地名艶歌

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地名艶歌(ちめいつやうた)は北海道のアイヌ語由来地名と、音が近い性器を表す日本語の単語の語呂合わせにより、男女の性行為の様子を描いた春歌の一種である。なお「地名艶歌」の名称はアイヌ語研究者である山田秀三が著書『アイヌ語地名を歩く』の中で、この春歌を解説するために用いた名称であり[1]、決まった名称があるわけではないが、便宜上項目名として採用する。

概要

かつて北海道内で酒宴の余興として芸者衆が歌ったとされる[1]。取り上げられた地名の多くは大正・昭和期にかけ「語呂が悪い」などを理由に改称されている。直接的な影響への言及は少ないが、これらの語呂合わせが地名・駅名の改称の一因となったという見方もある[2][注 1]。

歌詞

山田秀三が示す歌詞の一例は次のとおりである[1]。

雪の蝦夷地にゃ名所が御座る 一にかりぶと 二にべべつ 三にさねんころ 四によがりべつ

解説

地名の由来・改称の経緯・経過については各自治体・駅名の項も参照。

かりぶと

現在の後志管内ニセコ町・ニセコ駅の旧名「狩太(かりぶと)[2]」を男性器の陰茎、亀頭冠(カリ首)が太い、とかけたもの[1]。自治体名は1964年(昭和39年)に前年のニセコ積丹小樽海岸国定公園制定を受けて、観光上の理由などから変更[3]、駅名は1968年(昭和43年)に変更[2][4]。

「狩太」は「真狩川の川口」を意味する「マッカリペップトゥ(makkari-pet-putu)」に漢字をあてた「真狩別太」を短縮したもの[2]。

べべつ

現在の上川管内旭川市を流れる川名・地名・駅名であった「辺別(べべつ)」、あるいは胆振管内豊浦町・豊浦駅の旧名「弁辺(べんべ)[2]」を北海道方言における女性器の俗称「べべ」とかけたもの[1]。「弁辺」については隣の自治体である「虻田(あぶた)」(現在の洞爺湖町の一部、洞爺駅の旧名でもあり、現在も郡名として使用)と組み合わせ、「あまり寒いので、べべ、あぶった(炙った)」とする歌詞もある[1]。

辺別は河川名はそのままであるが、駅名は1942年(昭和17年)に村の名称(神楽村)から西神楽駅に改名した[5][6]。弁辺についても由来になった川名はそのままであるが[2]、1932年(昭和7年)に自治体名を変更、駅名は1935年(昭和10年)に改称された[4]。

いずれも「ぺ(pe)」(水)や「ペッ(pet)」(川)に由来する地名であり、「辺別」は辺別川が水量が豊富で流れが速い様子を表した「ペペッ(pe-pet)」(水・川)、「弁辺」は「ペウンペ(pe-un-pe:水・ある・ところ)」「ペペナイ(pe-pe-nay:水・水・川)」「ペペ(pe-pe:水・水)」あるいは「ペッペッ(pet-pet)」(川・川=小さい川が集まったところ)の諸説がいわれている[2][4]。

さねんころ

現在の十勝管内清水町御影および御影駅の旧名、「佐念頃(さねんころ)[2]」を陰核(クリトリス、さね)を愛撫する様子とかけたもの[1]。1921年(大正10年)に佐念頃を中心とする一帯を芽室村(当時)から分村するにあたり、自治体名が「御影村」となり、翌年駅名も改称された[4][7]。

地名は十勝川に突き出した山崎を表したとされる、「サンエンコロ(san-enkor)」(出ている・鼻)が由来といわれている[4][7]。

よがりべつ

同名の地名は存在していないが、後志管内仁木町の地名・駅名である「然別(しかりべつ)」を言い換えて、「よがる」とこじつけたものとされる(このほか十勝の然別湖など、道内各地に同名の地名がある)[1]。現在に至るまで特段改称はされていない。

脚注

注釈

  1. ↑ 例えば、山田は著書『北海道の地名』の中で、「狩太」については「それが酒間の戯れ歌に使われて(略)そんなこともあって(略)改名したのであろうか」(p.464)と断定は避けているが、影響があったことを推察している[2]。ただし、公式に狩太町が北海道庁に申請した際の文書には「国定公園ニセコアンヌプリを仰ぐ本町として、最近のめざましい観光開発に即応し、かつは農産業の振興を計るため、或るいは、行政上から考究して[3]」とあり、地名艶歌の影響は言及されていない。

出典

  1. 1 2 3 4 5 6 7 8 山田, 秀三『アイヌ語地名を歩く』北海道新聞社、1986年6月25日、174-175頁。doi:10.11501/9490924。2026年10月18日閲覧。
  2. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 山田秀三『北海道の地名』(2版)草風館、浦安市〈アイヌ語地名の研究 別巻〉、2018年11月30日、318-319, 412, 464頁。ISBN 978-4-88323-114-0。
  3. 1 2 ニセコ町史編さん委員会 編『ニセコ町史』ニセコ町、1982年3月、16-20頁。doi:10.11501/9570779。
  4. 1 2 3 4 5 『北海道 駅名の起源』(第1版)日本国有鉄道北海道総局、札幌市、1973年3月25日、30, 65, 123, 134頁。ASIN B000J9RBUY。
  5. ↑ 『北海道 駅名の起源』(第1版)日本国有鉄道北海道総局、札幌市、1973年3月25日、134頁。ASIN B000J9RBUY。doi:10.11501/12068975。
  6. ↑ 旭川市史編集委員会 編『旭川市史』 6巻、旭川市、1972年3月10日、198頁。doi:10.11501/2992386。2026年10月18日閲覧。
  7. 1 2 清水町議会史編さん特別委員会 編『清水町議会史』清水町議会、1994年2月20日、12,848頁。doi:10.11501/13065554。2026年10月17日閲覧。

関連項目

  • 長和駅...北海道伊達市の駅名。アイヌ語由来の旧称「長流(おさる)」が「猿」と結びつけられ、地名と共に改称された。
  • フッギング (上オーストリア)...オーストリアの地名。旧称フッキング (Fucking)が性行為を表す英語のスラングと結びつけられ、改称を余儀なくされた。