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粒子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アーク溶接では、溶接面から飛散する加熱された金属粒子である「火花」から身を守る必要がある。

物理科学において粒子(りゅうし、英: particle、古い文献では corpuscle)とは、体積、密度、質量などの物理的性質または化学的性質によって記述できる、局所化された小さな物体である[1][2] 。粒子の大きさや量は、電子のような亜原子粒子から、原子や分子のような微視的な粒子、さらには粉体や巨視的な粒子まで多岐にわたる。また、密度によっては、群衆の中を移動する人間や、運動する天体など、さらに大きな対象の科学モデルを作成するためにも粒子という概念が用いられる。特に細かいものを指す微粒子といった語もある。「粒子」という用語はかなり一般的であり、科学分野に応じて定義が異なる。

物理学の用語としては、一般的な意味の他に素粒子のような物質の構成単位を指す。あるいは量子力学的な場の理論の意味では場の励起状態を表す概念として粒子という語が用いられる。そのような粒子にたとえば光子や陽電子がある。同様な概念に量子力学における準粒子がある。準粒子の例としてはフォノンや正孔がある。力学の分野に限れば、粒子は質点や点電荷の意味で用いられる[3]。力学の意味での粒子とは、形状や大きさ、向きや自転などといった内部の自由度を、無視できるかあるいは持たない物体のことを指す。従って、太陽と地球の相対運動を考える際には、地球を粒子として扱うことができるが[4]、一方で原子など分子の内部構造に注目する際には、分子を粒子と見ることはできない[4]。

粒子から構成されるものは何でも「粒子的(particulate)」と表現されることがある[5] 。ただし、名詞としての「パティキュレート(particulate)」は、結合した「粒子集合体」ではなく、結合していない粒子の懸濁液である地球大気中の汚染物質を指す際によく用いられる。

概念的性質

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粒子はしばしば点として表される。この図は、気体中の原子、群衆の中の人間、あるいは夜空の恒星の動きを表しているかもしれない。

自然をモデル化する際、粒子の概念は特に有用である。多くの現象を完全に扱うと複雑になり、計算も困難になるためである。[6] 。粒子の概念を用いることで、関与するプロセスに関して単純化するための仮定を置くことができる。フランシス・シアーズ(英語版)とマーク・ゼマンスキーは著書『University Physics』の中で、空中に投げられた野球ボールの着地点と速度を計算する例を挙げている。彼らはまず、野球ボールを硬くて滑らかな球として理想化し、次に回転、浮力、摩擦を無視することで、最終的にこの問題を古典的な点粒子の弾道学にまで還元し、その性質を段階的に削ぎ落とした[7]膨大な数の粒子を扱うのは統計物理学の領域である。[8]。

大きさ

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銀河は非常に大きいため、恒星は銀河に対して粒子と見なすことができる。

「粒子」という用語は、通常、以下の3つのサイズ分類に対して異なる形で適用される。

巨視的粒子 (Macroscopic particles)
通常、原子や分子よりもはるかに大きい粒子を指す。これらは体積、形状、構造などを持っているが、通常は点のような粒子として抽象化される。例として、粉末、塵、砂、交通事故の際の破片、あるいは銀河を構成する恒星のような巨大な物体も含まれる[9][10]。
微視的粒子 (Microscopic particles)
通常、原子から分子のサイズ範囲(二酸化炭素、ナノ粒子、コロイド粒子など)を指す。これらの粒子は化学、および原子物理学や分子物理学で研究される。
亜原子粒子 (Subatomic particles)
原子よりも小さい粒子を指す。[11] これには、原子の構成要素である陽子、中性子、電子のほか、粒子加速器や宇宙線でのみ生成される他の種類の粒子が含まれる。これらの粒子は素粒子物理学で研究される。

微視的粒子や亜原子粒子は極めて小さいため、その研究は量子力学の領域となる。これらは「井戸型ポテンシャル」モデルで示される現象を呈し、[12][13]波と粒子の二重性を含んでいる。[14][15]また、粒子を区別可能か不可欠か[16][17]という問題も、多くの状況で重要な課題となる。

組成

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一つの陽子は強い相互作用で結合した三つのクオークからなる。

粒子は組成によっても分類できる。

複合粒子 (Composite particles)
内部構造を持つ、すなわち他の粒子から構成されている粒子を指す。[18]例えば、炭素14原子は6つの陽子、8つの中性子、6つの電子で構成されている。
素粒子 (Elementary particles)
他の粒子から構成されていない粒子を指す。[19] 現在の標準模型の理解では、レプトン、クォーク、グルーオンなど、ごく少数のものだけが存在する。しかし、これらもプレオンモデルなどのように複合粒子である可能性がある。[20]複合粒子は内部構造を持ちながらも「点状」と見なされることが多いが、素粒子には今のところ内部構造は見つかっていない。[21]

安定性

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素粒子(ミューオンなど)と複合粒子(ウランの原子核など)の両方において、粒子崩壊を起こすものが知られている。崩壊しないものは安定粒子と呼ばれ、電子やヘリウム4の原子核などがこれに該当する。安定粒子の平均寿命は、無限大であるか、あるいは崩壊を観測できないほど十分に長い。後者の場合、それらは「観測的に安定」と呼ばれる。一般に、粒子は放射線(光子の放出など)を放出することで、高いエネルギー状態から低いエネルギー状態へと崩壊する。

N体シミュレーション

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計算物理学において、N体シミュレーション(N粒子シミュレーションとも呼ばれる)とは、重力などの特定の条件下における粒子の動的システムのシミュレーションである[22]。これらのシミュレーションは宇宙論や数値流体力学において一般的である。Nは考慮される粒子数を指す。Nが大きいほど計算負荷が高くなるため、実際の粒子数が多いシステムは、しばしばより少ない粒子数で近似され、アルゴリズムはさまざまな手法で最適化される。

粒子の分布

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安定なコロイド分散液と不安定なコロイド分散液の例。

コロイド粒子はコロイドの構成要素である。コロイドとは、ある物質が別の物質の中に微視的に均一に分散している物質を指す。[23]このようなコロイド系は固体、液体、気体のいずれの状態でもあり得、分散相粒子の直径は約5から200ナノメートルである[24]。これより小さい可溶性粒子はコロイドではなく溶液を形成する。コロイド系は界面およびコロイド科学の主題である。液体中に保持されたものは懸濁固形物、気体中に懸濁した固体または液体の粒子は総称してエアロゾルと呼ばれる。大気中に浮遊する粒子は浮遊粒子状物質と呼ばれ、大気汚染の原因となることがある。より大きな粒子は同様に、海洋ごみやスペースデブリを形成する。離散した固体で巨視的な粒子の集合体は、粒状物質として記述される。

出典

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  1. ↑ “Particle”. AMS Glossary. American Meteorological Society. 2015年4月12日閲覧。
  2. ↑ “Particle”. Oxford English Dictionary (3rd ed.). Oxford University Press. September 2005.
  3. ↑ 江沢 2005, pp. 70–71.
  4. 1 2 江沢 2005, p. 71.
  5. ↑ Lambe, T. W.; Whitman, R. V. (1969). Soil Mechanics. John Wiley & Sons. p. 18. ISBN 978-0-471-51192-2. "The word 'particulate' means 'of or pertaining to a system of particles'."
  6. ↑ Sears, F. W.; Zemansky, M. W. (1964). “Equilibrium of a Particle”. University Physics (3rd ed.). Addison-Wesley. pp. 26–27. LCCN 63015265
  7. ↑ F. W. Sears; M. W. Zemansky (1964). “Equilibrium of a Particle”. University Physics (3rd ed.). Addison-Wesley. p. 27. LCCN 63015265. "A body whose rotation is ignored as irrelevant is called a particle. A particle may be so small that it is an approximation to a point, or it may be of any size, provided that the action lines of all the forces acting on it intersect in one point."
  8. ↑ Reif, F. (1965). “Statistical Description of Systems of Particles”. Fundamentals of Statistical and Thermal Physics. McGraw-Hill. pp. 47ff. ISBN 978-0-07-051800-1
  9. ↑ Dubinski (2003年). “Galaxy Dynamics and Cosmology on Mckenzie”. Canadian Institute for Theoretical Astrophysics. 2021年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年2月24日閲覧。
  10. ↑ Coppola, G.; La Barbera, F.; Capaccioli, M. (2009). “Sérsic galaxy with Sérsic halo models of early-type galaxies: A tool for N-body simulations”. Publications of the Astronomical Society of the Pacific 121 (879): 437. arXiv:0903.4758. Bibcode:2009PASP..121..437C. doi:10.1086/599288.
  11. ↑ “Subatomic particle”. YourDictionary.com. 2011年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月8日閲覧。
  12. ↑ Eisberg, R.; Resnick, R. (1985). “Solutions of Time-Independent Schroedinger Equations”. Quantum Physics of Atoms, Molecules, Solids, Nuclei, Ions, Compounds and Particles (2nd ed.). John Wiley & Sons. pp. 214–226. ISBN 978-0-471-87373-0
  13. ↑ Reif, F. (1965). “Quantum Statistics of Ideal Gases – Quantum States of a Single Particle”. Fundamentals of Statistical and Thermal Physics. McGraw-Hill. pp. vii–x. ISBN 978-0-07-051800-1
  14. ↑ Eisberg, R.; Resnick, R. (1985). “Photons—Particlelike Properties of Radiation”. Quantum Physics of Atoms, Molecules, Solids, Nuclei, and Particles. (2nd ed.). John Wiley & Sons. pp. 26–54. ISBN 978-0-471-87373-0
  15. ↑ Eisberg, R.; Resnick, R. (1985). “de Broglie's Postulate—Wavelike Properties of Particles”. Quantum Physics of Atoms, Molecules, Solids, Nuclei, and Particles (2nd ed.). John Wiley & Sons. pp. 55–84. ISBN 978-0-471-87373-0
  16. ↑ Reif, F. (1965). “Quantum Statistics of Ideal Gases – Identical Particles and Symmetry Requirements”. Fundamentals of Statistical and Thermal Dynamics. McGraw-Hill. pp. 331ff. ISBN 978-0-07-051800-1
  17. ↑ Reif, F. (1965). “Quantum Statistics of Ideal Gases – Physical Implications of the Quantum-Mechanical Enumeration of States”. Fundamentals of Statistical and Thermal Dynamics. McGraw-Hill. pp. 353–360. ISBN 978-0-07-051800-1
  18. ↑ “Composite particle”. YourDictionary.com. 2010年11月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月8日閲覧。
  19. ↑ “Elementary particle”. YourDictionary.com. 2010年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月8日閲覧。
  20. ↑ D'Souza, I. A.; Kalman, C. S. (1992). Preons: Models of Leptons, Quarks and Gauge Bosons as Composite Objects. World Scientific. ISBN 978-981-02-1019-9
  21. ↑ US National Research Council (1990). “What is an elementary particle?”. Elementary-Particle Physics. US National Research Council. p. 19. ISBN 0-309-03576-7
  22. ↑ Graps (2000年3月20日). “N-Body / Particle Simulation Methods”. 2001年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月18日閲覧。
  23. ↑ “Colloid”. Encyclopædia Britannica. 1 July 2014. 2026年2月19日閲覧.
  24. ↑ Levine, I. N. (2001). Physical Chemistry (5th ed.). McGraw-Hill. p. 955. ISBN 978-0-07-231808-1

参考文献

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関連項目

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