職務充実

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職務充実(しょくむじゅうじつ、英: job enrichment)は、より複雑で挑戦的なタスクを含むように職務を再設計することによって従業員の動機づけ(英語版)を高めることを目的とした人的資源管理の手法である。こうして拡大された責任は、多くの場合より高い技能水準を必要とし、報酬の増加につながることもある[1]。

起源

アメリカの心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ(Frederick Herzberg)は、1968年にAT&Tにおける先駆的な研究について発表した論文において、「職務充実」の概念を初めて構築した[2]。この概念は、ハーズバーグの動機づけ・衛生理論に由来するものであり、同理論は、職務態度が職務満足と職務不満足という二つの独立した要因から構成されるという前提に基づいている[2]。職務満足は、達成や昇進など、仕事そのものから生じる内的要因を包含するのに対し、職務不満足は、会社の方針や監督の質など、実際の仕事の外部にある要因から生じる[2]。

彼がこの用語を思いついたのは、満足(例えば職務満足)と不満足の双方が、互いに完全に独立した別個の要因によって駆動されるとする自身の「二要因理論」に取り組んでいたときであった。この趣旨において彼は、個人が不満足の減少を経験したからといって、その結果として満足も増加することを意味するわけではないことを示唆している。

利点と欠点

利点

  • 新しい技能の習得 - より多くの責任を負うことにより、従業員は新しいタスクに取り組む機会を得て、それによって新しい技能を習得することになる。意思決定は、従業員が考え、決定し、新しいことを試みることにつながりうる。新しい技能を習得しなければならないことにより、従業員は特定のタスクに習熟し、さらには専門家となる機会を得る。
  • 退屈の軽減 - 職務充実は、従業員により多くの多様性と責任を与えることに重点を置く。職務充実の目標は、反復的で単調な活動から生じる退屈の可能性を減らすことである。
  • より良い職場環境の創出 - 職務充実の最終的な結果は、最大限の生産性を促進する、全体としてより肯定的な環境である。これは単純に、より良く処遇された従業員は職場においてより良い態度をとる傾向があり、その前向きな姿勢を職場全体に広める傾向があるからである。
  • 従業員は職場において自由で、かつ動機づけられた状態でいることができる。

欠点

  • 準備の不足 - 職務充実においては従業員により多くの活動と責任が与えられるため、彼らが必ずしもその職務にふさわしい技能や経験を有しているとは限らない。従業員がその活動を行うのに十分な準備や訓練を受けていない場合、その特定の活動についてすでに訓練を受けているか、あるいは熟練している者ほど効率的ではないかもしれない。その結果、彼らの生産性は低くなる可能性がある。
  • より重い作業負荷 - 職務充実は従業員の全体的な作業負荷を増大させる。これは従業員に優先順位を付け直す技能を要求する。従業員の中には、新しい責任に素早く適応できない者もいるかもしれない。従業員は過重な負担を感じて疲弊し、その結果生産性が低くなる可能性がある。
  • 非参加者との軋轢 - 当然のことながら、企業のすべての従業員が職務充実に参加できるわけではない。参加できない者は、会社から切り離され、チームの一員ではないと感じるかもしれない。参加できない従業員は、参加者に対して嫉妬を覚えることさえあるかもしれない。
  • 業績の低下 - 準備の不足とより重い作業負荷の結果として、従業員の中には職務充実以前ほど効率的に業務を遂行できない者もいるかもしれない。こうした従業員は、実際には職務充実を行わない環境においてより良く働くのかもしれない。望まれるほどの成果を上げられないことにより、彼らは自らを無能だと感じるかもしれない。その業績の低さは降格につながる可能性があり、それは従業員の自信と動機づけに負の影響を及ぼす傾向がある。

手法

職務充実は、管理活動としては次の3段階の手法を含む[3]。

  1. 従業員の努力を業績へと転化する
    • 目標が明確に定義され、全員に理解されていることを確実にする。企業全体のミッションステートメント(英語版)は全員に伝達されるべきである。個々人の目標もまた明確であるべきであり、各従業員は自分が全体のプロセスの中にどのように位置づけられるかを正確に知り、自らの貢献が組織とその顧客にとってどれほど重要であるかを自覚しているべきである。
    • 各従業員が十分に働けるよう適切な資源を提供する。これには情報技術、コミュニケーション技術、人材の訓練・育成といった支援機能が含まれる。
    • 支援的な企業文化を創出する。これには同僚同士の支援ネットワーク、支援的なマネジメント、そして不信や政治的駆け引きを助長する要素の排除が含まれる。
    • 情報の自由な流通。秘密主義を排除する。
    • 職務上の卓越性を促進するのに十分な自由を与える。従業員の主体的な取り組みを奨励し、報いる。フレックスタイム制や圧縮労働時間制を提供することもできる。
    • 適切な承認、称賛、その他の動機づけ要因を提供する。
    • 技能向上の機会を提供する。これには大学での教育費用の負担や職場内訓練(OJT)が含まれうる。
    • 職務の多様性を提供する。これはジョブシェアリングやジョブローテーションのプログラムによって実現できる。
    • 職務プロセスの再構築(リエンジニアリング)が必要となる場合もある。これには物理的な施設の再設計、プロセスの再設計、技術の変更、手続きの簡素化、反復性の排除、権限構造の再設計などが含まれうる。
  2. 従業員の業績を報酬に直接結びつける
    • 報酬を明確に定義することが必須である
    • 業績と報酬の結びつきを説明することが重要である
    • 従業員が良い業績を上げた場合には適切な報酬が確実に与えられるようにする
    • 報酬が与えられない場合には、説明が必要である
  3. 従業員がその報酬を望んでいることを確認する。どのように確かめるか?
    • 本人に尋ねる
    • 調査(チェックリスト、リスト化、質問)を用いる。従業員が何を望んでいるかが分かったら、それを得るために必要な手段を与え、約束したことを最後までやり遂げる。

職務拡大との違い

職務充実は、挑戦の度合いを変えずに単に業務の数を増やす職務拡大(英語版)と対比することができる。職務充実は垂直的な職務再構築の手法とみなされ、その活動をどのように遂行するかについて従業員により大きな権限、独立性、統制を与えることに主眼が置かれる。他方、職務拡大は水平的な再構築の手法とみなされ、その主眼はもっぱら任務の数を増やすことにあり、プロジェクトに対する全体的な権限、自律性、統制を変えるものではない。職務拡大が職場環境に与える影響は必ずしも最も肯定的なものとはならない。というのも、それは大部分において従業員にとって単なる仕事量の増加にすぎず、責任の面での実質的な向上ではないからである。他方、職務充実はマネジメントの世界において非常に動機づけ効果の高い手法である。従業員の職務を充実させるという行為は、敬意の表れであるばかりでなく、雇用主が従業員を一人の人間として実際に気にかけていることを示すものでもある。これによって従業員の側に、勤勉さ、忠誠心、そして会社への献身という形で雇用主に報いたいという意欲が生まれる。

脚注

  1. ↑ Umstot, Denis D.; Bell, Cecil H.; Mitchell, Terence R. (August 1976). “Effects of job enrichment and task goals on satisfaction and productivity: Implications for job design.” (英語). Journal of Applied Psychology 61 (4): 379–394. doi:10.1037/0021-9010.61.4.379. ISSN 1939-1854.
  2. 1 2 3 Frederick Herzberg, HBR Jan 2003, One More Time: How Do You Motivate Employees? Retrieved from https://hbr.org/2003/01/one-more-time-how-do-you-motivate-employees/ar/1
  3. ↑ “Job enrichment”. tutor2u. 2015年4月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年9月16日閲覧。

参考文献

  • Brookins, M. (n.d.). The Advantages & Disadvantages of Job Enrichment. Retrieved from http://smallbusiness.chron.com/advantages-disadvantages-job-enrichment-11960.html
  • Feder, B.J. 2000, "F.I. Herzberg, 76, Professor And Management Consultant", New York Times, Feb 1, 2000, pg. C26. Available from: ProQuest Historical Newspapers The New York Times (1851–2003). [28 October 2006].
  • Hackman, J.R. & Oldham, G.R. 1976, "Motivation through the design of work: Test of a Theory", Organizational Behavior and Human Performance, [Online], vol. 16, no. 2, pp. 250–279. Available from: Science Direct. [1 November 2006].
  • Mione, P. 2006, " Job Enrichment", Online paper. Effects : boredom, lack of flexibility, employee dissatisfaction
  • Wall TD, Wood SJ, Leach DJ. (2004). Empowerment and performance. In Cooper CL, Robertson IT (Eds.), International review of industrial and organizational psychology, Volume 19. London: Wiley.
  • What is job enrichment? (n.d.). Retrieved from http://www.businessdictionary.com/definition/job-enrichment.html Archived 2014-12-05 at the Wayback Machine.

関連項目