タケノコ(竹の子[1]、筍[2]、䉰[3]、英名: bamboo shoot[4])は、春になるとイネ科タケ亜科タケ類(一部はダイミョウチクやチシマザサなどのササ類を含む[5])の地下茎から出る若芽の部分である[2]。日本や中国などの温帯から亜熱帯に産するものは食材として利用されている。広義には、竹の皮(稈鞘)が稈に付着していて離脱するまでのものであれば地上に現れてから時間が経過して大きく伸びていてもタケノコといえるが[6]、一般には食用とする地上に稈が出現する前後のものだけを指す[6]。夏の季語[7][8]。

タケには温帯性タケ類(単軸型)、亜熱帯性タケ類(準連軸型)、熱帯性タケ類(連軸型)がある[9]。タケノコがそのまま生長すると、稈梢(竹の皮)が脱落してタケになる[10]。ただし、生長しても稈梢が落ちずに長く稈を包んでいる種類はササになる[10]。

春先、地面から芽が出かけているものをタケノコとして食用にし、旬は4 - 5月とされる[15]。一般に食用にするのは地上に稈が出現する前後のものである[6]。タケノコは地上に現れると次第に固くなり、えぐみも強くなるため、穂先が出るか出ないうちに収穫する[2]。ただし、先述のように広義には竹の皮(稈鞘)が稈に付着していて離脱するまでのものはタケノコであり、特にタケが大きく伸びた後でも先端部のみが竹の皮に覆われている場合にはその先端部のみを「穂先タケノコ」と称して食用とする種もある[6]。収穫されたタケノコは、先端、中央部、根元部分でそれぞれ食感に違いがある[4]。
形はずんぐりして穂先が黄色っぽく、外皮はツヤがあり薄茶色のもので、根元の周囲に出た赤紫色の突起が小さめのが良く、この突起が大きくて濃い紫色になっていると食材としては育ちすぎの場合がある[15][2]。タケノコは掘り上げてからの鮮度落ちが極端に早く、時間が経つとかたくなると同時に灰汁が増えてえぐみが増すため[2][16]、掘って収穫したその日のうちに調理するか灰汁抜きして下ごしらえするのが理想といわれている[15][17]。そのため、おいしくタケノコを食べるためには鮮度が重要であり、すぐに食べない場合は生のままではなく、下茹でしてから保存する[2][18]。下茹では収穫後できるだけ早く茹でて皮を剥いて、さらに10分ほど茹でたら水にとって冷ましておく[15]。茹でたタケノコは容器に水を張って入れておき、毎日水代えして冷蔵保存すれば、5 - 6日ほど日持ちする[15]。茹でたタケノコを皮付きのままラップなどに包んで冷蔵しても、1週間ほど保存できる[18][19]。
タケノコの加工品としては、水煮の缶詰がある。タケノコの水煮は、春の旬の時期以外でも通年市販されており、南九州で多く出回っている細いタイプはコサンチク(鼓山竹:ホテイチクの別称)、関東などで多く出回っている大きいものはモウソウチク(孟宗竹)などの種類がある[2]。水煮の断面に見られる白い粉状のものは、茹でることによって出てくるチロシンというアミノ酸物質で、取り除かずにそのまま食べられる[2]。
タケ類の種類の数は多いが、タケノコとして食用にされるのは数種である[1]。タケ類ではモウソウチク(孟宗竹)、ハチク(淡竹)、マダケ(真竹)、カンチク(寒竹)など、ササ類ではカンザンチク(寒山竹)、ネマガリダケ(根曲がり竹)などである[20]。中でもよく食べられるモウソウチクが最も馴染みがある[1]。ふつうタケノコといえば、モウソウチクのタケノコを指す場合が多い[21]。


モウソウチクの場合、土から顔を出す前に掘るのが望ましい(地面が盛り上がっているのを見分けて掘る)とされる。マダケやネマガリタケのように、30センチメートル (cm) 程度に生長した地上部を折り取って収穫できる種類もある。その他の種類を含めた外見や旬は以下のような違いがある。

日本では古来、竹林がある各地域で食用とされてきた。現代の日本では、収穫作業が「竹の子掘り」として、季節の観光行事としても親しまれている。日本の竹林面積20万ヘクタール (ha) のうち、約7割がマダケ林、約2割がモウソウチク林、残り約1割がその他の竹種となっている[20]。モウソウチクのタケノコ産地で知られる京都地方では、寛政年間(1789 - 1801年)に盛んに増殖され[20]、明治時代に入ってからも販路の拡張によって栽培の有用性が認められ、京都盆地の西部から北部の丘陵地帯にさらに増殖された[10]。
高級品の産地としては、乙訓(現在の京都府向日市・長岡京市・大山崎町・京都市南西部の一部)が有名で、約500 haある畑地のうち約5割がタケノコ畑となっている[10]。乙訓産は竹林をふかふかの土壌に改善して、日当たりも調整するなどのタケノコ栽培技術で、柔らかくえぐみを抑えて、香りが良くなるようタケノコを育てている[10][28]。大阪市の高級料亭では、大阪府貝塚市木積(こつみ)地区産も珍重されている[29]。 高級品としては、合馬たけのこ(福岡県北九州市)も有名である[30]。また石川県金沢市産たけのこは、加賀野菜の一つに選定されている[31]。
いずれも生鮮野菜であるタケノコの栽培技術は都市近郊で発達し、都市部から離れた地域では物流手段の未発達もあり、竹林利用は竹材が優先されてタケノコとしての利用は従となっていたところも多い[10]。第二次世界大戦後は、食生活の変化により缶詰としての需要が盛んになる一方で、交通網の整備もあってタケノコを青果として出荷する努力もされて、栽培技術も集約化されてきている[10]。
日本で水煮として缶詰やレトルトパックで流通しているタケノコは、その多くが中華人民共和国からの輸入品となっており、早春から日本産と市場を競合している[10]。中国では秋にも出荷される。冬を控えて行われる竹園の整備で伐採された地下茎から、タケノコが収穫されている。小さく堅いことから、加工食品用にされる。
栽培の適地は、タケノコは過湿に非常に弱いため緩傾斜地で水はけが良いところが有利で、土壌面は礫質が少ない粘質土で乾燥しすぎず腐植の少ない土壌が適している[32]。通常は、当年生の若い竹を母竹として移植する無性的な繁殖が行われており、種子繁殖は行われていない[32]。新規開園する場合には、10アール (a) あたり30 - 50株の母竹を、長さ40 - 60 cmの地下茎をつけて植えられている[32]。植栽適期は10月ごろで、その地方の初霜のころまでに植え付けるのがよいとされる[32]。順調にいけば翌年春からタケノコが出現し、6月以降から芽子が伸長し始め、地下茎として機能するようになる[33]。出盛り期(4月下旬ごろ)までに母竹として残しておくタケノコを決めておくことが大切で、タケノコを生む地下茎は3 - 5年生であるため、母竹も若い地下茎から出たものを残す必要がある[34]。
タケノコの収量と品質を左右する要因は、充実した太い地下茎をよく伸長させ、芽子の多くがタケノコに伸長肥大するように肥料管理に努めることにある[12]。施肥時期は、夏肥(7 - 8月)・礼肥(5月下旬 - 6月上旬)・冬肥(晩秋 - 初冬)の3つがそれぞれ大切で、京都地方でもこの3つの時期に施肥が行われている事例が多く、特に夏肥に重点を置いて施肥が行われているところが多い[35]。芽子が伸長肥大し始める夏に肥料が不足すると、翌春に出るタケノコの本数が少なくなり、1本あたりの重さも少なく肥大不充分で品質的に劣るものが多くなる[12]。礼肥は、タケノコを掘り採ったあとに行うもので、タケノコを産出し消耗した母竹の栄養を回復させて新葉の光合成活動を促す時期であり、年間施肥量の50%程度を施している事例も多い[35]。冬肥は、早春の地温上昇に伴ってタケノコが伸長肥大する時期に備えて行うもので、京都地方では11月から1月にかけて行われる敷きわら、客土作業の前に冬肥を施して、タケノコが出る早春の肥料必要期に備えている[35]。
タケノコと降雨との密接な関係は古くから知られており、京都府農業試験場[注 1]の調査によれば、夏期と12月の降雨量が少ないと翌年春のタケノコの発生が非常に悪くなり、雨量のわずかな差も収量に影響を及ぼすことがわかっている[36]。徳島県農業試験場[注 2]による調査では、春先(2 - 4月)の土壌水分量の多少がタケノコの発生時期、品質に大きな影響を与えることから、この時期に灌水をすることでタケノコの早出しが可能になることを明らかにしている[36]。
掘りたての鮮度が良いものは灰汁が少なく、皮付きのまま焼きタケノコにしておいしく食べられる[2][19]。通常は茹でてから食べられる[19]。部位によって繊維の状態が異なるので料理によって使い分けられ、先端のやわらかい姫皮部分は和え物・椀種・酢の物に、穂先は竹の子ご飯や椀種・煮物・和え物に、中心部分は煮物・焼き物に、根元の歯ごたえがある部分は竹の子ご飯・煮物・炒め物・揚げ物に向いている[2][19]。


タケノコのアクは、シュウ酸やホモゲンチジン酸とその配糖体などが主成分とされ[1]、コメのとぎ汁や重曹などのアルカリ性の水で除くことができる。ただし、タケノコはアミノ酸の一種チロシンを非常に多く含み(100g中690mg:日本食品成分表)、これが酵素によって次第に変化しホモゲンチジン酸になるため、加熱して酵素を失活させるアク止めが必要となる。青酸配糖体も含まれているが、薄く切った場合で8 - 10分以上煮込むと安全になる。
日本料理の煮物として調理する際には、米糠と、輪切り唐辛子などと一緒に茹でると効果的にアク抜きできるが、米糠がないときは米のとぎ汁が使われる[4]。タケノコは皮付きのまま穂先を斜めに切り落として、さらに皮の部分に縦に切れ目を入れておき、深鍋に米糠などを一緒に被るほどの水に入れて、吹きこぼれないように水を足して様子を見ながら弱火で40分から1時間ほどかけてゆっくりと茹でる[4][18][38]。タケノコに串が通るほどやわらかくなったら火を止めて、湯に浸けたまま完全に冷ましたあと、米糠を洗い流して皮を剥いてから料理に使われる[4][18][38]。
また、料理人の野崎洋光が考案した方法として、皮ごとおろした大根と同量の水に1%の塩を加え、皮を剥いたタケノコをひたひたに漬かるぐらいにして1時間ほど浸すやり方があり、大学での検証の結果、大根おろしにはタケノコのえぐみ成分であるホモゲンチジン酸を減少させることがわかった[43]。
中華料理では、湯でアク抜きする代わりに、高温の油で揚げて処理することも行われる。
| 100 gあたりの栄養価 | |
|---|---|
| エネルギー | 109 kJ (26 kcal) |
|
4.3 g | |
| 食物繊維 | 2.8 g |
|
0.2 g | |
|
3.6 g | |
| ビタミン | |
| ビタミンA相当量 |
(0%) 1 µg(0%) 11 µg |
| チアミン (B1) |
(4%) 0.05 mg |
| リボフラビン (B2) |
(9%) 0.11 mg |
| ナイアシン (B3) |
(5%) 0.7 mg |
| パントテン酸 (B5) |
(13%) 0.63 mg |
| ビタミンB6 |
(10%) 0.13 mg |
| 葉酸 (B9) |
(16%) 63 µg |
| ビタミンC |
(12%) 10 mg |
| ビタミンE |
(5%) 0.7 mg |
| ビタミンK |
(2%) 2 µg |
| ミネラル | |
| カリウム |
(11%) 520 mg |
| カルシウム |
(2%) 16 mg |
| マグネシウム |
(4%) 13 mg |
| リン |
(9%) 62 mg |
| 鉄分 |
(3%) 0.4 mg |
| 亜鉛 |
(14%) 1.3 mg |
| 銅 |
(7%) 0.13 mg |
| セレン |
(1%) 1 µg |
| 他の成分 | |
| 水分 | 90.8 g |
| 水溶性食物繊維 | 0.3 g |
| 不溶性食物繊維 | 2.5 g |
| ビオチン(B7) | 0.8 µg |
|
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[45]。 | |
| |
| %はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 | |
栄養成分は、ビタミン類が少なく[15]、タンパク質に富む[16]。カリウムと食物繊維の含有量は多いのが特徴で[15][2]、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンEなどを含む。タケノコに含まれる食物繊維は水に溶けない不溶性食物繊維・セルロースで[15]、コマツナやキャベツと同じ程度であるとされる[16]。タケノコの豊富な食物繊維は、腸内の老廃物や有害物質を排出したり、同時にコレステロールの吸収を阻害する健康に役立つ効果が期待されている[15]。タケノコに含まれるカリウムは、高血圧の原因となるナトリウムを体外に排出して血圧を下げる働きがあるといわれる成分で、タケノコを茹でても量はあまり減少しないのが特徴である[19]。亜鉛、銅などのミネラル分も比較的多く含んでいる[19]。
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