| ヒストリエ | |
|---|---|
| ジャンル | 歴史漫画 |
| 漫画 | |
| 作者 | 岩明均 |
| 出版社 | 講談社 |
| 掲載誌 | 月刊アフタヌーン |
| レーベル | アフタヌーンKC |
| 発表号 | 2003年3月号 - |
| 巻数 | 既刊12巻(2024年6月現在) |
| テンプレート - ノート | |
| プロジェクト | 漫画 |
| ポータル | 漫画 |
『ヒストリエ』(HISTORIĒ)は、岩明均による歴史漫画。『月刊アフタヌーン』(講談社)において2003年3月号から連載中。作者がデビュー前から構想を温めていた作品である[1]。
2010年に第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞を[1]、2012年に第16回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した[2][3][4]。
紀元前4世紀の古代ギリシア世界を舞台に、マケドニア王国のアレクサンドロス大王に仕えた書記官・エウメネスの波乱の生涯を描いている。エウメネスはアッリアノスの『アレクサンドロス東征記』などにも登場する実在の人物である。
2006年ごろから休載が目立つようになっているが、『月刊アフタヌーン』2008年2月号掲載分(第43話)までを第1部とし、同3月号からは第2部として連載中である。
(遅くとも)2013年ごろには隔月連載になっており、一部は下書きのまま掲載されることがある。そのため単行本発売時には単行本化作業が必要となり、休載に入る。また、雑誌掲載時に1話の頁数が単行本の1話分より少ない場合があり、単行本収録時に再構成されることがあるため[注 1]、同じ話でも雑誌掲載時と単行本では話数が異なる[注 2]。
『月刊アフタヌーン』2022年10月号(8月24日発売[5])にて作者は、発売時期は未定であるが単行本第12巻の作業をするため、休載することを発表[6]。同時に「物語全体を確実に「完結」に辿り着けさせるための思案をめぐらしてゆかねば」とコメントしている[6](第12巻は2024年6月21日に発売された)。同誌2024年8月号(6月25日発売[7])にて「完成原稿の描き貯め」と「進行を少しでも速くするための模索」を理由として、引き続き長期休載をすることを発表[8]。
紀元前343年、北東ギリシアのトラキア地方に位置する都市国家・カルディアは、北西の強国・マケドニア王国の軍勢の包囲を受けていた。全ギリシア統一を目論む国王・フィリッポス2世によって鍛えられた重装歩兵団は整然とした隊列を作り、城塞都市を十重二十重に取り囲んでいた。
重厚な軍勢に囲まれた街には到底立ち入る隙がないように見えたが、一人の青年が隊列の間を平然とくぐり抜け城門まで辿り着く。青年の名はエウメネス。エウメネスはギリシア世界を取り巻く政治情勢の分析から、包囲は恭順を迫る示威行動に過ぎないことを見抜き、さらに巧みな弁舌を振るって固く閉じられていた城門を開けさせ、見事に街に入ることに成功する。
同じく街へ入ろうとしていた隻眼の商人・アンティゴノスはエウメネスの機転に感嘆し、自分の下で働く気はないかと彼を勧誘する。アンティゴノスは商用で街の顔役であるヒエロニュモスに会うためにカルディアに来たという。奇遇にも、エウメネスがカルディアに来た理由も同様で、ヒエロニュモス邸を訪うことにあった。ただしエウメネスの目的は商用ではなく、少年時代以来久しく離れていた「我が家」への里帰りのためであった。
エウメネスは、カルディアの顔役であるヒエロニュモス家の次男として幼少期を過ごした。エウメネスは子供の頃から並外れて利発で、その頭の良さは大人も舌を巻くほどのものだった。恵まれた家庭環境の下、大好きなオデュッセウスの英雄譚やヘロドトスの歴史書に読みふけりながら、何ひとつ不自由のない幸福な少年時代を過ごした。(第1巻)
しかし、ある日脱走したスキタイ人奴隷が常人離れした剣の腕で市民兵を次々と殺傷し、カルディアの街を震撼させる事件が起こる。ヒエロニュモスの部下のヘカタイオスとゲラダスはこの混乱に乗じて主を殺し、逃げ切れず死んだ奴隷にその罪を着せようとする。もの聡くその企みを見抜いたエウメネスは査問会で邪な陰謀を告発するが、ヘカタイオスは疑いをそらすためにエウメネスがヒエロニュモス家の子ではなく、拾われたスキタイ人の奴隷であったというエウメネスも知らなかった出自の秘密を暴露する。ヘカタイオスは父に代わって街の実権を握り、エウメネスは奴隷身分に墜とされることになる。(第2巻)
エウメネスは旅の商人に大金で買われてカルディアを去ることとなる。ところが航海の最中に奴隷達の反乱が起こって船は沈没し、エウメネスは黒海南岸のパフラゴニア に漂着し、そこにあるボアの村の人々に助けられ、思わぬことで自由の身となる。エウメネスは自身の蓄積したギリシアの知識を伝えることで村人達に受け入れられ、当初はエウメネスを胡散臭げに見ていた居候先の少女・サテュラも次第に彼に好意を寄せるようになってゆく。(第3巻)
ボアの村は近隣のギリシア人都市・ティオス市の庇護を受けていた。ティオスとの関係は良好なものであったが、エウメネスが青年に成長した頃、ティオスの顔役の息子・ダイマコスが父が病臥したことを機に私兵を率いてボアの村を征服しようと企てる。ダイマコスの行動を見かねた弟のテレマコスは内密にボアの村を訪れて退去を薦めるが、村人達は村を捨てることを拒み、エウメネスの提案で籠城戦を決断する。
エウメネスは鮮やかな智慧で村人を指揮してダイマコスの私兵を迎え撃ち、戦いはボアの勝利に終わる。ダイマコスの死によりボアとティオスの和睦は成るものの、不意なことから村人達が謀略を仕掛けてダイマコスを陥れたことが露見してしまう。テレマコスは激昂するものの、エウメネスは村とティオスとの関係を損ねぬために一人でテレマコスの怒りを被って村を去ることになる。恋仲になっていたサテュラとも別れて村を出たエウメネスは、行く宛てもないまま「故郷」・カルディアへの帰途についたのだった。(第4巻)
すでに廃屋となっていたヒエロニュモス邸に佇みながら、エウメネスは過去の追憶に思いを馳せる。やがて旧友達とも再会を果たしたものの、復讐に戻ってきたと早合点して襲ってきたゲラダスを返り討ちにしたことで、ヘカタイオスに追われる身となる。もはやカルディアにもいられなくなったエウメネスは、自称・商人のアンティゴノスの誘いに乗ることを決めるが、彼こそがマケドニア国王その人であった。紀元前343年、カルディアはマケドニアの軍門に降った。
マケドニア王・フィリッポスにその才能を見込まれたエウメネスは、書記官見習いとして王に仕えることとなる。マケドニアの首都・ペラでは名門貴族・アッタロスの邸に身を寄せることとなり、姪のエウリュディケとも懇意となる。新たな生活にも落ち着き、書記官の仕事にも慣れてきた頃、エウメネスは王宮で額にヘビのような奇妙なあざを持った少年を見かける。彼こそがフィリッポス王の後継者、王子・アレクサンドロスであった。(第5巻)
哲学者・アリストテレスを招いてフィリッポスが創設した「ミエザの学校」は、マケドニア貴族の子弟を集めた幹部養成校であり、生徒たちは王国の将来を担う存在となるべく日々学業に邁進していた。中でも王子たるアレクサンドロスは、年少ながらすでに文武共に余人にない才能を示している。かといって傲ることのない謙虚で誠実な人柄は、王の後継者として非の打ち所のないものであった。が、その精神の深層には凶暴な別人格「ヘファイスティオン」が潜んでいた。(第6巻)
「ヘファイスティオン」は、アレクサンドロスの実母・フィリッポスの第4王妃オリュンピアスが作り出したことが語られる[注 3]。以後、折にふれてアレクサンドロスの精神を乗っ取る別人格を作り出したオリュンピアスは、二つの心を持つ我が子をフィリッポスをも踏み超える存在に育てるべく、野心を燃やすようになる。だが、そんな母親の思惑はともかく、アレクサンドロスはミエザに集まった子弟たちとの交流を深め、地元民であるペウケスタスを学校に迎える。
ペラのエウメネスはフィリッポスの命により作り出した「マケドニア式・将棋」を発表する。マケドニア全体にも徐々に広まっていくが、エウメネスが読みとったフィリッポスの真意は、贈答品として贈った将棋に他国の貴族・王族や有力者が、この娯楽にハマり込んで政治を疎かにさせることだった。そして、エウメネスは屋敷を与えられ、正式なマケドニア王国の家臣となる。(第7巻)
紀元前340年、フィリッポスはペリントス・ビザンティオン二都市への攻略に乗り出した。ギリシア世界の中心都市であるアテネと同盟を結ぶ両都市を陥落させることは、マケドニアによるギリシア統一に頑強に抵抗する宿敵アテネを屈服させる足がかりとなる。正式に書記官となったエウメネスも、フィリッポスに従いこの遠征に従軍することになる。(第7巻)
マケドニア軍は二都市を包囲するも、アテネの支援を受けたその守りは思いのほか堅牢だった。アテネは因縁深いペルシアとも手を結んでおり、二都市にペルシアからの軍事援助まで受けさせていた。やがて将軍フォーキオン率いるアテネ艦隊が両都市の周辺海域を制圧すると、フィリッポスはやむなく撤退を決意する。攻略戦は失敗したものの、退却中スキタイの部族との戦いに勝利したマケドニア軍は本国への帰途につくが、蛮族の強襲に不意を突かれフィリッポスが重傷を負ってしまう。
フィリッポスに代わって指揮を執ったエウメネスは敵を退散させることには成功するものの、しかしマケドニア軍は大きな損害を被り、結局今般の遠征は散々な結果に終わることとなった。勢いづいたアテネではマケドニアとの決戦を望む強硬論が沸騰し、反マケドニアに燃え上がるその様子を耳にしたフィリッポスもついに決戦を決断する。一方、ペラに戻ったエウメネスは、恋仲になったエウリュディケの接吻によって迎えられる。(第8巻)
決戦に先立ってアンティパトロスから密命を受けたエウメネスは、商人を装ってアテネに潜入する。密命とは来るべき戦において最も難渋する敵将となるであろうフォーキオンを将軍職から追い落とす政治工作を謀ることにあったが、しかしすでにアテネは指導者デモステネスの唱える主戦論一色に染まっており、反戦を訴えるフォーキオンは世論の中で孤立していた。やがてフォーキオンは将軍職から退き、近隣の有力都市・テーベなどとの軍事同盟を成立させたアテネは、いよいよマケドニアとの決戦に打って出る。
紀元前338年、マケドニア軍とアテネ・テーベの連合軍は中央ギリシアのカイロネイアにおいて激突した。斜線陣を引いて連合軍に対峙したマケドニア軍は、戦端が開かれてほどなく後退の姿勢を見せる。勢いづいたアテネ軍はここぞとばかりに攻勢をかけようとするが、しかしこの後退はフィリッポスの策略であった。テーベ軍との間に生じた綻びに部隊を突き入れて攪乱させることを企図した戦術であったが、副将のアレクサンドロスは自らが部隊を率いて敵陣に突入することを志願する。(第9巻)
アレクサンドロスの一騎駆けがきっかけとなり戦の趨勢は決まった[注 4]。テーベ軍は壊滅し、アテネ軍も四分五裂して戦場から遁走し、戦いはマケドニアの完勝に終わる。テーベは占領され、アテネは辛うじて自治を許されたもののマケドニアの属邦に下り、長きに渡ってエーゲ海を支配した「海上帝国・アテネ」はここに消滅した。ついに累年の宿敵を滅ぼしたマケドニア軍は、ペラへと凱旋することになる。
しかし、エウメネスを待っていたのは、恋人のエウリュディケが「フィリッポスの第7王妃」として王宮に入るという報せだった。(第10巻)
マケドニアを去る決意をしたエウメネスであったが、婚儀を控えて王宮に召されたエウリュディケの身辺に、オリュンピアスの魔の手が伸びていることを察知する。自らの息子であるアレクサンドロスの王太子としての地位が脅かされることを危惧したオリュンピアスは、エウリュディケを害するべく毒殺を試みるものの、すんでの所でエウメネスに見破られて露見する。
事の次第を知ったフィリッポスは故国モロッシアへの帰郷を命じ、オリュンピアスは護送部隊とともにペラを立つが、しかしフィリッポスは道中で賊に襲われた体を装ってオリュンピアスを葬る算段であった。護送部隊には暗殺団も加えられており、一員には王宮護衛兵・パウサニアスもいた。フィリッポスに近侍する手練れの兵士で、「心が無い」と評されるほどの冷血漢であり、アレクサンドロスに酷似した面相を持つ男である。(第11巻)
名前の横に「*」がついているキャラクターは史実上実在した人物。

「第8話 スキタイ流」においてエウメネスがメディア王国の将軍ハルパゴスについて語る場面がある。理不尽な形で国王に殺された息子の仇を討つため、忠臣を演じながら何年間も復讐の機会を伺っていたハルパゴスが、メディア王国に反旗を翻す瞬間を描いた箇所(単行本第1巻、184ページ)は、感情の動きを読み取れず読者を惑わせるコマが続いた後に衝撃的な台詞が続く印象的な場面となっており[10]、インターネット上においてさまざまなコラージュ画像(面白画像)やアスキーアートが二次創作され、有名となった[11][10][12]。インターネット上ではこの場面の他にも、本作における印象的な場面の台詞が本来の文脈から離れて(すなわちインターネット・ミームとして)引用されることがある[10][12]。
インターネット・ミームとして引用されるハルパゴスの場面は、大ゴマとして描かれる台詞の場面が1コマだけ抜き出されることが多いものの[10]、漫画研究家の中田健太郎と野田謙介は、この場面はハルパゴスが視線をさまよわせる直前の2コマを含めて1つの塊となっており、前後の文脈を踏まえてこそ味わい深いと評している[10]。類似の表現は同じくインターネット・ミームとなっている、第3巻で主人公エウメネスが自身の出生の秘密を知らされ絶叫する場面にも見られる[10]。
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