オオワライタケ

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オオワライタケ
Gymnopilus junonius
分類
界 : 菌界 Fungi
門 : 担子菌門 Basidiomycota
亜門 : ハラタケ亜門 Agaricomycotina
綱 : ハラタケ綱 Agaricomycetes
亜綱 : ハラタケ亜綱 Agaricomycetidae
目 : ハラタケ目 Agaricales
科 : ヒメノガステル科 Hymenogastraceae
属 : チャツムタケ属 Gymnopilus
種 : オオワライタケ G. junonius
学名
Gymnopilus junonius (Fr.) P.D. Orton (1960)[1]
シノニム

その他多数

和名
オオワライタケ (大笑茸)
英名
laughing gym

Gymnopilus junonius
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菌類学的特性
子実層にひだあり
傘は凸形
子実層は固着形
柄にはリングあり
胞子紋は淡黄色
生態は腐生植物

食用: 向精神性

もしくは有毒
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オオワライタケ(大笑茸[3]、学名: Gymnopilus junonius)はハラタケ目ヒメノガステル科[注 1]チャツムタケ属(英語版)の中型から大型のキノコ(菌類)。子実体の全体が黄金色、ヒダが錆褐色、柄に膜質のツバがあるのが特徴。従来の学名は G. spectabilis だったが[4]、現在はシノニムとなっている。ただし、分子系統解析により日本には5つの類似種が存在し、狭義のG. junoniusは存在しない可能性が高いとされている[5]。

毒キノコの一つで、誤食すると中枢神経系の中毒症状を起こし、笑うなどの異常な興奮状態になる。似た名前のキノコにワライタケがあるが、分類学的に近縁というわけではない。

全世界に広く自生し、広葉樹の枯れ木によく生える。独特の汗臭いような匂いがある。アメリカではシロシビンが検出されるが、日本のものからは検出されておらず、ジムノピリンが中毒の原因であると考えられている[6]。また2010年代には、ジムノピリンはラットの脳に作用せず、他にメタノールから抽出した成分が作用するとも考えられている[7]。

名称

和名「オオワライタケ」は、このキノコを食べると、顔が引きつって笑ったように見える食中毒症状が現れることから名付けられている[8]。命名者は菌類分類学者の川村清一で、先に同様の中毒症状を起こすことが知られていたワライタケよりも大型のキノコであったことから「オオワライタケ」と命名した[9]。

オオワライタケを指す方言に、オトコマイタケ[10]・ドコンボウ(山形)[11]、オドリタケ(踊茸:岩手・青森)[3][2]、キジャギジャモダシ(秋田)、ズコンボウ[3]、ニガキノコ・ニガッコ(秋田)、ワライ・ワライモダシ(秋田)、ドクキンタケ[11]といったものある[12]。

シノニムの種小名スペクタビリス (spectabilis) はラテン語で目立つという意味で、堂々としたキノコであり、人目をひく[13]。同属にはチャツムタケ(G. liquiritiae)、ミドリスギタケ(G. aeruginosus)などがあり、オオワライタケ同様に苦みを持つ。

分布・生態

日本のみならず全世界に広く自生する[4]。発生事例は、宮城県[14]、山形県小国町[15]、新潟の楢の木、群馬の樫の木[9]、富山県東礪波郡利賀村富山大豆谷の裏山、樫の木の根元[16]、9月の東京渋谷区、10月の町田市[17]、石川県[18]、京都大鼓山[19]、宮崎神宮[20]。

木材腐朽菌[4](腐生性[8][21])。初夏から初秋のころ、シイ、コナラ、ミズナラ、ブナなどのブナ科広葉樹林の枯れ木[4][21][10]、特にミズナラなどの根本などに密生するように発生する[21][8]。まれに公園のシイ・カシ類の木の根元から株立ちして生え[21]、針葉樹の枯れ木にも生える[11][3]。たいていは数本から十数本が束生して大きな株になるが[3]、1本だけ生える(単生)こともある[11]。北の地域や山地ではミズナラやコナラ、暖地ではスジジイに発生していることが多い[4]。

形態

子実体は傘と柄からなる。傘や柄は全体的に黄金色から黄褐色で、ヒダは錆色[21]、表面は粗い繊維状になる[10]。傘の径はふつう5 - 15センチメートル (cm) 、若い時期は半球形ないしはまんじゅう形で、のちに丸山形に開き色褪せて錆色になり、ぬめりはない[4][10]。傘の表面は帯褐黄色の細かい繊維状の模様があるが、地味で目立たない[3]。ヒダははじめ黄色で、のちに胞子が成熟すると明るい錆色となり、密で柄に対して直生からやや垂生する[3][4][10]。肉は淡黄色から帯褐黄色で[3]、緻密である[4]。

柄は長さ5 - 30 cm[10]、太さは6 - 30ミリメートル (mm) ほどで、傘より薄い色で繊維状、上下同大かやや下方が膨らみ、上部には膜質で淡黄色か暗い錆色のツバがある[3][4][21]。柄の根元はくっついて融合することが多い[3]。

全体的に黄色みがかった褐色でおいしそうに見えるが、肉は汗臭いような不快な臭気を持ち、味は強烈に苦い[3][21]。食用のコガネタケ属 (Phaeolepiota aurea) と間違えられる事があるが[22]、コガネタケは苦くなく地上に生えることから区別できる。

食用

日本では一般に毒キノコと認知されており、よく似た不明菌もいくつかあるため注意が必要なキノコといわれる[3]。強い苦味があるが[注 2]、歯切れはよく、大型なので食用の価値があるという人もいる[23]。オオワライタケは、フランスでは市販されオリーブ油に漬けて食用である[23]。東北のある地域でもオオワライタケを食べていることがあり、煮こぼしてから流水に一晩浸し、油で甘辛に煮て食したり[10]、塩漬けし2、3か月保存すれば毒が緩和されるので食べ物の少ない冬に備えた[23]。

しかし、食べると異常な興奮や幻覚などの症状が起こるキノコであり[21]、毒抜きして食べる地方もあるが、残留する毒成分が体に与えるダメージを考慮すれば食べるべきではないとする意見もある[3][10]。

栽培

1950年代の研究では人工栽培のためかなり形態の違ったきのこが発生することになったが、pH6前後、25度から30度でよく発育し、30度では菌糸は7-10日で十分に広がり、この菌糸体を15度の場所へ移動すると子実体(きのこ)を発生し、たいていは束生し、ごくまれに単生する。1週間で育ち盛りとなって、その後1週間までに傘を発生し、傘の発生から1か月程度で枯れるが、さらに5度の場所へ移動すると数か月その状態を保った。[16]

中毒

誤食するとワライタケと同様に、幻覚性の中毒を起こすといわれている[8][24]。日本産のオオワライタケからは幻覚成分のシロシビンは検出されておらず、別の成分がかかわっていると考えられている[3]。中毒症状は日本で初めて確認され、今関六也により海外に紹介された[25]。

毒成分

毒成分は、ジムノピリン類、オストパニン酸などとされる[4]。

1917年(大正6年)に、先にワライタケの中毒を確認した川村清一は、同じように酩酊してやたら笑ったり踊ったりするような中毒を起こす菌種が別にもないとも限らないので、翌年の『植物研究雑誌』に症状と菌種を精査したいと付記しておいた。その後、1922年には群馬県宝泉村の20歳の若者が樫の切り株に生えたキノコを食べて軽症の中毒を起こしたということで、そのキノコが送られてきてその種を確認した。欧米では中毒は知られていなかった。先のものより大きいことからオオワライタケと命名した。[9] 1950年代の中毒例では、裏山で採集したキノコを汁物にして食べたところ、意気揚々とやたら愉快となって笑いまた幻覚を見たが、呼吸器・循環器・消化器には異常がなく、症状は8時間ほど続き失禁もあり、眠って起きた後は平静に戻っていたというものである[16]。北米のオオワライタケからはシロシビン(幻覚成分)が単離され[24]、他の日本産の幻覚性キノコからもシロシビンが検出されるが、日本のオオワライタケからは検出されなかった[15][26]。ドイツ、山形県、宮城県で採取されたオオワライタケからは検出されなかった[14]。

1982年[27]、1984年の報告で、苦味成分としてのジムノピリン (Gymnopilin)、その他関連成分のジムノピリンAとBなどと命名したものが検出された[15][24]。苦味成分ジムノピリンに中枢神経作用があるとの基礎研究があり、1980年代には幻覚誘発の原因ではないかと考えられた[28]。

しかし2010年代までには、鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センターの研究では、培養したオオワライタケから抽出したジムノピリンは平滑筋弛緩作用があるものの[29]、ラットの脳神経細胞は活性化させず、一方メタノールで抽出した成分はラットの脳神経細胞を活性化させており、グルタミン酸などの脳細胞活性化物質、心筋の機能不全に関係する未知の物質が発見されている[7]。

中毒症状

誤食すると、10 - 20分後に、ふるえやめまい[2]。症状が重いと幻覚、幻聴、視覚障害、精神錯乱などの中枢系神経の中毒を起こし、笑ったり歌ったり興奮状態に陥るといわれている[3][10][2]。マウスを使った実験でも、中枢神経に作用を及ぼす成分が検出されている[2]。

似ているキノコ

オオワライタケは、ハラタケ科のコガネタケ(Phaeolepiota aurea)と間違われることがあり、オオワライタケは枯れ木や切り株に発生し子実体は粉を吹いていないのに対し、コガネタケは林内の草地に発生し黄色い粉にまみれていることで区別がつく[10]。噛んでみると、オオワライタケには強い苦みがある[10]。

外見は似ていないが、名前と中毒症状が似ているワライタケ(Panaeolus papilionaceus)は、分類的には少し離れたヒカゲタケ属のキノコであり、オオワライタケ同様に幻覚性の中毒を起こす[11]。

文学

平安時代末期に成立したとされる文学集『今昔物語集』の中で、「舞茸」を食べて、木こりと森の中から尼さんたちが踊りながら出てきたという説話があるが、そのキノコはオオワライタケではないかといわれている[4][2]。

出典

注釈

  1. ↑ 古い図鑑ではフウセンタケ科に分類されていたこともある'"`UNIQ--ref-00000009-QINU`"'。
  2. ↑ チャツムタケ属のキノコは、苦いものが多い'"`UNIQ--ref-00000034-QINU`"'。

出典

  1. 1 2 3 4 5 6 7 8 “Gymnopilus junonius”. MYCOBANK Database. 国際菌学協会 (IMA) とウェスターダイク菌類生物多様性研究所. 2025年2月17日閲覧。
  2. 1 2 3 4 5 6
  3. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
  4. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
  5. ↑ 藤田桃子、保坂健太郎、長澤栄史、小山明人、糟谷大河、工藤伸一、遠藤直樹「日本産オオワライタケ類の分類学的再検討」、日本菌学会第66回大会(2022年)、日本菌学会大会講演要旨集
  6. ↑ 長沢栄史『日本の毒きのこ』(増補改訂版)学習研究社、2009年、159頁。ISBN 978-4-05-404263-6。
  7. 1 2 毒きのこの子実体生産と化合物ライブラリの商品化、鳥取大学セミナー in MOBIO-Cafe、2011年。
  8. 1 2 3 4
  9. 1 2 3 川村清一『食菌と毒菌』岩波文庫、1931年。170-172頁。
  10. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
  11. 1 2 3 4 5
  12. ↑ 奥沢康正、奥沢正紀『きのこの語源・方言事典』山と溪谷社、1999年、283頁。ISBN 4-635-88031-1。
  13. ↑ ロラン・サバティエ 著、本郷次雄監修、永井真貴子 訳『きのこの名優たち』山と溪谷社、1998年、74頁。ISBN 4-635-58804-1。 La Gratin Des CHAMPIGNONS, 1986.
  14. 1 2 草野源次郎「キノコの毒成分」『遺伝』第39巻第9号、1985年9月、p32-36、NAID 40000130647。
  15. 1 2 3 小池隆 (27 March 1984). 博士論文: オオワライタケの成分研究 (pdf) (Report). 東北大学. 2017年12月10日閲覧。
  16. 1 2 3 黒野吾市、酒井健、栃折妍子「オオワライタケの培養に関する研究」『金沢大学薬学部研究年報』第6巻、1956年9月25日、19-23頁、NAID 120005317481。
  17. ↑ 都会のキノコ図鑑刊行委員会、長谷川明、大舘一夫『都会のキノコ図鑑』八坂書房、2007年。ISBN 978-4-89694-891-2。
  18. ↑ 池田良幸『追補北陸のきのこ図鑑 付・石川県菌蕈集録』橋本確文堂、2014年。ISBN 978-4-89379-164-1。
  19. ↑ 今関六也、本郷次雄、大谷吉雄『日本のきのこ』山と溪谷社〈山渓カラー名鑑〉、1988年。ISBN 4-635-09020-5。
  20. ↑ 黒木秀一『宮崎のきのこ』鉱脈社、2015年。ISBN 978-4-86061-596-3。
  21. 1 2 3 4 5 6 7 8
  22. ↑ 登田美桜、畝山智香子、豊福肇、森川馨「わが国における自然毒による食中毒事例の傾向(平成元年~22年)」『食品衛生学雑誌』第53巻第2号、2012年、105-120頁、doi:10.3358/shokueishi.53.105、NAID 130002109174。
  23. 1 2 3 小山 昇平『毒きのこ・絶品きのこ狂騒記―山の中の食欲・物欲・独占欲バトル』講談社、1999年、32頁。ISBN 4-06-209840-7。
  24. 1 2 3 小池研究の要約にすぎない。 藤本治宏「担子菌からの新しい生理活性物質」『マイコトキシン』第1987巻第25号、1987年、5-8頁、doi:10.2520/myco1975.1987.5、NAID 130003660375。
  25. ↑ 今関六也『カラー日本のキノコ』山と溪谷社〈山溪カラーガイド64〉、1974年。ISBN 9-784-63502-664-2。
  26. ↑ Kusano, Genjiro; Koike, Yutaka; Inoue, Hideo; et al. (1986). “The constituents of Gymnopilus spectabilis.”. Chemical and Phamaceutical Bulletin 34 (8): 3465–3470. doi:10.1248/cpb.34.3465. PMID 3791521.
  27. ↑ 野副重男、小池隆、辻恵美、草野源次郎、瀬戸治男、青柳富貴子、松本春樹、松本毅 ほか「38 オオワライタケの苦味成分、新ポリイソプレンポリオール、GymnopilinおよびGymnoprenol類の単離と構造」『天然有機化合物討論会講演要旨集』第25号、1982年9月10日、282-289頁、doi:10.24496/tennenyuki.25.0_282、NAID 110006678328。
  28. ↑ 田中正泰、針ヶ谷弘子、鎌田樹志、氏原一哉、橋本勝、橋本貴美子、松田冬彦、柳屋光俊 ほか「オオワライタケの神経興奮性成分 : ジムノピリンについて(口頭発表の部)」『天然有機化合物討論会講演要旨集』第34号、1992年9月10日、110-117頁、doi:10.24496/tennenyuki.34.0_110、NAID 110006679076。
  29. ↑ 會見忠則、霜村典宏、北村直樹、一柳剛「毒きのこの利活用のための新イノベーション推進事業の展開」毒きのこの利活用のための新イノベーション推進事業の展開、鳥取大学研究シーズ集、2013年。

関連項目

外部リンク