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創世記

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
創世記
Genesis
創世記第1章の死海写本断片
基本情報
宗教 ユダヤ教、キリスト教
作者 モーセ(伝承)
複数の匿名書記官(高等批評)
言語 ヘブライ語
時期 紀元前16–前12世紀(伝承)
紀元前10–前5世紀(高等批評)
章節 50
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『創世記』(そうせいき、(ヘブライ語:בראשית、ギリシア語:Γένεσις、英語: Genesis)は、古代ヘブライ語によって記された、ユダヤ教とキリスト教の聖典であり、聖書(旧約聖書)正典の最初の書である。ユダヤ教・キリスト教の伝統ではモーセが著者であるとされている。いわゆるモーセ五書は、ユダヤ教ではトーラーと呼ばれている[1]。

『創世記』はヘブライ語では冒頭の言葉を取ってベレシート(ヘブライ語: bereshit、בראשית)と呼ばれており、これは「はじめに」を意味する。また、ギリシア語の七十人訳では、2章4節[注 1]からとって「γένεσις(ゲネシス)」と呼ばれており[2]。「起源、誕生、創生、原因、開始、始まり、根源」の意である[3]。

著者・成立年代

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創世記本文に著者の名前は記されていないが、ユダヤ教及びキリスト教の伝統(フィロン、ヨセフス、ミシュナー、タルムード等)では、創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の五書をモーセによるものとしている(モーセ五書)。

しかし、17世紀に哲学者バールーフ・デ・スピノザやトマス・ホッブズらによってモーセ単独著者説に疑義が呈され、リシャール・シモン(フランス語版)は五書が長期間に渡って複数の著者・編集者によって形成されたと提唱した[4]。

19世紀末から20世紀末にかけて、文書仮説がほとんどの学者によって受け入れられていた。21世紀の高等批評ではこの立場が修正され[5]、モーセ五書は、紀元前10世紀頃からの口伝や断片的文書の蓄積を経て、様々な資料を基に複数の書記官によって段階的に統合され、紀元前6世紀から紀元前5世紀のバビロン捕囚〜帰還期にかけて、現在の形にまとまったと考えられている[6]。

構成

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光と闇の分離

原初史

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第1章から第11章までの部分は原初史(独: Urgeschichte、英: Primeval history)と呼ばれ、先史時代に相当する。各記述は、トレドット(ヘブライ語: תּוֹלְדֹת、toledot、「系図」の意)によって構成される。

  • 1章1節~2章3節:天地創造。P資料の創造物語。
  • 2章4節~3章24節:アダムとエバ、失楽園。Y資料の創造物語。
  • 4章1節~26節:カインとアベルの物語。
  • 5章1節~32節:アダムの系図。アダムよりノアまで。
  • 6章1節~4節:神の子と人間の娘の結婚。
  • 6章5~8節:人間の悪と善良なノア。
  • 6章9節~9章29節:ノアの洪水物語。
  • 10章:ノアの系図。セム、ハム、ヤペテに至る。
  • 11章1節~9節:バベルの塔。
  • 11章10節~26:セムとテラの系図。

族長史

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第12章から第36章までは族長史(独: Erzelternerzählungen、英: Patriarchal age)と呼ばれる。

ヨセフ史

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37章以降はヨセフ史(独: Josefsgeschichte)と呼ばれる。

  • 37章-38章:夢見るヨセフ
  • 38章-41章:エジプトでのヨセフ
  • 42章-45章:ヨセフと兄弟たち
  • 46章-50章:その後のヨセフ

その後

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ユダヤ人の歴史の物語は、聖書で『創世記』の次に置かれている『出エジプト記』へ続いていく。

内容

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天地創造

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光の創造(ギュスターヴ・ドレ画)
初めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。神は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。神は光を見て、良しとされた。
—創世記1章1–4節(新共同訳)

創世記では、神は第一日から第六日をかけて天地万物を創造し、第七日(サバト)に休まれたとされる。(1–2章)

アダムとエバ

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アダムとイヴ(アルブレヒト・デューラー画)

「神は、土の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れた。人はこうして生きる者となった[α]」とされている。神は人をエデンの園に住まわせ、その全てを管理させたが、「善悪の知識の木からは、決して食べてはならない、食べると死んでしまう[β]」と言われた。神はアダムに合う助ける者を造ろうと、人から肋骨を取って「女」を造った[γ]。

ところが蛇が女を唆して、禁じられた木の実を食べるようにした。女は男にも食べさせた。二人はその実を食べると、「目が開け、自分たちが裸であることを知った」。神はこのことを知ると、女は孕みの苦しみを、男は食物を得る苦しみを受けるようになる、と言われた[δ]。アダムは女をエバ(命)と名付けた。アダムとエバはエデンの園から追放された。(3章)

カインとアベル

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アダムとエバの子であるカインとアベルは、それぞれ羊を飼う者、地を耕す者となった。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。カインは弟アベルを野で殺した。(4章)

ノアの方舟

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ノアの箱舟(パリ・サン・エティエンヌ・デュ・モン教会(フランス語版))

神は、人が地上に増え始め、悪が増え始めたのを見て心を痛め、地上から人を拭い去ろうと考えた[ε]。しかしノアは無垢な人物であったので、神は彼に方舟を造らせて、彼を救われた。洪水は40日間地上を覆った。150日後に水は減り、方舟はアララト山の頂に留まった[ζ]。ノアが鳩を放すと、二度目にオリーブの葉を咥えて帰ってきた。(6–8章)

バベルの塔

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アブラハム

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イサクの燔祭(レンブラント画)

ノアの子孫アブラムは、神からカルデアのウルからカナンの地へ行くよう命じられた。そこで神はアブラムに、彼の子孫は星の数ほど多くなり、彼らは異国の地で四百年間苦しんだ後にナイル川からユーフラテス川までの土地を受け継ぐ、と示した。(12–15章)

サラは高齢のため、アブラハムにエジプト人の女奴隷ハガルを第二の妻として迎えさせ、アブラハムはハガルによってイシュマエルをもうけた。神はアブラハムとの契約の印として、すべての男子に割礼を施すよう定めた。その際、神は、アブラムの名をアブラハムに、彼の妻サライの名をサラに改めさせた。(16–17章)

神は、ソドムとゴモラの民の罪のために、これらの街を滅ぼそうと計画した。アブラハムは、もしそこに十人の義人が見つかれば、街を滅ぼさないよう願った。十人の義人もいなかったため街は滅ぼされることになり、天使たちはアブラハムの甥ロトとその家族をソドムから連れ出した。振り返ってはならないと命じられたにもかかわらず、ロトの妻は振り返って街を見ようとしたため、塩の柱に変えられた。(18–19章)

神はサラに息子を授け、イサクと名付けるように告げた。その後、サラはイシュマエルとその母ハガルを荒野へ追い出したが、神は彼らを救い、イシュマエルを大いなる国民にすると約束した。神はアブラハムにイサクを犠牲に捧げるよう命じることで彼を試した(イサクの燔祭)。アブラハムが息子にナイフをかけようとした時、主の使いが彼を制した。神はアブラハムに再び無数の子孫を約束した。(21–22章)

ヤコブ

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天使とヤコブの闘い(レンブラント画)

イサクの妻リベカはエサウとヤコブの双子を産んだ。エサウは長子権を持つはずだったが、その軽率さから、一杯の粥と引換に長子権をヤコブに譲った。リベカは、ヤコブが長子として祝福を受け、相続者となるように計った。エサウとヤコブは後に和解した。(24–35章)

ヤコブは井戸で妻ラケルに出会った。彼はラケルの父ラバンの許で14年間仕え、ラバンの長女レアとラケルを妻に迎えた。ヤコブは神(またはその使い)と格闘した後、名をイスラエルと改められた。(32章)

ヨセフ

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ヨセフに気付く兄弟たち(ウルバン・ブルジョワ(フランス語版)画)

ヤコブの12人の息子たちの中で最も気に入られていたヨセフは、他の兄弟たちの嫉妬によって、密かにエジプトへ奴隷として売られた。ヨセフは無実の罪で投獄されるなど多くの試練に遭ったが、耐えて信仰を貫いた。数年後、ファラオが飢饉についての夢の解釈をヨセフに依頼し、ヨセフが神の助けによってこれを解き明かしたことで、ファラオの信任を得て、ファラオはヨセフをエジプトの二番目の地位に就けた。その後、飢饉がカナンの地にも及んだ際、ヨセフは、エジプトに穀物を求めて来た兄弟たちと再会するが、彼らはエジプトの高官がヨセフだとは気付かなかった。ヨセフは彼らを試した後、その正体を明かし、彼らの昔の行いを許した。ヨセフはその兄弟と父ヤコブをエジプトに迎え入れた。(37–50章)(以降、出エジプト記に続く)

影響

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思想

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人間観

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  • 人の尊厳(*議論あり) – 宗教歴史学者のエレーヌ・ペイゲルス(英語版)によれば、創世記の「人(アダム)が"神"の姿に似せて創造された」という物語は、人間の尊厳と道徳的価値に関する後世の観念に重要な影響を与えてきた[7]。この物語は、社会的地位や政治的立場にかかわらずすべての人間の内在的価値を肯定するものとする解釈を与える根拠となり、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の根本原理の一つとなった(神の前の平等)[7]。ペイゲルスは、この人間観が、啓蒙時代の自然権や法の下の平等に関する議論を含め、後の西洋の倫理学・政治思想に影響を与えたと指摘している[7]。

文化芸術

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本文

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外部リンク

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関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ↑ "Αὕτη ἡ βίβλος γενέσεως οὐρανοῦ καὶ γῆς, ὅτε ἐγένετο"(七十人訳)、「これが天地創造の由来である。」(口語訳)

一次資料対応箇所

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  1. ↑ 創世記2章7節
  2. ↑ 2:17
  3. ↑ 2:22
  4. ↑ 3:14–19
  5. ↑ 6:7
  6. ↑ 8:4

出典

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  1. ↑ 「創世記」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』。コトバンクより2022年2月2日閲覧。
  2. ↑ Carr 2000, p. 491.
  3. ↑ “Γένεσις - LSJ The Online Liddell-Scott-Jones Greek English Lexicon” (英語). Thesaurus Linguae Graecae. 2017年12月12日閲覧。
  4. ↑ Van Seters, John (1998). "The Pentateuch". In Steven L. McKenzie, Matt Patrick Graham (ed.). The Hebrew Bible Today: An Introduction to Critical Issues. Westminster John Knox Press. ISBN 978-0-664-25652-4. p. 5.
  5. ↑ Longman, Tremper (2005). "How to Read Genesis. How to Read Series. InterVarsity Press. ISBN 9780830875603. p. 49.
  6. ↑ Oliver, Simon (2017). "Creation". Bloomsbury. ISBN 9780567656117. pp.11–12.
  7. 1 2 3 Pagels, Elaine. "The Moral Foundation of America." Atlantic, 2025, v. 336, n. 5. P. 96. 9 October 2025.

参考文献

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  • Carr, David M. (2000). Freedman, David Noel; Myers, Allen C.. eds. Eerdmans Dictionary of the Bible. Amsterdam University Press. ISBN 9780567372871. https://books.google.co.jp/books/about/Eerdmans_Dictionary_of_the_Bible.html?id=P9sYIRXZZ2MC&redir_esc=y 
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