角運動量

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角運動量
angular momentum

フィギュアスケートのY字スピン。腕を下げると回転速度が落ちる。腕の幅×回転速度が角運動量で、それは保存する
量記号 L
次元 M L2 T−1
種類 擬ベクトル
SI単位 ニュートンメートル秒 (N·m·s)
プランク単位 有理化されたプランク定数 (ℏ)
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古典力学

運動の第2法則
歴史(英語版)

角運動量(かくうんどうりょう、(英: angular momentum)は運動量のモーメントである[1]。

定義

基準点 [注釈 1]に対する物体の位置を 、運動量を とし、クロス積を とする。物体の まわりの角運動量 は次で定義される[1]:

性質

大きさ

角運動量の大きさ L は

と表される。ここで、θ は r と p のなす角を、r, p はそれぞれ r, p の大きさを表す。

位置と速度のクロス積の質量倍

角運動量は、位置と速度 のクロス積をとって質量 を掛けたものに等しい。

慣性モーメントと角速度の積

質点の角運動量は慣性モーメント と角速度 の積に等しい。

座標原点の移動

角運動量は、その定義から座標原点の選択に依存する。原点を位置 a へ移動した座標系を考える。新たな座標系における量を ' を付けて表すものとすれば、r' = r − a, p' = p であり

となる.

総和が全角運動量

質点系をなす各質点の角運動量を総和すると全角運動量となる[2]。

時間変化率が合力のモーメント

角運動量の時間変化率は物体におよぼされる合力のモーメントと一致する。

時刻を 、静止する基準点を 、物体におよぼされる合力を とする。クロス積の微分法則・ニュートンの運動方程式・速度と運動量の平行さ・力のモーメントの定義より、角運動量の時間微分は、

と変形できる[3]。すなわち まわりの角運動量の時間変化率は まわりの合力のモーメントに等しい。

合力のモーメントがゼロで維持

合力のモーメントが のとき、角運動量は維持される。

同じ基準点の角運動量と合力のモーメントでは、角運動量の時間変化率が力のモーメントと一致する。そのため合力のモーメントが のとき角運動量の時間変化率はゼロ、すなわち角運動量は維持される。

合力がゼロで維持                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

合力が のとき、角運動量は維持される。

合力が のとき より角運動量は時間変化しない。なお、このとき運動量も時間変化しない。

例えば、物体が等速度運動する場合は なので角運動量は保存される。これは「外積の大きさは平行四辺形の面積に等しい」という幾何的特性からも直感的に理解できる。

合力が動径方向で維持

合力が動径方向を向くとき、角運動量は維持される。

平行なベクトルのクロス積は である。よって合力 が動径方向を向くすなわち位置 と平行なとき、 より角運動量は時間変化しない[4]。なお、このとき より運動量は必ず変化する。

例えば、等速円運動では合力が常に中心力であるため、円中心 まわりの角運動量は保存される[4]。なお、このとき運動量は向きが常に変わるため保存されない。

回転運動と角運動量

固定された回転軸をもつ系に対して、力を作用させた時の物理量の関係。力のモーメント τ と、位置 r と力 F との関係(上の式)、および角運動量 L と位置 r と運動量 p との関係(下の式)。

角運動量は回転運動と深く関係している物理量である。ただし、角運動量自体は回転運動をしていなくとも定義される物理量である。

惑星間に働く万有引力は中心力であり、したがって、惑星の角運動量は保存される。保存則は、ケプラーの第2法則の「面積速度一定」と密接な関わりがある。 時刻 t における位置ベクトル r(t) と、微小な時間 dt が経った後の位置ベクトル r(t + dt) が作る微小な三角形の面積は

である。 従って、面積速度は

となり、面積速度が一定ならば、角運動量も一定となる。

量子力学での角運動量

量子力学では、角運動量は以下の交換関係を満たす演算子 として定義される。

あるいは、3つの式をまとめて

は完全反対称テンソルである。これらの交換関係は角運動量代数と呼ばれる。

この角運動量の性質を調べると、

の二つの部分に分けられ、それぞれが角運動量代数を満たす。

軌道角運動量 は、 のように位置と運動量の外積で表すことができ、その固有値が整数のみに限られる。

スピン角運動量 は、位置と運動量では表現することができず、その固有値が整数に加えて半整数も許される。

特殊相対性理論での角運動量

特殊相対性理論においては二階テンソルとして定義される。

ここで,四元位置,四元運動量,および質量モーメントは次式で定義される。


対称性との関係

角運動量は空間の等方性(回転対称性)に対応する保存量である。空間の一様性(併進対称性)に対応する保存量である運動量、時間の一様性に対応する保存量であるエネルギーとともに、基本的な物理量である[5]。それぞれ「角運動量保存の法則」、「運動量保存の法則」、「エネルギー保存の法則」に関連づけられる。

脚注

注釈

  1. ↑ しばしば原点が選ばれるが、これに限定されない。

出典

  1. 1 2 運動量のモーメント ... を,( を測る基準点に関する)角運動量という.(小出 1997, p. 52)
  2. ↑ 質点系の(全)角運動量を ... とする(小出 1997, p. 63)
  3. ↑ 一般の運動では ... ベクトルを使って ... と表される(小出 1997, pp. 52–53)
  4. 1 2 中心力では と が平行 (または反並行) なので であり,したがって は一定に保たれる.(小出 1997, p. 53)
  5. ↑ ランダウ=リフシッツ物理学小教程

参考文献

  • 戸田, 盛和『力学』岩波書店〈物理入門コース〉、1982年。ISBN 4-00-007641-8。 
  • 小出, 昭一郎『物理学(三訂版)』(58版)裳華房、1997年。ISBN 978-4-7853-2074-4。 
  • L.D.ランダウ、E.M.リフシッツ 著、水戸巌・恒藤敏彦・廣重徹 訳『力学・場の理論 : ランダウ=リフシッツ物理学小教程』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2008年。ISBN 978-4-480-09111-6。 

関連項目