医療モール
医療モール(いりょうモール)は同一の空間に複数の医療機関や調剤薬局が集積した経営形態である[1]。クリニックモールとも呼ばれる[2]。

概要
医療モールは医療のショッピングセンターと例えられる。同一の空間で複数の専門科の医師が情報や設備などを共有して運営される点では総合病院と共通するが、入院設備がなく各医師が独立している点が総合病院との主な違いである[1]。従来の個人診療所と総合病院の中間的な形態と言える。
医療モールの主な役割は地域住民に総合的な初期診療を提供することにある。医療モールはアクセス性の高い場所にあることが多く、複数の診療科の医療を一度に受けることができるため、利便性の高い医療を提供することができる[2][3]。また空間的に専門科の異なる医師が近接しているために患者の紹介連携も容易である[1]。
医療機関としては、土地や建物の購入が不要であり初期投資を抑制できるというメリットがある[1]。また複数の医療機関が連携することで設備稼働率を向上できる点も優位である[1]。
地域医療の観点では、軽症患者が総合病院を受診するコンビニ受診の問題が指摘されているが[1]、医療モールによってそうした患者の一定数が受け入れられることで、総合病院のひっ迫の解消にも寄与すると考えられている[2][3]。
歴史
日本で初めての医療モールは1972年に開業した愛知県名古屋市のエスエル医療グループとされる[1]。
2006年には市立芦屋病院の外来部門に医療モールが設置されている[1]。
設置数は増え続け、2019年の調査では2501件のモールに11408件の医療機関が開設されている[4]。2025年には3000件を突破した[5]。
分類
ビル型
ひとつの建物内にすべて医療機関が入居する形態である。医療の提供が主目的のため、バリアフリーなどの設備が充実しやすい[2][3]。
ビレッジ型
各医療機関が同じ敷地内の別個の建物に入居している形態である[2][3]。建物が独立しているため、設計の自由度が高いことが長所である。またビレッジ型は広い土地に建設されるため、駐車場を共有して広く確保しやすい[2][3]。
併設型
ショッピングセンターなどの商業施設、オフィスビル、マンションの一部に併設されている形態である[2][3]。
商業施設の買い物客やオフィスビルに勤務する者、マンションの住民など施設の利用者の集患を期待できる点が最大の利点である[2][3]。
問題点
医療モールには医療法上の定義がなく、規制が自治体によって異なり、たとえば窓口や待合室が共用できるかどうかが自治体による[1]。また医療機関が独立しているため個人情報保護法から患者情報連携に規制を受ける[1]。
診療所と調剤薬局が併設されることで医薬分業政策と矛盾するという指摘がある[7]。医療モールに入居する調剤薬局は実質的に門前薬局であるが、複数の医療機関の処方箋を受け入れるので門前薬局を対象とした調剤基本料引き下げを回避しており、公平性に問題があるとも指摘されていた[7]。2026年6月より医療モール内の調剤薬局も調剤基本料が引き下げられた[8]。
また、医院もしくは調剤薬局のオーナーと施設のオーナーが同じ場合、賃貸借契約をめぐって不透明な利益供与が行われることがあると指摘されている[7]。
新規開業時の募集がうまく行かなかったり、入居する医院の閉業などによって専門科が揃わず歯抜けとなっているモールもある。都市部の一部のモールでは供給過多となっていることも相まって、そのようなモールでは医療モールのメリットが薄れている場所もあり、2010年時点で運営会社の破綻も発生している[9]。
脚注
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 伊藤敦「超過需要をめぐる諸問題と医療モールを活用した医療イノベーション」『横幹』15巻(2号)、2021年。doi:10.11487/trafst.15.2_46。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 「医療モールとは?開業のメリット・デメリットを解説」『RXJapan』2024年6月13日。2026年10月24日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 「医療モールとは?開業するメリット・デメリットも解説」マツモトキヨシ、2025年11月19日。2026年10月28日閲覧。
- ↑ Atsushi Ito (2020). “Strategy and management behavior of medical malls: focusing on competition over location and clinical departments”. Journal of Japanese management 5 (1): 1-17 2026年10月28日閲覧。.
- ↑ 「「医療モール」3000施設突破、SCに並ぶ 美・食で待ち時間も商機に」『日本経済新聞』2026年3月30日。2026年10月28日閲覧。
- ↑ 「地域の〝診療の場〟守る 医療モールの先駆け「東大阪Mビル」 30年の歴史を次の医師へ」大阪日日新聞、2026年10月22日。2026年10月28日閲覧。
- 1 2 3 「開設相次ぐ医療モール 医薬分業の理念に合っているのか」『日経DI』日本経済新聞社、2014年10月10日。2026年10月28日閲覧。
- ↑ 「総合メディカル社長、医療モール「新設から買収へ」 報酬改定で変化」『日本経済新聞』2026年4月6日。2026年10月28日閲覧。
- ↑ 「医療モールは“冬の時代”に 著名な運営会社も相次ぎ破産」『ダイアモンドオンライン』2010年5月14日。2026年10月28日閲覧。