Rambles of a Naturalist
| Rambles of a Naturalist | ||
|---|---|---|
| 著者 | ジョン・D・ゴッドマン | |
| 発行日 | 1833年(単行本。初出は週刊紙『The Friend』への連載) | |
| 発行元 | Ash(フィラデルフィア) | |
| ジャンル | 自然エッセイ(ネイチャーライティング) | |
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| 言語 | 英語 | |
| ページ数 | 124(1859年版) | |
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『Rambles of a Naturalist』(参考試訳:博物学者の散策)は、アメリカ合衆国の医師・博物学者ジョン・D・ゴッドマン(1794年 - 1830年)による自然エッセイ集である。ゴッドマンが結核で死期を悟りながらフィラデルフィアの雑誌『The Friend』に寄せた12篇の随筆を、没後の1833年に単行本としてまとめられた[1]。
アメリカで初めて、非専門家向け自然エッセイ集を著したのはゴッドマンとされるが、商業的な成功はしていない[2]。近年、「重要だが研究の乏しいアメリカ自然史文学の一篇」と評されている[3]。
概要
各篇(No. I〜XII)は、フィラデルフィア近郊の小道や小川での野外観察から始まり、メリーランド州アン・アランデル郡のクリーク沿いでの体験、西インド諸島での見聞へと広がる。観察対象は、モグラ、マスクラット、ノネズミ、淡水二枚貝、タイヨウウオ、カニ、ヤドカリ、松林、カラスなど多岐にわたる。
ゴッドマンは「書物上の権威よりも自分の目による観察を重んじる」姿勢を随所で示す[4]。
1859年版に加えられた伝記では、本書の「詩的な美しさと描写の的確さ」は、英国のギルバート・ホワイトの名著『セルボーンの博物誌』にも劣らないと評する[5]。
成立と刊行
ゴッドマンは1794年にメリーランド州アナポリスで生まれ、1830年にペンシルベニア州で没した[5]。医師・解剖学者として知られる。また、3巻本の『American Natural History』(1826年 - 1828年)で北米の哺乳類を体系的に記述した博物学者でもある[3]。晩年は結核のため教壇を離れ、執筆に専念した。最後の1年に『The Friend』へ自然エッセイを寄稿し、没後の1833年にまとめられ単行本として刊行された[1]。この1833年版はフィラデルフィアのAshから出版[2]。
1859年には、伝記と2篇の詩を加えた版が、フィラデルフィアの「宗教的・実用的知識普及のための友会」(Association of Friends for the Diffusion of Religious and Useful Knowledge)から刊行された。 この版は124頁で、巻頭に伝記と詩「A Midnight Meditation(試訳:夜の瞑想)」、「Lines Written Under a Feeling of the Immediate Approach of Death(試訳:辞世の詩)」を置き、続いて12篇のエッセイと脚注を収める[4]。
なお、本書の著作権は消滅しており、プロジェクト・グーテンベルクで全文が公開されている[4]。
各篇の内容
以下の要約はプロジェクト・グーテンベルク版(1859年版)に基づく。 引用の英文も同版より。なお、引用の和文は試訳である。
No. I
- フィラデルフィア近郊のターナーズ・レーンを歩く著者は、草の下のアーチ状の坑道を見つけ、その主を探す。小川でザリガニが石を押しのける様子、深紅の斑点がサンショウウオ、虎縞のカエルを観察する。午後そこに戻ると壊したはずの坑道が修復されていたので、住人はまだいると確認する。冒頭で「都会でも身近に観察の場はあるのです」と述べる。[4]
- 印象的フレーズ
- To the natural philosopher, there is no such thing as a dry or uninteresting subject in nature.
- (試訳:自然哲学者の目には、自然界の中に退屈で無味乾燥な主題などただの一つも存在しない。)
- The object first observed was the tail of a beautiful salamander, whose sides were of a pale straw colour, flecked with circlets of the richest crimson. Its long lizard-like body seemed to be semi-transparent, and its slender limbs appeared like mere productions of the skin. Not far distant... lay crouched, as if asleep, one of the most beautifully-coloured frogs I had ever beheld. Its body was slender compared with most frogs, and its skin covered with stripes of bright reddish-brown and grayish-green, in such a manner as to recall the beautiful markings of the tiger's hide.
- (試訳:最初に美しいサンショウウオの尾が目に入った。体は淡い麦わら色に深紅の斑点が散りばめられていた。長いトカゲに似た体は半透明に見え、細い肢は皮膚のただの延長のようだった。そのそばに、まるで眠るごとくうずくまる(私がこれまでに見た中で)最も美しく色のカエルがいた。その体は細身で明るい赤褐色と灰緑色の縞があり、虎の美しい模様を思い起こさせた。)
No. II
- 朝露を宿したクモの巣は、どんな宝石にも勝る。坑道の修復の仕方を観察し、正午ごろ待ち伏せして主を捕らえる。正体はモグラの一種(shrew-mole)だった。目はほぼ見えない。飼ってみると、ミミズは貪り食うが、なぜかハエのウジ虫は無視する。リンゴの香りがする水面のアメンボにも触れる。[4]
- 印象的フレーズ
- In comparison with the immaculate purity of these dew-drops, which reflected and refracted the morning light in beautiful rays, as the gossamer webs trembled in the breeze, how poor would appear the most invaluable diamonds that were ever obtained from Golconda or Brazil!
- (試訳:朝の美しい光に照らされて、蜘蛛の巣の上にならんだ朝露がきらめき、そよ風にふるえるさま、このけがれなき純粋さに比べれば、ゴルコンダやブラジルから得られた最も貴重なダイヤモンドさえも、貧弱に見えることだろう!)
No. III
- 川辺の泥に残る筋から淡水二枚貝を見つけ、殻の内側の美しさと内部構造の精妙さに驚く。泥の中で暮らす生き物になぜ装飾があるのかと問い、答えは出せないとする。ヨーロッパの学者の誤りを、アイザック・リーが観察で正したことにも触れる。後半は、貝をこじ開けて食べるマスクラットの習性、巣穴、麝香腺、罠、毛皮の価値を述べる。[4]
- 印象的フレーズ
- which five minutes' observation of nature would have served them to correct.
- (試訳:自然をわずか五分間観察しさえすれば、正せたのに。)
No. IV
- 干し草刈りの季節、刈り手が現れてノネズミの巣と草の下の通り道があらわになる。跳ねるように逃げるトビネズミを間近で見て、体の造りがカンガルーに通じると考える。その冬ごもりの様子、コオロギの巣穴と鳴き声の仕組みも述べる。最小の哺乳類トガリネズミの巣穴を追うが、捕まえられない。[4]
- 印象的フレーズ
- he may derive more knowledge than by frequent perusal of the most eloquent writings
- (試訳:どんなに雄弁な書物を繰り返し読むより、多くの知識が得られるかもしれない。)
No. V
- これまでの身近な散策から視野を広げる。舞台は、かつて医師として暮らしたメリーランド州アン・アランデル郡。孤独な松林と湿地の土地で、奴隷制の弊害にも触れる。小舟で入り江に出て、タイヨウウオ(sun-fish)の産卵床と雌の必死の防衛を観察する。輪に張った網で捕まえて、単調な「ベーコンとジャガイモ」の食卓に変化をつけ、網は黒人労働者たちにも貸した。[4]
- 印象的フレーズ
- I had a book opened before me which a life-time would scarcely suffice me to read through.
- (試訳:目の前には一冊の書物が開かれていた。一生かけても読み通せそうにない書物が。)
No. VI
- 夏にクリークへ集まるカニを、小舟から観察する。外骨格をもつ生き物は、成長のために脱皮しなければならない。甲羅の後ろが蓋のように外れ、巨大な爪を引き抜く過程を詳述し、約48時間で体が元に戻るまでの段階も記す。脱皮直後の「ソフトシェルクラブ」は高値で売られる。餌と手網による捕り方や、カニに唇を噛まれた男の滑稽な話も語る。[4]
No. VII
- 脱皮直後の柔らかいカニを突いて、豚の餌にする漁を紹介する。カニの体の驚きとして、10〜12対の顎、胃の中の歯、脳のなさ、三角の突起の形をした耳を挙げる。嗅覚の器官が触角にあるという説を、ロブスターを解剖して確かめた。ロングアイランドのシオマネキの警戒心や、西インド諸島で美しい大ガニを捕り逃した話も添える。[4]
No. VIII
- サトウキビを食い荒らす陸ガニの被害と、農園監督の苛立ちを描く。ジャマイカ地方のリクガニが産卵のため海へ大行進する習性も紹介する。後半は、西インド諸島の家で夜ごと響く物音の正体が、貝殻を背負うヤドカリだったという体験談。蚊帳で防ぎ、罠で大量に捕まえて観察し、貝殻の選び方や気性を記す。[4]
- 印象的フレーズ
- It was to me an irresistible source of amusement to observe the air of spite and vexation with which he spoke of the crabs: the rats he could shoot, poison, or drive off for a time with dogs. But the crabs would not eat his poison, while sugar-cane was growing.
- (試訳:彼がカニを語るときの恨めしさや苛立つ様子を観察するのは、私にとって抗いがたい楽しみであった。曰わく、これがネズミなら銃で撃てばいいし、毒餌でもいい。犬をけしかけて追い払ってもいい。しかしサトウキビが育っている間は、カニは毒餌には見向きもしないんだぜ。)
No. IX
- 常緑の松林の景観と生態を詳しく描く。風に乗る松の種子、成長、樹齢、森林の衰退に加え、キツツキなどの鳥が樹木を害する昆虫を発見する役割にも触れる。さらに、木材、燃料、樹脂など、松が人間にもたらす多様な資源を紹介する。森林の美しさと実用的価値の両面を触れる。[4]
- 印象的フレーズ
- enough is always proffered to fix attention and produce pleasure, if we will condescend to observe with carefulness.
- (試訳:注意深く観察する労を惜しまなければ、関心を引き、喜びを与えてくれるものは、いつでも十分に差し出されている。)
- Those who have only lived in forest countries, where vast tracts are shaded by a dense growth of oak, ash, chestnut, hickory, and other trees of deciduous foliage... can have but little idea of the effect produced on the feelings by aged forests of pine... whose towering summits are crowned with one dark green canopy, which successive seasons find unchanged.
(試訳:オークやトネリコ、クリ、ヒッコリーなどの落葉樹が密生して生えている地帯にしか住んだことがない人々は、長寿の針葉樹の森が人の感情に与える効果などほとんど想像もできないだろう。その大木の頂は濃い緑の樹冠であり、季節が巡っても変わらない。)
No. X
- 痩せ地の農家にとって最大の敵であるアメリカガラス(American Crow, Corvus brachyrhynchos)の習性を語る。雌鶏を挑発して雛から引き離す手口、ガチョウの雄がいると失敗する様子、雛を守る親鳥の偽装行動を紹介する。春には見張り役を立てて芽吹いたばかりのトウモロコシ畑を荒らす。対策として、種子にタールと石灰を塗る方法が成功したと報告する。[4]
- 印象的フレーズ
- Woe betide the corn-field which is not closely watched, when the young grain begins to shoot above the soil!
- (試訳:芽吹いたばかりの穀物が土から顔を出すとき、見張りを怠った畑は災いなるかな!)
- Possessed of the most acute senses, and endowed by nature with a considerable share of reasoning power, these birds bid defiance to almost all the contrivances resorted to for their destruction
- (試訳:きわめて鋭敏な感覚と、生まれつき相当な推理能力を備えたこの鳥たちは、駆除のために考案されるほとんどあらゆる工夫をものともしない。)
No. XI
- カラスにも、腐肉や害虫を食べるという益があると認める。夕暮れに砂州へ集まる大群を舟から撃とうとするが、カラスは頭上の高いところを飛んで難を避ける。夜に臨時のねぐらを襲っても、仕留められたのは1羽だけだった。その内耳を解剖して感嘆し、頭骨は博物館に寄贈した。釣り針入りのトウモロコシ罠も、餌だけ取られて失敗に終わる。[4]
- 印象的フレーズ
- It rarely happens that any of the works of nature are wholly productive of evil;
- (試訳:自然の営みのうち、まったくの害悪でしかないものは滅多にない。)
No. XII
- カラスの大規模な駆除の歴史や、群れを捕らえる方法、厳冬期の飢餓、飼育したカラスの行動などを紹介する。カラスが農業上の害をもたらすことを論じながらも、毒餌の使用には、放し飼いの豚など他の動物まで巻き込む危険があると指摘する。人間による動物管理の実際と、その方法がもつ限界を扱っている。[4]
- 印象的フレーズ
- “Crows, when caught young, learn to talk plainly, if pains be taken to repeat certain phrases to them, and they become exceedingly impudent and troublesome.”
- (試訳:幼いうちに捕らえたカラスは、特定の言葉を根気よく繰り返し教えれば、はっきりと話すようになる。そして、ひどく厚かましく、手に負えない存在になる。)
評価と影響
アメリカ自然文学史上の位置づけ
ゴッドマンの『Rambles of a Naturalist』は、アメリカで最初期に刊行されたネイチャーライティング作品の一つとされる。20世紀初頭の博物学者エルンスト・インガソルは、アメリカで出版されたこの種のスケッチ集として最も早い例と記す[6]。
ビュエル(Buell)もまた、専門書でない自然エッセイ本をアメリカで最初に出したのはゴッドマンだろうと述べつつ、商業的には成功せずとする[2]。なおビュエルによれば、自然を題材とするノンフィクションで商業的成功を収めた最初の例は、ワシントン・アーヴィングの西部三部作(『草原の旅』1835年、『アストリア』1836年、『ボンヌヴィル大尉の冒険』1837年)[2]。
次の世代では、ヘンリー・デイヴィッド・ソローが『ウォールデン 森の生活』(1854)によって「アメリカネイチャーライティングの父」と呼ばれた。また、ジョン・バロウズがそれを広く愛される文学形式に高めて定着させた作家として続く[7]。 バロウズは処女作『Wake-Robin』(1871)以降、数多くの随筆集で人気を得た[8]。 ゴッドマンの1833年の本書は、これらの作家に先行する存在であった。
『American Natural History』との関係
なおゴッドマンは、本書に先立って博物誌『American Natural History』(アメリカの自然史)を刊行し、北米の哺乳類を図版入りで体系的に記述している。インガソルによれば、この書は当時知られていた北米の哺乳類を網羅した最初の体系的な記述であり、読み物としても優れている[6]。
1840年頃には、ジョン・ジェームズ・オーデュボンがジョン・バックマンと組み、ゴッドマンの書よりも大規模な哺乳類の著作を企画している[6]。
1974年には、本書(エッセイ集)が『American Natural History』第1部(哺乳類学)と合わせて、アルノ・プレスから復刻された[9]。
刊行履歴
関連項目
脚注
- 1 2 “October greetings from Special Collections!” (英語). Binghamton University Libraries Special Collections (2018年10月19日). 2026年10月28日閲覧。
- 1 2 3 4 5 Buell, Lawrence (1995) (英語). The Environmental Imagination: Thoreau, Nature Writing, and the Formation of American Culture. Harvard University Press
- 1 2 Rebecca Pou (2016年7月). “Godman's mammals: An Illustrated Natural History” (英語). New York Academy of Medicine Center for the History of Medicine and Public Health. 2026年10月28日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 John D. Godman (2011年6月2日). “Rambles of a Naturalist” (英語). Project Gutenberg. 2026年10月28日閲覧。
- 1 2 “John D. Godman (1794-1830)” (英語). Romantic Natural History. Dickinson College (2011年6月7日). 2026年10月28日閲覧。
- 1 2 3 Ernest Ingersoll. “The Mentor: American Naturalists” (英語). Project Gutenberg. 2026年10月28日閲覧。
- ↑ Stewart, Frank (1995) (英語). A Natural History of Nature Writing. Island Press 2026年10月28日閲覧。
- ↑ “Book of the Week: Burroughs and the Nature Essay” (英語). Biodiversity Heritage Library (2011年11月). 2026年10月28日閲覧。
- 1 2 “American natural history. : Part I: Mastology and Rambles of a naturalist.” (英語). Texas A&M University Libraries. 2026年10月28日閲覧。
外部リンク
- Rambles of a Naturalist - プロジェクト・グーテンベルク(英語、全文)
- Rambles of a naturalist - Biodiversity Heritage Library(英語、1859年版のデジタル版)