『青白い炎』(あおじろいほのお Pale Fire)は、渡米後のウラジーミル・ナボコフの小説。1962年の英語作品。

概要

ジョン・シェイドという架空の詩人が書いた『青白い炎』という架空の詩から始まり、彼の友人である文学研究家チャールズ・キンボートによるその詩に対する註釈が小説として展開される[1]。

形式的特徴

富士川訳版は、詩のパートは横書きで、見開きの左側には英語、右側には日本語が印刷されるという形式になっている。註釈(小説)のパートは縦書きである。

あらすじ

アメリカ合衆国のとある大学に属する文学研究者であるチャールズ・キンボートは、高名な詩人ジョン・シェイドの隣人である。シェイドの死後、キンボートはシェイドの遺稿である999行の詩『青白い炎』に註釈をつける作業に取り組みながら、過去を回想する。キンボートの正体は、彼が註釈の中でした告白によると、ユーラシア大陸にある文化的に豊かな小国ゼンブラの元王であるらしい。野蛮な謀反者たちによる革命が起こったせいでアメリカに亡命して、偽名を使って生活せざるをえなくなっているというのだ。ゼンブラからはグレイダスというあまり教養の無い男が亡命した王に対する暗殺者として送り出される。キンボートは同性愛者であり、王だった頃に王妃を愛せなかった。今は彼と別れてニースで暮らしている王妃の邸宅に二人のスパイが空き巣に入り、キンボートからの手紙が彼らに発見されたせいで彼の居どころが突き止められ、グレイダスに報告されてしまう。グレイダスは下痢気味の腹を押さえながらアメリカに到着して、大学の図書館で出会ったキンボートの愛人男性エメラルドの車に同席してキンボート宅に着く。『青白い炎』の完成稿を持ったシェイドとともに自宅に戻ったキンボートに向かってグレイダスは発砲するが、銃弾は標的からそれて、シェイドの心臓に当たって彼の命を奪う。居合わせた庭師が鋤でグレイダスの頭を叩き、銃を遠ざけ、警察が呼ばれる。グレイダスは逮捕され、面会に来たキンボートに彼の家にたどり着くまでの経緯を話した後、自殺する。キンボートはシェイドが遺した『青白い炎』を一読して、自分が期待したような内容でないことに失望するが、再読して気を取り直して、シェイドの妻シビルから出版の許可を得て、註釈作業を済ます。

日本語訳

登場人物

出典:岩波文庫版『青白い炎』より

評価

『アヴァン・ポップ』などの著書で知られる文芸評論家ラリイ・マキャフリイは、二十世紀英語圏の諸フィクション文学書に百位まで順位づけを試みた自著『20th Century's Greatest Hits: 100 English-Language Books of Fiction』において、本書を一位に挙げた。ちなみに、二位はジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』、三位はトマス・ピンチョンの『重力の虹』[3]。

ランダムハウス社が発表した『モダン・ライブラリー 100ベスト・ノベルズ』の五十三位にもランクインした[4][5]。

関連項目

脚注

[脚注の使い方]
  1. ↑ ちくま文庫版の紹介
  2. ↑ 元版は『筑摩世界文学大系81 ボルヘス/ナボコフ』筑摩書房、1984年
  3. ↑ ザ・グレイテスト・ブックス
  4. ↑ モダン・ライブラリー・ドットコム、100ベスト・ノベルズ
  5. ↑ アオキウヴァ・ドットコム◆ランダムハウス出版社 モダン・ライブラリー選: 20世紀最高の小説ベスト100
  6. ↑ プロジェクト・グーテンベルグ『ハムレット』"Infinite jest"で検索せよ
  7. ↑ 宇多田ヒカルと海外文学 「自由」と「責任」(川口あい執筆、フォーブス・ジャパン掲載)
  8. ↑ 映画ドットコム・コラム:清水節のメディア・シンクタンク - 第17回:「ブレードランナー2049」を10倍楽しむためのポイント10
  9. ↑ P+Dマガジン 【実例つき】"信頼できない語り手"ってなんだ? 小説用語を徹底解説
  10. ↑ シェイクスピア・オープンソース『アセンズのタイモン』第4幕第3場 "the moon's an arrant thief,And her pale fire she snatches from the sun"とある
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