ソ連・ロシアの車両命名規則
ソビエト連邦およびロシアでは、規格化された自動車型式番号付与方式が用いられてきた。このシステムの現行方式を用いれば、車両のタイプや排気量を判別できる。現行方式は1970年代半ばに導入された。なお、中華人民共和国でも類似のシステムが採用されている。
かつてのナンバリングシステム
旧ナンバリングシステムは1945年から使用され、のちに新システムへと移行した(旧方式で附番されたLAZ-695Nバスなど、一部のモデルはその後も長期にわたり生産された)。
旧システムでは、車両の型式名は「製造メーカー名」と「最大3桁の数字」で構成されていた。各メーカーにはモデル番号として使用できる数値の範囲が割り振られており、その内訳は以下の通りである。
| 番号範囲 | 工場 | 代表車種 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 010-099 | NAMI | NAMI-012 | |
| 1 - 99 | GAZ | GAZ-13, GAZ-14 | |
| 100 - 199 | ZIL | ZIL-130 | |
| 200 - 249 | YaAZ、KrAZ | YaAZ-200, KrAZ-214 | |
| 250-299 | NAZ(ノヴォシビルスク自動車工場) | KrAZ-255 | 同工場は1945〜1949年に存在し、閉鎖後にこの番号範囲はKrAZへ移管された。 |
| 300 - 399 | UralAZ | Ural-375 | |
| 400 - 449 | MZMA(AZLK)、イジュマシュ | モスクヴィッチ 412 | |
| 450 - 484 | UAZ | UAZ-452, UAZ-469 | |
| 485-499 | DAZ(ドニエプロペトロフスク自動車工場) | DAZ-485 | 同工場は1944〜1951年に存在し、閉鎖後にこの番号範囲はUAZへ移管された。 |
| 500 - 549 | MAZ、 BelAZ、MoAZ | MAZ-500, BelAZ-540 | |
| 550-599 | MMZ | ZIL-MMZ-555 | 同工場製の装軌式車両用としても、装甲車両統括局[GABTU]のインデックスで同じ番号帯が使われた |
| 600 - 649 | KAZ、SAZ | KAZ-608,SAZ-643 | |
| 650-674 | GZA | PAZ-652 | 後にPAZおよびKAvZへ移管。 |
| 675 - 689 | LiAZ、ZiU、KAvZ | LiAZ-677, ZiU-682 | それ以前のKAvZは985〜999の範囲を使用していた。 |
| 690-699 | LAZ | LAZ-695 | |
| 700 - 929 | LKZ、NAMI製電気自動車、ErAZ、GZTM/GZSA、各工場の自動車用トレーラー | K-700、GZSA-731、OdAZ-740、NAMI-750、OdAZ-760、ErAZ-762、MMZ-768、OdAZ-784、MMZ-812、MAZ-847、SAZ-853、MMZ-881、OdAZ-885、MAZ-886、GZTM-891、GAZ-900 | |
| 930 – 939 | BAZ | BAZ-930 | 1960年代初頭に930と931のみを使用。なお、935はOdAZ製のバン型セミトレーラーに割り当てられた。 |
| 940 – 964 | ART(タルトゥ自動車修理工場)、GZTM/GZSA | TA-942、GZSA-947、GZTM-954 | 941はMAZ製セミトレーラーに割り当てられた |
| 965 – 974 | ZAZ、LuAZ | ZAZ-965、LuAZ-967 | |
| 975-984 | RAF | RAF-977 | |
| 985 – 999 | KAvZ | KAvZ-985 | 自社モデル(KAvZ-985)にZiUの範囲から「685」の番号を取得したため、この範囲はRAFへと移管された。 |
この番号割り当てルールは、厳格に守られないことも珍しくなかった。例えば、KAZ-585やKAvZ-685などは本来割り当てられた範囲外の番号を冠している。
また、車両の生産が別の工場へ移管された場合、数字部分はそのまま維持され、先頭のアルファベット(工場略称)のみが変更されるケースが多かった。例えば、トラックの「YaAZ-200」や「YaAZ-205」は、生産がミンスクへ移管された後はそれぞれ「MAZ-200」「MAZ-205」と改称された。ラトビアで生産されたバス「GZA-651」の派生モデルも「RAF-651」と附番されている。
一方、移管先の工場で基本構造に変更が加えられなかった場合や、わずかな変更にとどまった場合には、ブランド名自体は変更されず、開発元のメーカー名がそのまま使われ続けた。例えば「GAZ-69」はウリヤノフスク自動車工場へと移管されたが、その後も「GAZ」ブランドのまま生産が続けられた(なお、移管後に改良が行われた場合には「GAZ-69-68」のように末尾に数字のサフィックスが追加されたり、まったく新しい番号が割り当てられたりした)。
現行ナンバリングシステム
現行ナンバリングシステムは、業界規格「OH 025270-66」として1966年に初めて制定された(ただし即座に完全施行されたわけではなく、1970年代半ば以前に生産開始された車両の多くは旧システムのままだった。新方式を最初に採用したのは新型車「VAZ-2101」であり、他工場はその後順次移行した。例えばモスクヴィッチは1976年のモスクヴィッチ 2140から、GAZは1982年のGAZ-3102から移行している)。メーカーによる厳密な遵守状況には差があるものの、このシステムはロシアで現在も用いられている。
このシステムでは、正式なモデル型式は「メーカー名(例:VAZ)」と「少なくとも4桁の数字(例:2108)」の組み合わせとなる。
各桁の意味は以下の通りである。
- 1桁目(a):車両区分
乗用車の場合、排気量と乾燥重量によってクラスおよびグループが決定される。
| 1桁目 | クラス | グループ | 排気量(CC) | 乾燥重量(Kg) | 車種例(旧番号方式の車種を含む) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 超小型 | I | < 849 | < 649 | ZAZ-965、VAZ-1111 |
| II | 850 - 1099 | 650 - 799 | モスクヴィッチ 400、ZAZ-1102 | ||
| 2 | 小型 | I | 1100 - 1299 | 800 - 899 | モスクヴィッチ 402、 VAZ-2101 |
| II | 1300 - 1499 | 900 - 1049 | モスクヴィッチ 408、VAZ-2103 | ||
| III | 1500 - 1799 | 1050 - 1149 | モスクヴィッチ 412、VAZ-2106 | ||
| 3 | 中型 | I | 1800 - 2499 | 1150 - 1299 | GAZ-M20 |
| II | 2500 - 3499 | 1300 - 1499 | GAZ-21、 GAZ-3102 | ||
| 4 | 大型 | I | 3500 - 4999 | 1500 - 1899 | GAZ-12 |
| II | 5000 + | 1900 + | GAZ-13 | ||
| 5 | 最上級 | — | 規定なし | 規定なし | ZIL-111、ZIL-4104 |
トラックの場合、車両総重量が基準となる。
| 1桁目 | 車両総重量 |
|---|---|
| 1 | < 1200 kg |
| 2 | 1200 kg - 2000 kg |
| 3 | 2000 kg - 8000 kg |
| 4 | 8000 kg - 14000 kg |
| 5 | 14000 kg - 20000 kg |
| 6 | 20000 kg - 40000 kg |
| 7 | 40000 kg + |
バスの場合、全長が基準となる。
| 1桁目 | 全長 |
|---|---|
| 2 | < 5 m |
| 3 | 6 - 7.5 m |
| 4 | 8 - 9.5 m |
| 5 | 10.5 – 12 m |
| 6 | 16 m + |
- 2桁目(b):車両タイプ
| 2桁目 | 車両タイプ |
|---|---|
| 1 | 乗用車 |
| 2 | バス |
| 3 | トラック |
| 4 | セミトレーラートラック |
| 5 | ダンプトラック |
| 6 | タンクローリー |
| 7 | バン |
| 8 | 予備 |
| 9 | 特装車 |
- 3・4桁目(c および d):工場固有のモデル番号
5桁目:同一モデルの派生バージョンや改良型(モディファイ)を指定する際に付加される。
6桁目:輸出仕様車を区別するために用いられることがあった。
ハイフンに続く数字(例:-51)は、工場出荷時のオプションパッケージ番号を表す。
このシステムにはいくつかの欠点があった。例えば、排気量と乾燥重量が別々の区分に該当してしまい、正しく附番できない車種が存在した点である。これは極端な小排気量・大排気量エンジンを積んだ派生モデルを作った際によく発生した。
通常、こうしたモデルにはベースモデルの番号がそのまま流用された。例えば、5.5L V8エンジンを積む「GAZ-31011」は、ベースとなった2.99L モデル「GAZ-3101」の番号を受け継いでいるが、本来の排気量区分に従えば1桁目は「4(大型)」とすべきであった。また、「モスクヴィッチ-214145」(2141ベース)はルノー製2.0L F3Rエンジンを搭載したため、排気量区分では「3(中型)」に属するものの、乾燥重量区分では「2(小型)」に留まっていた。
もっとも、新型車の多くはあらかじめ各クラス・グループの規格枠に収まるよう設計され、極端な派生仕様も稀であったため、当時の実用上は十分に機能していた
輸出市場向けには、排気量に由来する呼称(例:国内名モスクヴィッチ 2140を「モスクヴィッチ 1500」と呼ぶ)やペットネーム(例:モスクヴィッチ 2141を「モスクヴィッチ・アレコ」と呼ぶ)が使われ、このナンバリングがそのまま表に出ることは少なかった。ただし書類上の型式としては、輸出モデルであってもソビエト式の型式番号が必ず付与されていた。
ソ連末期になると、VAZ-2108 / 2109に対する「ラーダ・スプートニク」のように、国内市場でも型式番号と併せて愛称(ペットネーム)が併用されるようになった。
型式番号の解読例
- VAZ-21063
- VAZ社製
- 排気量1,200〜1,800ccクラス(2)
- 乗用車(1)
- 同工場の第6番目のモデル(06)
- そのモデルの第3派生仕様(3)
- GAZ-31029-51
- GAZ社製
- 排気量1,800〜3,500ccの中型クラス(3)
- 乗用車(1)
- 同工場の第2番目のモデル(02)
- 第9派生仕様(9)
- 工場装着オプションパッケージ#51付き(-51)
アフトヴァースでの運用
アフトヴァースの各モデルには、搭載エンジンや装備の違いを反映した社内インデックスがある。例えば「VAZ-21103」は1.5L 16バルブエンジン搭載車であり、「VAZ-21104」は最新の1.6L 16バルブ燃料噴射エンジン搭載車を指す。2001年以降はトリムレベル(グレード)もハイフン後の数字で示されるようになった(-00:ベース、-01:標準、-02:デラックス)。例として「VAZ-21121-02」は、1.6L SOHCエンジンを搭載したデラックス仕様の「ラーダ 112 ハッチバック」を表す。
車名は基本的に「VAZ-(型式インデックス) (モデル名)」という形式をとる。フィアット 124をルーツとする伝統的なモデルは、1990年代末に名称が廃止されるまで国内で「ジグリ(Жигули)」と呼ばれていたため、その後の2104〜2107系や110系には実質的に固定のモデル名が存在しない。スプートニク系はマイナーチェンジ時に「サマラ」へ改称されたが、「ニーヴァ」や「オカ」の名は維持された。2000年代に入ると、市場での商標名から「VAZ」が外れて「ラーダ(Lada)」へ一本化され、簡略化された輸出用ネーミングが採用された。これにより、VAZ-2104は実質的に「ラーダ 2104」、VAZ-2110は「ラーダ 110」、VAZ-2114は「ラーダ・サマラ ハッチバック」または「ラーダ 114」と呼ばれるようになった(ただし技術資料や販促資料では従来のモデル番号も引き続き使われている)。
モデルのペットネームは仕向地によって異なり、特定の輸出市場を指し示す指標としては適さないため、全市場共通である型式番号のみで車両を参照することが推奨される。
将来
このナンバリング規格の将来は不透明である。現在でもこれに準拠し続けているロシアの自動車メーカーもあれば、そうでないメーカーもある。アフトヴァースは車両プラットフォームの社内識別用として大枠で規格を維持しているが、新しい「ラーダ・カリーナ」シリーズでは規格を厳密には踏襲していない。1.6Lエンジンを搭載しているにもかかわらず、小型乗用車を示すはずの先頭数字「2」を用いず、「1117」「1118」「1119」と附番している。