモニウムの水溶液を加熱して尿素が生成することを確認した。この合成法はヴェーラー合成と呼ばれている。

その当時の化学では、有機化合物は生物にしか作り出すことができないという考え(生気論)が正当とされてきたが、ヴェーラーの実験結果はそれをくつがえすもののひとつとなった(ただし、尿素は炭酸のアミドに相当し、炭酸は通常有機化合物に含まれない。このため尿素を真に有機化合物と呼んでよいかは議論がある)。
脚注
注釈
出典
- 1 2 IUPAC Chemical Nomenclature and Structure Representation Division (2013). “P-34.1.2”. In Favre, Henri A.; Powell, Warren H.. Nomenclature of Organic Chemistry: IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013. IUPAC–RSC. ISBN 978-0-85404-182-4
- ↑ http://toxnet.nlm.nih.gov/cgi-bin/sis/search/f?./temp/~ZAvqWP:1:sol [リンク切れ]
- ↑ “pKa Data” (2001年10月24日). 2010年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年11月27日閲覧。
- ↑ CRC Handbook
- 1 2 Purnamawati S, Indrastuti N, Danarti R, Saefudin T (December 2017). “The Role of Moisturizers in Addressing Various Kinds of Dermatitis: A Review”. Clin Med Res (3-4): 75–87. doi:10.3121/cmr.2017.1363. PMC 5849435. PMID 29229630.
- 1 2 Celleno L (November 2018). “Topical urea in skincare: A review”. Dermatol Ther (6): e12690. doi:10.1111/dth.12690. PMID 30378232.
- ↑ “尿素合成”. 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (2010年9月). 2024年3月22日閲覧。
- ↑ 井上繁「尿素合成プロセス」『化学と生物』第7巻第1号、日本農芸化学会、1969年、30-33頁、doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.7.30、ISSN 0453-073X、2025年3月13日閲覧。
- ↑ にょうそ【尿素】の意味 - 国語辞書 goo辞書
- ↑ 有馬四郎「兩棲類の發生初期の代謝終産物について I. 蛙尿の化學成分について」『動物学雑誌』第61巻第9号、日本動物学会、1952年9月、275-277頁、doi:10.34435/zm003403、ISSN 0044-5118、NAID 110003360889、NDLJP:10837294。
- ↑ 「尿素を利用する体液調節:その比較生物学 その1:軟骨魚類(サメ・エイ)を中心に」、兵藤晋、今野紀文、内山実、比較内分泌学、2008。「尿素を利用する体液調節:その比較生物学 その2:魚類・両生類・爬虫類を中心に」内山実、今野紀文、兵藤晋、比較内分泌学、2009。
- ↑ 石橋賢一「大学院特論講義:水電解質研究の進歩」『明治薬科大学研究紀要 』38号、2009年05月31日、pp21-28 尿素 - J-GLOBAL
- ↑ 村田豊, 徳井貞仁, 小宮怜, 大聖泰弘, 鈴木央一, 石井素「尿素SCRシステムのNOx浄化率向上に関する研究(第4報)」『自動車技術会論文集』第40巻第6号、自動車技術会、2009年、1515-1520頁、doi:10.11351/jsaeronbun.40.1515、ISSN 0287-8321。
- ↑ 古畑朋彦, 関直人, 新井雅隆「高温雰囲気中における尿素の熱分解挙動」『日本機械学会論文集B編』第77巻第781号、日本機械学会、2011年、1858-1867頁、doi:10.1299/kikaib.77.1858、ISSN 0387-5016。
- ↑ 滝山一善, ゴードンルイス「均一溶液からの沈殿生成に関する最近の進歩(I)」『分析化学』第10巻第3号、日本分析化学会、1961年、300-307頁、doi:10.2116/bunsekikagaku.10.300、ISSN 0525-1931。
- ↑ 松田恵三, 堀田健治, 藤田一美, 光沢舜明「尿素の加水分解を用いる均一沈殿法によるリン酸マグネシウム五水和物の合成」『日本化学会誌(化学と工業化学)』第1991巻第7号、日本化学会、1991年7月、968-972頁、doi:10.1246/nikkashi.1991.968、ISSN 0369-4577。
- ↑ Zoltán Tóth (1996). “A demonstration of Wöhler's experiment: Preparation of urea from ammonium chloride and potassium cyanate”. Journal of Chemical Education (ACS Publications) 73 (6): 539. doi:10.1021/ed073p539.2.




