運動の第2法則
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運動の第2法則
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概要
[編集]運動の第2法則はアイザック・ニュートンが『自然哲学の数学的諸原理』(1687年)で発表した、力学に関する公理のひとつである[3](⇒ #原義)。現代では次のように解される[1]:
- 運動量の時間変化率は作用する力に比例し同じ向きである。
この公理は、物体に力 が作用するとき、その力の向きかつ比例した大きさの時間変化率で運動量 は変化する、すなわち と定める[注 1][1]。より原義に近い解釈では、運動量の変化は力積に比例する、すなわち と定める[注 1]。この二つは本質的に同義である。
慣性系すなわち「力の作用によってのみ運動の状態が変化する系」は運動の第1法則によって定められる[4][5]。第2法則は力と運動の関係式を具体的に定める。物体が相互作用するときの力の性質は運動の第3法則によって定められる。
第2法則が成立する慣性系(第1・2法則による公理系)での質量 の質点の運動を考える。第1法則より運動の状態は力の作用でのみ変化し[4][5]、第2法則より力の効き方は運動量の時間変化率との正比例である[1]。よってこの公理系では質点の初期運動量 と作用する力 さえ与えられれば[注 2]、質点の運動の状態 を完全に記述できる。「変化は力による」と抽象化することで、質点単体の運動を知るために の源が質点同士の衝突なのかニュートン的な万有引力なのか等を知る必要が無くなる[5]。更に初期位置 を与えれば質点の位置 と速度 すなわち質点の運動を完全に記述できる(⇒ #運動方程式との関係)。
原義
[編集]ニュートンは運動の第2法則を次のように定義した:
Lex. II.Mutationem motus proportionalem esse vi motrici impressæ, & fieri secundum lineam rectam qua vis illa imprimitur. — Isaac Newton、Philosophiae Naturalis Principia Mathematica. 1st ed. p.12.
これは次のように邦訳される[3]:
法則 II運動の変化は及ぼされる起動力に比例し、その力が及ぼされる力の方向に行われる。
解説
[編集]ニュートンの運動の第2法則は、物体の運動状態の時間変化が、物体に加えた力に比例し、方向が同じになることを主張する。
ここでニュートンは、力を加える前の物体について「既に力が働いていない」とは限定していない。また、力を加える前の運動状態を「静止または等速直線運動である」とは限定していない[6][7]。ニュートンが書いている文章の直訳に言葉を補えば、すでに何らかの運動をしている物体に、新たに力を作用させると、そのために新たに発生する加速度は、追加した力と方向が同じであり、大きさが比例している、となる。
この第2法則は、慣性系においても非慣性系においても成立し[要出典]、第1法則とは独立した法則である。
『自然哲学の数学的諸原理』における第2法則は力の作用する時間が暗黙に含まれており[要出典]、前述した「運動状態の変化」は運動量の変化、「力」は今日でいう力積に相当する概念になっている。
運動方程式との関係
[編集]運動の第2法則および第1法則から、ニュートン力学における物体の運動方程式(ニュートンの方程式)が導かれる。
ここで、 は物体の質量、 は物体の加速度、 は物体に加わる力[8]。
なお、この運動方程式は、ニュートン自身は直接示しておらず、レオンハルト・オイラーによって、1749年の «Recherches sur le mouvement des corps célestes en général»(『天体の運動一般に関する研究』)[9]で初めて公表された。
現代的記法に則して第2法則を記述するなら、ある短い時間 Δt に生じた物体の運動量の変化 Δp は、(現代物理学における意味での)力の変化Δ F に比例する。
この両辺を時間 Δt で割り、運動量 p を時刻 t の関数と見なし Δt → 0 の極限をとれば、以下の微分方程式が得られる。
さらに、物体に働く力の総合計であるF がゼロであるときdp/dt がゼロになる(第1法則)を用いれば、以下が得られる。
この方程式はニュートンの運動方程式と呼ばれる。
ニュートンの運動方程式は、第1法則と第2法則を合わせて得られるものであり、右辺をゼロとすれば第1法則になり、右辺を力の増減量とすれば第2法則になる。
ニュートンはまた、(現代でいうところの)運動量 p を、(慣性)質量 m と速度 v の積として定義している。
従って、上述の運動方程式は速度と質量を用いて以下のように書き直すことができる。
また初等的な運動学から、速度 v は位置 x の時間微分として表すことができるから、運動方程式を x に関する2階の常微分方程式に書き換えることができる。
ここで質量 m は定数とした。
速度の時間微分、従って位置の2階の時間微分は加速度と呼ばれる。ニュートンの方程式によれば、物体の加速度はその物体が受ける正味の力に比例し、その比例係数は慣性質量となる。
この形の方程式を運動方程式と呼ぶこともある。加速度と力の関係から、ある(既知の)力が働く物体について、その加速度から物体の慣性質量を決定することができる。
相対性理論による修正
[編集]ニュートン力学では、時間はあらゆる物体や空間について共通であると暗黙に仮定されていた[注 3]。しかしながら、自然法則は相対性原理に従う(系によらず自然法則は不変)という考えの下では[注 4]、もはや時間はすべてに共通する絶対的なものではなく、あらゆる系に固有のものとなる。[注 5]
特殊相対性理論(特殊相対論)では、慣性系における自然法則の不変性が要請される。特殊相対論においては、ニュートンの方程式に現れる時間は絶対的なものではなく、その系の固有時と解釈される。すなわち基準時刻 t を固有時 τ に置き換えたものが(特殊)相対論的運動方程式となる。
この運動量 p は速度 v ≔ dx/dt ではなく、位置の固有時による微分に比例する。
時刻 t は固有時 τ の関数として与えられ、運動量は連鎖律から
となる。ここで γ は以下のように定義される。
質点の速さが光速より十分小さければ γ → 1 となり、ニュートン力学とほぼ同じ意味を持つ式となる。[注 6]
脚注
[編集]注釈
[編集]- 1 2 「同じ向き」の制約により、比例定数は正
- ↑ 比例定数も必要だが、単位の選び方で にできるため、本質的ではない。
- ↑ そのように仮定していた理由は、この仮定に基づく理論値が、(19世紀までの実験精度での)実験値と良く合っていたからである。
- ↑ この考え(相対性原理)は18世紀以前からアイデアとしては存在したが、使わなくても自然現象が説明できたため、採用されていなかった。しかし、1887年のマイケルソン・モーリーの実験が相対性原理を示唆するものであるため、20世紀において採用された。
- ↑ ここで「絶対的なもの」という言い方をしているのは、この考え方を19世紀では「絶対主義」と呼んでいたことに由来する。なお、現在では「絶対主義」を「ガリレイ共変性」と呼ぶ。また、相対性原理を「一般座標共変性」、特殊相対性理論の考え方(物理理論に対する要請)を「ローレンツ共変性」と呼ぶ。
- ↑ これは「同じ」になるように理論を作ったのである。なぜなら、「遅い速度、弱い重力、多数の原子」という状況で自然が示す性質は今も昔もニュートン力学と良く一致するのであって、「その状況ではニュートン力学と大体合う」というように理論を作らなければならない。
出典
[編集]- 1 2 3 4
運動の第2法則(the second law of motion) 運動量が時間によって変化する割り合い(変化速度)はその物体にはたらく力(force)に比例し,その力の向きに生じる.
(戸田 1982, p. 18) - ↑
第2法則を単に運動の法則ということがある.
(戸田 1982, p. 18) - 1 2
ニュートン『プリンキピア』では,以下のように運動の法則が記述されている.... 法則 II
p.584 より引用。塚本, 浩司 (2020). “運動の第2法則はいつから運動方程式となったか?――19世紀英国の物理教科書にみる力学概念の変遷”. 日本物理学会誌. 75 (9): 584–586. - 1 2
運動の第1法則(the first law of motion) 物体は,力の作用を受けないかぎり,静止の状態,あるいは一直線上の一様な運動をそのまま続ける.
(戸田 1982, p. 16) - 1 2 3
運動量の変化の原因としての力の概念を明確に考え出したのはニュートンであった.
(戸田 1982, p. 17) - ↑ “Philosophiae Naturalis Principia Mathematica/Axiomata, sive Leges Motus - Wikisource” (ラテン語). la.wikisource.org. 2026年5月9日閲覧。
- ↑ “The Mathematical Principles of Natural Philosophy (1846)/Axioms, or Laws of Motion - Wikisource, the free online library” (英語). en.wikisource.org. 2026年5月9日閲覧。
- ↑ 太字とはベクトル。
- ↑ Euler 1749, pp. 102–103.