多言語で書かれたインドの紙幣
旧約聖書の『バベルの塔』のたとえ話では、すべての人間が一つの共通言語を話していましたが、彼らが天に到達するために巨大な塔を建てようと決心したとき、神が彼らの言葉を混乱させ、互いに理解できないようにし、異なる言語を話すようにしました。

多言語(たげんご、英: multilingual)とは、複数の言語が並存すること。また、一個の人間、国家、社会、文書、コンピュータ、ウェブサイトやソフトウェアなどが、複数個の言語に直面したり対応したりすること。多重言語ともいう。

複数の言語を使用可能な人間を、多言語話者、マルチリンガル、ポリグロットと呼ぶ。人間は6言語以上の習得から難易度が高くなり、11言語以上の話者をハイパーポリグロット(Hyperpolyglot)と呼ぶ。

例

以下に、多言語の例を列挙する。

話者

ウェールズの多言語主義に関するウェールズ政府の諮問ビデオ、日本語字幕付き

多言語話者(マルチリンガル(英: multilingual)、ポリグロット(英: polyglot))とは、二種類以上の言語(同じ言語の方言は含まない場合が多い)能力を持っている人のことである。そのうち、二言語話者をバイリンガル(英: bilingual)、三言語話者をトリリンガル(英: trilingual)、四言語以上の話者をマルチリンガル(英: multilingual)と呼ぶ。

しかし、言語をどの程度まで扱える場合に「多言語話者」と定義されるのか(生活に支障がないレベルで十分なのか、母語話者と丁々発止の議論を遣り合える程度なのか、母語習得期に複数の言語を浴びていたのか)は非常に曖昧である。かつ、何をもって一つの言語と数えるのかの議論も輻輳している。

マルチリンガルは、状況・話題・聞き手などに応じて言語を使い分けているのが普通である。もっとも、この現象は、複数方言の話者でも行われているので、多「言語」話者にのみ特徴的なこととは言えない。ポリグロット同士の一連の会話で複数の言語を織り交ぜる現象(コードスイッチング)が観察され、それに関する研究も盛んである。

言語は満8歳(7歳説、5歳説も)まででないと母語としての習得は難しいとされる(臨界期仮説)ため、「外国語の習得には若い方がよい」という主張もあるが、単純に過ぎ、有力な反論も多い。また、幼いうちに外国語を身に付けさせると母語の確立が遅れかねないというジレンマがある上、長じても母語の表現力が貧弱なままでとどまったり(「セミリンガル」)、外国語を習得した人材が相次いで国外流出してしまうといった深刻な社会問題に発展する可能性も高い。

自ら外国語を学習して多言語話者となる以外で多言語話者になる要因としては、個人的なものと社会的なものの2つがある。前者の例としては、日本のような圧倒的なモノリンガル社会にやってきた移民や出稼ぎ労働者が当てはまる。後者の事例としては、スイスやベルギーなど複数の言語共同体が共存している場合である。

しかし、こういった多言語状態を政府は嫌うのが常で、言語政策・言語計画の名の下に「標準語」の策定・普及を推し進め、方言・少数(移民)民族の言語を抑圧し排除されるケースが多々見られる。また、ドイツ語圏やアラビア語圏のように同言語の標準語(公共・教育など)と地方方言(日常生活など)に機能的優劣が付けられた社会も存在し、ダイグロシアと呼ばれる。

ちなみに、一言語のみ習得している者はモノリンガル(英: monolingual)、二言語の環境で育ち、その両言語において年齢に応じたレベルに達していない者はセミリンガルと呼ばれる[1][2][3]。近年は、セミリンガルという言葉が否定的だという意見が増え、ダブル・リミテッド(ダブルリミテッド)という名称が広まりつつある[4][5]。一方、市川力は、外国語で教育された者だけでなく母語だけで教育された者も「セミリンガル」になる可能性はある、母語だけで教育されれば無条件で「モノリンガル」になるという感覚はおかしい、という考えから敢えて「セミリンガル」という単語を使用している(2004年時点)[6]。ダブル・リミテッドは、日本においては帰国子女や日本に住む外国人児童の間に散見されるため、特に教育関係者の懸案事項となっており、言語学や教育学の専門家による研究が広く行われている[7][8]。

言語獲得は環境および年齢差・個人差が大きい上に、日常会話能力(BICS)はバイリンガルであっても、抽象思考や学習のための言語能力(CALP)がダブル・リミテッドの状態にあり教科学習に支障をきたす者もいる。何をもってバイリンガル、何をもってダブル・リミテッドと判断するのかは未だ曖昧である。

2つ以上の公用語、準公用語が存在する国

この中には、国民の一定数、あるいは相当数が非識字、つまり2つ以上の公用語を使いこなす以前に読み書き自体ができない層である国がいくつか存在することに留意すべきである。

北米

中南米

アジア

ヨーロッパ

アフリカ

アフリカでは、大多数の国々が2つ以上の公用語を有する。この他、公用語ではないが、多種多様な言語が用いられている国や地域がいくつもある。

多言語性と作業記憶能力

多言語話者は単言語話者よりも作業記憶能力が高く、その相関は0.20であった。したがって、多言語話者は作業記憶能力の点で僅かながら有利である可能性がある[9]。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ↑ 「セミリンガル」という差別用語
  2. ↑ 英語の早期教育、本当に必要? 中途半端な「セミリンガル」を生む恐れ 韓国の二の舞に
  3. ↑ 幼児英語教育のデメリット(セミリンガル)を心配するあなたへ
  4. ↑ ダブルリミテッドに関する誤解。子どもの早期英語教育に弊害はない
  5. ↑ 日本育ちの子をインターナショナルスクールに入れるのは愚の骨頂だ
  6. ↑ 市川力『英語を子供に教えるな』(中公新書ラクレ、2004年) pp.81-82
  7. ↑ コロラド大学内 日本語教師会 『語彙獲得達成レベルにおける第一言語と第二言語の相関性:継承日本語の観点からの考察』
  8. ↑ 母語・継承語・バイリンガル研究会『事例4. 帰国生徒教育の現場から』(Word形式ファイル)
  9. ↑ Grundy, John G; Timmer, Kalinka (2017-07). “Bilingualism and working memory capacity: A comprehensive meta-analysis” (英語). Second Language Research 33 (3): 325–340. doi:10.1177/0267658316678286. ISSN 0267-6583.

関連書籍

関連項目

外部リンク

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