平仮名
文字
ん
字源 无の草書体
JIS X 0213 1-4-83
Unicode U+3093
片仮名
文字
ン
字源 无の変形,尓の上のノ-の部分,撥音記号からなど多数説あり。
JIS X 0213 1-5-83
Unicode U+30F3
言語
言語 ja
ローマ字
ヘボン式 N, M, N'
訓令式 N, N', NN
JIS X 4063 n, n', nn
発音
IPA ɰ̃, ʋ̟̃, ɹ̃, j̃, m, n, ŋ, ɴ
種別
音 清音
「ん」の筆順
「ン」の筆順

ん、ンは、日本語の仮名の1つである。この音は、撥音 (𫝼音)(はつおん、はねるおん)と呼ばれ、1モーラを形成するが、通常は子音であり、かつ、直前に母音を伴うため、単独では音節を構成せず、直前の母音と共に音節を構成する。ただし、「ん?」などのように語頭にある場合は、母音に代わる音節の核、すなわち音節主音として、単独で音節を構成する。したがって、鼻母音以外に発音される限り、すなわち子音である限り、「ん」は音節主音的な子音である。「ん」は元来五十音には現れないが、一般にわ行の次に置かれる。

文字としての「ん」、「ン」を「ウン」と発音することもある[1]。

音韻

現代標準語の音韻:日本語を母語とする日本語話者にとっては「ん」は1つの音、すなわち音素 /ɴ/ と認識される。しかし、実際の発音は次項で述べるように前後の音や速度、話者により、[m]、[n]、[ŋ]、[ɴ]、さらに鼻母音の一部 ([  ̃])、その他にも鼻音に関連した音が用いられる。どの発音を用いても意味上の違いは生じない。

「ん」の表記・発音例
(「ん」にあたるものは太字)
平仮名表記 音素表記
(ん=/ɴ/ )
音声表記
(国際音声記号)
かんぱん /kaɴpaɴ/ [kampaɴ]
てんまど /teɴmado/ [temːado]
ぼんたん /boɴtaɴ/ [bontaɴ]
はんのう /haɴnoR/ [hanːoː]
びんかん /biɴkaɴ/ [biŋkaɴ]
しんごう /siɴgoR/ [ɕiŋːoː]
けんいち /keɴiti/ [keẽit͡ɕi]

音声学的記述

音声学上の実際の発音:前項で述べたように「ん」は様々に発音される[2]。 撥音は、基本的に後続音の調音が影響を及ぼす逆行同化によって、後続音と似た種類の音になる[3]。

ただし、MRIを用いた実証的研究では、語尾撥音は口蓋垂鼻音に固定されず、およそ前の母音に依存して硬口蓋から口蓋垂までの広範囲で閉鎖が起こることが報告されている[18]。

順序

表記

語頭の「ん」

日本語の現代共通語では基本的に「ん」より始まる単語が存在しない。ただし、くだけた口語や方言では「生まれる」「美味い」など語頭の「う」を鼻濁音 [ŋ] で発音することがあり、それを「ん」で表現することがある。1944年に文部省が制定した『發音符號』では、語頭の鼻濁音は「う゚」を使用するように定めたが、この表記はほとんど浸透せず、現在では語頭の鼻濁音と「う」を特に区別する場合、単に「ん」と表記されることが多い。

日本語以外の言語に於いても、「ン」から始まる言葉は少ない。外国語の単語を仮名表記する際、基本的には鼻音で始まり後続する音が母音でない場合に、「ン」で始まる言葉として表されることがある。ただし、外国語音を日本語でどう捉えるか、仮名でどのように表記するかという問題があるため、その多寡を単純には結論づけられない。

「ん」に関わる諸事項

「ん」が日本語に現れる時期

「ん」という文字が広く使われるようになったのは室町時代頃とされるが、詳しい時期については分かっていない。『古事記』、『日本書紀』、『万葉集』には「ん」音を表記する文字(万葉仮名)は見当たらない。このことから古代日本語には「ん」音はなかったと推定され、中国から経典などが輸入されたときに同時に「ん」相当音も移入されたと考えられる。ただし当初は-nと-mを区別していたと考えられ、-mの影響は「さんみ」(三位)などの連声形に残っている。藤原定家の息子である藤原為家が嘉禎2年(1236年)に紀貫之(平安時代初期)の直筆本に従って書写した為家筆本『土佐日記』(大阪青山歴史文学博物館蔵、国宝)では、「ん」の字形で「む・う・も・ん」の音を示す単語に共通して用いられている[24]が、一般には平安時代以降、撥音便化した助動詞「む、なむ、けむ、らむ」などについては、「ん」と読む場合も「む」がそのまま用いられた。

脚注

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注釈

  1. ↑ 菩提点とは「空点」ともいい、梵字の頂部に点を打ち「ん」音を加える(例:ア→アン)。空点の下に「荘厳点」を添えることがあるが(音は変わらない)、この空点と荘厳点を合わせた形が「ン」と同じ形になる。片仮名が経典などの漢籍に読みを付けるため発明されたことを考慮すれば、片仮名「ン」の成立根拠として有力とすべきであろう。
  2. ↑ 外国の地名では撥音でb/m/pの前でmを使用ぜず、nを使用した表記が多く見られる。代表例として国名のデンマーク (Danmark) やミャンマー (Myanmar) 、スコットランドの首都エディンバラ (Edinburgh) やオーストラリアの首都キャンベラ (Canberra) などが正式な英名表記として採用されている。

出典

  1. ↑ 坂口安吾『新作いろは加留多』
  2. ↑ 日下部重太郎「字音尾ŋ,n,mの沿革如何」『音声の研究3』日本音声学会、1930年、87頁。
  3. ↑ 猪塚恵美子、猪塚元「日本語の音声入門 全面改訂版」バベル・プレス『日本語教師トレーニングマニュアル1』2003年 99頁
  4. ↑ “口蓋垂鼻音とは”. コトバンク (kotobank.jp). 2021年8月7日閲覧。
  5. 1 2 猪塚恵美子、猪塚元「日本語の音声入門 全面改訂版」バベル・プレス『日本語教師トレーニングマニュアル1』2003年 98,101頁
  6. ↑ 服部四郎「「ン」に就いて」『音声の研究3』日本音声学会 昭和5年(1930年) 41頁。
  7. 1 2 3 4 5 6 7 “言語研究の変遷”. 東京外国語大学. p. 26. 2021年8月7日閲覧。
  8. 1 2 猪塚恵美子、猪塚元「日本語の音声入門 全面改訂版」バベル・プレス『日本語教師トレーニングマニュアル1』2003年 101頁
  9. ↑ “両唇鼻音とは”. コトバンク (kotobank.jp). 2021年8月7日閲覧。
  10. ↑ 平田鬼丸「国語の撥音」『音声の研究』 4巻、日本音声学会、1931年、38頁。
  11. 1 2 3 4 猪塚恵美子、猪塚元「日本語の音声入門 全面改訂版」バベル・プレス『日本語教師トレーニングマニュアル1』2003年 98,100頁
  12. 1 2 3 4 5 服部四郎「「ン」に就いて」『音声の研究3』日本音声学会、1930年、42頁。
  13. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 猪塚恵美子、猪塚元「日本語の音声入門 全面改訂版」バベル・プレス『日本語教師トレーニングマニュアル1』2003年 100頁
  14. ↑ “歯茎鼻音とは”. コトバンク (kotobank.jp). 2021年8月7日閲覧。
  15. ↑ “硬口蓋鼻音とは”. コトバンク (kotobank.jp). 2021年8月7日閲覧。
  16. ↑ “軟口蓋鼻音とは”. コトバンク (kotobank.jp). 2021年8月7日閲覧。
  17. ↑ “鼻母音とは”. コトバンク (kotobank.jp). 2021年8月7日閲覧。
  18. ↑ Maekawa, Kikuo (2021). “Production of the utterance-final moraic nasal in Japanese: A real-time MRI study”. Journal of the International Phonetic Association 09 June 2021: 1–24. doi:10.1017/S0025100321000050.
  19. ↑ 万葉仮名|国史大辞典・日本国語大辞典・日本大百科全書・世界大百科事典|ジャパンナレッジ (japanknowledge.com) 2021年8月1日閲覧。
  20. ↑ 松村明; 今泉忠義; 守随憲治, eds. (1981), “国語・国文法用語解説「撥音」”, 旺文社古語辞典 新版, 東京都新宿区: 旺文社
  21. ↑ コンビ名に「ん」、名前に「し」…人気芸人の名前に隠された“秘密”とは
  22. ↑ 売れる芸人の名前にはジンクスがあった!最強の名前を持つお笑いは誰だ!?
  23. ↑ 広辞苑、こんなとこも変わってた 校閲記者の視点でチェックしました
  24. ↑ 石塚秀雄「平安時代における仮名表記の諸問題-『土佐日記』を資料として」(教育総合研究 : 日本教育大学院大学紀要 2, 145-153, 2009-03)

関連項目

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