情報モデル

ウィキペディアから、無料の百科事典
情報モデリング言語IDEF1Xによるダイアグラムの例

ソフトウェア工学における情報モデルは、対象領域の情報要求を表現する抽象的なモデルである。概念、関係、制約、規則、演算などを記述してデータの意味(データ意味論)を明確にし、情報要求を共有可能で安定した構造に整理する。情報モデルの内容には、適用範囲、情報要求及びそれらの仕様が含まれる。[1]

概要

情報モデルの適用範囲は、対象領域と、そのモデルが支援するプロセスを定める。ソフトウェアへの実装方法とは独立して情報要求を記述するため、同じ情報モデルを異なる方法で実装できる。情報モデルを記述する言語の例として、IDEF1X、EXPRESS、統一モデリング言語(UML)がある。[1]

情報モデリングの方法には、実体と関係によって情報要求を表す実体関連(ER)アプローチ、システムの機能やプロセスに着目する機能モデリング、対象領域のオブジェクトとその操作を特定するオブジェクト指向アプローチがある。[1]

歴史

実体関連モデル(ERモデル)の図
EXPRESS-Gによるデータモデルの図

1976年、ピーター・チェンは実体関連モデル(ERモデル)を発表し、実体と関係を図で表す手法を示した。ERモデルの基本要素には、実体型、関係型、属性型がある。その後、ERモデルを拡張したさまざまな手法が提案された。[2][1]

ICAM定義言語(IDEF)は、1976年から1982年にかけての米空軍のICAMプログラムで開発された。IDEFには、機能モデルを作るIDEF0、情報モデルを作るIDEF1、動的モデルを作るIDEF2がある。IDEF1XはIDEF1の拡張版で、実体、属性、実体間の関係を図式で表す。IDEF1Xではキー構造とキー移行を用いて正規化を行い、属性の集合によって実体の定義を構成する。[1]

EXPRESSは、製品データモデルの情報要求を形式的に記述するためのISO 10303-11として開発され、製品データ交換の規格群であるSTEPの一部となった。EXPRESSはテキスト形式で記述し、図式表現にはEXPRESS-Gを用いる。スキーマ、データの特性、制約及び演算を記述できる。[1]

統一モデリング言語(UML)は、ソフトウェアシステムの仕様化、可視化、構築及び成果物の文書化に用いるモデリング言語である。グラディ・ブーチ、ジェームズ・ランボー、イヴァー・ヤコブソンらが考案し、1997年にObject Management Group(OMG)によって標準として承認された。システムを複数のビューで表現し、図を用いてクラスやオブジェクトなどの要素とその関係を記述する。[1]

これらの言語はそれぞれ異なる特徴を持ち、複雑な用途では複数の言語が必要となる場合もある。どの言語を選ぶかだけでなく、モデリングの実践も重要である。[1]

実装

情報モデルは、利用方法や実装方法から独立して情報要求を記述する。製造分野で用いられる実装方法には、メモリー上の構造化データを介した転送、所定の形式を持つ交換ファイルによる転送、データベース管理システムを用いた転送がある。[1]

関連項目

脚注・出典

パブリックドメイン この記事にはパブリックドメインである、アメリカ合衆国連邦政府が作成した次の文書本文を含む。アメリカ国立標準技術研究所.

  1. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 Lee, Y. Tina (1999年). “Information Modeling: From Design to Implementation” (英語). National Institute of Standards and Technology. 2006年10月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年10月17日閲覧。
  2. ↑ Peter Pin-Shan Chen (1976). "The Entity-Relationship Model—Toward a Unified View of Data". ACM Transactions on Database Systems, 1(1): 9–36. doi:10.1145/320434.320440.