準大手私鉄

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準大手私鉄(じゅんおおてしてつ)とは、日本の民営鉄道事業者(私鉄)の分類の一つで、中小私鉄の一種。準大手民鉄とも呼ばれる。

大手私鉄に対する語で、中小私鉄でありながら大都市圏輸送を担い、旅客輸送人員の多い事業者が準大手私鉄(準大手民鉄)と呼ばれる[1][2]。準大手私鉄(準大手民鉄)は、公的機関や報道・出版においても用いられており、国土交通省も「準大手民鉄」の呼称を用いて分類している[3][4]。

歴史

『数字でみる鉄道』における
準大手事業者数の推移
年度事業者数
1965(昭和40)年度[5] 4
1970(昭和45)年度[5] 6
1975(昭和50)年度[5] 7
1990(平成2)年度[5] 6
2003(平成15)年度[5] 6
2004(平成16)年度[5] [注釈 1]5
2005(平成17)年度[5] [注釈 1]5
2024(令和6)年度[8] 5
2025(令和7)年度[9] 3

鉄道事業者における「大手」「中小」の区分は労使交渉の過程で誕生したものが慣習的に定着したものであり[10]、「大手私鉄」という概念も1950年代に誕生し、1960年代からは他分野でも用いられ始めたものである[11][12](詳細は大手私鉄#歴史を参照)。一方、準大手私鉄の語がいつから使われ始めたかは判然としないが、中小私鉄の一部を準大手私鉄として分析する『運輸と経済』(1964年)[13]、一部の地方私鉄の優等列車の表定速度が山陽電気鉄道の特急に匹敵することを「準大手私鉄なみ」と評する『世界の鉄道 1966年版』[14]など、1960年代半ば頃には使用例がみられる。

ここでいう中小私鉄とは、いわゆる中小私鉄から鋼索、モノレール事業ならびに相模・新京成・山陽・神戸電鉄の準大手4社と関西電力を除いた狭義の中小私鉄をいう — 『交通年鑑 昭和44年版』[15]
中小私鉄128社のうち、大都市周辺の準大手私鉄ともいうべき6社およびモノレール・鋼索鉄道等特殊鉄道27社を除いた95社を狭義の中小私鉄という — 『交通年鑑 昭和46年版』[16]

1970年前後の『交通年鑑』には上記のような記述がみられ、中小私鉄のなかでも大都市周辺の輸送を担う規模の大きい事業者を「準大手」と細分類する慣習が、この頃には定着していたことが窺える。

一方、準大手私鉄に類する呼称として、大都市中小私鉄(大都市中小民鉄)という呼称も同時期より散見され始める。こちらの分類では大都市中小私鉄を除いた中小私鉄を地方中小私鉄(地方中小民鉄)と称した[17]。運輸省発行の『数字でみる民鉄 1975年度版』では新京成電鉄、相模鉄道、大阪府都市開発、北大阪急行電鉄、神戸高速鉄道、神戸電気鉄道、山陽電気鉄道の7社を大都市中小私鉄としており[18]、その対象は準大手私鉄のそれと一致する[1]。両者は1990年代頃までにはほぼ同義語と扱われるようになり[19][20]、『数字でみる鉄道』(『数字でみる民鉄』の後身)では過去の年度版で「大都市中小民鉄」と称していた時期をも含めて「準大手」とするなど[5]、区分名は準大手私鉄(準大手民鉄)へと収斂していく。

一般に準大手私鉄(大都市中小私鉄)の定義は『数字でみる民鉄』に掲出された7社を対象とするのが慣習とされていた[21]。業界団体である日本民営鉄道協会(民鉄協)も当初はそれに倣って7社を準大手民鉄とし[22]、狭義の中小私鉄に相当する事業者のことを地方民鉄と定義していた[23]。しかし、同協会では基準が曖昧であることを理由に2000年代中頃より準大手民鉄の使用は取り止められ[24]、現在では大手民鉄以外の事業者全てを地方民鉄とする形に改められている[25]。

類語

準大手私鉄(大都市中小私鉄)とは似て非なる概念として、大都市高速鉄道と大都市周辺鉄道がある。

大都市高速鉄道
大手・準大手・中小の区分が私鉄の業態別分類であるのに対し、こちらは機能別分類において使用される概念である。その対象は大都市通勤圏(首都圏、京阪神圏、中京圏、札幌周辺、北九州周辺、福岡周辺の中心駅から所要時間が東京・大阪は1時間、それ以外は45分以内の圏域)で旅客輸送を行い、最混雑区間が複線以上の路線と、その路線と接続する同一事業者の路線である(観光鉄道を除く)[26]。この定義により業態別分類における大手私鉄・準大手私鉄のほか、一部の中小私鉄や公営鉄道も対象となる(例:能勢電鉄[27])。一方で、機能別分類は路線ごとの評価であるため、同一事業者でも路線によって対象とならない場合がある(例:西武鉄道山口線は観光鉄道に属する[28])。
大都市周辺鉄道
運輸省の運輸白書(運輸経済年次報告)にみられた区分。初出は1969年度で、同書では大手私鉄、営団、公営鉄道、大都市周辺鉄道および特殊鉄道(モノレール・鋼索鉄道など)を除いたものを中小私鉄と定義していた[29]。1971年度版からはその内訳が記載されるようになり、新京成電鉄、相模鉄道、東京モノレール、水間鉄道、神戸電気鉄道、山陽電気鉄道、神戸高速鉄道、北大阪急行電鉄、能勢電鉄の9社を大都市周辺鉄道としていた[30]。その後は大阪府都市開発を加えた10社となったが[31]、1976年度版で東京モノレール、水間鉄道、能勢電鉄が外され、準大手私鉄(大都市中小私鉄)と同じ7社となった[32]。同時期の『交通年鑑』でも地方中小私鉄に対する語として大都市周辺鉄道が用いられているが、その対象は準大手7社と同一である[33]。

準大手私鉄の一覧

現在の準大手私鉄

2025年度現在、準大手私鉄とされているのはいずれも近畿地方に路線を保有する以下の3社である。3社の掲載順序は『鉄道要覧』に準ずる。日本民営鉄道協会(民鉄協)は、非加盟の神戸高速鉄道以外の2社を地方民鉄に分類している[34]。

No. 会社名
(略称)
本社所在地 民鉄協 設立 資本金
(百万円)
旅客営業
粁程 (km)
駅数
(駅)
備考 出典
1 北大阪急行電鉄
(北大阪急行、北急)
大阪府
豊中市
加盟[35] 1967年(昭和42年)
12月11日
1,500 8.4 6 第三セクター
阪急阪神東宝グループ
[36]
2 山陽電気鉄道
(山陽電鉄、山陽、山電[注釈 2])
兵庫県
神戸市長田区
加盟[38] 1933年(昭和8年)
6月6日
10,090 63.2 46 東証プライム上場[注釈 3]
山陽電鉄グループ
[39]
3 神戸高速鉄道
(神戸高速)
兵庫県
神戸市中央区
非加盟[38] 1958年(昭和33年)
10月2日
100 7.6 6 第三セクター
阪急阪神東宝グループ
[40]

過去の準大手私鉄

相模鉄道は、1990年5月31日、日本民営鉄道協会より大手私鉄への昇格が承認された[41]。

神戸電鉄は、国土交通省監修・財団法人運輸政策研究機構発行の『数字でみる鉄道』によれば、2004年版までは準大手民鉄に分類されていたが、2005年版以降では中小民鉄に分類されている。なお、1980年代から1990年代前半には相模鉄道同様に大手私鉄に昇格する計画が存在した[42][43]。

新京成電鉄と泉北高速鉄道は、いずれも準大手私鉄に区分されていたものの、2025年(令和7年)4月1日に、それぞれ親会社である京成電鉄・南海電気鉄道を存続会社として吸収合併されたため、法人格自体が消滅した[44][45]。

現行
区分
会社名
(略称)
本社所在地 民鉄協 設立 資本金
(百万円)
旅客営業
粁程 (km)
駅数
(駅)
備考 出典
大手 相模鉄道
(相鉄)
神奈川県
横浜市西区
加盟[46] 1964年(昭和39年)
11月24日
100 35.9 25 東証プライム上場
相鉄グループ・相鉄HD完全子会社
[47]
中小 神戸電鉄
(神鉄)
兵庫県
神戸市兵庫区
加盟[48] 1926年(大正15年)
3月27日
11,710 69.6 47 東証スタンダード上場[注釈 3]
阪急阪神東宝グループ・神戸電鉄グループ
[49]
消滅 新京成電鉄
(新京成)
千葉県
鎌ケ谷市
加盟[50] 1946年(昭和21年)
10月23日
5,934 26.5 24 左記は合併時点の情報。
2022年(令和4年)まで東証スタンダードに上場
京成グループ・新京成電鉄グループ
2025年(令和7年)4月1日、親会社の京成電鉄に吸収合併[注釈 4]。
[51]
[44]
消滅 泉北高速鉄道
(泉北高速、泉北、泉鉄[注釈 5])
大阪府
和泉市
加盟[52] 1965年(昭和40年)
4月1日
4,000 14.3 6 左記は合併時点の情報。
南海グループ・泉北高速鉄道グループ(旧・OTKグループ)
2025年(令和7年)4月1日、親会社の南海電気鉄道に吸収合併[注釈 6]。
[53]
[45]

脚注

注釈

  1. 1 2 「事業者数と営業キロの推移」の項目では2004年度より5事業者となっているが、鉄軌道事業者一覧の項目では2004年度版まで6事業者が準大手に掲載されており[6]、2005年度版から5事業者となっている[7]。
  2. ↑ グループ企業に「山電サービス株式会社」がある[37]。
  3. 1 2 2013年7月12日までは大証一部に上場していたが、東証との合併による大証の現物株式取引終了に伴い、東証一部上場となった。
  4. ↑ 路線名は新京成線から松戸線に変更。
  5. ↑ グループ企業に「泉鉄産業株式会社」が存在した。
  6. ↑ 路線名は泉北高速鉄道線から泉北線に変更。

出典

  1. 1 2 広岡治哉 著、渡部与四郎 編『都市交通 : 技術と経済』法政大学産業情報センター〈交通問題研究 第1集〉、1989年、105頁。
  2. ↑ 日本民営鉄道協会 編『大手民鉄の素顔 平成2年度版』日本民営鉄道協会、1990年、2頁。
  3. ↑ “鉄軌道事業者一覧”. 国土交通省 (2026年4月1日). 2026年8月5日閲覧。
  4. ↑ 鉄道いろいろ 鉄道フォトギャラリー 鉄道 - 国土交通省、2021年9月9日閲覧。
  5. 1 2 3 4 5 6 7 8 国土交通省鉄道局(監)『数字でみる鉄道 2010年度版』運輸政策研究機構、2010年、77頁。ISBN 978-4-903876-31-3。
  6. ↑ 国土交通省鉄道局(監)『数字でみる鉄道 2004年度版』運輸政策研究機構、2004年、8頁。ISBN 4-900209-81-3。
  7. ↑ 国土交通省鉄道局(監)『数字でみる鉄道 2005年度版』運輸政策研究機構、2005年、8頁。ISBN 4-900209-89-9。
  8. ↑ 国土交通省鉄道局(監)『数字でみる鉄道 2024年度版』運輸総合研究所、2025年、8頁。ISBN 978-4-910466-26-2。
  9. ↑ 国土交通省鉄道局(監)『数字でみる鉄道 2025年度版』運輸総合研究所、2026年、8頁。ISBN 978-4-910466-32-3。
  10. ↑ 枝久保達也 (2020年6月1日). “相鉄が大手となって30年、かたや大阪メトロが中小を抜け出せない理由”. ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社. 2021年9月9日閲覧。
  11. ↑ 名古屋鉄道広報宣伝部 編『名古屋鉄道百年史』名古屋鉄道、1994年、236頁。
  12. ↑ 広岡治哉 著、渡部与四郎 編『都市交通 : 技術と経済』法政大学産業情報センター〈交通問題研究 第1集〉、1989年、104頁。
  13. ↑ 石井辰雄「私鉄における経営能率の推移(上)」『運輸と経済』第24巻第7号、交通経済研究所、1964年7月、54頁。
  14. ↑ 小林宇一郎 著「地方の私鉄電車」、木村庸太郎 編『世界の鉄道 1966年版』朝日新聞社、1966年、158頁。
  15. ↑ 交通協力会出版部 編『交通年鑑 昭和44年版』交通協力会、1969年、325頁。
  16. ↑ 交通協力会出版部 編『交通年鑑 昭和46年版』交通協力会、1971年、333頁。
  17. ↑ 共同通信社社会部 編『国鉄を裸にする : 一億人の足・総点検』共同通信社、1978年、229頁。
  18. ↑ 加藤新一「山陽電気鉄道・神戸電鉄の位置づけをめぐって」『鉄道ピクトリアル』第528号、鉄道図書刊行会、1990年5月1日、188頁。
  19. ↑ 斎藤峻彦『私鉄産業:日本型鉄道経営の展開』晃洋書房〈現代交通経済学叢書 3〉、1993年、25頁。ISBN 4-7710-0677-6。
  20. ↑ 老川慶喜(監)『JR・私鉄・運輸』二期出版〈大学生になったら始めたい産業と会社研究シリーズ 13〉、1995年、25頁。ISBN 4-89050-256-4。
  21. ↑ 増井健一『私鉄業界』教育社〈教育社新書 産業界シリーズ 143〉、1979年、272頁。
  22. ↑ 日本民営鉄道協会 編『大手民鉄の素顔 昭和60年度版』日本民営鉄道協会、1985年、2頁。
  23. ↑ 日本民営鉄道協会 編『地方民鉄の現状と対策』日本民営鉄道協会、1981年、2頁。
  24. ↑ “大手民鉄”. 鉄道用語事典. 日本民営鉄道協会. 2026年9月13日閲覧。
  25. ↑ “地方民鉄”. 鉄道用語事典. 日本民営鉄道協会. 2026年9月13日閲覧。
  26. ↑ 運輸省鉄道局(監)『鉄道統計年報』(レポート)政府資料等普及調査会、1999年。
  27. ↑ 『地方民鉄の現状と課題 (PDF) 』社団法人日本民営鉄道協会、平成18年(2006年)11月14日、国土交通省公式サイト。
  28. ↑ 運輸省鉄道局(監)『鉄道統計年報』(レポート)政府資料等普及調査会、1999年、4頁。
  29. ↑ 運輸省 編『昭和44年度 運輸白書』(レポート)大蔵省印刷局、1969年、114頁。
  30. ↑ 運輸省 編『昭和46年度 運輸経済年次報告』(レポート)大蔵省印刷局、1971年、112頁。
  31. ↑ 運輸省 編『昭和50年度 運輸経済年次報告』(レポート)大蔵省印刷局、1975年、132頁。
  32. ↑ 運輸省 編『昭和51年度 運輸経済年次報告』(レポート)大蔵省印刷局、1976年、220頁。
  33. ↑ 交通協力会出版部 編『交通年鑑 昭和52年版』交通協力会、1977年、196頁。
  34. ↑ “地方民鉄 旅ガイド”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2023年12月9日閲覧。
  35. ↑ “北大阪急行電鉄株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  36. ↑ 会社概要、路線図・各駅情報 - 北大阪急行電鉄
  37. ↑ 会社情報 - 山電サービス。2024年12月25日閲覧。
  38. 1 2 “山陽電気鉄道株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  39. ↑ 会社概要、路線図・駅情報 - 山陽電車
  40. ↑ 会社概要、事業概要 - 神戸高速鉄道
  41. ↑ 相鉄グループ100年史 編纂事務局 編「年表」『相鉄グループ100年史 1917―2017』(PDF)相鉄ホールディングス、2018年12月、388頁。2021年9月9日閲覧。
  42. ↑ 石本隆一「大阪の地下鉄」『鉄道ピクトリアル』第528号、電気車研究会、1990年5月1日、128頁。
  43. ↑ 『全国鉄道事情大研究 神戸篇』草思社、1992年3月。
  44. 1 2 『完全子会社(新京成電鉄株式会社)の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』(PDF)(プレスリリース)京成電鉄、2023年10月31日。2023年11月1日閲覧。
  45. 1 2 『連結子会社である泉北高速鉄道株式会社との経営統合に関する基本合意のお知らせ』(プレスリリース)南海電気鉄道、2023年12月20日。2023年12月20日閲覧。
  46. ↑ “相模鉄道株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  47. ↑ 大手民鉄の現況(単体) - 大手民鉄データブック、日本民営鉄道協会
  48. ↑ “神戸電鉄株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  49. ↑ 会社案内、駅・電車の情報 - 神戸電鉄
  50. ↑ “新京成電鉄株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  51. ↑ 会社概要 - 新京成電鉄
  52. ↑ “泉北高速鉄道株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  53. ↑ 会社概要 、路線図 - 泉北高速鉄道

関連項目

外部リンク