ニクバエ科 Sarcophagidae
ゲンロクニクバエ♂
Parasarcophaga albiceps
分類
界 : 動物界 Animalia
門 : 節足動物門 Arthropoda
綱 : 昆虫綱 Insecta
目 : ハエ目(双翅目) Diptera
亜目 : ハエ亜目(短角亜目) Brachycera
下目 : ハエ下目 Muscomorpha
上科 : ヒツジバエ上科 Oestroidea
科 : ニクバエ科 Sarcophagidae
亜科

ニクバエ(肉蝿)はハエ目(双翅目)ニクバエ科(Sarcophagidae)に属するハエの総称。[1]

特徴

ほとんどの種の胸部背板に縦縞があることから、イエバエのようにイエバエ科で縦縞を持つハエと間違えやすい昆虫だが、イエバエより幾分大型で、またイエバエ科やヤドリバエ科の縦縞を持つものの縞がたいてい偶数の4本であるのに対し、ニクバエの縞は奇数の3本であることから、慣れれば一目で区別できる。

ニクバエ科にはヤドリニクバエ亜科(Miltogramminae)とニクバエ亜科(Sarcophaginae)の2亜科があり、これらには約100属が含まれる。ニクバエは同じハエ下目に属し、クロバエ類やキンバエ類のようにニクバエによく似た死肉食性の種が多いクロバエ科にかなり近縁で、同じヒツジバエ上科に属する。

習性

一般的に、ニクバエの成虫は卵胎生で、孵化寸前の幼虫の入った卵を動物の死体に産みつけ、すぐさま孵化した幼虫はそこで発育する。幼虫は典型的なウジで、肉の中で5~10日過ごし、その後土にもぐり、成虫になる。成虫になってからの寿命は多くの場合1ヶ月余りと考えられるが、成虫越冬する種などではずっと長くなる。

ニクバエのウジには同所的に見られる他の幼虫を捕食したり捕殺するものが知られているが、これは捕食される側の幼虫が小さくて競争者になったときが多いようである。

ニクバエの幼虫にはクロバエ科の幼虫と同様、様々な無脊椎動物の捕食寄生者となるものも多い。例えばカスミニクバエ類はバッタに寄生する。甲虫、陸貝、鱗翅目の幼虫(ことにテンマクケムシ)といった大型無脊椎動物を食べて育つものもある。日本産のものでは、クサニクバエが茨城県のマツカレハの幼虫によく寄生していることが報告されている。これらは生物学的防除に有用であると考えられている。最近、マングローブに生息する小型の巻貝類に非常に高頻度に寄生し、個体群動態に大きな影響を与えている種も報告されている。また、南米産の種の中にはカメの卵に捕食寄生する種さえ知られている。

ニクバエ類は幼虫・成虫のいずれも上記のように死肉や生きた動物組織のような動物質を食べるものが多く、かなり腐敗の進んだ状態を好むが、冷たくなってすらいない死体を好む種もいる。また、他にも動物の糞のような腐敗した排泄物を食べるものも知られている。例えば汲み取り式便所の便池はセンチニクバエなどの好発生地であり、センチニクバエのようにこうした環境に深く依存してきた種の中には便所の水洗化が進んだ地域で著しく減少しているものも知られている[2]。このため、ニクバエ類の種の多くは病原菌を媒介する衛生害虫となっている。また、糞食性の種の中にはきわめて狭食性のものもあり、中南米のヘリコニアやクズウコン科の Calathea 属などの茎の先端のまだ開いていない漏斗状の葉の筒を毎日日替わりでねぐらにするスイツキコウモリ科 Thyropteridae の一種スピックススイツキコウモリ Thyroptera tricolor が昼の休息時に排泄した糞のみを発生源にしているニクバエ Sarcofahrtiopsis thyropteronthos が知られている[3]。

利用

ニクバエの生活史は予測可能である。この事を用いて、遺体上のニクバエは警察などの捜査の手がかりとなる。ニクバエは、膨張するまで腐敗の進んだヒトや動物の死体に幼虫を好んで産みつける。

法医昆虫学者はニクバエが食べている死体がいつ死んだかを決定するために、老熟幼虫を採集して死んだ可能性の最も早い日付を逆算して推定するのである。そうやって、おおよその死亡日時がわかる。この事は、法医昆虫学者が遺体の条件と一致する人物が死亡日時近辺で失踪していたかどうか確かめることができるので、その遺体の身元が誰かを決定するのに有効である。

特定の昆虫は特定の状態の死体を好む。あるものはかなり分解の進んだ死体、さらには乾燥した死体ですら好む。このことによって法医昆虫学者の死亡日時推定が可能になる。全ての昆虫の生活史は予測可能なので、実際法医昆虫学者は全ての異なるタイプの昆虫の平均齢を逆算して死亡推定日時を得ているのである。

ニクバエの幼虫は、サシまたはサバムシという商品名で釣り用の餌として使われることもあり、衛生管理下で養殖も行われている。

分類

ヤブガラシの蜜を舐めるナミニクバエ♂(東京都新宿区)

以下に日本産ニクバエ科相を概観できるようリストを掲げた。しかし、本科の分類は時代や研究者などによってしばしば異なり、亜科の分け方では、4亜科に分ける考え方や2亜科しか認めない考え方などがある。属の扱いについてはさらに種々の立場があり、一例をあげるなら、シリアカニクバエなどが属する Parasarcophaga を独立の属として扱う場合もあれば、Sarcophaga属の亜属とする場合もある。このような研究者や文献間での食い違いは、一般の者には不便なものであり将来的には一致を見るべきだが、それぞれに根拠があっての不一致であると理解すべきである。

日本産ニクバエ科のリスト

Miltogramminae
Paramacronychiinae
Sarcophaginae

参考文献

1. https://www.pref.oita.jp/soshiki/12086/houhi-nikubae.html

2. https://www.pestcontrol-tokyo.jp/o-hae/o-hae_syurui.html#:~:text=%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%90%E3%82%A8%E3%81%AF%E4%BD%93%E9%95%B78,%E8%85%B9%E9%83%A8%E3%81%AF%E5%B8%82%E6%9D%BE%E6%A8%A1%E6%A7%98%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82&text=%E7%95%9C%E8%88%8E%E3%82%84%E9%B6%8F%E8%88%8E%E3%81%AE%E6%95%B7%E3%81%8D,5%E5%9B%9E%E7%94%A3%E5%8D%B5%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

3. https://www.google.com/search?q=%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%90%E3%82%A8+%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88&tbm=isch&chips=q:%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%81+%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%90%E3%82%A8+%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88,online_chips:%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E7%B4%A0%E6%9D%90:IuOFalCldW0%3D&rlz=1CAZNPK_enJP1041&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwix9pKut9L8AhVyE6YKHXM6BpIQ4lYoAnoECAEQJg&biw=1517&bih=730&safe=active&ssui=on#imgrc=lZ5X_FH0xE9W2M

4. https://www.e-c-c.co.jp/gaichu/hae/senchinikubae.html

脚注

  1. ↑ “センチニクバエ - Google 検索”. www.google.com. 2023年1月19日閲覧。
  2. ↑ センチニクバエの「センチ」は便所を指す語「雪隠(せっちん)」が訛ったもので、排泄物を食する性質に由来している。
  3. ↑ Pape, Dechmann; Dina, Vonhof; Smith, Maarten (2002). “A new species of Sarcofahrtiopsis Hall (Diptera: Sarcophagidae) living in roosts of Spix's disk-winged bat Thyroptera tricolor Spix (Chiroptera) in Costa Rica”. Journal of Natural History 36 (8): 991-998.

関連項目

外部リンク

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