アン・ツウィンガー

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アン・ヘイモンド・ツウィンガー
Ann Haymond Zwinger
生誕 Ann Haymond
1925年3月12日
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国・インディアナ州マンシー
死没 (2014-08-30) 2014年8月30日(89歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国・オレゴン州ポートランド
住居 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国・コロラド州コロラドスプリングス
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
教育 美術史
出身校 ウェルズリー大学、インディアナ大学
職業 自然誌作家、ナチュラリスト、イラストレーター、大学教員
活動期間 1970年代 – 2000年代
時代 20世紀 – 21世紀
雇用者 コロラド・カレッジ
団体 ザ・オライオン・ソサエティ、ジョン・バロウズ協会 ほか
著名な実績 アメリカ西部の自然環境を題材とした自然誌文学
代表作 『Run, River, Run』『Land Above the Trees』ほか
流派 自然誌・ネイチャーライティング
影響を受けたもの ヘンリー・デイヴィッド・ソローの自然観など
影響を与えたもの アメリカ合衆国における女性自然誌作家の台頭
活動拠点 コロラド州ロッキー山脈地域
肩書き コロラド・カレッジ名誉博士
配偶者 ハーマン・H・ツウィンガー
子供 3人
受賞 ジョン・バロウズ賞(1976年)
ウエスタン・アーツ・フェデレーション非小説賞(1995年)
ジョン・ヘイ賞、オリオン協会(1996年)
「西部の精神」賞、マウンテンズ&プレインズ書店協会(2001年)
栄誉 コロラド大学、カールトン・カレッジ、コロラド・カレッジより名誉学位
ウェルズリー大学卒業生功績賞(1977年)
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アン・ヘイモンド・ツウィンガー(Ann Haymond Zwinger、1925年3月12日 – 2014年8月30日)は、アメリカの博物学者・作家・イラストレーター・環境活動家である。

アメリカ合衆国西部の自然史を緻密な観察と詩的な文体で描いた20冊以上の著作で知られ、科学的精度と芸術的感性を融合させたネイチャーライティングの執筆で知られる。

コロラド州コロラドスプリングスを活動の拠点とし、砂漠・高山・渓谷・河川など多様な生態系を渡り歩きながら、卓越したペン画イラストとともに自然の美しさと保全の必要性を訴え続けた[1]。代表作の一つ Run, River, Run(1975年)はジョン・バロウズ賞を受賞した[2]。

生涯・経歴

生い立ちと教育

アン・ヘイモンドは、1925年3月12日にインディアナ州マンシーで生まれた。父は弁護士のウィリアム・T・ヘイモンド、母は芸術家のヘレン・G・ヘイモンドであった[3]。幼少期はホワイト川沿いで育ち、後の自然史執筆においてインディアナの景観を比較の基点として頻繁に参照することとなった[4]。

ウェルズリー大学で美術史を学び、1946年に「ウェルズリー・カレッジ・スカラー」の称号(現在の優等卒業に相当)とともに学士号(文学士)を取得した。その後ラドクリフ大学およびインディアナ大学で大学院研究を続け、1950年に美術学修士号を取得。さらにハーバード大学で博士号取得を目指して研究中に、当時空軍パイロットであったハーマン・H・ツウィンガーと出会い、1952年に結婚した[5]。

軍人妻としての生活と自然への目覚め

空軍の妻として全米各地を転々とする生活を送りながら、スーザン、ジェーン、サラの三人の娘を育てた。1960年7月にコロラドスプリングスへ転居した際、夫妻はコロラドスプリングス近郊の山岳地帯に40エーカーの土地「コンスタント・フレンドシップ」を購入した。アンはその土地に自生する植物の記録・スケッチを始め、これが自然史執筆家・イラストレーターとしてのキャリアの出発点となった[6]。

1969年、共通の友人を通じてレイチェル・カーソンの文芸エージェント、マリー・ロデルと知り合った。ロデルの勧めでコロラドの自地について書き始め、その原稿が1970年に処女作 Beyond the Aspen Grove として出版された[7]。ツウィンガーは当時45歳であった。

晩年

コロラドスプリングスを拠点に精力的な執筆・講演活動を続けた。夫ハーマンは2013年6月7日に没した。アン本人は2014年8月30日、オレゴン州ポートランドで89歳にて死去した。

学術的業績・執筆活動

ツウィンガーの著作は、アメリカ合衆国西部の砂漠・高山ツンドラ・河川峡谷・沿岸地帯など多彩な生態系を対象としている。文体は美術家の審美眼と博物学者の精緻な観察眼を兼ね備えており、各著作に自身が描いたペン画・植物スケッチを収録するのが特徴である[8]。

また、コロラド・カレッジ、カールトン・カレッジ、スミス・カレッジなどで教鞭を執るとともに、多くの若いネイチャーライティング作家の指導者・メンターとして活躍した。テリー・テンペスト・ウィリアムス、スーザン・ツウィンガー、スティーブ・トリンブルらはその代表的な薫陶を受けた作家として知られる[9]。

雑誌への寄稿も多岐にわたり、『オーデュボン』誌、『スミソニアン』誌、『ナチュラルヒストリー』誌、『オリオン』誌などに多数の論考・エッセイを発表した。オリオン誌の取締役を1996年から2003年まで務めた[10]。

また、ジョン・バロウズ協会、ソロー・ソサエティ、ネイチャーコンサーバンシー、ゼルス(昆虫保全の学会)など複数の自然保護・文学団体の会員として活動した[11]。

主な著作

  1. Beyond the Aspen Grove(1970年、Harper & Row)- 処女作。コロラドの山岳の自然と自宅の土地を描いたもっとも個人的な作品。インディアナ作家の日賞受賞。
  2. Land Above the Trees: A Guide to American Alpine Tundra(1972年、Harper & Row)- ビアトリス・E・ウィラードとの共著。全米図書賞科学部門最終候補(1973年)。
  3. Run, River, Run: A Naturalist's Journey Down One of the Great Rivers of the American West(1975年、Harper & Row)- グリーン川を下る旅の記録[12]。ジョン・バロウズ賞(1976年)受賞。フレンズ・オブ・アメリカン・ライターズ非小説賞受賞。
  4. Wind in the Rock(1978年、Harper & Row)- ユタ州のキャニオンランドを描く。
  5. A Conscious Stillness: Two Naturalists on Thoreau's Rivers(1982年、Harper & Row)- エドウィン・ウェイ・ティールとの共著。
  6. A Desert Country near the Sea: A Natural History of the Cape Region of Baja California(1983年、Harper & Row)- バハ・カリフォルニアの自然史。
  7. John Xantus: The Fort Tejon Letters 1857–1859(1986年)- 19世紀の博物学者ジョン・サントスに関する研究。
  8. The Mysterious Lands: A Naturalist Explores the Four Great Deserts of the Southwest(1989年、Dutton)- アメリカ南西部の四大砂漠を探訪。
  9. Aspen: Blazon of the West(1991年)
  10. Downcanyon: A Naturalist Explores the Colorado River through the Grand Canyon(1995年、University of Arizona Press)- コロラド川グランドキャニオン部分を探訪した詩情豊かな作品。
  11. Writing the Western Landscape(1994年)- メアリー・オースティンとの編著。
  12. Women in Wilderness: Writings and Photographs(1995年)- 娘スーザン・ツウィンガーとの共編著。
  13. The Nearsighted Naturalist(1998年、University of Arizona Press)- 20年以上にわたるエッセイ21編を収録した代表的選集。
  14. Shaped by Wind and Water: Reflections of a Naturalist(2000年、Milkweed Editions)

受賞・栄誉

  • 全米図書賞科学部門最終候補(1973年)- Land Above the Trees(共著)
  • ジョン・バロウズ賞(1976年)- Run, River, Run
  • ウェルズリー大学卒業生功績賞(1977年)
  • ウエスタン・アーツ・フェデレーション非小説賞(1995年)
  • ジョン・ヘイ賞、オリオン協会(1996年)
  • 「西部の精神」賞、マウンテンズ&プレインズ書店協会(2001年)
  • コロラド大学、カールトン・カレッジ、コロラド・カレッジより名誉学位

思想・特徴

ツウィンガーの自然哲学には「観察する者としての人間」という意識がある。人間は自然界の闖入者であるが、観察を通じてこそ理解に到達できる、という信念を持ち、徹底した野外観察をすべての著作の基盤に据えた[13]。

砂漠や渓谷など「大きな空虚(big empties)」の景観に強い精神的親和性を感じ、「閉じた森の壁」よりも「地平線から地平線へと広がる空」を好むと語っている[14]。また、スケッチを単なる図版制作としてではなく、自然を細部まで味わって刻みこむ行為として捉える。スケッチにて、ものごとに注意を向けて細かなものを味わう。また、自然と時間の重なりを意識する。地質学的・文化的な深い時間と現在を同時に感じ取る。

発言

ツウィンガーの思想の理解を助けるため、キーワードごとに分類した彼女自身の説明等の発言を以下に引用する。

観察と理解
「人間は自然に踏み込んだ闖入者に過ぎませんが、観察する権利を自ら主張し、その観察の中からこそ、理解は生まれてくるのです。」
(原文:"Humans are but intruders who have presumed the right to be observers, and who, out of observation, find understanding.")[15]
砂漠の景観
「見渡す限りの砂漠の広がりを眺めていると、いつも驚かされます――なんと、のびやかな景色こそが私を圧迫するのかと。砂漠とは、もはや問うべきことが何もなくなったとき、私がいたいと願う場所なのです。」
(原文:"Looking out over the pure sweep of seamless desert, I am surprised to realize that the easy landscapes stifle me... Desert is where I want to be when there are no more questions to ask.")[16]
河川と時間
「川の流れは、この大きな川では穏やかな夕刻のひとときをもたらしてくれます。学ぶべきことがこんなにも多く、いつもいつも、時間が足りないのです。」
(原文:"This afternoon there comes a gentleness I do not often feel on this big river because there is so much to learn, so many puzzles that gnaw... Never enough time.")[17]
夜の川辺で
「川の静かな流れは、夜の帳が降り始める音の中に染みこんでいきます。光が薄れて視覚が制限される。私は月明かりとともに、老いたコットンウッドが芽吹く音に耳を傾けながら、眠りに落ちていきます。」
(原文:"The quiet going of the river permeates the beginning, tentative night sounds... I fall asleep listening to moonlight and the old cottonwoods leafing out.")[18]
夜明け
「夜明けが空へにじみ出す時、それは余計な句読点を取り除くように星々を消していきます――アスタリスクもピリオドも、コンマもセミコロンも削除され、ただ回転し続ける思考と、固定されない言葉だけが残されます。」
(原文:"As dawn leaks into the sky it edits out the stars like excess punctuation marks, deleting asterisks and periods, commas, and semi-colons, leaving only unhinged thoughts rotating and pivoting, and unsecured words.")[19]

脚注

  1. ↑ “Ann H. Zwinger Papers”. Colorado College Library Special Collections. 2026年5月16日閲覧。
  2. ↑ Ann Zwinger - - Orion Magazine https://orionmagazine.org/contributor/ann-zwinger/
  3. ↑ “Ann H. Zwinger Papers - Biography”. Colorado College Library Special Collections. 2026年5月16日閲覧。
  4. ↑ “Ann Haymond Zwinger”. Our Land, Our Literature. 2026年5月16日閲覧。
  5. ↑ “Ann Zwinger (1925-2014)”. Sierra College Journal of Science and Natural History. 2026年5月16日閲覧。
  6. ↑ “Ann H. Zwinger Papers”. Colorado College Library Special Collections. 2026年5月16日閲覧。
  7. ↑ “Ann Zwinger (1925-2014)”. Sierra College Journal of Science and Natural History. 2026年5月16日閲覧。
  8. ↑ “An Interview with Ann Zwinger”. Project MUSE. 2026年5月16日閲覧。
  9. ↑ “Ann Haymond Zwinger, 1925–2014”. Orion Magazine (2014年9月5日). 2026年5月16日閲覧。
  10. ↑ “Ann Haymond Zwinger, 1925–2014”. Orion Magazine (2014年9月5日). 2026年5月16日閲覧。
  11. ↑ “Ann H. Zwinger Papers”. Colorado College Library Special Collections. 2026年5月16日閲覧。
  12. ↑ A Green River journal: Inspired by Ann Zwinger’s Run, River, Run | CWS Education https://cwseducation.ucdavis.edu/class/36/green-river-journal-inspired-ann-zwingers-run-river-run
  13. ↑ “Ann Zwinger quotes on observation”. Quote Sayings. 2026年5月16日閲覧。
  14. ↑ “Composing Nature – The Writing Instructor”. The Writing Instructor. 2026年5月16日閲覧。
  15. ↑ “Ann Zwinger quotes on observation”. Quote Sayings. 2026年5月16日閲覧。
  16. ↑ “Composing Nature – The Writing Instructor”. The Writing Instructor. 2026年5月16日閲覧。
  17. ↑ “Quotes by Ann Zwinger – Naturalist”. Explorumentary. 2026年5月16日閲覧。
  18. ↑ “Quotes by Ann Zwinger – Naturalist”. Explorumentary. 2026年5月16日閲覧。
  19. ↑ Ann Zwinger (1995). Downcanyon: A Naturalist Explores the Colorado River through the Grand Canyon. University of Arizona Press. ISBN 978-0816516148

外部リンク