受胎告知 (リッピ、ローマ)
| イタリア語: Annunciazione Doria 英語: Annunciation | |
| 作者 | フィリッポ・リッピ |
|---|---|
| 製作年 | 1445-1450年 |
| 種類 | 板上にテンペラ |
| 寸法 | 117 cm × 173 cm (46 in × 68 in) |
| 所蔵 | ドーリア・パンフィーリ美術館、ローマ |
『受胎告知』(じゅたいこくち、伊: Annunciazione Doria、英: Annunciation)は、イタリア初期ルネサンス期の巨匠フィリッポ・リッピが1445年から1450年ごろに板上にテンペラで制作した絵画である。19世紀半ば以来[1]、ローマのドーリア・パンフィーリ美術館に所蔵されている[1][2]。
作品
『新約聖書』中の「ルカによる福音書」 (1章26-38) によれば[3]、ある日、大天使ガブリエルが聖母マリアのもとに現れ、「おめでとう、恵まれた方。あなたは神の恵みにより、男の子を産みます。その子をイエスと名付けなさい」と彼女が神の子を授かることを告げる[3]。マリアは驚きながらもイエス・キリストの母としての役割を受け入れ、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」と答える[3]。
この「受胎告知」の主題は、根強い聖母マリア信仰を背景にルネサンス期に最も広く採りあげられたものであった[4]。リッピも「受胎告知」の主題を好み、何点もの作品を描いている[2]。それらは現在、アルテ・ピナコテーク、バルベリーニ宮国立古典絵画館、ナショナル・ギャラリー (ロンドン)、ナショナル・ギャラリー (ワシントン) などに所蔵されている。画家のこの主題への関心はおそらく、ドミニコ会修道士で、1446年にフィレンツェの大司教であったアントニオ・ピエロッツィ (Antonino Pierozzi) によって引き起こされた。ピエロッツィは大聖堂での説教で名高い存在だったが、その説教は「Summa theologica」として編纂され、リッピが親しんでいたにちがいない「受胎告知」の主題に関する論文があったのである[2]。本作は、おそらく当時の1445-1450年頃に制作された[1][2]。
この絵画の主役は明るい光である。画面上部の雲間から現れている神の手が聖霊のハトを解き放ち、ハトは聖母マリアの肩に降り注ぐ、輝く光線沿いに下降している。神の意志が物質化している光を通して伝えられているのである[1][2]。白いユリの花 (聖母の純潔の象徴[5]) を持つ大天使ガブリエルは、通常の受胎告知の場面とは異なり、左側からではなく、右側から登場している[1][2]。模造大理石の床の角度と空間の堅固な遠近法は、ユークリッドの幾何学にもとづくフィレンツェの文化的側面を想起させる。もう1つの際立つ要素は描線の強調である。なお、この絵画の保存状態はすばらしい[1]。
関連作品
- 『受胎告知』(1435-1440年ごろ)、ナショナル・ギャラリー (ワシントン)
- 『二人のひざまずく寄進者のいる受胎告知』(1440-1445年)、バルベリーニ宮国立古典絵画館 (ローマ)
- 『受胎告知』(1449-1459年)、ナショナル・ギャラリー (ロンドン)
脚注
参考文献
- 千足伸行『ヴァティカン美術館II』講談社〈週刊 世界の美術館 No.36〉、2000年10月。全国書誌番号:20129260。
- 大島力『名画で読み解く「聖書」』、世界文化社、2013年刊行 ISBN 978-4-418-13223-2
- 岡田温司監修『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』、ナツメ社、2011年刊行 ISBN 978-4-8163-5133-4