ラズベリー

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ラズベリー
分類
界 : 植物界 Plantae
門 : 被子植物門 Magnoliophyta
綱 : 双子葉植物綱 Magnoliopsida
目 : バラ目 Rosales
科 : バラ科 Rosaceae
亜科 : バラ亜科 Rosoideae
属 : キイチゴ属 Rubus
亜属 : R. (Idaeobatus)
和名
覆盆子
英名
Raspberry
種

数十種

ラズベリー(英語: raspberry)は、バラ科キイチゴ属 (Rubus) に属するいくつかの種の低木、およびその果実。分類学的には亜属 Idaeobatus のブラックベリーと並ぶ栽培品種群に相当する[1]。本格的なフランス料理では、フランボワーズ(フランス語: framboise)とも呼ばれる。

単独でラズベリーを意味した古い方言 rasp に berry(ベリー)を加えた語である。

ラズベリーと呼ばれる一群のキイチゴは、多くは栽培種でヨーロッパキイチゴあるいは、アメリカ種からの作出品種である[2]。実の色によってレッドラズベリー、イエローラズベリー、ブラックラズベリーなど多くの種類がある[2]。

歴史

複数のRubus種の小堅果が、新石器時代以降のヨーロッパの遺跡から出土しているという報告が、コリン・レンフルー(1973年)、ダニエル・ゾーハリー及びマリア・ホップ(1994年)によりされている[3]。

イスラエルの後期旧石器時代の遺跡Ohalo IIでは、キイチゴ属の種子が大量に出土しており、これらの果実が当時、Ohalo IIの住民によって食された可能性がある。Rubusの果実は多汁で運搬が困難であるため、野外で摘みながら消費されることが多い。わざわざ住居に持ち帰ったのは、乾燥させて貯蔵する目的であったと考えられる[3]。

キイチゴ属の植物は果実に甘みと酸味があり、世界各地で人間の食用にされてきたが、特にヨーロッパ人に好まれ、ヨーロッパ原産、及び彼らが進出した先、特に北米大陸原産の野生種がヨーロッパ系を中心とする人々によって、盛んに交配、品種改良を施されて果樹としての栽培品種群を生み出してきた。

ラズベリーは、16世紀から17世紀ごろにイギリスで栽培化された。最初の栽培の記録は同国の植物学者・薬草学者のウィリアム・ターナーが1548年に著した『The Names of Herbes』にある記述とする文献がある。当時は庭園でのごく小規模な栽培が中心だったという[4]。

18世紀後半にはいくつかの品種が北米に導入されたという記録が『The small fruits of New York』にあるが、耐寒性の低さがネックとなり大規模には栽培されなかった[4]。北米の種は19世紀に栽培化され、ヨーロッパに移入されたり交配されたりした。

種類

イエローラズベリーまたは、ゴールデンラズベリーと呼ばれている種。
Raspberry-Flower
ラズベリーの花

ラズベリーやフランボワーズとは、本来はヨーロッパに自生するラズベリーを指していたのであろうが、果樹としては特にヨーロッパキイチゴ(Rubus idaeus subsp. idaeus)を原種や交配親とする栽培品種を指すことが多く、また広義には果床が木質化し、熟すと果床上に形成される集合果と果床が分離するキイチゴ属および栽培品種群全体をラズベリーやフランボワーズの名で呼ぶ。

この観点に立てば、日本に自生するキイチゴ属の植物は全てがラズベリーに分類されることになる。現に、日本にもヨーロッパキイチゴの亜種である、

  • エゾイチゴ(R. idaeus subsp. melanolasius)
  • ミヤマウラジロイチゴ(R. idaeus subsp. nipponicus)
  • エゾイチゴの変種のカナヤマイチゴ(R. idaeus subsp. melanolasius f. concolor)
  • ミヤマウラジロイチゴの変種のシナノキイチゴ(R. idaeus subsp. nipponicus f. marmoratus)
  • イシヅチイチゴ(R. idaeus subsp. nipponicus var. shikokianus)

が分布する。 

クロミキイチゴ Rubus occidentalis

果樹としてはヨーロッパキイチゴを原種とするもの以外に、北米大陸原産の、

を原種とするものが重要である。これらの選抜や交配で生み出された品種群は、果実の色で赤ラズベリー、黒ラズベリー、紫ラズベリーに大別されるが、黒ラズベリーをキイチゴ属のもうひとつの重要な群であるブラックベリーと混同しないように、注意が必要である。

主な種

エビガライチゴ Rubus phoenicolasius

Idaeobatus 亜属の主な種をあげる。ただしこのほかにも、名前にラズベリーを含む種は多い。栽培化されているのはこれらのうちごく一部である。

栽培

生産量 (トン) 2003-2004
FAOSTAT (FAO)
ロシアの旗 ロシア95 00026 %110 00028 %
セルビアの旗 セルビア79 47121 %79 18020 %
アメリカ合衆国の旗 アメリカ48 53513 %50 00013 %
ポーランドの旗 ポーランド42 94112 %42 00011 %
ドイツの旗 ドイツ20 6006 %20 5005 %
ウクライナの旗 ウクライナ19 7005 %20 0005 %
カナダの旗 カナダ14 2364 %13 7004 %
ハンガリーの旗 ハンガリー9 0002 %10 0003 %
イギリスの旗 イギリス8 0002 %8 0002 %
フランスの旗 フランス6 8302 %7 5002 %
その他27 6037 %27 8907 %
合計 371 916100 % 389 061100 %

栽培においては最も簡単な部類に入る果樹である。樹高は低く、土質を選ばないため、家庭でも手軽に栽培できる[2]。

日当たり、風通しの良い場所を好む。剪定は、一季なり性は冬・夏の年2回、二季なり性は冬季に行う。7月頃の収穫が終わった枝は冬になると枯死するので、早めに基部から切除する。冬季剪定は、12月から2月に前年枝(2年枝)を根元から70〜80cmのところで切る。この残した枝の側芽が伸びて、翌年果実が実る[5]。

農薬を一切使わずに栽培できるが、風通しが悪いと灰色カビ病が発生するため、風通しの良いところで管理する。また、ハダニやアブラムシの被害にあうことがあるほか[5]、コガネムシの食害や、地下茎による過度の繁殖に気をつける必要がある。

灰色カビ病に罹病した場合はその果実の除去を行う。無論、営利栽培において商品価値を向上させるためにはビニールハウスなどの利用が好ましい。

国内における営利栽培はラズベリーやブラックベリーなどがほとんどである。黒ラズベリーの栽培も見られるが、紫ラズベリーは皆無である、尚苗木の流通も同じである。

食用

出荷されるラズベリー

品種により鮮やかな赤色や紫、黒紫色で直径1 - 2センチメートル程度の果実をつけ、優れた風味・甘味・酸味がありジャムや洋菓子、ハーブティー、リキュールなどによく用いられる。ただし果実は日持ちが悪く、冷蔵しても一日と保たないため、まとまった保存は冷凍する必要がある[2]。

果実は小さな球形の実の集合体で、一つ一つに種子が入っている。種はゴマ程度の大きさで、種ごと食べられるが、種は固くてやや口当たりが悪い。この集合果は木質の果床からまとまった状態で外れるため、球状の集合果の内側に果床の跡の空洞がある。

日本では生の果実が店頭に並ぶことは少ないが、ケーキの飾りなどでよく見られる。店頭ではジャム、シロップ煮の缶詰、生の果実を冷凍したものなど、主に輸入品が入手可能である。

香り

ラズベリータルト

ヨーロッパキイチゴ Rubus idaeus の主な芳香族化合物としてラズベリーケトンが含まれる[6]。キウイフルーツ、桃、リンゴ、カエデ、松の木の樹皮などにも含まれる。香料として用いられる[7]。なお、ラズベリーケトンは高砂香料工業株式会社の商品名である[7]。

薬効

野生の赤ラズベリーの葉を約473mlの水に対して約3.9gを浸した浸出液には、下痢を抑える作用があるという[8]。

名称

ヨーロッパでは、古代ギリシャ・ローマ時代から中世にかけて、キイチゴ類(現在のRubus属)を指す語は非常に広範であった。

具体例として、ギリシャ語でイバラやキイチゴの茂みを指すbatosや、ラテン語でイバラ状の植物全般を指すrubusなどがあり、古英語や中世のゲルマン語系では bramble(イバラ)、bus(茂み)のような語が使われ、赤い実・黒い実を特に区別せず「イバラの実」として扱っていた。

その後、ローマ軍の医師であったディオスコリデスの著書である『De Materia Medica』の第4巻で赤い実のもの(後のraspberry)と黒い実のもの(後のblackberry)が区別され[9]、以来個別の名称が定着したと考えられている。

1440年頃に、甘い薔薇色のワインを指す言葉として、raspe/raspis/raspise という形が当時の辞書である『Promptorium Parvulorum』などの文献に現れる。当初はこのraspise単独でも果実を指していたが、英語圏ではstrawberryのように果実名にberryを付ける傾向が強かったため、複合語化が進んだ。これがのちに、raspberry という形に変化したようである。

学名のRubus idaeusは、カール・リンネが1753年に『Species Plantarum』で正式に記載したことに由来する。これは前述のRubusと、ギリシャ神話に登場するイダ山(Mount Ida)を意味するidaeusを合わせたものである。

これによりRubus idaeus L.という現在の学名が確立し、ヨーロッパ原産の赤いキイチゴを特に指すようになった。

脚注

出典

  1. ↑ 日本サプリメント協会『体の悩みを解決!ずっと元気に!サプリメント健康時点』集英社、212ページ、2015年、ISBN 978-4-08-333142-8
  2. 1 2 3 4 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、88頁。ISBN 4-12-101834-6。
  3. 1 2 “Plant-food preparation area on an Upper Paleolithicbrush hut floor at Ohalo II,Israel”. Journal of Archaeological Sciencejournal: 2406. (2008).
  4. 1 2 『The small fruits of New York』Albany, J. B. Lyon、1925年。
  5. 1 2 “ラズベリーとは?育て方や種類、収穫や食べ方、キイチゴとの違いまで”. LOVEGREEN (2021年3月26日). 2025年3月4日閲覧。
  6. ↑ Chie Morimoto, Yurie Satoh, Mariko Hara et al. (2005-5). “Anti-obese action of raspberry ketone”. Life sciences 77 (2): 194–204. doi:10.1016/j.lfs.2004.12.029. PMID 15862604.
  7. 1 2 “香りの科学 第6回目”. 大林素子の香りラボ (2018年5月21日). 2025年3月4日閲覧。
  8. ↑ 『MATERIA MEDICA, PHARMACY, AND THERAPEUTICS.』P.Blakiston, Son&co.、1887年、334頁。
  9. ↑ Hummer, Kim. “Rubus Iconography: Antiquity to the Renaissance2026-09-14” (PDF). pp. 91–92. 2026年9月14日閲覧.

関連項目

外部リンク

  • ラズベリーの産地 栽培面積 収穫量 出荷量|果物統計 グラフ - 果物情報サイト 果物ナビ
  • ラズベリーとは|育て方がわかる植物図鑑 - みんなの趣味の園芸(NHK出版)