諸王の王

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諸王の王

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

諸王の王[1](しょおうのおう)は、主に中東とインド亜大陸の王たちによって用いられた「皇帝」に相当することが多い君主号である。「王たちの王」を意味し、王の王、王の中の王、王中の王、王者の王、もろもろの王の王ともいう。宗教的には「主の主[2]」とともに唯一神を指すことがある。女性がこの称号を名乗るときは、「諸王の王」、「諸王の女王[3]」、「王妃たちの王妃[4]」のいずれかを名乗った。

似た概念として「アミールたちのアミール(大アミール)」、「スルターンたちのスルターン」、「ベイたちのベイ(ベイレルベイ)」がある。

歴史

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確認されている限り、この称号はアッシリア王トゥクルティ・ニヌルタ1世によって初めて用いられ、その後はウラルトゥ王サルドゥリ1世、アッシリア王であるエサルハドンやアッシュルバニパルなどによって用いられた。タナハ/旧約聖書では新バビロニアの王ネブカドネザル2世が「諸王の王」と呼ばれている[5]。

アケメネス朝ペルシア帝国の王ダレイオス1世は「諸王の王」の称号を用いた。この称号はこれ以降碑文を残した全ての王が名乗っている。タナハ/旧約聖書ではペルシア王アルタクセルクセスが「諸王の王」を名乗っている[6]。ペルシア帝国を滅ぼしたアレクサンドロス大王の死後のディアドコイ王朝が乱立した時代以降、この称号は一部のギリシア人王朝の王やアルメニア王ティグラネス2世、パルティア王ミトラダテス1世とミトラダテス2世以降のパルティア王、一部のアクスム王、パルミラ王などによって用いられた。パルティア帝国を滅ぼしたサーサーン朝でも引き続き「諸王の王」という称号が用いられ続けた。インド亜大陸のグプタ朝、クシャーナ朝、プラティーハーラ朝などでもこの称号が用いられた。インド文明の影響があったチャンパ王やインドネシア諸島の一部の王もこの称号を用いた。

イスラーム共同体によってサーサーン朝が滅ぼされると、ハディースで批判されていたこともあり、「諸王の王」という称号は中東において用いられなくなった。しかし、後にバグラトゥニ朝アルメニア王、ブワイフ朝、セルジューク朝の君主などが「諸王の王(シャーハンシャー)」を名乗った。また、ジョージア王も「諸王の王」という称号を用いた。

サファヴィー朝以降のイラン、エチオピア、ネパールの君主も「諸王の王」を名乗っていた。しかし、これらの国では君主制が廃止されたため、現在では「諸王の王」を名乗る君主はいない。

宗教的な用法

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メソポタミアでは有力な神々を「王の王」、「主の主」などと呼ぶことがあった。

タナハ/旧約聖書では神ヤハウェを「神の神[7]」、「主の主」、「王の主[8]」と呼んでいるところがあるほか、ユダヤ教では神を「諸王の王の王(ヘブライ語: מֶלֶךְ מַלְכֵי הַמְּלָכִים meleḵ malḵē ham-məlāḵīm メレフ・マルヘイ・ハ=メラヒム)」と呼ぶことがある。

キリスト教ではイエス・キリストを「王の王」、「主の主」と呼ぶことがある[9]。また、パレオロゴス王朝期の東ローマ帝国が用いた四文字十字の模様に描かれた4つの「Β」の解釈として「統治する者を統治する王の王(ギリシア語: Βασιλεὺς Βασιλέων, Βασιλεύων Βασιλευόντων Basileùs Basiléōn, Basileúōn Basileuóntōn)」というものがある[10]。

イスラームにも似た概念があり、神の名の一つに「王(アル=マリク)」がある。

脚注

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注釈

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出典

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  1. ↑ ・アッカド語: šar šarrāni シャル・シャッラーニ ・ヘブライ語: מֶלֶךְ מְלָכִים meleḵ məlāḵīm メレフ・メラヒム ・アラム語(タナハ): מֶלֶךְ מַלְכַיָּא meleḵ malḵayyā メレフ・マルハヤ ・古代ペルシア語: xšāyaθiya xšāyaθiyānām フシャーヤシヤ・フシャーヤシヤーナーム ・パルティア語; 中期ペルシア語: šāhān šāh シャーハーン・シャーフ(シャーハーン・シャー) ・ペルシア語: شاهنشاه šāhanšāh シャーハンシャーフ(シャーハンシャー) ・バクトリア語: ϸαονανο ϸαο šaonano šao シャーウナーン・シャーウ ・ギリシア語: βασιλεὺς βασιλέων basileùs basiléōn バシレウス・バシレオーン/(ヴァシレフス・ヴァシレオン) または: Βασιλεὺς τῶν βασιλευόντων Basileùs tôn basileuóntōn バシレウス・トーン・バシレウオントーン/(ヴァシレフス・トン・ヴァシレヴォンドン) 「統治する者の王」(テモテへの手紙一6:15) ・サンスクリット: राजाधिराज rājādhirāja ラージャーディラージャ 「王の上の王」 または: महाराजाधिराज mahārājādhirāja マハーラージャーディラージャ 「王の上の大王」 ・ネパール語: महाराजाधिराज mahārājādhirāj マハラザディラズ 「王の上の大王」 ・ゲエズ語: ንጉሠ ነገሥት nəguśä nägäśt ネグサ・ナガスト ・ジョージア語: მეფეთ მეფე mepet mepe メペト・メペ ・ラテン語: rex regum レークス・レーグム ・アラビア語: مَلِكَ الأَمْلاَكِ malik al-ʾamlāk マリク・アル=アムラーク(マリクルアムラーク) ・英語: king of kings キング・オヴ・キングズ(キング・オブ・キングス)
  2. ↑ 「もろもろの主の主」ともいう。 ・アッカド語: bēl bēlī ベール・ベーリー ・ヘブライ語: אֲדֹנֵי הָאֲדֹנִים ʾăḏōnē hā-ʾăḏōnīm アドネイ・ハ=アドニム (申命記10:17、詩篇136:3) ・ギリシア語: Κύριος (τῶν) κυρίων Kýrios (tôn) kyríōn キューリオス・(トーン・)キューリオーン/(キリオス・(トン・)キリオン) または: Κύριος τῶν κυριευόντων Kýrios tôn kyrieuóntōn キューリオス・トーン・キューリエウオントーン/(キリオス・トン・キリエヴォンドン) 「支配する者の主」(テモテへの手紙一6:15) ・ラテン語: Dominus dominorum ドミヌス・ドミノールム または: Dominus dominantium ドミヌス・ドミナンティウム 「支配する者の主」 ・英語: Lord of lords ロード・オヴ・ローズ(ロード・オブ・ローズ)
  3. ↑ ・ギリシア語: βασιλίδα βασιλέων basilída basiléōn バシリダ・バシレオーン/(ヴァシリダ・ヴァシレオン) (プトレマイオス朝の女王クレオパトラ7世) ・ゲエズ語: ንግሥተ ነገሥታት nəgəśtä nägäśtat ネゲスタ・ナガスタト (エチオピア女帝ザウディトゥ)
  4. ↑ ・パルティア語; 中期ペルシア語: bānbišnān bānbišn バーンビシュナーン・バーンビシュン ・ギリシア語: βασίλισσα (τῶν) βασιλισσῶν basílissa (tôn) basilissôn バシリッサ・(トーン・)バシリッソーン/(ヴァシリサ・(トン・)ヴァシリソン) ・ジョージア語: დედოფალთ დედოფალი dedopalt dedopali デドパルト・デドパリ ・アラビア語: مَلِكَة الْمَلِكَات malikat al-malikāt マリカト・アル=マリカート(マリカトゥルマリカート)
  5. ↑ エゼキエル書26:7(ヘブライ語) ダニエル書2:37(アラム語)
  6. ↑ エズラ記7:12(アラム語)
  7. ↑ ・ヘブライ語: אֱלֹהֵי הָאֱלֹהִים ʾĕlōhē hā-ʾĕlōhīm エロヘイ・ハ=エロヒム (申命記10:17、詩篇136:2) ・アラム語(タナハ): אֱלָהּ אֱלָהִין ʾĕlāh ʾĕlāhīn エラフ・エラヒン (ダニエル書2:47) ・ギリシア語: Θεὸς (τῶν) θεῶν Theós (tôn) theôn テオス・(トーン・)テオーン/(セオス・(トン・)セオン) ・ラテン語: Deus deorum デウス・デオールム ・英語: God of gods ゴッド・オヴ・ゴッズ(ゴッド・オブ・ゴッズ)
  8. ↑ ・アラム語(タナハ): מָרֵא מַלְכִין mārē malḵīn マレ・マルヒン (ダニエル書2:47) ・ギリシア語: Κύριος τῶν βασιλέων Kýrios tôn basiléōn キューリオス・トーン・バシレオーン/(キリオス・トン・ヴァシレオン) ・ラテン語: Dominus regum ドミヌス・レーグム ・英語: Lord of kings ロード・オヴ・キングズ(ロード・オブ・キングス)
  9. ↑ ヨハネの黙示録17:14, 19:16 テモテへの手紙一6:15
  10. ↑ “Byzantine Heraldry”. www.heraldica.org. 2026年8月20日閲覧。

関連項目

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