組織的支援の知覚

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組織的支援の知覚(そしきてきしえんのちかく、英: perceived organizational support, POS)は、従業員が、自らの組織は自分の貢献を価値あるものとみなし、自分のウェルビーイングを気にかけ、社会情緒的欲求を満たしてくれると信じている程度のことである[1][2]。POSは一般に、従業員との肯定的な互恵性の力学に対する組織側の寄与であると考えられている。というのも、従業員は受け取った報酬や好意的な処遇に報いるために、より良く働く傾向があるからである[2]。この考え方は、アイゼンバーガー(Eisenberger)とローズ(Rhoades)の組織的支援理論から発展したものである[1]。

概要

POSのウェブサイトによれば、次のとおりである[2]。

POSに関する研究は、従業員の組織へのコミットメントに対する管理者の関心が、組織の従業員に対するコミットメントへの従業員の注目と正の相関をもつ、という観察から始まった。従業員にとって組織は、賃金や医療給付といった有形の便益と同様に、尊重や配慮といった社会情緒的資源の重要な供給源として機能する。

  • 組織から高く評価されることは、従業員の承認、自尊、および所属の欲求を満たす助けとなる。
  • 組織による肯定的な評価はまた、努力を増やせばそれが注目され報われるという指標にもなる。
  • したがって従業員は、雇用主から自分がどのように評価されているかに積極的な関心を寄せる。

POSは、組織的シニシズムを説明するためにも用いることができる。組織的シニシズムは職務満足と関連しており、組織の一員としての自らの経験についての信念を反映した、組織に対する態度である。POSが従業員の価値、意味、アイデンティティなどの感覚を説明するのとちょうど同じように、POSは従業員が抱く落胆や組織からの距離感をも説明する[3]。心理学者のジェームズ・ディーン(James Dean)は従業員を研究し、シニシズムの最大の原因は、従業員自身の統制の及ばないところにあると知覚された変化であることを見いだした。アイゼンバーガーとローズは、組織内で行われた変化が従業員の統制の及ばないものと知覚された場合、その変化は従業員から支持されにくいことを見いだした[1]。

組織的シニシズム(organizational cynicism, OC)とPOSの関係を研究することにより、バーン(Byrne)とウェイン・ホックウォーター(Wayne Hochwarter)は、高いOCを感じている人々はPOSを「否定的に解釈する」場合があることを見いだした[4]。

POSは、従業員が組織変革から直接的に利益を得られると考えるときに高くなる。組織の外側の側面に対する変化や改善は、その便益が従業員の働く組織と間接的にしか関係しない場合、過小評価されうる[1]。有形の便益から生じる一定の価値が存在するのである。

組織的支援理論[5](OST)によれば、従業員は社会情緒的欲求を満たすため、また労働努力を増やすことの便益を評価するために、雇用主が自らのウェルビーイングをどの程度気にかけているかについての見解を形成する。肯定的な知覚は組織への同一化を高め、業績の向上が報われるという期待に寄与する。POSの行動的帰結には、役割内および役割外の職務遂行の向上、組織コミットメントの高まり、ならびに欠勤(英語版)や離職といった離脱行動の減少が含まれる。

1990年代半ばまでPOSに関する研究は比較的少なかったが、この主題に関する研究はここ数年で急増している。ローズとアイゼンバーガーの[1]メタ分析は1999年までに実施された約70件のPOS研究を対象としたが、それ以降300件を超える研究が行われている。このメタ分析は、POSと、予測された先行要因および帰結との間に明確で一貫した関係があることを見いだした。クルテシス(Kurtessis)、アイゼンバーガー、フォード(Ford)、ブファルディ(Buffardi)、スチュワート(Stewart)、アディス(Adis)による更新版のメタ分析[6]は、558件の研究を対象とした。

主な先行要因

組織的支援の知覚の三つの主な先行要因は、公正さ、上司の支援、そして組織的報酬と職務条件である[1]。従業員が同僚と比較して公正な処遇を受けていると知覚するとき、彼らはより多くの支援を知覚する。衡平理論によれば、従業員は労働者としての職務への投入に基づいて、与えられるものを受け取る資格があると感じる。したがって、従業員の職位に応じて報酬の大きさが異なっていても、公正さは知覚されうる。公正さはまた、手続的公正、すなわち組織内で起こる事柄の公正さとして記述することもできる。組織の職場政治(英語版)、すなわち自己利益の追求は、しばしば従業員の手続的公正の知覚と関連する。

上司の支援は、アイゼンバーガーとローズによって、従業員の支援の知覚と強く関連することが見いだされた。一般に人々は、雇用主の行動、道徳、信念を、組織の行動、道徳、信念を示すものであり、それを代表するものとみなす。POSは、上司またはより上位の雇用主が従業員の職場での経験を気にかけ、なされた仕事への感謝を示すためにできることを行っていると考えられる場合に、より高くなる傾向がある。

組織的報酬と職務条件もまた、組織的支援の知覚において大きな役割を果たす。知覚された感謝には、不満を抱く従業員を満足した従業員へと変える力があるため、外発的動機づけが従業員にとって内発的動機づけよりも大きな意味をもつことがある。アイゼンバーガーとローズは、雇用主が従業員に感謝を示し報いることのできる多くの方法について論じている。いくつかの例を挙げれば、従業員に公正な賃金を支払うこと、新しいアイデアや卓越した仕事などについて従業員を評価すること、従業員がそれに値するときに昇進させること、組織にとどまるための誘因として雇用の安定を提供すること、それに対応して生産性と士気を高めるために自律性を奨励すること、ストレスを認識した際にはそれを軽減すること、そして従業員が自らの職務に自信をもてるよう適切な訓練を提供することである[1]。これらの要因のうちには、他の要因ほど重みをもたないものもある。自律的であることは、従業員が組織に忠実であり続けたいという願望を高める。なぜなら、うまくやり遂げる能力について有能さと自信を感じていれば、諦めたり自信を失ったりする可能性が低くなるからである。

主な帰結

アイゼンバーガー(Eisenberger)とローズによるPOSに関する諸研究のメタ分析では、POSがもたらしうる多くの帰結が論じられている。第一のものは組織コミットメントである。組織コミットメントには三つの種類がある[7]。すなわち、情緒的コミットメント、存続的コミットメント、規範的コミットメントである。情緒的コミットメント、すなわち自らの組織に対して情緒的な結びつきを感じることは、単に金銭を得ること以上の、仕事のより深い意味を示すものであるため、従業員において重要である。存続的コミットメント、すなわち自らの組織にとどまることが結局は去ることよりもコストが少ないと知っていることは、最も利益を得られる場所にとどまろうとする外発的動機づけを物語っている。規範的コミットメント、すなわち他の誰もがそうしているからとどまらねばならないと感じることは、前二者ほど重要ではないものの[7]、それでも従業員に対して効果を持つと考えられている。POSのその他の帰結には、離脱行動の変化、とどまろうとする意欲、従業員へのストレイン、職務遂行、職務に関連する感情、職務に関連する関与などが含まれる[1]。レヴィ(Levy)はまた、欠勤率、離職、反生産的行動についても論じている。これらの変化は、望ましくない従業員の行動をもたらしうる。

POSは、雇用主と従業員との間で支援と敬意の互恵がなされる場合には、肯定的なものとなりうる。もし互恵が実際に生じ、従業員が自らの行っている仕事に対して評価され尊重されていると感じるならば、POSは高まる[8]。敬意と評価が存在しないか、あるいは十分に表現されない場合、従業員は疑念を抱き始め、それが組織的シニシズムを高めることがある。その時点で組織コミットメントは低下し、それによって組織の安定性が損なわれる可能性がある。互恵には、満足のいく報酬や福利厚生、昇進、雇用主と従業員の相互の敬意など、多岐にわたるものが含まれうる[8]。

職務遂行への効果

ホックウォーターが率いるグループが行った実験によれば、POSと職務遂行との間には非線形の関係がある。予測されていたのは、高いPOSが高い職務遂行と相関するということであった。もちろん、完全な相関が生じることはまれである。POSが常に職務遂行と正の相関を示すわけではないのと同様に、職務満足もまたそうではない[7]。POSはおそらく多くの従業員の職務遂行に対して効果を持つものの、必ずしも生産性における職務遂行の増加や減少を引き起こすわけではない。

組織的支援の知覚が低いと、従業員は互恵に対して警戒的になることがある[8]。互恵への警戒は、従業員にとって有益ではないと知覚される出来事によって引き起こされうる。例えば、必要と思われた支払いを受け取れないことや、適切な期間にわたって十分な支払いを受け取れないことなどである[8]。リンチ(Lynch)とアルメリ(Armeli)は、「今日、長期的な雇用を暗黙のうちに保証したり、寛大な昇給や包括的な健康保険給付を提供したり、一般教育課程の費用を補助したりする企業は、かつてよりも少なくなっている」と述べている。このような例は、従業員の間に互恵への警戒が芽生える原因となりうるものであり、彼らの組織的支援の知覚を低下させる可能性がある。

社会情緒的効果

情緒的支援は、仕事に関連しない状況においてと同じく、従業員の健康においても重要である。従業員が抱く帰属感、尊重されているという感覚、支援されているという感覚は士気を高め、それが職務遂行に肯定的な効果を及ぼすため、POSが高いことは重要である。それは家族や友人からの支援の感覚に似ている[9]。しかしながら、各従業員はおそらく何らかの満たされるべき欲求を持っているものの、それらの欲求は必ずしもすべて同じではない。また、他の者よりも多くの支援を必要とする従業員もいる。より高い社会情緒的欲求を持つ者もいるかもしれない[8]。POSに関するある論文で挙げられた例は、警察官についてのものであった。より多くの「承認、自尊、情緒的支援、あるいは所属」[8]を必要としていた警察官は、POSが高いときに、より多くのスピード違反切符を交付し、飲酒運転でより多くの人を逮捕した。

したがって、ストレインはPOSによって影響を受ける。POSが低いとき、ストレインはより強い強度で知覚される傾向がある。POSが高いとき、たとえストレインが同じだけ存在していたとしても、それは一般により低いものとして知覚される[10][11]。

測定項目

組織的支援の知覚調査(Survey of Perceived Organizational Support)[1]は、当初32項目で構成されていた。しかし、その後の版は、8項目あるいはわずか3項目を用いて十分な心理測定学(英語版)的特性を示している。回答者は、以下の記述にどの程度同意するかを7件法の尺度で示すよう求められる。

項目の例には次のようなものが含まれる。

  1. 私の組織は私の意見を気にかけている。
  2. 私の組織は私の幸福を本当に気にかけている。
  3. 私の組織は私の目標と価値観を強く考慮している。
  4. 私が問題を抱えているとき、私の組織から助けを得ることができる。
  5. 私の組織は私の側の正直な過ちを許すであろう。
  6. 機会があれば、私の組織は私を利用するであろう。(逆転項目)
  7. 私の組織は私に対してほとんど関心を示さない。(逆転項目)

調査において特定の側面を用いることによって、回答者は雇用主が知らないかもしれない問題について具体的な回答を提供することができる。一般的な問題を認識していたとしても、具体的な事柄をどのように解決すればよいかがわからないために、雇用主が行動を起こせない場合もある。職務記述指標(Job Descriptive Index, JDI)は、職務満足の測定尺度として最も頻繁に用いられているものであり、組織的支援の知覚を特に測定するものではないが、改善を必要とする領域を明らかにする能力を有している[7]。

関連項目

脚注

  1. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 Eisenberger, R., Huntington, R., Hutchison, S., & Sowa, D. 1986. Perceived organizational support. Journal of Applied Psychology, 71: 500 –507; Rhoades, L., & Eisenberger, R. 2002
  2. 1 2 3 “Perceived Organizational Support”. 2011年1月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月1日閲覧。 Perceived Organizational Support website
  3. ↑ Dean, J. W., Brandes, P., & Dharwadkar, R. (1998). Organizational cynicism. Academy of Management Review, Vol 23, No. 2, 341-352.
  4. ↑ Byrne, Z. Hochwarter, W. (2008) "Perceived organizational support and performance: Relationships across levels of organizational cynicism", Journal of Managerial Psychology, Vol. 23 Iss. 1, pp. 54-72.
  5. ↑ Shore, L.M. & Shore, T.H. (1995). "Perceived organizational support and organizational justice." In Cropanzano, R.S. & K.M. Kacmar (Eds.). Organizational politics, justice, and support: Managing the social climate of the workplace, 149-164. Westport, CT: Quorum
  6. ↑ Kurtessis, J.N., Eisenberger, R., Ford, M.T., Buffardi, L.B., Stewart, K.A., & Adis, C.S. (2017). "Perceived organizational support: A meta-analytic evaluation of organizational support theory." Journal of Management, 43: 1854 – 1884
  7. 1 2 3 4 Levy, P. E. (2013). Industrial/Organizational Psychology, 4th Edition (pp. 316-317). New York, NY: Worth Publishers.
  8. 1 2 3 4 5 6 Lynch, P. D., Eisenberger, R., & Armeli, S. (1999). Perceived organizational support: Inferior versus superior performance by wary employees. Journal of Applied Psychology, 84(4), 467-483. doi:10.1037/0021-9010.84.4.467
  9. ↑ Cobb, S. (1976). Social support as a moderator of life stress. Psychosomatic Medicine, 38, 300-314
  10. ↑ Robblee, M. A. (1998). Confronting the threat of organizational downsizing: Coping and health. (Doctoral dissertation.) Dissertation Abstracts International: Section B: The Sciences and Engineering, 59 (6-B), 3072
  11. ↑ Venkatachalam, M. (1995). Personal hardiness and perceived organizational support as links in the role stress-outcome relationship: A person-environment fit model. (Doctoral dissertation.) Dissertation Abstracts International Section A: Humanities and Social Sciences, 56 (6-A), 2328