ジブラルタル憲法
| ジブラルタル憲法 | |
|---|---|
| Constitution of Gibraltar | |
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| 施行区域 | ジブラルタル |
| 形態 | 成文憲法 |
| 成立 | 2006年12月14日 |
| 施行 | 2007年1月2日 |
| 政体 | 権限委譲された議院内閣制の依存地域(立憲君主制) |
| 権力分立 | 三権(行政権、立法権、司法権) |
| 立法 | 一院制(ジブラルタル議会) |
| 行政 | ジブラルタル首相、閣僚評議会 |
| 司法 | ジブラルタルの司法 |
| 旧憲法 | 1969年ジブラルタル憲法令 |
| この記事は ジブラルタルの政治と政府 に関する記事群の一部である。 |
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ジブラルタル憲法(ジブラルタルけんぽう、Constitution of Gibraltar)は、英領ジブラルタルの憲法である。英国の枢密院令である1950年ジブラルタル憲法令によって発効した。
現行の2006年ジブラルタル憲法令による憲法は、2006年11月30日に実施された住民投票でジブラルタル市民によって承認された後、2006年12月14日にバッキンガム宮殿で開催された枢密院の会合において、エリザベス2世英女王によって制定された。2007年1月2日に発効し、1969年ジブラルタル憲法令から更新された[1][2]。
英国政府は2006年憲法について、「植民地主義に基づかないジブラルタルと英国との間の現代的かつ成熟した関係を確立することを目的としており、同時にジブラルタルに対する英国の主権とジブラルタルの対外関係に対する英国の責任を維持しつつ、ジブラルタルの人々に相応の自治権を与える」ことを意図すると発表した[3]。
歴史
ジブラルタルは1830年に英国の直轄植民地となり、1921年には行政上の事務を扱うジブラルタル市議会が設置された。ジブラルタル自治政府への住民の参加拡大の要求を受けて、1950年に1950年ジブラルタル憲法令に基づき、ジブラルタル議会の前身となるジブラルタル立法評議会が設置され、住民に一定の代表権が与えられた。それ以前はジブラルタル総督が評議会を通じて立法権を保持していた[4][5]。
第二次世界大戦後、立法機関の設置に向けた動きは加速した。1944年12月30日には諮問評議会の創設が提案されたものの、ジブラルタル住民の代表である公民権推進協会が立法評議会を求めたため、この案は棚上げされた。1945年11月5日、政府は状況が許し次第植民地大臣が立法評議会を設置する用意があると発表した。ただし、ジブラルタルが要塞であることを踏まえ、官選議員が民選議員を上回る構成とされた[6]。 1947年も協議が続き[7]、 1948年9月には植民地大臣の第5代リストーエル伯爵がジブラルタルを訪問した。同年11月、イギリス政府は、ジブラルタル総督を議長とし、職権上の議員3人、官選議員2人、民選議員5人からなる立法機関の設置を承認した[8]。1949年には憲法関係の文書が作成され、市民の意見を募るために公表された[9]。 新憲法は、1950年2月3日付の1950年ジブラルタル憲法令と、1950年2月28日付の特許状および国王訓令から構成された。民選の5議席(官選も5議席で定数10)を対象とした初の選挙は、1950年11月8日に「1950年選挙条例」に基づいて実施された。同条例はジブラルタルに12か月以上居住する成人のイギリス国民およびアイルランド国民を有権者とする比例代表制で行われた。立法評議会は同年11月23日、エディンバラ公によって正式に発足した[10]。
1955年、ジブラルタル初の憲法危機が発生。ジブラルタル総督のハロルド・レッドマンは、立法評議会が否決した従価税率10%の輸入関税を発効させるため、非常権限を行使した。1955年7月27日、民選議員5人全員がこれに抗議して辞職した[11][12]。 植民地大臣のアラン・レノックス・ボイドは1955年10月にジブラルタルを訪問した。総督の決定自体は支持したが、今後は歳入について立法評議会の財政委員会に事前に諮ることと、非常権限を行使する際には英国政府に事前に照会して承認を得ることを約束した[11] 。民選議員5人は1955年11月の補欠選挙で無投票当選した[12]。 それ以降総督が非常権限を行使したことはなく、この一件はその後の憲法改革を促す要因となった[11]。
1964年ジブラルタル憲法令は、国内自治の範囲をさらに拡大した。[13][14] 。スペインがジブラルタルの脱植民地化を求める圧力を強めるなか、1967年ジブラルタル主権住民投票が実施された。結果は以下の通りで、大差でイギリスの自治領に残ることが決定された[15]。
| 選択 | 投票数 | % |
|---|---|---|
| スペイン | 44 | 0.36% |
| 英国 | 12,138 | 99.64% |
| 有効票 | 12,182 | 99.55% |
| 無効票または白票 | 55 | 0.45% |
| 総投票数 | 12,237 | 100.00% |
| 登録有権者数/投票率 | 12,672 | 96.57% |
この投票を受けて制定された1969年ジブラルタル憲法令は、立法評議会に代わるジブラルタル議会を設置するとともに、首相を長とする閣僚評議会を設けた。議会は総督が任命する議長、選挙で選ばれる15人の議員、そして職権上の構成員2人(司法長官を含む)で構成されていた[16][15] 。1981年には、1981年イギリス国籍法に基づいてジブラルタル住民に完全なイギリス国籍が認められた[15]。
1999年、イギリスは自国の海外領土に対して憲法改正案を提出するよう求めた。ジブラルタル議会にはジブラルタル社会労働党、ジブラルタル社会民主党などによる超党派委員会が設けられ、関係者への意見聴取を行った。同委員会は2002年1月に報告書をまとめ、その後、ジブラルタルでの審議とイギリスとの交渉が行われた。これとは別に、イギリスとスペインによる共同主権の提案があったが、2002年ジブラルタル主権住民投票で否決された[17][15]。
2006年11月30日、改憲案に関する住民投票が行われ、約60%の賛成で可決された[18]。2006年ジブラルタル憲法令は2006年12月14日に枢密院令として制定され、2007年1月2日に施行、1969年ジブラルタル憲法令から更新された。新憲法によって、議会の名称がジブラルタル議会に変更され、定数が17人に増えた。また、総督の権限を縮小し、基本的人権に関する新たな枠組みを定めた[5][15]。
概要
ジブラルタル憲法は9章からなり、立法権、行政権、司法権の三権分立を定めている[19]。 ジブラルタルには独立した憲法裁判所はなく、憲法に関する異議申し立ては、最高裁判所に憲法上の申立てを提出する形で行われる[19]。
第1章:基本的権利および自由の保護
第1章は第1条から第18条までで構成され、基本的人権および個人の自由を保障する権利章典を定めている。これには、生存権や財産権などが含まれる。その規定は、おおむね欧州人権条約に沿ったものである[20][19]。
第2章:総督
第2章は第19条から第23条までで構成され、ジブラルタルにおける君主(イギリス国王)の代理人としてのジブラルタル総督職を設置し、総督の権限と職務を定めている[20][19]。
第3章:立法府
第3章は第24条から第43条までで構成され、君主と選挙で選ばれるジブラルタル議会からなる立法機関について定めている。2部構成であり、第I部(第24条から第31条)はジブラルタル議会を設置し、その構成、議員資格および選挙を扱う。第II部(第32条から第43条)は、法律の制定や手続きなどの立法に関する事項を定め、総督が法案に国王裁可を与えること、裁可を拒否すること、または君主の意向を確認するため法案を留保することができる旨を規定している[20][19]。
第4章:行政
第4章は第44条から第53条までで構成され、行政権について定めている。選挙で選ばれた議員の中から任命される首相および閣僚評議会を設置する。総督は通常首相の助言に従って行動するが、必要と判断した場合には、助言に反して、または助言がない場合にも行動できる[20][19]。
第5章:司法職および特定の任命職を含む公務
第5章は第54条から第59条までで構成され、公務について定める。また、公務委員会、特定任命委員会、司法委員会を設置する。これらの委員会は、総督が例外的に拒否権を行使した場合を除き行政権を行使する[20]。
第6章:司法
第6章は第60条から第66条までで構成され、最高裁判所および控訴院の管轄権を定める。また、裁判官の任命と在職期間を規定し、最高裁判所から控訴院、さらに最終的にはロンドンにある枢密院司法委員会へ上訴する権利を保障している[20][19]。
第7章:財政
第7章は第67条から第74条までで構成され、公的財政を扱い、政府の公金を保管するための統合基金を設置する[20][19]。
第8章:土地
第9章:雑則
第9章は第76条から第84条までで構成され、その他の規定を扱う。これには、総督が恩赦を与えたり刑を減免したりする恩赦権、警察の設置、選挙で選ばれるジブラルタル市長に関する規定、憲法で用いられる用語の定義を含む解釈規定などが含まれる[20][19]。
別表および附書
憲法の別表には、本文で定められた宣誓が記載されている。これには、忠誠宣誓、総督職を適切に遂行するための宣誓、閣僚評議会の構成員による宣誓、および司法上の宣誓が含まれる。憲法令の附属書は、既存の法律、公職および法的手続の継続など、経過措置その他の規定を扱う。また、君主がジブラルタルの「平和、秩序および善政」のために法律を制定する完全な権限を保持することも定めている[20]。
関連項目
脚注
- ↑ “About Parliament” (英語). Gibraltar Parliament. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “Constitution | Laws of Gibraltar” (英語). Gibraltar Laws. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “The Gibraltar Constitution Order 2006” (英語). ConstitutionNet. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ Zaidi, Syed Shaukat Ali (1966). “Gibraltar”. Pakistan Horizon 19 (2): 148–155. ISSN 0030-980X.
- 1 2 “About Parliament” (英語). Gibraltar Parliament. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ Colonial Office Annual Report on Gibraltar 1946. H.M. Stationery Office. (1947). pp. 6–8 2026年7月17日閲覧。
- ↑ Colonial Office Annual Report on Gibraltar 1947. H.M. Stationery Office. (1948). p. 3 2026年7月17日閲覧。
- ↑ Colonial Office Annual Report on Gibraltar 1948. H.M. Stationery Office. (1949). p. 3 2026年7月17日閲覧。
- ↑ Colonial Office Report on Gibraltar 1949. H.M. Stationery Office. (1950). p. 3 2026年7月17日閲覧。
- ↑ Colonial Office Report on Gibraltar 1950 and 1951. H.M. Stationery Office. (1952). pp. 3, 48–50 2026年7月17日閲覧。
- 1 2 3 Garcia, Joseph John (1991). The Modern Political and Constitutional Development of Gibraltar, 1940–1988 (PDF) (PhD thesis). ハル大学. pp. 98–113.
- 1 2 Colonial Office Report on Gibraltar 1954 and 1955. H.M. Stationery Office. (1956). pp. 59–61 2026年7月17日閲覧。
- ↑ “Gibraltar (Constitution) Order 1964 and Royal Instructions”. discovery.nationalarchives.gov.uk. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ Fawcett, J. E. S. (1967). “Gibraltar: The Legal Issues”. International Affairs (Royal Institute of International Affairs 1944-) 43 (2): 236–251. doi:10.2307/2614324. ISSN 0020-5850.
- 1 2 3 4 5 “Gibraltar – British Overseas Territory, Sovereignty | Government” (英語). Encyclopædia Britannica. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “Gibraltar Constitution Order 1969” (英語). Gibraltar Laws. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “The Gibraltar Constitution Order 2006” (英語). ConstitutionNet. 2026年6月9日閲覧。
- ↑ “Gibraltar Constitution Order 2006” (英語). Gibraltar Laws. 2026年6月9日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Watts, Ian. “Gibraltar's Written Constitution” (英語). Ian Watts Gibraltar Lawyer. 2026年6月9日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 “Gibraltar Constitution Order 2006” (PDF). Gibraltar Parliament. 2026年6月9日閲覧。