蓬萊山

蓬萊山(ほうらいさん)は、中国の神仙思想において仙人が住むとされた伝説上の山であり、日本庭園では石組や島などによってその景観を表現する造園上の意匠である[1]。
中国の伝説では、蓬萊(蓬莱)は方丈・瀛洲とともに東方の海上にある三神山の一つとされ、仙人や不老不死の薬と結び付けられていた[1]。この思想は日本庭園にも取り入れられ、蓬萊山は池中の島、庭石、石組などによって表現されてきた[1]。
造園上の表現
蓬萊山は、主に蓬萊石、蓬萊石組、蓬萊岩島などによって表現される[1]。これらの意匠は、池泉式庭園と枯山水の双方に見られる[1]。
- 蓬萊石組
- 蓬萊石組は、複数の庭石によって蓬萊山やその山並みを表現する石組である[1]。石の形状や配置によって山容を象徴的に表す。
- 蓬萊舟
- 蓬萊舟は、蓬萊へ往来する宝船を表す庭園意匠であり、庭石を船に見立てて表現する[1]。
鶴島・亀島との関係
蓬萊山は、伝説上、鶴が住み、亀の背に乗っているとされた[1]。そのため、日本庭園では、長寿を象徴する鶴島や亀島が蓬萊山の意匠と組み合わせられることがある[1]。
鶴島は鶴を、亀島は亀を象徴する島である[1]。亀島では、亀の甲羅・頭・脚・尾などを表す石を組み合わせる場合がある[3]。
亀島を構成する石には、亀甲石、亀頭石、亀手石、亀脚石、亀尾石などがある[3]。鶴島では、鶴の首や羽を象徴する鶴首石や羽石などが用いられることがある[1]。亀島には、長寿の象徴として松が植えられる場合もある[3]。
歴史
中国では、漢の武帝が宮苑の池に神山を表す三つの島と楼閣を設けたとされる[1]。このような神仙境を庭園内に再現する意匠は、日本でも平安時代に取り入れられた可能性があるが、当時の具体的な遺構は確認されていない[1]。
11世紀の作庭書『作庭記』には、池泉庭園における鶴島と亀島の記述がある[1]。これらの島の意匠は、蓬萊山を表す庭園構成との関連が指摘されているが、同書に蓬萊石そのものの記述があるわけではない[2]。
蓬萊山の意匠は、鎌倉時代以降の日本庭園に多く見られるようになり、蓬萊石、蓬萊石組、蓬萊岩島などによって表現された[1]。室町時代の作庭関係文献には、不老石と呼ばれる石が記されており、蓬萊石との関係が指摘されている[2]。
主な庭園例
大仙院書院庭園
大仙院の書院庭園は、大徳寺にある枯山水庭園であり、国の特別名勝に指定されている[4]。庭園には、石組による枯滝や枯流れなどが配され、山間から流れ出た水が大河や大海へ至る景観が表現されている。
庭園内には蓬萊石組のほか、鶴島・亀島や舟石などが配置され、蓬萊世界を表す意匠が見られる。
医光寺庭園
医光寺庭園は、島根県益田市にある中世の庭園で、雪舟の作と伝えられている[5]。庭園は、池泉の中央に亀島を配し、対岸の出島に鶴を表す石組を設け、背後の山畔には枯滝石組を配置する構成となっている[6]。
亀島には、亀の甲羅・頭・手・脚・尾を表す石が配置され、島全体で亀の姿を表現している[6]。一方、鶴島は羽石や鶴首石などによって表現され、亀島よりも抽象的な造形となっている[6]。背後の山畔にある枯滝石組は、仙人が住む蓬萊山の景観を表現したものと説明されている[6]。
蓬萊庭園と蓬萊様式
庭園用語では、蓬萊山を主題とする庭園を「蓬萊庭園」、蓬萊山の表現を構成要素の一つとして取り入れた庭園を「蓬萊様式」と呼び分けることがある[7][8]。ただし、これらの用語の使い分けは必ずしも一貫していない[1]。
関連項目
脚注
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 “Houraisan 蓬莱山”. Japanese Architecture and Art Net Users System. 2026年10月24日閲覧。
- 1 2 3 4 5 “Houraiseki 蓬莱石”. Japanese Architecture and Art Net Users System. 2026年10月24日閲覧。
- 1 2 3 “Kamejima 亀島”. Japanese Architecture and Art Net Users System. 2026年10月24日閲覧。
- ↑ “大仙院の庭園”. 京都市都市緑化協会. 2026年10月24日閲覧。
- ↑ “医光寺、医光寺庭園など”. 日本遺産ポータルサイト. 2026年10月24日閲覧。
- 1 2 3 4 “構成庭園一覧表(医光寺庭園)”. 国土交通省. 2026年10月24日閲覧。
- ↑ “Hourai teien 蓬莱庭園”. Japanese Architecture and Art Net Users System. 2026年10月24日閲覧。
- ↑ “Hourai youshiki 蓬莱様式”. Japanese Architecture and Art Net Users System. 2026年10月24日閲覧。
- ↑ “運用中小惑星探査機「はやぶさ2」拡張ミッション リュウグウ表面の地名が決定!”. JAXA. 2025年5月2日閲覧。