顆節目
| 顆節目 Condylarthra | ||||||||||||||||||||||||
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フェナコドゥス(Phenacodus)の想像図 | ||||||||||||||||||||||||
| 地質時代 | ||||||||||||||||||||||||
| 後期白亜紀–古第三紀漸新世 | ||||||||||||||||||||||||
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“顆節目/顆節類(かせつもく/かせつるい、Condylarthra)”は、主に新生代古第三紀の暁新世から始新世に生息していた[1]、鋭い臼歯を持たず雑食性または植物食性と考えられている[2]、雑多な絶滅哺乳類をまとめたものを表す便宜的な呼称である[1]。南極大陸とオーストラリア大陸以外の全大陸に生息した[3]。
“髁節類”とも表記する[3]。“顆節類”を初めて用いた学術論文では用語の由来が明記されていないが、condyl-はギリシア語で「指の関節・指関節の隆起部・拳の関節部・(より一般的に)あらゆる関節の骨性のこぶ」、arthraはギリシア語で「関節」を意味する[4][5][6]。
遅くとも1990年代後半までには単系統群ではない分類群として認識されており、“顆節類”を表記する際は、非単系統群であることを示すための引用符がつけられるべきとされる[1]。
研究史
“顆節類”は、1881年に奇蹄目の亜目に相当する分類群として設立された当初、フェナコドゥス科のみを含んでいた[7]。最初の定義は、「距骨はその遠位端がどの方向から見ても凸状で[注 1]、舟状骨のみと関節する。大腿骨に第三転子を持つ」であった[8]。その後、1884年までには定義が拡大され、ペリプティクス科のうち一部の祖先的なものやメニスコテリウム(Meniscotherium)の仲間、後にアルクトキオン科に分類されたアナコドン(Anacodon)、紐歯類に入れられたコノリクテス(Conoryctes)、偶蹄目とされるディアコデキシス(Diacodexis)なども含められた[9]。このように、“顆節類”は研究史の初期から、特殊化していない初期の蹄をもつ哺乳類からなる分類群とみなされるようになった[9]。
分岐学や分子系統学の発展以前、“顆節類”は広義の有蹄類の祖先グループとされていた[10]。例えば、フェナコドゥス科は奇蹄目・旧偶蹄目に加え、イワダヌキ目・長鼻目・海牛目・管歯目 ・束柱目の祖先とされ、ディドロドゥス科は滑距目・南蹄目・雷獣目・火獣目といった南アメリカ大陸固有有蹄類の祖先とされた[3]。
1980年代以降に分岐学・系統分類学が主流になると、“顆節類”は明確な共有派生形質によってまとめられるグループではないため、自然分類群ではない、つまり単系統群ではないと認識された[11]。また、分子系統学の成果により、広義の有蹄類が単系統群ではないことが明らかになった[12]。奇蹄目と偶蹄目はローラシア獣上目に所属する一方、イワダヌキ目・長鼻目・海牛目・管歯目 はアフリカ獣上目の下位分類となった[13]。これにより、形態のみのデータに基づいて広義の有蹄類の祖先グループに位置づけられてきた“顆節類”は、分子系統樹の内部に組み込むことができなくなった[14]。
“顆節類”に含められていたそれぞれの分類群の互いの系統関係や現生の目との系統関係の多くは2010年代後半でも未解決のままであり[2]、解剖と分類の再検討と大規模分岐学解析が進行中である[15]。
形態
“顆節類”に属する動物は、真獣類の祖先的な形態を保持している[3]。大臼歯は咬頭が鋭くならず丸く膨らんだ形状をとる丘状歯(ブノドント)である[2]。一般的に前肢・後肢に5本の指を持ち、歯列をつくる歯の減少は見られない[3]。指先に蹄を獲得したものが含まれるが[16]、一部は鉤爪を持つ[17]。
含まれていた属・科

- プロトゥングラトゥム Protungulatum - 北アメリカ大陸の後期白亜紀と暁新世の双方の地層から発見されている。1965年の記載当時はアルクトキオン科に含まれていた。1988年の研究ではアルクトキオン科から外され、2020年代でも有胎盤類のステムグループあるいは有胎盤類内部のローラシア獣上目に属するなど複数の仮説がある。[18][19]
- アルクトキオン科 Arctocyonidae - アルクトキオン(Arctocyon)、クリアクス(Chriacus)、ロクソロフス(Loxolophus)[20]などが含まれている。2010年代では、多系統群とされる“顆節類”の中にあって、さらにアルクトキオン科も多系統群であると指摘されている。[2]
- ヒオプソドゥス科 Hyopsodontidae - ヒオプソドゥス(Hyopsodus)がよく知られている[21]。ミオクラエヌス(Mioclaenus)とその近縁群は単系統群の可能性が高く、ミオクラエヌス科(Mioclaenidae)として独立させる考えもある[21]。2017年の系統解析では、本科に含まれるヒオプソドゥスとその近縁群およびアフェリスクス(Apheliscus)とその近縁群のそれぞれが別の枝に分離し、多系統群との結果が得られた[22]。
- フェナコドゥス科 Phenacodontidae - フェナコドゥス(Phenacodus)、テトラクラエノドン(Tetraclaenodon)、メニスコテリウム、エクトキオン(Ectocion)などが含まれ[23]、骨格の特徴がよく分かっている科である[16]。過去の文献で言及されることがあるメニスコテリウム科は、2000年代以降は一般的にフェナコドゥス科の内部に位置づけられる[23]。
- ペリプティクス科 Periptychidae - ペリプティクス(Periptychus)、エクトコヌス(Ectoconus)などを含む[21]。歯に特徴的な固有派生形質を持ち[16]、科の単系統性がよく支持されている[22]。
- ペリプティクス亜科 Periptychinae
- アニソンクス亜科 Anisonchinae
- コナコドン亜科 Conacodontinae
- プレウラスピドテリウム科 Pleuraspidotheriidae - プレウラスピドテリウム(Pleuraspidotherium)、オルタスピドテリウム(Orthaspidotherium)の2属は頭蓋骨の他に体骨格が知られ、保存状態が良好である。これまでヒオプソドゥス科、フェナコドゥス科、メニスコテリウムの仲間、アルクトキオンの仲間など多くの分類群の下位分類とされてきた。[23]
- ディドロドゥス科 Didolodontidae - 南アメリカ大陸に固有のグループ[16]。2020年現在、すべての種が歯化石のみによって知られる[24]。他の分類群の多くが始新世の間に絶滅したのに対し、本科は漸新世まで生存した[16]。
脚注
注釈
- ↑ “顆節類”の初出論文では、この距骨の形態が“顆節類”の語源となったかどうかについては明記されていない。
出典
- 1 2 3 Ladevèze et al., 2010, Journal of Vertebrate Paleontology, p1559.
- 1 2 3 4 Halliday et al., 2017, Biological Reviews, p525.
- 1 2 3 4 5 スチール・ ハーベイ、1982、p35。
- ↑ ΛΟΓΕΙΟΝ「κόνδυλος」の検索結果、ΛΟΓΕΙΟΝ、シカゴ大学、URL:https://logeion.uchicago.edu/%CE%BA%CF%8C%CE%BD%CE%B4%CF%85%CE%BB%CE%BF%CF%82(2026年10月13日閲覧)。
- ↑ ΛΟΓΕΙΟΝ「ἄρθρον」の検索結果、ΛΟΓΕΙΟΝ、シカゴ大学、URL:https://logeion.uchicago.edu/%E1%BC%84%CF%81%CE%B8%CF%81%CE%BF%CE%BD(2026年10月13日閲覧)。
- ↑ ΜΟΡΦΩ「ἄρθρα」の検索結果、ΛΟΓΕΙΟΝ、シカゴ大学、URL:https://logeion.uchicago.edu/morpho/%E1%BC%84%CF%81%CE%B8%CF%81%CE%B1(2026年10月13日閲覧)。
- ↑ Shelley, 2018, Dissertation, p5.
- ↑ Cope, 1881, The American Naturalist, p1018.
- 1 2 Shelley, 2018, Dissertation, p6.
- ↑ Shelley, 2018, Dissertation, p4.
- ↑ Shelley, 2018, Dissertation, p8.
- ↑ Halliday et al., 2017, Biological Reviews, p524–525.
- ↑ Foley et al., 2016, Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences, p3, Table 1.
- ↑ Halliday et al., 2017, Biological Reviews, p524.
- ↑ Shelley, 2018, Dissertation, p9–10.
- 1 2 3 4 5 冨田ほか2011、p96。
- ↑ 冨田ほか2011、p95。
- ↑ O'Leary et al., 2013, Science, p663, fig. 1.
- ↑ Shelley et al., 2021, Journal of Mammalian Evolution, 1164–1165.
- ↑ Halliday et al., 2017, Biological Reviews, p538.
- 1 2 3 Halliday et al., 2017, Biological Reviews, p526.
- 1 2 Halliday et al., 2017, Biological Reviews, p541.
- 1 2 3 Halliday et al., 2017, Biological Reviews, p527.
- ↑ Croft et al., 2020, Annual Review of Earth and Planetary Sciences, p262, Table 1.
参考文献
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- Foley, N. M., Springer, M. S., & Teeling, E. C. (2016). Mammal madness: is the mammal tree of life not yet resolved?. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences, 371(1699), 20150140, 11p. https://doi.org/10.1098/rstb.2015.0140
- Halliday, T. J., Upchurch, P., & Goswami, A. (2017). Resolving the relationships of Paleocene placental mammals. Biological Reviews, 92(1), 521–550. https://doi.org/10.1111/brv.12242
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- O'Leary, M. A., Bloch, J. I., Flynn, J. J., Gaudin, T. J., Giallombardo, A., Giannini, N. P., ... & Cirranello, A. L. (2013). The placental mammal ancestor and the post–K-Pg radiation of placentals. Science, 339, p662–667. https://doi.org/10.1126/science.1229237
- Shelley, S. L. (2018). Rise of placental mammals: the anatomy, palaeobiology and phylogeny of Periptychus and the Periptychidae. Dissertation, University of Edinburgh, 479p. https://era.ed.ac.uk/items/002d0a5b-eeca-47ee-81ab-2d1158f93543
- Shelley, S. L., Bertrand, O. C., Brusatte, S. L., & Williamson, T. E. (2021). Petrosal anatomy of the Paleocene eutherian mammal Deltatherium fundaminis (Cope, 1881). Journal of Mammalian Evolution, 28(4), 1161–1180. https://doi.org/10.1007/s10914-021-09568-3
- スチールR.・ ハーベイA.P.『古生物百科事典』朝倉書店、1982年、256頁、ISBN 978-4254162257。
- 冨田幸光・伊藤丙雄・岡本泰子『新版絶滅哺乳類図鑑』丸善株式会社、2011年、256頁、ISBN 978-4621082904。