ソーア・ハンソン
ソーア・ハンソン | |
|---|---|
| Thor Hanson | |
| 生誕 |
|
| 住居 |
|
| 国籍 |
|
| 教育 | 博士(生物学) |
| 出身校 | レッドランズ大学(学士)/バーモント大学フィールドナチュラリスト・プログラム(修士)/アイダホ大学・熱帯農業研究教育センター(CATIE、コスタリカ)共同博士課程 |
| 職業 | 保全生物学者、ノンフィクション作家 |
| 活動期間 | 1990年代 - 現在 |
| 雇用者 | 独立系保全生物学者(フリーランス研究者) |
| 著名な実績 | 自然科学をテーマとした一般向けノンフィクション作品(羽、種子、ハチ、気候変動生物学など) |
| 代表作 | Feathers: The Evolution of a Natural Miracle/The Triumph of Seeds/Buzz: The Nature and Necessity of Bees/Hurricane Lizards and Plastic Squid |
| 流派 | ネイチャーライティング |
| 影響を受けたもの | チャールズ・ダーウィンの「身近な場所での観察」という研究姿勢 |
| 活動拠点 | アメリカ合衆国太平洋岸北西部 |
| 配偶者 | あり(非公表) |
| 子供 | 1人(息子) |
| 受賞 | ジョン・バロウズ賞(2013年)/AAAS・スバルSB&F賞(2012年)/ファイ・ベータ・カッパ協会科学賞/パシフィック・ノースウエスト・ブック・アワード(複数回)/USA Book News Award(2008年) |
| 栄誉 | グッゲンハイム・フェロー/スウィッツァー環境フェロー(1998年) |
ソーア・ハンソン (Thor Hanson) は、アメリカ合衆国の保全生物学者、ネイチャーライティング作家。ワシントン州ベリンガム生まれ。鳥の羽、種子、ハチ、気候変動などをテーマに、専門的な生物学の知見を一般読者向けにわかりやすく語る自然科学ノンフィクションの書き手として知られ、グッゲンハイム・フェローシップやジョン・バロウズ賞など複数の賞を受けている[1][2]。
生涯・経歴
ハンソンはワシントン州ベリンガムで生まれ育ち、少年時代から自然への強い関心を示していたという[3]。レッドランズ大学で学士号を取得したのち、バーモント大学のフィールドナチュラリスト・プログラムで修士号を、さらにアイダホ大学と熱帯農業研究教育センター(CATIE、コスタリカ)による共同博士課程で博士号を取得した[3]。 修士課程在籍中、 バーモント大学教授ベルンド・ハインリッチの野外実習「冬季生態学」に参加するため、メイン州の教授の丸太小屋に泊まっている。[4]
1990年代には平和部隊のボランティアとしてウガンダに赴任し、ブウィンディ原生国立公園におけるマウンテンゴリラを対象としたエコツーリズム事業の立ち上げに携わった。あわせて、アメリカ合衆国森林局がアラスカ州で実施していたヒグマ観光プロジェクトの運営にも協力している[3][5]。
その後、独立系の保全生物学者として、中米の樹木や鳴禽類、タンザニアにおける鳥の巣の捕食、アフリカのハゲワシの生態など、世界各地で幅広い研究活動に従事した[6]。2008年には、ウガンダでの体験を綴った初の一般向け著作 The Impenetrable Forest: My Gorilla Years in Uganda を刊行し、USA Book News Awardのネイチャーライティング部門を受賞した[6][7]。
以降、鳥の羽をテーマとした Feathers(2011年)(バロウズ賞)、種子の進化と人類史への影響を描いた The Triumph of Seeds(2015年)、ハチと送粉者の重要性を論じた Buzz(2018年)、気候変動に対する動植物の応答を扱った Hurricane Lizards and Plastic Squid(2021年)、身近な自然の観察をテーマとした Close to Home(2025年)など、一般読者向けの自然科学ノンフィクションを次々と発表している[8]。あわせて、児童書 Bartholomew Quill や The Escape Artist、Star and the Maestro なども執筆している[8]。
学術的業績
ハンソンは一般向けの著述活動と並行して、査読を経た学術論文も数多く発表してきた。専門分野は熱帯林の生態、森林の分断化が鳥類の巣の捕食に与える影響、新熱帯区地域のサルや鳥類の行動、そして人間による武力紛争が生物多様性に及ぼす影響を分析する「戦争生態学」 (warfare ecology) など多岐にわたる[5][9]。武力紛争と生物多様性ホットスポットの関係を扱った論文は学術誌『Conservation Biology』に掲載され、後年には関連書籍 Warfare Ecology の共同編集にも携わった[5]。
また、ワシントン州における絶滅危惧種の保全にも関わり、エトピリカ(ツノメドリ)の州レベルでの現状評価報告書や、アイランド・マーブル・バタフライ (Euchloe ausonides insulanus) の個体数調査報告書などを、ワシントン州魚類野生生物局のために執筆している[9]。
主な著作
一般向けノンフィクション
- The Impenetrable Forest: My Gorilla Years in Uganda. 1500 Books, 2008.
- Feathers: The Evolution of a Natural Miracle. Basic Books, 2011.(バロウズ賞)
- 日本語訳:『羽 ― 進化が生みだした自然の奇跡』(黒沢令子訳、白揚社、2013年)[10]
- The Triumph of Seeds: How Grains, Nuts, Kernels, Pulses, and Pips Conquered the Plant Kingdom and Shaped Human History. Basic Books, 2015.
- 日本語訳:『種子 ― 人類の歴史をつくった植物の華麗な戦略』(黒沢令子訳、白揚社、2017年)[11]
- Buzz: The Nature and Necessity of Bees. Basic Books, 2018.
- 日本語訳:『ハナバチがつくった美味しい食卓』(黒沢令子訳、白揚社、2021年)[12]
- Hurricane Lizards and Plastic Squid: The Fraught and Fascinating Biology of Climate Change. Basic Books, 2021.
- 日本語訳:『温暖化に負けない生き物たち ― 気候変動を生き抜くしたたかな戦略』(黒沢令子訳、白揚社、2024年)[13]
- Close to Home: The Wonders of Nature Just Outside Your Door. Basic Books, 2025.
児童書
- Bartholomew Quill: A Crow's Quest to Know Who's Who. Little Bigfoot/Sasquatch Books, 2016.
- The Escape Artist.
- Star and the Maestro.
編著・学術論文(抜粋)
- Hanson, T., Brooks, T.M., da Fonseca, G.A.B., Hoffman, M., Lamoreaux, J.F., Machlis, G., Mittermeier, C.G., Mittermeier, R.A., Pilgrim, J.D. 2009. "Warfare in biodiversity hotspots." Conservation Biology 23: 578-587.
- Hanson, T. 2018. "Biodiversity conservation and armed conflict: a warfare ecology perspective." Annals of the New York Academy of Sciences 1429: 50-65.
- Hanson, T., and J. S. Ascher. 2018. "An unusually large nesting aggregation of the digger bee Anthophora bomboides Kirby, 1838 (Hymenoptera: Apidae) in the San Juan Islands, Washington State." Pan-Pacific Entomologist 94: 4-16.
(以上は研究業績の一部であり、詳細な一覧は本人の公式サイトを参照[9])
受賞・栄誉
思想・考え方
ハンソンの著作に一貫して見られる姿勢は、専門的な学術研究の成果を、査読誌の枠を超えて一般読者に届けようとする強い意志である。彼自身、保全生物学の研究者として人間社会と自然環境の接点に関心を寄せ続けてきたと説明しており、ウガンダでのゴリラ保護や武力紛争下の生物多様性保全といったテーマも、この「人と自然の境界領域」への関心から生まれたものである[3][5]。
2025年の著作『Close to Home』では、遠い秘境ではなく、庭先や近所の公園など身近な場所にこそ発見すべき自然の驚異が眠っているという考え方を打ち出した[17]。この着想の背景として、ハンソンはチャールズ・ダーウィンを例に挙げている。ダーウィンはビーグル号での世界周航から帰国した後は生涯イギリスを離れず、自宅の庭を歩く「サンドウォーク」での観察から種子の休眠に関する着想を得るなど、研究の多くを自宅周辺で行っていたとハンソンは指摘し、遠征だけが科学的発見の条件ではないことを強調している[17]。
気候変動を扱った『Hurricane Lizards and Plastic Squid』では、動植物が急激な環境変化に直面したときに取りうる反応を「移動する」「行動を変える」「進化する」という3つの軸で整理し、個々の生物がどのように変化に対応しているかを具体的な事例とともに描いた[18]。同書についての書評では、気候変動という重いテーマを扱いながらも、悲観一辺倒に陥らず、個々の生物や人々の物語を通じて読者を導く語り口が評価されている[19]。
このように、専門用語を平易な言葉に置き換え、ユーモアを交えながら科学的知見を物語として提示する手法は、ハンソンの一貫した執筆スタイルとなっている。
脚注
- 1 2 “Thor Hanson - Switzer Environmental Fellow”. Robert & Patricia Switzer Foundation. 2026年9月19日閲覧。
- 1 2 “John Burroughs Medal Award List”. American Museum of Natural History(Internet Archiveによるアーカイブ). 2026年9月19日閲覧。
- 1 2 3 4 “About Thor Hanson”. Thor Hanson official website. 2026年9月19日閲覧。
- ↑ 『羽』 (ソーア・ハンソン)、第5章
- 1 2 3 4 “Thor Hanson”. Orion Magazine. 2026年9月19日閲覧。
- 1 2 3 “Thor Hanson”. Science Friday. 2026年9月19日閲覧。
- 1 2 3 “Thor Hanson and 'The Triumph of Seeds'”. Islands' Sounder (2015年5月14日). 2026年9月19日閲覧。
- 1 2 “Thor Hanson - Author & Biologist”. Thor Hanson official website. 2026年9月19日閲覧。
- 1 2 3 “Research - Thor Hanson”. Thor Hanson official website. 2026年9月19日閲覧。
- ↑ “ハナバチがつくった美味しい食卓”. 白揚社. 2026年9月19日閲覧。
- ↑ “種子”. 白揚社. 2026年9月19日閲覧。
- ↑ “ハナバチがつくった美味しい食卓”. 白揚社. 2026年9月19日閲覧。
- ↑ “温暖化に負けない生き物たち”. 白揚社. 2026年9月19日閲覧。
- ↑ “2012 AAAS/Subaru Science Books & Film Winners Announced”. American Association for the Advancement of Science(AAAS). 2026年9月19日閲覧。
- 1 2 “Thor Hanson”. National Book Foundation. 2026年9月19日閲覧。
- ↑ “Thor Hanson Wins National Honor”. Books in Common. 2026年9月19日閲覧。
- 1 2 “getting to know nature close to home, with thor hanson”. A Way to Garden. 2026年9月19日閲覧。
- ↑ “Move or Change: How Plants and Animals Are Trying to Survive a Warming World”. The Revelator. 2026年9月19日閲覧。
- ↑ “'Hurricane Lizards and Plastic Squid' show how animals are coping with climate change”. Science News. 2026年9月19日閲覧。
外部リンク