
ATX電源(エーティーエックスでんげん、英: ATX Power Supply Unit. 略称PSU[1])は、ATXコンピュータ用の電源回路を収めたユニットの標準規格、およびその規格に準じた電源ユニット・電源装置を指す。2018年現在、デスクトップパソコン(PC)用の電源としては、最も一般的なものである。AC100Vや220Vといった商用電源を入力とし、内部で12Vや5Vといった直流に変換を行い、PC各部へ給電する為の出力を作り出す。
本項では、本規格電源から派生したSFX電源についても記述する。

1995年に米インテル社が、従来のAT規格[注 1]に代わり、マザーボードや電源ユニットなどを含む構造規格として「ATX規格」を制定した。「ATX電源」はその標準規格に準拠して設計・製造された電源ユニットである。取り付けねじの位置やPC筐体における開口部の形状制限、供給電圧、制御信号、コネクタなどは規定されているが、形状はあまり規定されてはおらず、特に供給する電流値は規定されていないため、多様な供給能力の製品が存在する。ただし、電源が単体発売され始めたのはPentium 4がリリースされたあたりからで、それ以前はCPUもGPUも消費電力が少なく、電源容量についてはあまり考慮する必要がなかったこともあり、電源単体での販売はなく、必ずPCケースとセットで販売されていた。
一般的な電源ユニットは、金属製の板やパンチングメタルなどの頑丈な筐体を持っており、そのうち1面がPCの外面に露出する前提で作られている。露出面にはAC100-240 V等の入力ソケット(IEC 60320 C14)を持ち、PC内部側には出力や制御信号線となる十数本単位の給電用電線等、またはそのような電線の接続用ソケットを備える[注 2]。特に補助記憶装置類用の給電用配線は、最端部の給電用コネクタだけでなく、配線途中にもいもづる式に備わっている[注 3]。通常は1基か2基の冷却用送風ファンをいずれかの面に備えており、PC内部または外部から取り込んだ空気で電源ユニット内の熱を奪い、温まった空気をPC外部へ強制排出したりPC内部の気流生成に用いる。1枚程度のプリント基板上にスイッチング式の電源回路を持ち、半導体素子を冷却するためのアルミニウム製のヒートシンクが内部で大きな容積を占めている。1重以上の内部保護回路を持っており、PPFなどが多用され、多くの家電製品のようなヒューズは備わっていない。
ATX電源は、市販のデスクトップPCに組み込まれている他にも、自作パソコン向けや既存製品の改造、修理用などとしてユニット単体がパソコンショップ等で販売されている。ATX電源は、総出力や電力変換効率といった電気的な性能[注 4]の他にも、冷却機構の差などに起因する静穏性や、コンデンサの品質などに起因する信頼性と寿命の差、配線ケーブルの取り回しや装飾的な機能を含むオプションの有無など多様な製品が存在し、これらの要素によって価格も大きく異なる。安い製品では2千円前後から、高価なものでは数万円のものまで存在し、高級品では概ね保証期間が長く設定されている[2]。
AT規格電源との最大の違いは、その操作方法にある。シャットダウンの際に、暗転した画面に「コンピューターの電源を切る用意が出来ました」と赤文字で大きく表示され、人間が手動でスイッチを切る必要があるのがAT電源で、電断までコンピュータが自動で行うのがATX電源である。

冷却ファンを搭載している製品が多い。その場合は入力用電源コネクタ側パネルまたは他の面に通風孔があるが、場所の規定が無く様々である。
欧州連合理事会と欧州議会が「エネルギー使用製品のエコデザインに関する指令」として知られるEuP指令、および、その対象範囲を広げた「エネルギー関連製品のエコデザイン指令」つまり、ErP指令がそれぞれ告示・発効されたことによって、欧州域内で使用/販売される広範な電気製品類のエネルギー消費に関する規定が設けられた。この規定によって、欧州域で用いられる(可能性がある)ATX電源は、EuP指令の中でのLot6(オフモード、待機モード電力消費量基準)で示される「オフモードでの消費電力」と「待機モードでの消費電力」がそれぞれ1.00Wを超過しない[注 5]という基準値に適合することが求められるようになった[6]。
多くの場合、ATX電源ユニットには主に以下の出力コネクタが接続されている。




この他に、各社の製品の独自機能として、ケースファン電源供給コネクタ、電源ファン回転数検出用コネクタなどを装備するものもある。
| 色 | 信号 | No. | No. | 信号 | 色 |
|---|---|---|---|---|---|
| 橙 | +3.3 V | 1 | 13 | +3.3 V | 橙 |
| +3.3 V sense | 茶 | ||||
| 橙 | +3.3 V | 2 | 14 | −12 V | 青 |
| 黒 | Ground | 3 | 15 | Ground | 黒 |
| 赤 | +5 V | 4 | 16 | Power on | 緑 |
| 黒 | Ground | 5 | 17 | Ground | 黒 |
| 赤 | +5 V | 6 | 18 | Ground | 黒 |
| 黒 | Ground | 7 | 19 | Ground | 黒 |
| 灰 | Power good | 8 | 20 | Reserved | 無 |
| 紫 | +5 V standby | 9 | 21 | +5 V | 赤 |
| 黄 | +12 V | 10 | 22 | +5 V | 赤 |
| 黄 | +12 V | 11 | 23 | +5 V | 赤 |
| 橙 | +3.3 V | 12 | 24 | Ground | 黒 |
ATX電源の給電能力が不足するとPCの故障の原因となる可能性がある。また、給電需要が定格内であっても供給に余裕があまり無ければ電源ユニットが相応に発熱するため、寿命はその分短くなる。供給可能な電流値も各電圧ごとやレーンごとで異なるため、総出力値だけでは判断できない。一般に電力の変換効率は定格出力値の50%付近が最適になるように設計されており[13]、電源容量については余裕を持った選択が望ましい。
+5VSB (+5V standby voltage) はシャットダウン後[注 7]も待機電力として常にマザーボードなどに供給され続けているため、部品交換などPC筐体内部に触れる時に主電源スイッチをオフにするか電源プラグを抜くことを怠ると、故障の原因となる恐れがある。また、主電源を切ってもしばらくはコンデンサなどに電気が蓄えられているため、異常な電気的負荷を内部部品にかけることで故障や寿命短縮しないように、PC内部の作業時には主電源を切ってから電源ボタンを空押しすべきとされる[注 8]。
製品に記される品質と安全の証明となる様々なマークは、ULマークと、GSマーク、TÜV、NEMKO、SEMKO、DEMKO、FIMKO、CCC、CSA、VDE、GOST R、そしてBSMI。 EMI/RFIのための一般的な証明書マークは、CEマークと、FCCと、C-tickである。これらのマークは商用電源に接続される電源機器に必須とされるものが各国で制定されており、品質検査を受けた証として認定されたものに表示が許される。
寿命の来た電源、あるいは品質の悪い電源を使用すると、最悪全てのPCパーツを巻き添えにして壊れることもあるため、自作PCの場合は早めの交換・お金を掛けるなどして気を使ったほうがいいとするショップや記事もある[14][15]。ただし、品質が上がるにつれ高価格帯になりやすい[16]という欠点も持ち合わせている。交換の目安は寿命ギリギリではなく、余裕を持った時期での交換を一部メーカーでは推奨している[17]。
電源の電力変換効率を示す規格として“80 PLUS”が存在する。80 PLUSでの分類は省エネルギー性や発熱量の目安となるため、ATX電源製品の優秀性を示す尺度として商品の宣伝などで用いられている。“80 PLUS”では、交流入力から直流出力への電源変換効率において、下記の条件を満たしていることが求められる。AC115Vの入力時における、負荷:20%、負荷:50%、負荷:100%の各状況下においてそれぞれの電源変換効率が規定されている。 コンデンサーの品質や回路の適切な設計があっての電源であるため、認証は品質を示すものではない[17]。
右側の230Vはデータセンターなどで用いられる冗長電源システムでの規定である。
+12Vの負荷が非常に小さくなった状況下で+3.3V/+5Vの負荷が大きい場合、従来の電源ユニットでは出力が不安定となりシステムが不安定となる場合がある。2013年ごろ発売の、Intelの第4世代CPUであるHaswellファミリ以降、CPUやシステム全体の低消費電力化がより進んだため、前述の問題が顕著になっている。
また、ACPIのC-State C6/C7において+12Vの最小電流0.05Aをサポートする必要がある[18]。
GPUのCPU内蔵化(すなわちグラフィックボード不使用)やPCのストレージがHDDからSSDに移行した事で+12Vの消費が従来よりも減っている(+12Vは主にスピンドルモーター駆動に用いられるため、モーターのないSSDでは+12Vを使用しない)事も遠因となっている。
以上のような状況を背景とし、前述の状況下でも安定した出力を行える電源ユニットを「Haswell対応」としてうたっている製品がある。[19]
SFX[注 9]電源は、小型PC用のMicroATX規格に準じた電源ユニットである。ATX電源よりも小型化され、-5V出力が省略されている。電源出力も、概ね100Wから400W程度とATX電源よりも小出力である。中にはATX電源互換のマウンタが付属している製品もある。
※ SFX(B)とSFX(C)はファンの厚みが17.1mmとなっており、空冷ファンが下部に出っ張っている。
未登録
IPFS未登録
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N=1
CRITICAL
PQS A91