身を切る改革

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身を切る改革(みをきるかいかく)は、日本の政治におけるスローガン・政治用語。政治家や議会が、自らの定数・報酬・特権・待遇などを削減・見直す改革を指して用いられる[1][2]。1989年以降の政治改革論議以来、用いられるようになったとされる[3]。

語義は固定されておらず、狭義には議員定数削減、議員報酬削減、議員特権の見直しなどを指す[1]。一方、使用主体によっては、公務員数の削減、行政機構の縮小、規制改革などを含む広い行財政改革の文脈で用いられる[4]。大阪維新の会および日本維新の会の主要な政治スローガンとして知られる[4]。

用法

「身を切る改革」は、政治家・議会側が自らの待遇や制度を見直すことを掲げる語として用いられる。具体例としては、議員定数削減、議員報酬削減、旧文書通信交通滞在費、現在の調査研究広報滞在費にあたる費用の使途公開、企業・団体献金の禁止などが挙げられる[2]。

共同通信ニュース用語解説は、議員定数削減について、議員自らが「身を切る改革」と位置付けることがある一方、地方や少数意見を反映しにくくなる弊害もあると説明している[1]。このため、この語は政治改革の訴求語として用いられる一方、代表性や議会機能への影響をめぐって議論の対象にもなっている[1]。

日本維新の会は、「政治家を身分から職業へ」という理念のもとで「身を切る改革」を掲げ、政治家自身が身分や待遇にこだわらず改革の先頭に立つ姿勢であると説明している[4]。同党の公式サイトでは、議員定数や公務員数の削減、小さな行政機構、規制改革なども「身を切る改革でめざす未来」として示されている[4]。

経緯

政治改革論議と民主党政権

与良正男は、「身を切る改革」という語について、1989年以降の政治改革論議以来、用いられてきたと述べている[3]。

民主党政権期には、国会議員の歳費等を削減する法律として、2012年に国会議員の歳費及び期末手当の臨時特例に関する法律が成立した。同法は、厳しい財政状況および東日本大震災への対処を理由として、国会議員の歳費および期末手当を一定期間削減することを定めたもので、歳費については12.88パーセントを減ずる内容であった[5]。首相官邸の広報では、国会議員の歳費削減や行政事業レビューによる予算の廃止・見直しなどが、「身を切る改革」として紹介された[6]。

また、2012年の社会保障と税の一体改革をめぐる三党合意では、消費税増税に伴う「身を切る改革」として衆議院議員定数削減を進めることでも合意したと説明されている[7]。

日本維新の会

日本維新の会は、公式サイトで「身を切る改革」を自党の根幹を支える姿勢の一つと説明している[4]。政策ページでは、「身を切る改革を含む政治改革」として、議員定数削減、議員報酬削減、調査研究広報滞在費の使途公開、企業団体献金の禁止、議会慣習の見直しなどを掲げている[2]。

維新の会の支持について、吉弘憲介は、公務員制度や二重行政に切り込む「身を切る改革」や授業料の完全無償化が幅広い支持を得てきたとし、「納税者の感覚」に訴える政治としてその支持構造を分析している[8]。

自由民主党との連立合意と定数削減論議

2025年の自由民主党と日本維新の会の連立合意では、衆議院議員定数の1割削減に向け、臨時国会中に議員立法を提出し、成立を目指すことが盛り込まれた[9]。自由民主党は、この合意について、定数465人の1割を目標に削減することを明記し、具体的な方法は現行の選挙制度の維持または見直し、抜本的な制度改正のいずれかを検討すると説明した[9]。

これを受け、2025年12月には自民・維新両党が「衆議院議員の定数削減等に関する法律案」を提出した[10]。『週刊エコノミスト』は、同案について、現行465議席を420議席へ削減し、小選挙区25、比例代表20を減らす案であったと報じている[11]。

評価と批判

議員定数削減への批判

「身を切る改革」として議員定数削減を掲げることについては、節約効果や議会の代表性をめぐって批判がある。村上弘は、維新の会のスローガンとしての「身を切る改革」を取り上げ、議員数削減・議員給与削減を中心とする政策について、節約額の限定性、議会の多様性や代表性への影響などを検討している[12]。

共同通信ニュース用語解説も、議員定数削減は「身を切る改革」と位置付けられる一方で、地方や少数意見を反映しにくくなる弊害があると説明している[1]。

河村和徳は、大阪維新の会が主導した大阪府議会・大阪市会の定数削減について、選挙区1つあたりの定数を減らす内容であったため、少数政党に不利に働き、維新が過半数を獲得しやすい制度になったと指摘している[13]。

松尾良は、比例代表のみを削減する案について、小選挙区で議席を得にくい中小政党への打撃が大きく、比例削減は「一票の格差」の是正につながらず、財源捻出効果も限定的であると論じている[14]。同誌の及川正也も、2025年の自維案について、定数削減が世論に受けやすい一方、政治とカネをめぐる不祥事への怒りに対しては、企業・団体献金や政党交付金の見直しを求める意見もあると指摘している[11]。

ポピュリズムとの関係

日本維新の会の「身を切る改革」については、ポピュリズムとの関係で論じられることもある。藤崎剛人は、議員定数削減をポピュリズム的な政策であるとして批判している[15]。また、竹中治堅は、維新が支持を広げる背景について、ポピュリズム政治との関係から分析している[16]。

日本維新の会の国保逃れ問題

身を切る改革を掲げる日本維新の会の地方議員が国保逃れをしていたことに批判がある[17][18][19][20]

身を切る改革を掲げる政党・政治家

脚注

  1. 1 2 3 4 5 “議員定数削減とは? 意味や使い方”. コトバンク(共同通信ニュース用語解説). 2026年7月1日閲覧。
  2. 1 2 3 “身を切る改革を含む政治改革|政策”. 日本維新の会. 2026年7月1日閲覧。
  3. 1 2 「熱血!与良政談:身を切らない人々=与良正男」『毎日新聞』2021年12月1日。2026年7月1日閲覧。
  4. 1 2 3 4 5 “身を切る改革”. 日本維新の会. 2026年7月1日閲覧。
  5. ↑ “国会議員の歳費及び期末手当の臨時特例に関する法律”. e-Gov法令検索. デジタル庁. 2026年7月1日閲覧。
  6. ↑ “「身を切る改革」、力強く進めています。”. 首相官邸ホームページ. 2026年7月1日閲覧。
  7. ↑ “3党合意とは? 意味や使い方”. コトバンク(共同通信ニュース用語解説). 2026年7月1日閲覧。
  8. ↑ 吉弘 2024, はじめに.
  9. 1 2 “連立合意実行へ協議進める 衆院議員定数削減で政治制度改革本部”. 自由民主党 (2025年11月25日). 2026年7月1日閲覧。
  10. ↑ “2025年12月5日(金)「衆議院議員の定数削減等に関する法律案」(自民・維新)」提出のお知らせ”. 日本維新の会 (2025年12月5日). 2026年7月1日閲覧。
  11. 1 2 及川 2025.
  12. ↑ 村上 2023.
  13. ↑ “維新はなぜ、議員定数削減にこだわるのか?政治学者が懸念する「副作用」…実は痛くない「身を切る改革」 拓殖大学・河村和徳教授に聞く”. JBpress. 日本ビジネスプレス. 2026年7月1日閲覧。
  14. ↑ 松尾 2026.
  15. ↑ “定数削減はポピュリズムだ”. ニューズウィーク日本版 (2023年5月10日). 2026年7月1日閲覧。
  16. ↑ 「維新が支持広げる土壌 ポピュリズム政治と改革に後ろ向きな岸田首相」『朝日新聞』2023年10月13日。2026年7月1日閲覧。
  17. ↑ “「“身を切る改革”が完全に上滑り」維新議員の“国保逃れ”疑惑 橋下徹氏 「永田町スタイルに染まりすぎ。行き着くところまで来てしまった」と批判 | 特集 | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ”. ニュース. 2026年7月4日閲覧。
  18. ↑ “(社説)維新「国保逃れ」 改革語る資格あるのか:朝日新聞”. 朝日新聞 (2026年1月9日). 2026年7月4日閲覧。
  19. ↑ 琉球新報社 (2026年1月14日). “<社説>維新国保逃れ 「身を切る改革」資格なし”. 琉球新報デジタル. 2026年7月4日閲覧。
  20. ↑ “維新のガバナンス不全に「身を切る前に自腹切れ」の声も…国保逃れ・政治資金の不適切支出”. 読売新聞 (2026年1月8日). 2026年7月4日閲覧。
  21. ↑ “基本政策 | 地域政党さがみはら【公式】”. sagamihara-party.com (2022年3月11日). 2026年7月16日閲覧。

参考文献

  • 吉弘憲介『検証 大阪維新の会――「財政ポピュリズム」の正体』筑摩書房〈ちくま新書〉、2024年。ISBN 978-4-480-07627-4。 
  • 及川正也 (2025年12月23日). “東奔政走 二転三転する自維の定数削減案 企業献金論議封じは「両刃の剣」”. 週刊エコノミスト (毎日新聞出版) 103 (35). 
  • 松尾良 (2026年5月26日). “東奔政走 定数削減問題も浮上の後半国会 再び問われる巨大与党の党利党略”. 週刊エコノミスト (毎日新聞出版) 104 (14). 
  • 村上弘「立憲民主党の役割と課題、「維新の会」のポピュリズムと「強さ」――「身を切る改革」のデメリットと節約額は、なぜ論じられないのか――」『立命館法学』第409号、2023年、2026年7月1日閲覧。 

関連項目