出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
根元事象が無数にある場合は、確率をラプラスの古典的確率で定義することができない。
例えば、コインを投げて表が出れば 10 円もらえ、裏が出れば 10 円を失うといった賭けにおいて、表に賭け続けていくという問題を考える。現実的には疲れたらそこで終了となるが、これを半永久的に毎日賭け続けていったらどうなるかという確率分布が考えられる(運命の確率)。この場合、数学的に定式化するには、すべてのコインの出現パターンを集める必要がある。すなわち
- 表表表表…
- 裏表表表…
- 表裏表表…
- 裏裏表表…
- 表表裏表…
- …
が根元事象全体となる。
これらの根元事象全体は非可算無限個ある。(なぜなら、事象 ω に割り当てる確率変数値 0.a1a2…(2)(添え字の (2) は2進法表示を表す)を、ω の i回目が表なら ai = 1、裏なら ai = 0 とする。このとき、確率変数値全体からなる集合は区間 [0, 1] になる。ただし、0.111…(2) = 1.000…(2) のように、1つの確率変数値が複数の事象を表す場合があるが、そのような値は有限小数を2通りで表示する場合に限られ、それら全体は可算個であるから、それらを除いても非可算個ある。)
全事象の確率は 1 であり、根元事象は非可算無限個あり、根元事象の確率はどれも等しい(等確率空間)ため、根元事象の確率は 0 となる。そうすると、根元事象の非可算和に確率を割り当てることは古典的確率ではできない。このような理由から、測度論の知識が必要となり、現代的な確率論の成立には測度論やルベーグ積分が生まれるまで待たなければならなかったのである。一方で、最近では測度論の研究はほとんど確率論の研究と同義になっている。
を空でない集合、
を
上の完全加法族、
を
上の確率測度とする。三つ組を用いて、確率空間は次で定義される[1]:

このとき、
は標本空間[2]、
の要素は根元事象[2]、
は事象系[2]・事象空間、
の要素は事象[2]、
の要素としての
は全事象と呼ばれる。
同義の別の表現として、確率空間は以下のようにも定義できる:
- 「確率空間とは、可測空間
に確率測度
を入れた測度空間
である。」
- 「確率空間とは、空でない集合で、"この集合上の完全加法族" および "この完全加法族上の確率測度" を備えたものである。」
「偏りの無い四面ダイスを1度投げ、出た目の数字を標本とする」へ自然に対応する確率空間は以下で構成できる:



なお、意味があるかは置いておいて、
でも確率空間を構成できる。
このように、標本空間が有限集合のときは冪集合を完全加法族として容易に確率空間が構成できる。
「表が出るまで偏りの無いコイントスをし続け、コイントス回数を標本とする」へ自然に対応する確率空間は以下で構成できる:



なお、意味があるかは置いておいて、
でも確率空間を構成できる。
このように、標本空間が可算無限集合のときは冪集合を完全加法族として容易に確率空間が構成できる。
単位区間
を標本空間とする確率空間を考える。
まず、
より
と標本空間を設定できる。次に、
上のボレル集合族
は完全加法族であるから、
と設定できる。最後に、
上のルベーグ測度
は μ([0, 1]) の値が区間の長さ |[0, 1]| = 1 − 0 = 1 に等しく確率測度の定義を満たすから、
と設定できる。よって
は確率空間を構成する。
なお、意味があるかは置いておいて、
でも確率空間を構成できる。
このように、標本空間が非可算集合のときでも確率空間が構成できる。
の部分集合が必ずしも事象とは限らないことに注意されたい(参考: 完全加法族)。
- 1 2
は任意の集合を表し ...
は
上の
-集合体 ... ...
を特に確率空間 (probability space) と呼ぶ ...
を ... 確率測度
加藤, 剛 (2009), “1-2 測度”, 知識の森 (電子情報通信学会), https://www.ieice-hbkb.org/files/ad_base/view_pdf.html?p=/files/12/12gun_03hen_01.pdf
- 1 2 3 4
測度空間
において ...
を標本空間 ...
を事象系 ...
の要素を根元事象 ...
の要素を事象 ... と呼ぶ.
(加藤 2009)