構造設計
概要
構造設計は想定された耐用年数中に安全性と機能性を確保した構造物を設計することである[1]。構造物に作用する荷重は多種多様で不規則的であるが、整理して簡略化して扱うことが基本[1]。材料も多種にわたるが、ばらつきや製作性を考慮してこちらも簡略化して強度を計算する[1]。たとえ構造物が破壊したとしても、構造物の種類によって一定限度のものとするが、その破壊の程度は施設の重要性で差が付けられる[1]。
手順
構造設計は、基準や指針に従い施主が発注し、コンサルタントが行うのが一般的[2]。
通常の構造設計は下記の手順で行われる[3]。
- 前提条件の入力:外力(地震や自重など)、土質条件、気象条件など
- 形状、諸元の設定:梁や板などの部材の寸法など
- 構造解析の実施:部材単位の耐久可否
- 安全性照査:作用する力に対して、所要の耐久性を有するか(安全率も考慮する)
- 設計図書作成
建設時には様々な制約があるため、事前に十分検討しなければ工事の円滑な進行を妨げることになる[4]。また、コンサルタントから提出された成果品は発注機関の内部審査を受けた上で意見照会や修正が繰り返されることが普通であるが、技術者の熟練度が低いとチェックが不十分で説明不足になりかねない[4]。
方法
許容応力度設計法
許容応力度設計法は、構造物を構成する各材料に発生する応力度が、その材料の許容応力度を超えないかを照査する設計法である[5]。一般に許容応力度は材料強度を安全率で除して設定される[5]。
許容応力度は材料が弾性範囲にあることを前提とする[5]。また、地震荷重や温度荷重など一時的な荷重に対しては許容応力の割り増しを行う[5]。
長所としては計算が容易で、長年用いられていることから信頼性が高い点が挙げられる[5]。災害などによる被害は許容応力度の低減で対応できることも長所である[6]。短所としては部材の破壊や靱性などの非線形特性を考慮できず、荷重や応力を単純に足し合わせることで個々の荷重の寄与が不明であることが挙げられる[6]。
終局強度設計法
終局強度設計法は断面抵抗を塑性理論で評価し、強度係数で割引き、この値が線形計算で求めた断面力以上であるかを照査する設計法である[6]。主にヨーロッパで導入されたが、日本ではほとんど用いられてこなかった[6]。
許容応力度設計法で対応できなかった破壊に対する余裕を評価できる長所を持つが、脆性的な破壊に対しては塑性の粘りを評価できず危険となる[6]。また、断面力を小さく評価するので経済的には有利であるが、設計上は危険側にシフトする欠点もある[6]。
限界状態設計法
限界状態設計法では材料の3種類の状態(終局限界状態・使用限界状態・疲労限界状態)を照査する設計法である[7]。
基準
施設類の構造設計の基準は、その施設を所管する機関が制定することが多い[8]。橋梁では「道路橋示方書・同解説」、港湾や海洋なら「港湾の施設の技術上の基準、同解説」などである[8]。構造設計を行う上ではこのような基準に従って行うことが求められる[8]。
一方で、土木学会では、個別の施設に対して構造設計の基準が設けられているのではなく、材料別(鋼・コンクリート・地盤など)や外力(地震・波浪など)に基準を制定している[8]。
構造設計上の基準類のヒエラルキーは、最上位にISOで制定された国際標準の設計法があるが、これらは基本的な理念や方法を述べているもので、数値の設定は各国に委ねられている[8]。日本国内では土木構造物の場合は土木学会の基準が上位にあり、その下の各機関の基準類が位置するというヒエラルキーである[8]。
こうした基準は標準設計を基に計算の簡略化や電算化を行えるようにしており、技術的な知見を持つ者ならば誰でもできるようにしていることを前提としている[9]。こうした基準を整備することで仕事の効率化や、会計検査対策ともなる[9]。また、技術者の転勤などで仕事が中断されても、仕事が継続できることを保証する[9]。一方で社会的に重要な構造物や大規模な構造物、厳しい自然環境下の構造物では高度な数値計算、模型による実験や現地観測により有識者の参加を経て委員会形式で独自の設計基準を制定することが多い[9]。
設計基準に記載される内容としては、ニュートンの法則のような既知の自然法則は書かれない[9]。その代わり、社会的な取り決め・規範・経験知を記述し、最低限守るべき項目が規定される[9]。
脚注
参考文献
- 清宮理『構造設計概論』技報堂、2003年12月20日。ISBN 4-7655-1656-3。