組織的公正

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組織的公正(そしきてきこうせい、英: organizational justice)とは、従業員が組織の行動をどのように判断するか、およびその結果として生じる従業員の態度と行動に関する概念である。この概念はグリーンバーグ(Greenberg, 1987)によって導入された[1]。例えば、ある企業が従業員の半数を人員整理した場合、従業員は不公正の感覚を抱き、その結果として態度の変化と生産性の低下が生じうる。

公正あるいは公正さとは、ある行為や決定が道徳的に正しいという考えを指し、それは倫理、宗教、公平、衡平、あるいは法に従って定義されうる。人々は日常生活において、さまざまな文脈にわたり、出来事や状況の公正さに自然と注意を向けている[2]。個人は日々、組織によってなされる行為や決定に反応している。こうした決定を公正または不公正と捉える個人の知覚は、その個人のその後の態度や行動に影響を及ぼしうる。不公正の知覚がもたらす影響が職務上の態度や行動に波及しうるため、公正さはしばしば組織にとって中心的な関心事となる。組織における公正には、公正な報酬の知覚、昇進の機会の均等、人材選抜の手続きに関わる問題が含まれうる。

組織的公正には2つの形態があり、結果の望ましさ(outcome favorability)と結果の公正(outcome justice)である。結果の望ましさは個人的な価値に基づく判断であり、結果の公正は道徳的な適切さに基づく判断である。[要出典] 管理者はしばしば、従業員が公正を単に望ましい結果にすぎないものと考えていると信じている。

概要

組織的公正の4つの構成要素は、分配的公正、手続き的公正、対人的公正、情報的公正である。研究はまた、状況の公正さの評価、および当該状況に対する行動的・態度的反応において、感情(affect)と情動が重要であることを示唆している[3]。産業・組織心理学の分野における多くの文献が、組織的公正およびそれに伴う帰結を検討してきた。公正知覚は、動機づけや職務満足といった多くの重要な組織的帰結に影響を及ぼす[4][5]。

組織的公正を態度的な知覚として捉える考え方に対する近年の批判は、労働者が公正に扱われているという知覚と、労働者が実際に公正に扱われていることとを取り違える危険性を指摘している[6]。

企業の社会的責任

組織的公正と関連する概念に企業の社会的責任(CSR)がある。組織的公正が一般に当該組織の内部にいる個人の処遇における公正さの知覚を指すのに対し、企業の社会的責任は組織の外部にある主体の処遇の公正さに焦点を当てる。企業の社会的責任とは、企業が自らの活動を道徳的・社会的な基準に沿って監視し規制することにより、すべての利害関係者に肯定的な影響を及ぼすようにする仕組みを指す[7]。したがってCSRには、組織が道徳的あるいは倫理的に求められる水準を超えて行動し、社会の構成員一般に利益をもたらすようなあり方で振る舞うことが含まれる。自組織の企業の社会的責任の水準に関する従業員の知覚は、たとえその従業員が不公正な行為の被害者でなくとも、その個人自身の態度や公正知覚に影響を及ぼしうると提唱されている[誰?][8]。

衡平理論への淵源

組織的公正という考え方は、衡平および不衡平の判断がインプットと結果に基づく自己と他者との比較から導かれると措定する衡平理論[9][10]に由来する。インプットとは、ある人が自らが提供していると知覚するもの(例えば知識や努力)を指し、他方で結果とは、個人が交換関係から得ていると知覚するもの(例えば給与や承認)である。これらのインプットと結果が判断される際の比較対象は、内的なもの(過去のある時点における自分自身)である場合も、外的なもの(他の個人)である場合もある。

類型

研究者たちは、組織的公正の三つの主要な構成要素として、分配的公正、手続き的公正、相互作用的公正を分類してきた[11]。

分配的公正

分配的公正(英語版)は、決定の結果および資源の分配に伴う公正さとして概念化される。分配される結果や資源は、有形のもの(例えば、給与)である場合も、無形のもの(例えば、称賛)である場合もある。分配的公正の知覚は、結果が等しく適用されていると知覚されるときに促進されうる[10]。分配的公正は、資源がどのように分配されるかについての三つの異なる根拠、すなわち衡平、平等、必要性のうち一つ以上を含みうる。衡平は、従業員の貢献に基づいて報いることをより重視するものであり、それゆえ資本主義的な公正、すなわち自らのインプットと結果との比とみなすことができる。他方で平等は、各従業員に同一の報酬を与える。最後に必要性とは、個人的な必要に基づいて便益を提供することである[11]。

手続き的公正

手続き的公正は、結果に至る過程の公正さと定義される。個人が、その過程において自らの意見を表明する機会があると感じるとき、あるいはその過程が一貫性、正確性、倫理性、偏りのなさといった特徴を備えていると感じるとき、手続き的公正は高まる[12]。手続き的公正とは、配分過程の適切さである[11]。それは、一貫性、偏りのなさ、正確性、関係者全員の代表、修正、倫理という六つの主要な点を含む。手続き的公正は、制度の正統性を維持するうえで不可欠であると思われる。さらに興味深いことに、手続き的公正は、労働者が組織全体について抱く信念に影響を及ぼす。

相互作用的公正

相互作用的公正(英語版)は、決定が下される際に個人が受ける処遇を指し、決定についての説明を提供し、配慮と敬意をもって知らせを伝えることによって促進されうる[13]。2001年に公表された構成概念妥当性の研究は、相互作用的公正を対人的公正と情報的公正という二つの構成要素に分割すべきであると示唆している[14]。対人的公正は、自らが受ける処遇における敬意と適切さの知覚を指し、他方で情報的公正は、与えられた説明が適時性、具体性、真実性の点で十分であるかに関わる。

対人的公正は、「手続きを実行し、または結果を決定することに関与する権威者や第三者によって、人々がどの程度まで礼儀、尊厳、敬意をもって扱われるかを反映する」ものである。

情報的公正は、「なぜ手続きが特定の仕方で用いられたのか、あるいはなぜ結果が特定の仕方で分配されたのかについての情報を伝える、人々に与えられる説明に焦点を当てる」ものである。

提案されているモデル

組織的公正の知覚の構造を説明するために、二因子モデル、三因子モデル、四因子モデルという三つの異なるモデルが提案されてきた。多くの研究者は三因子モデルの観点から組織的公正を研究してきた[15][16]一方で、対人的公正が手続き的公正に包摂される二因子モデルを用いた研究者もおり、さらに四因子モデルがデータに最もよく適合すると示唆する研究もある[14]。グリーンバーグ(Greenberg, 1990)は二因子モデルを提唱し、スウィーニーとマクファーリン(Sweeney and McFarlin, 1993)は分配的公正と手続き的公正から構成される二因子モデルを支持する結果を見いだした。構造方程式モデリングを用いることにより、スウィーニーとマクファーリンは、分配的公正が個人レベルの帰結(例えば給与満足)と関連する一方で、手続き的公正は組織レベルの帰結(例えば組織コミットメント)と関連することを明らかにした[17]。

二因子モデルの正確さは、第三の因子(相互作用的公正)が関与している可能性を示唆する研究によって疑問に付された。相互作用的公正は相互作用の社会的交換の側面と処遇の質を表すのに対し、手続き的公正は決定の結果に至るために用いられた過程を表すため、両者は異なるものであると論じる者もいる[13]。一般に研究者は手続き的公正と分配的公正の区別については一致しているが、相互作用的公正と手続き的公正の区別についてはより多くの議論がある[18]。コルキット(Colquitt)は、四因子モデル(手続き的公正、分配的公正、対人的公正、情報的公正を含む)が、二因子モデルや三因子モデルよりも有意によくデータに適合することを示した。コルキットの構成概念妥当性の研究はまた、四つの構成要素のそれぞれが、異なる主要な組織的帰結(例えばコミットメントや規則遵守)に対して予測的妥当性をもつことを示した[14]。

バーン(Byrne)[19]とその同僚たち[20]によって提案された組織的公正のもう一つのモデルは、組織的公正が多焦点的な構成概念であり、そこでは従業員が公正を組織または上司のいずれかという源泉から生じるものとしてとらえる、と示唆した。したがってバーンは、公正を三因子あるいは四因子の構成要素モデルとしてとらえるのではなく、従業員は組織を擬人化し、組織あるいは上司が自分を公正に扱ったか(相互作用的)、公正な手続きを用いたか(手続き的)、あるいは報酬や職務の割り当てを公正に配分したか(分配的公正)を区別していると示唆した。多くの研究者が、公正が単なる三因子ないし四因子以上のものである可能性を探究するためにこのモデルを用いた[21]。

公正知覚における感情の役割

組織的公正の知覚の形成において役割を果たすことが示されている主要な構成概念の一つが感情(affect)である。組織的公正の知覚における感情の正確な役割は、検討されている感情性の形態(情動、気分、性向)、ならびに測定される文脈および公正の類型に依存する。感情は、組織的公正の知覚の先行要因、帰結、さらには媒介変数としても機能しうる。

バースキー(Barsky)らは、公正知覚の形成における評価段階および反応段階の様々な局面で感情および情動が果たす役割を説明するモデルを提示し、不公正が一般に感情を伴う主観的な経験であることを明らかにしている[3]。感情および情動は、知覚された不公正に対する反応の一部となりうる。知覚される不公正が大きいほど、より高い程度の否定的情動が経験されることが諸研究によって示されているためである。加えて、感情は、公正知覚と、知覚された不公正を是正するために取られる行動との間の媒介変数として作用しうる。感情は衡平理論においてこの役割を果たしており、否定的な感情反応が知覚と行動との間の媒介変数として作用する。公正に対する情動的反応が、衡平を回復するための行動を取るよう個人を動機づけるからである。

バースキーとカプラン(Barsky & Kaplan)による2007年のメタ分析は、この主題に関する多くの研究を集約し、状態レベルおよび特性レベルの感情が公正の知覚に影響を及ぼしうることを説明している[22]。同分析は、状態レベルおよび特性レベルの否定的感情がいずれも公正知覚の先行要因として作用しうるという考え方を支持している。状態レベルおよび特性レベルの否定的感情は、相互作用的公正、手続き的公正、および分配的公正の知覚と負の関連を示す。逆に、状態および特性レベルの肯定的感情性は、相互作用的公正、手続き的公正、および分配的公正のより高い評定と結びついていた。

公正知覚における感情の中心的役割に関する研究を踏まえ、ラング、ブリーズ、ラング、アドラー(Lang, Bliese, Lang, & Adler, 2011)はこの研究を発展させ、否定的感情が臨床的水準で持続する状態(抑うつ)が組織における不公正の知覚の先行条件となりうるという考え方を検討した。彼らは組織的公正の知覚と従業員の抑うつ症状との間の縦断的な交差遅延効果を検証し、抑うつ症状がその後の組織的不公正の知覚をもたらすことを見出した[23]。したがって、この場合には感情が公正知覚の先行要因として機能しうる。

公正知覚の先行要因

従業員の参加

組織的公正の知覚の先行要因の一つは、従業員が意思決定やその他の組織的手続きに関与していると感じる程度である。従業員が過程において自らの意見が反映されていると感じる場合には、参加の機会があると知覚しない場合よりも、高い水準の公正が知覚される(グリーンバーグとフォルジャー、Greenberg & Folger, 1983)。意思決定に参加する機会または能力は、たとえその決定が当該個人にとって望ましくないものであっても、その個人の手続き的公正の知覚を向上させる[24]。さらに、他の研究では、従業員の意見反映が手続き的公正と対人的公正の双方の知覚に関連していることが示されている[25]。

コミュニケーション

組織的公正の知覚の第二の先行要因は、組織による従業員とのコミュニケーションである。コミュニケーションは、対人的公正および情報的公正の知覚と関連することが示されている。組織または管理者によるコミュニケーションの質は、管理者の信頼性に対する従業員の知覚を高め、また不確実性の感覚を低減することによって、公正知覚を向上させうる[25]。公正知覚への影響が肯定的なものとなるためには、提供される情報が正確であり、適時であり、かつ有用であることが重要である[26]。

公正風土

組織的公正の知覚は、同僚やチームの成員など他者によって影響を受けうる。近年の研究は、チームレベルの公正知覚が「公正風土」と呼ばれるものを形成し、それが個人自身の公正に関する見方に影響を及ぼしうることを示唆している[27]。チーム内で働く従業員は互いに自らの知覚を共有することがあり、それが出来事の公正さについての共有された解釈につながりうる。研究の知見によれば、個人はチームの成員から公正の評価を「学習」することができ、これがチーム内での公正知覚の同質性をもたらし、強い公正風土を生み出しうる[28]。したがって、集団レベルの公正知覚は、個人の公正知覚の先行要因として概念化することができる。

公正知覚の帰結

組織内の不公正に対する従業員の知覚は、肯定的なものと否定的なものの双方にわたる無数の帰結をもたらしうる。帰結は、組織的公正全体に対する知覚によって、あるいは組織的公正の異なる要素によって影響を受ける。組織的公正の影響を受ける帰結としてよく挙げられるものには、信頼、遂行成果、職務満足、組織コミットメント、組織市民行動(OCB)、非生産的職務行動(CWB)、欠勤、離職、情緒的消耗がある。

信頼

信頼と組織的公正の知覚との関係は、互恵性(英語版)に基づいている。組織に対する信頼は、現在の組織の決定が公正であるならば将来の組織の決定も公正であろうという従業員の信念から形成される。従業員の組織に対する信頼が継続し、かつ組織が従業員の公正さへの期待に応え続けることが、信頼と組織的公正との間の互恵的な関係を作り出す[15]。研究によれば、手続き的公正は組織に対する信頼の最も強力な予測因子であることが見いだされている[18][29]。従業員と上司との良好な関係は、組織に対する信頼につながりうる[21]。

職務遂行

組織的公正の知覚が遂行成果に及ぼす影響は、衡平理論に由来すると考えられている。このことは、人々が不公正を知覚したとき、公正を回復しようとすることを示唆する。従業員が公正を回復する方法の一つが、自らの職務遂行の水準を変えることである。手続き的公正は、従業員の態度に及ぼす影響の結果として遂行成果に作用する。分配的公正は、効率性や生産性が関わる場合に遂行成果に作用する[18]。公正知覚を改善することは、生産性と遂行成果を向上させる[21]。

職務満足と組織コミットメント

職務満足は、組織的公正の全体的な知覚と正の関連をもつことが見いだされており、知覚される不公正が大きいほど職務満足の水準は低くなり、知覚される公正が大きいほど職務満足の水準は高くなる[5]。さらに、組織コミットメントは手続き的公正の知覚と関連しており、知覚される不公正が大きいほどコミットメントは減退し、知覚される公正が大きいほど組織へのコミットメントは増大する[15][18]。

組織市民行動

組織市民行動とは、従業員が組織を支えるために行う、職務記述書の範囲を超えた行動である。OCBは、手続き的公正と分配的公正の双方の知覚に関連している[15][18][21]。組織の行動や決定がより公正であると知覚されるほど、従業員はOCBに従事する可能性が高くなる。カリカーとウィリアムズ(Karriker & Williams, 2009)は、OCBが上司と組織のいずれに向けられるかは、公正の知覚が上司に由来するのか組織に由来するのかによって決まることを明らかにした。さらに、対人的公正とOCBとの間にも関係が見いだされたが、この関係は公正知覚の源泉によって媒介されていなかった[21]。

非生産的職務行動

非生産的職務行動(CWB)とは、「組織の成員による意図的な行動であって、組織がその正当な利益に反すると見なすもの」である[30]。組織的公正がCWBに影響しうる理由は数多く存在する。たとえば、手続き的不公正であるという判断が高まると、従業員が組織の規則に従うことを望まなくなることがある[18]。これは、知覚された手続き的不公正とCWBとの関係が、知覚された規範的葛藤、すなわち従業員が自らの作業集団の規範と組織の規則との間に葛藤を知覚する程度によって媒介されうるためである[31]。したがって、手続き的不公正の知覚が従業員に規範的葛藤を知覚させるほど、CWBが生じる可能性は高くなる。

欠勤と離脱

欠勤、すなわち不出勤は、衡平理論に関連する、知覚された不公正のもう一つの帰結である。昇進を得られなかったことは、不公正の感情によって従業員が理由なく職場を欠勤するという事態が生じうる状況の一例である。ジョンズ(Johns, 2001)は、人々が組織に対する自らのコミットメントと自らに対する組織のコミットメントの双方を高いと見なす場合に、欠勤が減少することを見いだした[32]。さらに、離脱(withdrawal)、すなわち組織を離れることは、同じ衡平理論の原理に由来するより極端な帰結である。分配的公正の知覚は、離脱(withdrawal)と最も強く関連している[18]。

情緒的消耗

従業員の健康およびバーンアウトに関連する情緒的消耗は、全体的な組織的公正の知覚と関連している。公正の知覚が高まるにつれて従業員の健康は向上し、バーンアウトは減少する。分配的公正、手続き的公正、相互作用的公正の知覚は、時間とともに薄れていく状態特有の水準の情緒的消耗を捉えることができるが、公正知覚と情緒的消耗との関係を時間の経過にわたって最も安定的に描き出すのは、全体的な組織的公正の知覚である[16]。

健康

シュンクら(Schunck et al.)によれば、身体的健康は従業員の分配的公正の知覚と関連している。従業員の収入の公正さに対する知覚が低下するにつれて、その従業員の身体的健康は低下する[33]。

離職意図

不公正および不公平の知覚は、離職意図の重要な先行要因かつ決定要因である[34][35]。言い換えれば、離職意図は従業員の公正さの知覚から生じる重大な帰結である。組織的公正の三つの次元はいずれも従業員が組織を去ろうとする意図に関与しうるが、相互作用的公正と分配的公正は、手続き的公正よりも離職意図をよく予測する[36]。

対立管理

組織的公正の問題に敏感な管理者は、従業員との対立に直面した際に協調的な対立管理の方法を採用する可能性が高い[37]。

脚注

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関連項目