カイラサウルス
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復元画 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 前期白亜紀バレミアン - アプチアン | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| Kayrasaurus Liao et al., 2026 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| タイプ種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| Kayrasaurus changliensis Liao et al., 2026 |
カイラサウルス[1](学名:Kayrasaurus)は、中華人民共和国に分布する下部白亜系のバレミアン階からアプチアン階に相当する義県層から化石が産出した、絶滅したテリジノサウルス類の属。2026年に頭骨を含むほぼ完全な骨格に基づいて命名されたタイプ種Kayrasaurus changliensisのみを含む単型の属である。K. changliensisのタイプ標本を構成する骨は大部分が関節しているが、2次元的に平坦化している。後肢および骨盤の大部分は発見されていない。全長は3.6メートル、体重は117 - 274キログラムと推定され、熱河層群において知られるテリジノサウルス類としては最大の動物である。他のテリジノサウルス類と同様に顎の前部に歯を持たないが、上下の顎の残りの部分において細かな歯が密に配列する点、また他のテリジノサウルス類よりも下顎の歯が多い点が特異的である。頸椎は長く伸び、前肢の鉤爪は大型かつ強く湾曲する。系統樹においては、同じく義県層から化石が産している同時期のベイピャオサウルスやジアンチャンゴサウルスとの中間的位置に配置される。
発見と命名
カイラサウルスの化石は中華人民共和国遼寧省北票市において義県層の露頭で発見された。当該標本は北京の中国科学院古脊椎動物古人類学研究所に所蔵され、そこでDing Xiaoqingによるプレパレーションを受けた。当該標本IVPP V 18957は頭骨を含むほぼ完全な骨格で構成されており、頭骨や脊柱を含む骨格の大部分が関節しているものの、化石化の過程における変形を受けて潰れている。前肢の中手骨および手根骨の大多数、後肢の全体、骨盤の大部分、および尾の先端は失われている[2]。
Liao et al. (2026)により、IVPP V 18957をホロタイプ標本としてテリジノサウルス類の恐竜の新属新種Kayrasaurus changliensisが命名された。属名はテュルク系民族の神話に登場する創造神Kayraと古代ギリシア語で「トカゲ」を意味するσαῦρος (saûros)に由来する。神格であるKayraは、同じくテリジノサウルス類であるエルリコサウルスの属名の由来となった死の神Erlikの父とされる。種小名はタイプ産地を含む地域の三国時代における呼称Changliに由来する[2]。
特徴

大きさと年齢
カイラサウルスは中型のテリジノサウルス類であり、全長は少なくとも3.6メートルに達した。恐竜の体重推定値は大腿骨周囲長を用いて算出されるが、カイラサウルスは大腿骨が保存されていないため、大腿骨を保存している近縁なテリジノサウルス類に基づいて体重117 - 274キログラムと推定されている。これらの計測値は熱河層群から化石が産出しているテリジノサウルス類の中で本属に次いで大型であるベイピャオサウルス(全長2.2メートル)を上回るものである。ただし、カイラサウルスは熱河層群における最大のテリジノサウルス類でありながら、既知の標本の個体は死亡時点で成熟しきっていなかった可能性が高い。頸椎・胴椎・前位尾椎の神経棘と椎体との間に縫合線が開いていること、頭骨の矢状線に沿った左右の骨が完全に癒合していないことから、亜成体の個体成長段階にあったことが示唆されている[2]。
頭骨
ホロタイプ標本の頭骨は化石の形成過程で平坦化しており、コンピュータ断層撮影では厚さわずか3 - 5ミリメートルであることが判明している。眼窩は大型かつ丸みを帯びており、外鼻孔もまた大型であるが前後に長く伸びていない。前上顎骨および上顎骨はその全長に沿って小型の孔を持つ。前上顎骨は完全に歯を欠いているが、上顎骨が歯を欠いている部分は前側の約28%のみである。上顎骨には約32個の歯槽が存在しており、これらは非常に小型で、浅く、密に配列しており、1センチメートルあたり3.5個から4個の歯槽が存在する。左右の上顎骨にはそれぞれ1本の歯が保存されており、テリジノサウルス類に典型的な皮針形の形状が認められる。歯骨は下側に湾曲した下顎結合を持ち、ファルカリウス以外の全てのテリジノサウルス類と共通する。歯骨は前側の5ミリメートルの範囲に歯が存在せず、その後側には少なくとも45個の小型で密の歯槽が存在する。これは本属が他のテリジノサウルス類よりも多くの歯を下顎に有していたことを意味しており、下顎の歯が40本未満である近縁なベイピャオサウルスやアラシャサウルスおよびエシャノサウルスを上回る。カイラサウルスの歯骨歯は歯骨の前方三分の二の領域に限られており、多くのテリジノサウルス類と共通するが、より広範囲に歯のある領域が広がるエルリコサウルスと異なる。カイラサウルスの歯の多くは大きさが似通っているが、歯槽の大きさから、前側の歯ほど大型であったことが示唆される。これらの歯はわずかに後側に向いており、また皮針形をなし、狭窄された歯頸部や単純な鋸歯を持つ[2]。
鼻骨は他のテリジノサウルスのものと比較してより頭骨の後部へ伸び、眼窩の中心点付近で前頭骨と接する。関節した頭骨が知られている他のテリジノサウルス類(エルリコサウルスやジアンチャンゴサウルス)は鼻骨と前頭骨とが眼窩の前で接する。前上顎骨と接する鼻骨の前端は二叉分岐しており、これはカイラサウルスの固有派生形質の1つである。カイラサウルスのその他の標徴形質には、下顎の後部に開口する外側下顎窓の形状がある。他のテリジノサウルス類の外側下顎窓は狭いか、あるいはスリット状であるが、カイラサウルスのものは前側が突出して後側が上下に深くなっており、三角形に近い輪郭を示す[2]。
椎骨と肋骨
ホロタイプ標本には10個の頸椎が関節した状態で保存されており、これは近縁なジアンチャンゴサウルスと同数である。より後の時代の派生的なテリジノサウルス類は頸椎数が増加しており、ネイモンゴサウルスは14個もの頸椎を持つ。神経棘は低く、上端が丸みを帯びる。椎体の外側面には孔が存在しており、含気化が示唆される。これらの椎骨は長く伸びており、最も短い頸椎骨であっても最も長い胴椎骨よりも長く、これはカイラサウルスの固有派生形質である可能性がある。頸肋は細長く、部分的に癒合している対応する椎骨と同程度の長さである[2]。
胴椎は10個が保存されており、大多数は頸椎および仙椎を伴って関節している。第3胴椎と第4胴椎、および第8胴椎と第9胴椎との間には間隙が存在する。孤立した胴椎骨も関連して発見されているため、これが空隙を埋めていた可能性が高く、この場合少なくとも11個の胴椎が存在したことが示唆される。ジアンチャンゴサウルスのように12個の胴椎骨が存在した可能性も高い。含気化の証拠は保存されていない。近縁なベイピャオサウルスは一連の胴椎のうち4個が癒合しているが、そのような特徴はカイラサウルスに認められない。神経棘は複雑なラミナと窩に覆われており、他のテリジノサウルス類と同様である。神経棘は全体として上下に高くかつ左右に狭く、前側の神経棘は丸みを帯びて後背側に傾くが、後側の神経棘はより長方形に近い形状となり前後に拡大する。肋骨は遠位部分が不完全に保存されており、ベイピャオサウルスのものよりも顕著に頑強である[2]。
仙椎は癒合した5個の椎骨から構成されており、それらの神経棘は互いに区別が不可能である。この形質状態はエニグモサウルスやNothronychus graffamiと共通する。第4仙椎の椎体は前位の椎体と完全には癒合しておらず、個体発生段階において椎体よりも早期に神経棘が癒合することが示唆される[2]。
仙椎以降では、関節した32個の尾椎からなるほぼ完全な尾椎が保存されている。最遠位部は失われており、ベイピャオサウルスと同様の尾端骨状の構造が存在したか否かは不明である。より派生的なテリジノサウルス類は尾椎数が減少して30個以下となっており、尾椎数の減少はテリジノサウルス類の進化の傾向であったことが示唆される。含気化は確認されていない。最前位の8個の尾椎骨は長さが同程度であり、その後位の尾椎はより細長くなる。神経棘は長方形に近い形状をなし、僅かに窪む。一部の血道弓もホロタイプ標本に保存されている。これらは前部尾椎から中部尾椎において対応する椎体よりも長く、後部ほど椎体より僅かに短くなる傾向がある[2]。
肩帯と前肢
肩帯は肩甲骨と烏口骨とが部分的に癒合している。これは最も派生的なテリジノサウルス類と共通しており、より基盤的な分類群(ファルカリウス、ジアンチャンゴサウルス、ベイピャオサウルス、マルサラプトル)において癒合していない。肩関節の関節面は後腹側に向いており、より外側を向いた派生的分類群よりも基盤的分類群のものと類似する。烏口骨は長方形に近い形状をなし、肩甲骨は細長いブレードが遠位端に向かって拡大する。より派生的なテリジノサウルス類においては、肩甲骨のブレードは先端ほど細くなる。叉骨は不完全であり、華奢で、テリジノサウルス類に典型的なV字型をなす。叉骨の両端間のなす角は約140°と広く、ファルカリウスに見られる鋭角と対照的である[2]。
カイラサウルスの前肢は不完全であり、両上腕骨、両尺骨、両橈骨を保存している。上腕骨は異様に頑強であり、エルリアンサウルスやNothronychus graffamiのものに最も類似する。上腕骨の骨幹部は直線状であり、湾曲したファルカリウスのものと異なる。対照的にカイラサウルスの湾曲した尺骨はファルカリウスや他のマニラプトル類のものと類似しており、他のテリジノサウルス類が持つ直線的な尺骨と異なる。橈骨は直線的かつ細長く、基盤的なテリジノサウルス類と共通しており、派生的分類群が持つ湾曲した頑強な橈骨と異なる[2]。
おそらく手首関節の中央部に位置したと見られる1個の手根骨も保存されている。この手根骨は小型で、平坦であり、四角形をなし、発達した角と両側面の窪みを持つ。唯一保存されている中手骨は第IV中手骨の近位端であり、ファルカリウスやベイピャオサウルスのものと類似する。末節骨を含む指骨は全体的に保存が良好であり、形態的にはベイピャオサウルスのものに類似する。末節骨(鉤爪)は深くカーブしており、最遠位端は無傷である。長さは最後から2番目の指骨と同様であり、この特徴は基盤的テリジノサウルス類と共通するが、より長く伸びた末節骨を持つ派生的なテリジノサウルス類やノスロニクスと対照的である。第II指、第III指、第IV指のうち第II指が最も短いが、保存された指骨の中では第II指の基節骨が最も長くかつ頑強である。指骨の近位関節面は上下の高さを左右の幅が上回っており、その逆の形質状態を示す他の全てのテリジノサウルス類と対照的である。第II指の鉤爪は最も強くカーブする。第II指の鉤爪は第III指の鉤爪よりも小型であり、これはかつてベイピャオサウルスの固有派生形質と考えられていた形質状態と一致する。この鉤爪は屈筋結節が特に頑強である。第III指は最も長い指であり、鉤爪の屈筋結節は第II指のものに比べて発達しない。第IV指は最も華奢な指であり、最初の2つの指骨が非常に短く、3番目の指骨がそれらの合計と同程度の長さを持つ。第IV指の鉤爪は他の2本の指の鉤爪よりも小型である。第III指の鉤爪に見られる発達したリップは近位背側に向いており、より後側に向いた他のテリジノサウルス類のものと対照的である[2]。
骨盤
腰帯はほぼ全ての要素が失われているが、左右の腸骨の一部が保存されている。左腸骨は非常に損傷を受けており、他の骨盤の要素との関節部のみが現存する。右腸骨はほぼ完全であり、前縁の一部のみを欠損している。基盤的なテリジノサウルス類や基盤的な鳥群、およびドロマエオサウルス科と同様に、iliac bladeは側面から見た際に平行四辺形に近い形状を示す。これは竜脚類や派生的なテリジノサウルス類と異なる形質状態である。恥骨との関節突起であるpubic peduncleは坐骨との関節突起であるischiadic peduncleよりも長く、これは他のテリジノサウルス類と共通する一方、両者が同等の長さであるファルカリウスと異なる。pubic peduncleの長さは幅の約2倍であり、ファルカリウスやジアンチャンゴサウルスと同様であるが、比率がほぼ等しいベイピャオサウルスや、比率が逆転しているより派生的なテリジノサウルス類と異なる。ischiadic peduncleは基盤的テリジノサウルス類と同様にペグ状であり、より派生的な分類群に見られる円形や正方形状と異なる[2]。
分類
Liao et al. (2026)による系統解析ではテリジノサウルス類の進化と類縁関係を解析するために新たに構築された系統マトリックスが導入された。このデータセットは形質やOTUをZanno (2010)[3]やSenter et al. (2012)[4]、Yao et al. (2019)[5]から統合し、それらの出版以降で記載された分類群や標本、あるいは当初考慮されていなかった分類群や標本を内群に含めたものである。カイラサウルスは樹形上で基盤的なテリジノサウルス類とされ、テリジノサウルス上科との姉妹群として配置された。このためカイラサウルスは同じく義県層から化石が産しているジアンチャンゴサウルスとベイピャオサウルスとの中間的な位置に配置されている。こうした系統解析結果を以下のクラドグラムに示す[2]。
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出典
- ↑ @_HETAKA (2026年9月11日). “【新種のテリジノサウルス類】”. X(旧Twitter)より2026年10月8日閲覧.
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 Liao, Chun-Chi; Freimuth, William J.; Zanno, Lindsay E.; Xu, Xing (2026-09-10). “A new therizinosaur from the Early Cretaceous Jehol Biota and ecomorphological patterns among early therizinosaurians” (英語). Journal of Systematic Palaeontology 24 (2). doi:10.1080/14772019.2026.2710287. ISSN 1477-2019.
- ↑ Zanno, Lindsay E. (2010-11-05). “A taxonomic and phylogenetic re-evaluation of Therizinosauria (Dinosauria: Maniraptora)” (英語). Journal of Systematic Palaeontology 8 (4): 503–543. doi:10.1080/14772019.2010.488045. ISSN 1477-2019.
- ↑ Senter, Phil; Kirkland, James I.; DeBlieux, Donald D. (2012-08-29). Dodson, Peter. ed. “Martharaptor greenriverensis, a New Theropod Dinosaur from the Lower Cretaceous of Utah” (英語). PLOS One 7 (8). doi:10.1371/journal.pone.0043911. ISSN 1932-6203. PMC 3430620. PMID 22952806.
- ↑ Yao, Xi; Liao, Chun-Chi; Sullivan, Corwin; Xu, Xing (2019-03-22). “A new transitional therizinosaurian theropod from the Early Cretaceous Jehol Biota of China” (英語). Scientific Reports 9 (1). doi:10.1038/s41598-019-41560-z. ISSN 2045-2322. PMC 6430829. PMID 30903000.
- ↑ Sues, Hans-Dieter; Averianov, Alexander (April 2016). “Therizinosauroidea (Dinosauria: Theropoda) from the Upper Cretaceous of Uzbekistan” (英語). Cretaceous Research 59: 155–178. doi:10.1016/j.cretres.2015.11.003.
- ↑ Kundrát, Martin; Cruickshank, Arthur R. I.; Manning, Terry W.; Nudds, John (2007-10-29). “Embryos of therizinosauroid theropods from the Upper Cretaceous of China: diagnosis and analysis of ossification patterns” (英語). Acta Zoologica 89 (3): 231–251. doi:10.1111/j.1463-6395.2007.00311.x.