抽象代数学において、行列環 (matrix ring) は、行列の加法および行列の乗法のもとで環をなす、行列の任意の集まりである。環を成分に持つ n×n 行列全体の集合や無限次行列環 (infinite matrix ring) をなす無限次行列のある部分集合は行列環である。これらの行列環の任意の部分環もまた行列環である。
R が可換環のとき、行列環 Mn(R) は行列多元環 (matrix algebra) と呼ばれる結合多元環である。この状況において、M が行列で r が R の元であれば、行列 Mr は行列 M の各成分に r をかけたものである。
行列環は単位元をもたない環R上でも作ることができるが、ここでは終始 R は単位元 1 ≠ 0 をもつ結合的環であると仮定する。
D を行列環 Mn(R ) の対角行列全体の集合、すなわち 0 でない成分があればすべて主対角線上にあるような行列全体の集合とする。すると D は行列の加法と行列の乗法で閉じており、単位行列を含むので、それは Mn(R ) の部分多元環である。
R 上の多元環として、D は R の n 個のコピーの直積に同型である。それは次元 n の自由 R-加群である。D の冪等元は対角成分が 0 か 1 であるような対角行列である。
R が実数体のとき、M2(R ) の対角部分環は分解型複素数 (split-complex number) に同型である。R が複素数体のとき、対角部分環は bicomplex numbers に同型である。R = ℍ, 四元数の可除環であれば、対角部分環は split-biquaternions の環に同型であり、1873 に William K. Clifford によって示されている。
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