コセミクジラ

ウィキペディアから、無料の百科事典
コセミクジラ
コセミクジラ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
界 : 動物界 Animalia
門 : 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
綱 : 哺乳綱 Mammalia
目 : 偶蹄目/鯨偶蹄目 Artiodactyla/Cetartiodactyla
小目 : ヒゲクジラ小目 Mysticeti
科 : コセミクジラ科/ケトテリウム科 Neobalaenidae/Cetotheriidae
属 : コセミクジラ属
Caperea Gray, 1864[3]
種 : コセミクジラ C. marginata
学名
Caperea marginata Gray, 1846[3]
シノニム[3]
Balaena marginata Gray, 1846
和名
コセミクジラ
英名
Pygmy right whale[3]
コセミクジラの分布図
コセミクジラの分布図

コセミクジラ(小背美鯨、Caperea marginata)は、偶蹄目[注釈 1]コセミクジラ科またはケトテリウム科のコセミクジラ属に属するヒゲクジラ類の一種である。

分類

コセミクジラ属は、現生種では1属1種のみで構成される[3]。

コセミクジラ科では唯一の現生種とされており[3]、他の現生種のクジラとの分岐はセミクジラ科の次であるとされ、名前に反してよりコククジラやナガスクジラに近縁である[4]。また、原始的な形質を残す「生きた化石」とも呼ばれていたが、近年、絶滅した古代のヒゲクジラ類の系統とされていたケトテリウム科の唯一の生き残りとする説も提唱されている[5][6]。

形態

ヒトと比較した大きさ

体長 4-6.5メートル(雄の最大は6.1メートル[7][4])、体重 3-3.5トンと現生のヒゲクジラ類の中では最も小柄である。生後まもない子供の体長は約2メートル[7]。

名前の由来である、セミクジラに似た流線型アーチ状の上あごを持つ。しかしセミクジラ属と似ている部分は他にはなく、実際には背びれを持つ、胸びれや頭部が身体に比して比較的小さい、など外観でもセミクジラ属と異なる点が目立ち、洋上ではクロミンククジラ等との誤認の可能性がある[7]。骨格においても頭骨、耳骨などの形態においてセミクジラ属と共通する要素は少ない。ダルマザメによる傷跡が見られる場合もある[7]。

分布・生態

体が小さく、目撃されることが非常に少ないため、回遊もふくめて生態には不明な点が多い[7]。そのため、ヒゲクジラ類の中では唯一捕鯨の主要な対象とされてきたことがなく、船舶との衝突や漁網への混獲の危険性もヒゲクジラ類では突出して低いが、それ故にヒゲクジラ類の中ではもっとも研究が進んでいない一種であり、生息数や生息状況の調査も不明のままである。同様に、絶滅危惧種でないにもかかわらず、ホエールウォッチングの対象になっていない稀有なヒゲクジラ類の一種でもある。

南半球の温帯域(南緯30-52度)のみに分布するが、例外的に北半球のガンビアに漂着した事例が存在する[8]。南オーストラリア州やタスマニア州の沿岸や沖合には定住群が存在すると見られる[9]。また、本種の化石は1940年代に沖縄県のうるま市と1990年代にイタリアのシチリア島(地中海)でも発見されており、沖縄県での発見が北半球における初の出土記録となった。この2例は更新世の中期の記録であり、コセミクジラの祖先や近縁種(ケトテリウム)が北半球で絶滅したと考えられている鮮新世とは数百万年単位の差異があるため、更新世における氷河期を経て南半球のコセミクジラが北半球に到達したことを示唆している[10][11]。

通常は単独またはつがいで行動するが、時には14頭以上の群れ(ポッド)が目撃される事もある。また、上記の南オーストラリア州やタスマニア州の沖合では、採餌目的と思われる100頭以上の大規模な群れが観察された事例も存在する[7]。主な餌はオキアミやカイアシなどの無脊椎動物とされる[7]。

脚注

注釈

  1. ↑ または鯨偶蹄目。

出典

  1. ↑ Cooke, J.G. 2018. Caperea marginata. The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T3778A50351626. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2018-2.RLTS.T3778A50351626.en. Accessed on 14 December 2022.
  2. ↑ CITES. Appendices I, II and III valid from 22 June 2022. Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora. Accessed on 14 December 2022.
  3. 1 2 3 4 5 6 Games G. Mead & Robert L. Brownell Jr., “Order Cetacea,” In: Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World (3rd ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 723-744.
  4. 1 2 村山司『鯨類学』東海大学出版会〈東海大学自然科学叢書〉、2008年、42-43 図鑑/世界の鯨類14頁。ISBN 978-4-486-01733-2。
  5. ↑ Fordyce, R. E.; Marx, F. G. (2013). “The pygmy right whale Caperea marginata: the last of the cetotheres”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 280 (1753): 1–6. doi:10.1098/rspb.2012.2645. PMC 3574355. PMID 23256199.
  6. ↑ “'Extinct' whale found: Odd-looking pygmy whale traced back 2 million years”. CSMonitor.com (April 23, 2012). March 04, 2017閲覧。
  7. 1 2 3 4 5 6 7 エリック・ホイト(英語版), 田島木綿子 (監修), 片神貴子(翻訳), 尾崎憲和(編集), 2024年2月15日, 『ビジュアル クジラ&イルカ大図鑑』, 91頁, 232-233頁, 日経ナショナル ジオグラフィック
  8. ↑ Tsai, Cheng-Hsiu; Mead, James G. (2018). “Crossing the equator: a northern occurrence of the pygmy right whale”. Zoological Letters 4 (30): 30. doi:10.1186/s40851-018-0117-8. PMC 6296048. PMID 30574356.
  9. ↑ Shirihai, H. & Jarrett, B. (2006). Whales, Dolphins and Other Marine Mammals of the World. Princeton Field Guides. pp. 43–45. ISBN 978-0-69112757-6
  10. ↑ “北半球にもコセミクジラ 国際研究チーム うるまの化石確認”. 琉球新報. (2017年10月21日) 2025年3月1日閲覧。
  11. ↑ 沖縄から北半球初のコセミクジラ化石の発見. 国立科学博物館. (2017-10-10) 2025年3月1日閲覧。.