はなれ瞽女おりん
| はなれ瞽女おりん | |
|---|---|
| 作者 | 水上勉 |
| 国 | 日本 |
| 言語 | 日本語 |
| ジャンル | 短編小説 |
| 発表形態 | 雑誌掲載 |
| 初出情報 | |
| 初出 | 小説新潮 1974年2月号 |
| 出版元 | 新潮社 |
| 刊本情報 | |
| 出版元 | 新潮社 |
| 出版年月日 | 1975年9月 |
『はなれ瞽女おりん』(はなれごぜおりん) は水上勉の小説、またそれを原作とした映画。1974年『小説新潮』2月号に掲載され、1975年に新潮社から書籍化された。
書籍
- 1975年9月『はなれ瞽女おりん』新潮社
- 1977年6月『水上勉全集 第9巻』中央公論社
- 1978年『水上勉全集 第26巻』中央公論社
- 1980年2月『はなれ瞽女おりん』新潮文庫
- 1997年6月『現代日本戯曲大系 9』三一書房
- 2002月9月『越後つついし親不知・はなれ瞽女おりん』新潮文庫
| はなれ瞽女おりん | |
|---|---|
| 監督 | 篠田正浩 |
| 脚本 |
長谷部慶次(兼セリフ) 篠田正浩 |
| 原作 | 水上勉 |
| 製作 |
岩下清 飯泉征吉 |
| 出演者 |
岩下志麻 原田芳雄 奈良岡朋子 小林薫 |
| 音楽 | 武満徹 |
| 撮影 | 宮川一夫 |
| 編集 | 山地早智子 |
| 製作会社 | 表現社 |
| 配給 | 東宝 |
| 公開 |
|
| 上映時間 | 117分 |
| 製作国 |
|
| 言語 | 日本語 |
映画
映画は1977年に表現社が製作し、篠田正浩が監督を務めた。盲目の旅芸人である瞽女の姿を北陸の美しい四季の景色を背景に描かれている。
あらすじ
全盲のおりんは、6歳の頃に唯一の肉親だった母を亡くして天涯孤独の身となり、越後高田の瞽女(ごぜ)屋敷に預けられた。おりんは同じく盲目の女将・テルヨや先輩瞽女たちと共同生活を送りながら、日常の家事に加えて三味線と歌を教わった。2年も経つとおりんはテルヨたちと近郊の村々を周るようになり、宴席などで三味線や歌を披露して金や食料をもらうようになった。テルヨは瞽女たちに「男と寝てはならぬ」と教えてきたが、21歳になったおりんはある男と関係をもったことを勘付かれて屋敷から追い出された。以降おりんは“はなれ瞽女[注 1]・おりん”となって歌や三味線を披露しながら北陸で一人旅を続けてきたのだった。
数年後のある年の春の夜、とある山奥の家で過ごすおりんのもとに、“せんぞう”と名乗る宿無し男が「一晩泊めてほしい」と現れる。おりんはせんぞうと夕食を共にして寝床を与え、翌朝1人で旅立とうすると、彼が「お前について行く」と言い出す。せんぞうと一緒に旅をすることになったおりんは、村々で歌を披露しながら道中で彼に自身の半生を聞かせる。
おりんはいつしかせんぞうに好意を抱き始めるが、一緒に寝泊まりしても彼は手を出そうとしない。女として寂しさを感じたおりんは「抱いてほしい」と伝えるが、せんぞうから「抱いたらお前と旅が続けられなくなる」と告げられる。せんぞうから「俺が下駄作りの仕事をしてお前を食べさせる」と言われたおりんは、瞽女を辞めて幸せを感じながら彼との旅を続ける。
(現在の新潟県柏崎市の)とある祭りでせんぞうとおりんが下駄の露天商をしていたところ、突然彼が地元の男たちに無理やり連れて行かれる。心配しながらもおりんが仕方なく宿屋に向かう頃、せんぞうは地元男性たちとケンカして大怪我を負わせて柏崎の警察に連行されていた。おりんが宿屋の外でせんぞうの帰りを待っていると、自身に興味を持った露天商の薬屋・別所彦三郎に林の中に連れ込まれ、強引に男女の関係を持たされる。別所が去った後、海辺に出たおりんのもとにせんぞうが現れ、彼女が別所に襲われたことを知り、探し出した彼に怪我を負わせる。
せんぞうはおりんに迷惑がかからないようしばらく別々に暮らすことを提案し、「俺は南の若狭に行く。お前は南の別の村に行け。ほとぼりが冷めたらお前を探しに行く」と告げて去っていく。しばしの別れに寂しさを感じながらも、おりんはせんぞうとの再会を祈りながら再び瞽女として旅をする。しかしせんぞうは実は別所を殺しており、遺体が見つかったことで警察から殺人容疑がかけられたのだった。
旅の途中、長岡警察の今西刑事から声をかけられたおりんは、「別所と別れた後せんぞうと会ったか?」との質問に「会えないまま別れ別れになった」としらを切る。一人旅をする瞽女・一瀬たまと出会ったおりんは、話が弾んだことで2人旅を始める。今西が警察署に戻ると陸軍憲兵・袴田虎三がおり、別所殺しのせんぞうが脱走兵・平太郎と同一人物であることが告げられ、平太郎の確保に協力することに。
おりんとたまが過ごす空き家に全盲の少女を連れた老婆が現れ、「孤児となったこの子を育ててきたが老い先短いため、お二人で瞽女にしてやってほしい」と頼まれる。しかしおりんとたまは定住先を持たないはなれ瞽女であることを理由に、老婆に申し訳なく思いながらもその頼みを断る。翌朝、おりんとたまが浜辺に訪れると何やら人だかりができており、村人に事情を聞くと昨夜の老婆が将来を悲観して少女と無理心中したことを告げられる。おりんとたまは、自分たちはなれ瞽女ではどうすることもできない悔しさと、目が見えない者の生きづらさを改めて痛感する。
数か月後、おりんの居所が掴めなくなった袴田と今西は越後高田の瞽女屋敷に訪れるとここに戻った形跡はなかったが、テルヨから「おりんは小浜(福井県)の出身」との情報を得る。その頃善光寺(現在の長野市)に訪れたおりんは平太郎と再会し、たまはおりんの幸せを祈りつつ彼女と別れて以前のように一人旅をすることに。おりんと平太郎は小浜に訪れるが彼の手配書が出回っており、地元住民の通報を受けた警察により平太郎は殺人、おりんは脱走兵幇助(ほうじょ)の疑いをかけられてそれぞれ連行される。
袴田から事情聴取をされたおりんは、平太郎を守るため「新潟で別所と別れた直後、平太郎とは会わなかった」と嘘を突き通す。しかし袴田から厳しい取調べを受けた平太郎は、「おりんに迷惑をかけたくない」との思いから別所殺しを自白する。疑いが晴れたおりんは釈放が決まり、平太郎は袴田に頼んで最後にひと目だけ彼女に会わせてもらい、素性を偽っていたことを詫びる。嘘を許したおりんは平太郎のために心を込めて唄を口ずさみ、彼は袴田に連行され、以後2人は二度と会うことはなかった。
キャスト
- おりん
- 演 - 岩下志麻 / 嶺川貴子(少女時代)
- 生まれつき全盲の女性。26歳。故郷は、小浜(福井県)。6歳から越後高田藩さとみ(地名)の瞽女屋敷で暮らし、近隣の村を泊まりがけで巡って唄と三味線を披露してきた。21歳の時、男と体の関係を持ったことで周りから「ふしだらおなご」のレッテルを貼られ、瞽女屋敷を追い出された。以降「はなれ瞽女」として宛のない一人旅をし、各地の無人の炭焼小屋や空き家などで寝起きしながら村人たちの前で芸を披露してきた。明るい性格で少々のことには動じない。また、能登(現在の石川県珠洲市)で赤ん坊を出産したが、その後亡くしている。歩行時は杖で前方の地面を叩いて安全を確かめながら歩いている。作中では人の気配を鋭い聴覚や嗅覚で判断しているが、周りからは時々「本当は目は見えているのでは?」と疑われることがある。10代の頃から内心男女の営みに関心を持っており、これまでに何人かの男(交際関係の有無に関わらず)と体の関係を持ってきた。
- 6歳の頃は、若狭国小浜の漁村で母と2人で暮らしていた。しかしある日母が帰ってこなくなったことで突然孤児になった後、越後高田藩さとみの瞽女屋敷に預けられ、女将・テルヨのもとで瞽女になる修行を始めた。テルヨから日常の家事、瞽女に必要な三味線や唄を教わり、8歳頃から彼女たちと一緒に近郊の村々の民家を周って瞽女として唄を披露する。瞽女の村巡りでは、客に食物を入れてもらうズタ袋を持つ役も担当。
- 男(岩淵平太郎)
- 演 - 原田芳雄
- 無宿者で、冒頭で山奥の飯場での仕事が終わり、故郷に帰る前に寝床を探していたところ空き家で過ごすおりんと出会い、「つるかわせんぞう」と名乗る。おりんからは、「兄(あん)さま」と呼び慕われる。おりんと同じく、天涯孤独の身。子供の頃、母親がする下駄作りの仕事を手伝っていたため、見様見真似で下駄作りと販売ができる。一人旅をするおりんに頼んで旅に同行し、交流する内にお互いに異性として意識するようになる。薬屋・別所を殺した後、憲兵軍曹・袴田虎三の登場により「平太郎」という本名と、福井県の陸軍に所属する一等兵で、2年ほど前から脱走中の身であることが判明する。
瞽女屋敷の瞽女たち
- テルヨ(瞽女のおかみ)
- 演 - 奈良岡朋子
- 越後高田藩さとみの瞽女屋敷で、自身も全盲ながら若い瞽女たちの生活を支えている。面倒見の良い性格だが、瞽女たちが日常の家事で手抜きしていないかを鋭い聴覚を頼りに確認し、怠けた者にはしっかり指導している。阿弥陀如来を信仰しており、瞽女屋敷で暮らし始めたおりんに「毎日阿弥陀様に人生の道を踏み外さないようお願いしなさい」と告げ、礼儀作法の大切さを教える。また、妊娠すると瞽女の旅回りに影響が出てしまうため、瞽女が男と付き合うことを禁止にしている。瞽女全員で近郊の村々に訪れ、通りすがりの民家の玄関先で歌を披露して住民から食物をもらったり(お坊さんの托鉢のような感じ)、依頼を受けて宴席などで弾き語りを披露して生活費を稼いでいる。作中では、「瞽女屋敷に来てから2年経てば3年目の祝い、7年経てば出世名をもらい、弟子入り8年目から『お姉さん』と呼ばれるようになる。その3年後に年季明けとなり、ようやく一人前の瞽女として認められる」とのこと。
- ツギ子(瞽女)
- 演 - 神保共子
- カネ子によると、とある職人男性とこっそり逢引しており、後日瞽女の旅の道中で妊娠が発覚する。
- カネ子(同)
- 演 - 横山リエ
- ある時裁縫をするツギ子のくけ台に引っかかってこけそうになったのを、「ツギ子がわざとくけ台を倒したに違いない」と文句を言う。
- ヤス子(同)
- 演 - 宮沢亜古
- ミツ子(同)
- 演 - 中村恵子
おりんや平太郎と関わる主な人たち
- 別所彦三郎(香具師)
- 演 - 安部徹
- 村祭りで漢方薬「實母散」を売る露天商。村祭りで露天商をする美人なおりんを気に入り、その日の仕事終わりに露天商たちが泊まる宿屋で彼女に声をかける。村祭りで平太郎が地元男性たちとケンカをして柏崎の警察に連行されたのを良いことに、それを利用しておりんと親しくなろうとする。しかしこのことが平太郎の怒りを買い、「薬屋殺人事件」の被害者となる。
- 袴田虎三(憲兵軍曹)
- 演 - 小林薫
- 福井県さわい憲兵部隊所属陸軍憲兵中尉。平太郎の上官にあたる。ある日薬屋殺しの犯人の男の体つきが脱走兵の平太郎に似ているとの情報が入り、部隊に連れ戻すため新潟県の警察署に訪れる。平太郎の脱走が世間に知られると帝国陸軍の恥となるため、今西に「(脱走兵の平太郎ではなく、)薬屋殺しの犯人・つるかわせんぞう」として確保することに協力し、聞き込み時など一般人に会う時は表向き“福井県の刑事”のフリをして捜査にあたる。
- 今西万太郎(刑事)
- 演 - 桑山正一
- 新潟県の長岡警察の警部補。「薬屋殺人事件」の捜査にあたり、平太郎による犯行を疑う。平太郎のことを知るおりんの前に現れ、事件や彼に関する情報を聞き出そうとする。その後(おりんが屋敷を出てから9年後)、越後高田藩さとみの瞽女屋敷に訪れ、テルヨからおりんの消息と彼女が知り合った男(平太郎)について話を聞く。
- 一瀬たま(瞽女)
- 演 - 樹木希林
- おりんと同じく一人旅をするはなれ瞽女。おりんが平太郎と別行動になった後、とある建物の敷地内で休憩していたところ、自身が通りがかったことで知り合う。盲目だがおりんよりは障害は少し軽く、天気が良い時はぼんやりと周りを見ることができる。以前は長岡の瞽女屋敷で暮らしていたが、(おりんと出会う)3年前に追い出された。作中ではおりんが常に目を閉じた状態で生活しているのに対し、自身は目を開けた状態で過ごしている。おりんと数日間一緒に旅をする。
その他の人たち
- 斉藤(薬売り)
- 演 - 浜村純
- おりんの少女時代に登場。富山近郊を徒歩で行き来している薬売り。「富山の斉藤」と称している。冒頭で小浜の漁村に訪れたところ、地元の老婆たちから「孤児になった全盲のおりんが生きていける所へ連れて行ってほしい」と頼まれる。雪が降る中、盲目の女性たちが暮らす越後国高田藩の瞽女屋敷まで連れて行く。
- 伊助
- 演 - 加藤嘉
- 若者・阿部公太郎の出征祝いの宴の席を盛り上げてもらうため、瞽女のおりんに弾き語りを依頼する。その席で唄を聞きながら阿部の親族の若者たちが、卑猥なことを言ったためたしなめる。
- (役名不明)
- 演 - 初井言榮
- 阿部公太郎の祖母または親族の老婆。公太郎の出征祝いの宴に参加し、弾き語りをするおりんを見ながら「本当は見えているのでは?」と疑う。
- 助太郎
- 演 - 西田敏行
- 宿屋で行われたとある男衆の宴席でテルヨ率いる瞽女たちの弾き語りを楽しむ。美人な21歳のおりんを気に入って酒を飲むよう勧め、その席でおりんの浄瑠璃節のような語りに合わせ、仲間の男と滑稽な振り付けで場を盛り上げる。その夜、瞽女たちの宿泊部屋で皆が寝静まる中、こっそり部屋に忍び込んでおりんに強引に迫って男女の関係を結ぶ。
- 炭焼男
- 演 - 殿山泰司
- おりんが平太郎と出会う前に一人で瞽女の旅をしていた頃に出会った中年男。自宅におりんを泊めて男女の関係を持った模様で、翌朝おりんから再び抱かれることを望まれたが、その場を後にする。
- 老婆
- 演 - 原泉
- とある海近くの村で娘と全盲の孫娘と暮らしていたが、娘が病死して間もない状態。孫娘を育てているが自身が高齢なため将来を不安に思っていたある夜、近所の旅館に瞽女のおりんとたまが泊まっていることを耳にして彼女たちのもとに訪れ、孫娘を瞽女にしてもらえるよう頼み込む。
- 山下(香具師)
- 演 - 山谷初男
- とある村祭りで絹のシャツを売る露天商。自身の斜め向かいで、平太郎とおりんが下駄の露天商をする。
- 小杉(香具師)
- 演 - 不破万作
- 山下の知人の露天商。平太郎が村祭りで地元の男たちと喧嘩をし、相手に大怪我を負わせて柏崎の警察に連行された後、宿屋に戻ってきた別所にこのことを教える。
- 野次馬の男
- 演 - 伊達三郎
- 海辺に土左衛門(水死体)が見つかったと聞いて集まった野次馬の一人。たまたま海辺にやって来たおりんとたまから人が集まっている気配を感じて何があったのか尋ねられ、「さっき老婆と盲目の少女の土左衛門が浜に打ち上げられた。どうやら近くの崖から飛び降りたらしい」ということを伝える。
- トンネル工事の男
- 演 - 松山照夫
- ある日の昼休憩中、トンネル近くの山の木に引っかかっている赤い布を見て、仕事仲間に「あれ、なんだろう」と尋ねる。
その他
スタッフ
受賞
- 第1回日本アカデミー賞[1]
- 第51回キネマ旬報ベスト・テン[2]
- 日本映画ベスト・テン第3位
- 主演女優賞:岩下志麻
- 第32回毎日映画コンクール[3]
- 日本映画優秀賞
- 女優演技賞:岩下志麻
- 撮影賞:宮川一夫
- 第20回ブルーリボン賞[4]
- 主演女優賞:岩下志麻
- 第2回報知映画賞
- 主演女優賞:岩下志麻
脚注
注釈
- ↑ テルヨたちのような瞽女屋敷の瞽女と違って定住先を持たず、個人で旅回りをする瞽女。
出典
- ↑ “第1回日本アカデミー賞 優秀賞”. 日本アカデミー賞協会. 2024年2月26日閲覧。
- ↑ “キネマ旬報ベスト・テン 第51回(1977年度) 受賞者一覧”. エンタメデータ&ランキング. 2024年2月26日閲覧。
- ↑ “毎日映画コンクール 第32回(1977年)”. 毎日新聞. 2024年2月26日閲覧。
- ↑ “1977年 第20回 ブルーリボン賞”. allcinema. 2024年2月26日閲覧。