中国産食品の安全性

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中国産食品の安全性(ちゅうごくさんしょくひんのあんぜんせい)では、中華人民共和国(中国)で生産・加工される食品の安全性、品質管理、衛生状態、有害物質の混入リスク、およびそれらに対する内外の対応や規制について扱う。

中国における食の安全性問題は、国内の消費生活のみならず、中国から食品を輸入する日本を含む世界各国において重要な関心事となってきた。2000年代から2010年代にかけて、残留農薬や違法添加物の使用、偽装食品、環境汚染に起因する重金属汚染などが相次いで発覚し、国内外で大きな社会的関心を集めた。これに対し中国政府は、食品安全法の改正や取締りの厳罰化、監督行政の再編などの改善策を進めてきたが、製造・流通の現場における課題や企業モラルの維持、規制の実行性をめぐる議論は現在も続いている[1]。

概要

中国の社会主義計画経済時代には、食料政策は品質面よりも量の確保を重視したため、衛生面への配慮や制度の整備が十分ではなかった[1]。一方、毛沢東時代から、特供体制(中国語版)と呼ばれる、中国共産党幹部に新鮮で安全な食材を提供する制度があり[2]、幹部は庶民より衛生的な食生活を送っていた[3]。

1990年代から2000年代の改革開放に伴う市場経済への移行期には、食品産業の規模が急速に拡大した。しかし、経済的利益や供給量の確保を優先した結果、生産基盤は小規模農家や未成熟な事業者に大きく依存することとなり、行政による監督や安全管理の遅れが顕著となった。1995年に「食品衛生法」を制定した[1]。1990年代後半には、農場の特定作物への専門化や、地方市場と国内外市場との連結が進んだ。2001年には、食中毒や汚染問題を解決するため「国家品質監督検査検疫総局」を創設し、行政体制の整備を急いだ[1]。一方、中央政府の介入がない限り、地方当局による規制はおおまかなものにとどまっていた[4]。

2001年のWTO加盟後、中国の食品工業は急速な成長を遂げた。生産高は2002年の約1兆元から2009年には約5兆元へと7年間で5倍に急増し[1]、特に肉製品、乳製品、缶詰などの生産増加により、都市部における食生活の高度化および多様化が進んだ。同時に、中国政府は食品輸出の促進策を講じたものの、諸外国の安全基準を「緑色貿易障壁」だと批判した。

2000年代以降は、毒菜問題、メラミン入りミルク事件(2008年)、日本向け輸出品における残留農薬問題、地溝油(再生悪質食用油)の流通など、健康被害を伴う大規模な問題が相次いで発覚した。2010年の中国衛生部弁公庁による食中毒調査では、微生物性食中毒が4585人、化学性食中毒が682人、有毒動植物食中毒が1151人であった[5]。

これにより、国内の消費者だけでなく、日本など輸出先の諸国でも不信感が高まった。2011年に中国国家統計局黒竜江省がハルビン市で実施した世論調査では、71%が中国産食品に失望していると回答した[1][5]。また、朝日新聞社が日本国内で実施した世論調査では、中国から輸入される食品の安全性を「あまり信頼していない」と答えた人が51%、「まったく信頼していない」と答えた人が38%に上り、「ある程度信頼している」の10%をはるかに上回った[6]。なお「大いに信頼している」は0%だった。

こうした不信感が、輸入検疫の強化やポジティブリスト制度の導入など、安全基準を厳格化する要因となった。中国は2009年に「食品安全法」を制定し、2015年には同法を大幅に改正して、生産・流通責任の明確化や罰則の強化を盛り込んだ。さらに2018年の行政機構改革では「国家市場監督管理総局」を設置し、市場監督と食品安全行政の一元的な管轄・統合を進めた[7]。法整備と輸出向け指定工場での厳格な検査体制の導入により、特定品目で品質の改善が見られる一方、国内市場向けや小規模事業者に対する監督の実効性には依然として課題が指摘されている。

近年では、SNSの普及やデジタル化に伴い、不衛生な調理環境や期限切れ食材の使用、不適切な輸送体制などの現場映像や告発動画が拡散し、問題が顕在化する事例が増えている。政府は規制強化や技術的対策を進める一方、土壌・水質汚染などの環境問題、膨大な事業者を網羅する監督体制の維持、事業者や労働者の衛生意識・倫理観の向上など、根本的な課題の解決が引き続き求められている[1]。

社会的に反響を呼んだ主な食品安全事件

毒菜

2002年、香港で中国産食品の残留農薬が問題化した。毒菜(中国本土では「問題菜」と呼称)による被害が報じられ、香港では毒菜の扱いを警告する野菜用洗剤のコマーシャルメッセージが流れた[注 1]。

人毛醤油事件

2004年1月、中国中央電視台が、人毛を精製して作る醤油を暴露する番組「毛髪水醤油」を放送した[9]。記者の間で頭髪を原料にした醤油のことが話題になっていたことから、取材が始まった。製造者によれば、人毛・頭髪は中国国内の美容院や理容店、病院から集めたもので、中にはゴミ(使用済みのコンドーム、使い古した病院綿、使用済みの生理用品、使い古した注射器など)が混入しているという。人毛からアミノ酸を抽出し、液体または粉末に精製して作った人毛醤油は、秘密裏に日本などの外国へ輸出しているという。その後、中国政府は人毛を使った醤油の製造を禁止した。

安徽省偽粉ミルク事件

2004年4月、安徽省阜陽市で少なくとも13人、同省内で50-60人以上の幼児が、偽粉ミルクを飲んで栄養失調により死亡した(中国語で「阜陽劣質奶粉事件」)。同省内の100-200人の幼児も栄養失調に陥ったが、かろうじて命を取り留めた。当局は、阜陽市の偽粉ミルクの製造・販売の責任を負っていた公務員47人を逮捕した。調査員は、阜陽市の食料品店で45種類もの偽商品を見つけた。141以上の工場が偽粉ミルクの製造に関わっており、中国政府は4月中旬までに偽粉ミルクが入った2540袋を押収した。国家食品薬品監督管理局は同年5月に調査を開始した。医師によると、幼児は巨頭症を患っていた。幼児は粉ミルクを飲んで3日以内に頭部が膨張し、栄養失調のためやせてしまった。国が定めた基準ではタンパク質を10%含まなければならなかったが、偽粉ミルクは1-6%しか含んでいなかった。政府は遺族への賠償と、被害者家族の医療費の援助を約束した[10][11][12]。

四川泡菜への工業塩使用問題

2006年、作家の周勍が中国で発表した「民以何食為天」は、四川省の有名な漬物四川泡菜の工場で「食品不可」と書かれた工業塩を大量に使用し、漬物桶の殺虫剤として純度99%のDDTを使用していたと報告している[13]。

ジエチレングリコール混入事件

2006年から2007年にかけて、ジエチレングリコールが混入した中国製咳止めシロップにより、パナマで365人が死亡した[14]。2007年5月には、パナマで中国製歯磨き粉から致死量のジエチレングリコールが検出された[14]。同月、ドミニカ共和国とオーストラリアでも見つかった[15]。

2007年6月1日、米国食品医薬品局(FDA)は、ロサンゼルス、プエルトリコ、マイアミで中国製歯磨き粉(商品名「ShiR Fresh Mint Fluoride Paste」)からジエチレングリコールが検出されたと発表した[15]。米国の疾病管理センターとパナマ当局の合同調査により、溶解剤や不凍液など工業目的に使うジエチレングリコールを、解熱やせき止めの効果を持つグリセリンと偽装して、中国の江蘇省泰興市の工場で製造し、バルセロナの貿易会社経由でパナマに流通させていたことが判明した[15]。その後、中国当局は工場責任者を検挙した[15]。

日本でも同年、厚生労働省が中国製医薬部外品などの自主調査を製造業各社に要請したところ、2つの製品からジエチレングリコールが検出されたため、販売元が自主回収した[16]。

ペットフード大量リコール事件

アメリカ合衆国などで、中国産原料を用いたペットフードを食べた犬や猫など数百匹が死ぬ事件が起こった。この事件では、メラミンと、メラミン合成時の副産物であるシアヌル酸が尿中で反応して生成した結晶(シアヌル酸メラミン:メラミンシアヌレート)が、腎不全を引き起こしたものと考えられる[17]。メラミンは、ペットフード中のタンパク質含有量(窒素含有量)を多く見せかけるために混入された[注 2]。(贋造)

中国製冷凍餃子中毒事件

2007年12月下旬から2008年1月にかけて、中国の河北省食品輸出入集団天洋食品工場(以下「天洋食品」)が製造し、日本たばこ産業(JT)の子会社であるジェイティフーズが輸入し、日本生活協同組合連合会が販売した冷凍ギョーザを食べた、千葉県と兵庫県在住の10人が健康被害を受けた事件[18][19]。原因は、冷凍ギョーザに有機リン系殺虫剤のメタミドホスが致死量含まれていたことだったが、毒物の混入が中国での製造段階か、日本への輸入後かをめぐって日中両国の見解が対立し、外交問題にまで発展した。2010年、中国当局は同社の中国人元従業員を、同社内で冷凍ギョーザにメタミドホスを混入させた容疑で逮捕し、2014年に無期懲役の判決が言い渡された[20][21]。この事件は日本国内で大きな社会問題となり、中国産食品の食の安全が注目を集めた。

中国産冷凍食品の農薬混入

2008年1月から2月にかけて、中国製冷凍ギョーザ事件を受けたユーコープ事業連合(本部:神奈川県横浜市)の自主検査で、ニッキーフーズの中国法人である山東仁木食品が製造した冷凍食品から、メタミドホスやホレートなどの有機リン系農薬が検出されたため、商品を自主回収した[22][23]。

この件について、中国の国家品質監督検査検疫総局は、いずれもニッキーフーズの中国法人が製造した製品であることから「日本の単独出資企業の製品であり、日本側に監督責任がある」との声明を出した[24]。ニッキーフーズの社名も大きく報道され、同社は経営危機に陥った[25]。その結果、加ト吉の買収に失敗した日清食品が、ニッキーフーズを救済する形で創業家から株式を買収し[25]、ニッキーフーズは日清食品グループ入りした[25]。

メラミン入りミルク事件

2008年9月8日、甘粛省蘭州市の中国人民解放軍第一医院の李文輝医師は、6月28日以来メラミンで汚染された粉ミルクを飲んだ乳児14人が腎臓結石になっていたことを明らかにした[26]。粉ミルクは河北省石家荘市の「三鹿集団」が製造しており、同社は8月6日以前に製造した粉ミルク700トンの自主回収を決定した[27]。中国衛生部当局は全国調査を行い[28]、質検総局は数度にわたり、中国国内の乳製品検査を行った[29][30][31][32]。

9月14日、河北省当局は三鹿集団にメラミン入りの牛乳を売った搾乳業者2人を逮捕したと発表した[33]。警察当局は、その後も違法業者を摘発している[34][35]。『東京新聞』は石家荘市を取材し、酪農家やブローカー、メーカーが金もうけに走るあまり安全性をなおざりにし、行政はそれを黙認していたと指摘した。同紙は、この事件は偶発的なものではなく、構造的な問題があったと報じた[36]。こうした手口は、少なくとも2005年4月には行われていた[37]。

2008年9月18日、質検総局は「伊利集団」、「蒙牛集団」、「光明集団」の牛乳からもメラミンが検出されたと発表し[38][39]、さらにヨーグルト[40]やアイスクリーム[41]など、乳製品を利用した製品全体に被害が拡大した。また、香港、台湾、シンガポールでも、中国製乳製品を利用した製品からメラミンが検出された[42]。

2008年9月20日、丸大食品は伊利集団製の牛乳を使用していた5つの商品について、メラミンが混入した可能性があるとして回収を発表し[43]、その後の検査でメラミンが検出された[44]。9月20日にシンガポール[45]、9月21日に台湾[46]、9月23日にフィリピン[47]、9月24日にインドネシア[48]、9月25日に韓国[49]、EU[50]、インド[51]、ベトナム[52]が中国製乳製品の輸入停止をそれぞれ発表し、ほかにも東南アジア諸国が中国製乳製品の輸入禁止を発表した[53]。

2008年9月22日、日本では全国知事会長の麻生渡福岡県知事が、中国製乳製品の輸入禁止を政府に求めた[54]が、厚生労働省は輸入業者に対し、中国製乳製品を利用した商品のメラミン検査を義務付けると通知しただけにとどまっている[55]。

2008年9月22日、三鹿集団製の粉ミルクから、有害細菌のエンテロバクター・サカザキが検出された[56]。また同日、質検総局の李長江局長が、この事件の責任を取って辞任した[57]。メラミン問題などの発生を受けて、中国製の乳製品を利用してきた日本のメーカーも、中国以外から原料を調達するよう見直しを迫られ[58]、中国の消費者も安全を求めて日本や米国製の粉ミルクを買い求めた[59]。

2008年9月26日、英国のピーター・マンデルソン大臣が、中国製品の安全性をアピールするため、報道陣の前で中国製の乳製品を飲むパフォーマンスを行い、これを温首相が高く評価した[60]。しかし、マンデルソンはその9日後に腎臓結石と診断されて入院した[61]。

2008年9月30日、共産党宣伝部が国内メディアに対し、この問題に関して新華社が配信する記事以外の報道を控えるよう通知していたことが明らかになった[62]。

2008年10月1日、中国政府は安全性が確保されるまで輸出を停止する旨を各国に通知した[63]。

2008年10月3日、中国の李毅中工業情報相は、乳製品市場の急速な拡大に、行政側の検査体制と企業の品質管理システムの整備が間に合わなかったとの見方を示した[64]。

2008年10月4日、中国農業部は、メラミンが乳牛用の飼料に含まれていたことを明らかにした[65]。10月6日、農林水産省は輸入・製造業者に対し、中国産飼料のメラミン含有検査と、混入が確認された場合の使用自粛を指示した[66]。河北省に住む被害男児の両親は、汚染粉ミルクを製造した三鹿集団を相手取り、15万元(約240万円)の賠償を求めて提訴し[67]、他にも集団訴訟の準備を進めている[68]が、中国当局はこうした動きを妨害している[69]。

2008年12月、三鹿集団は破産を申請した。

2009年1月22日、河北省石家荘市の中級人民法院は、酪農業者ら2人に死刑を、三鹿集団の元会長田文華に無期懲役の判決をそれぞれ言い渡した(田被告は控訴)[70][71]。これまでに腎臓結石で乳幼児6人が死亡し、29万人が被害を受け、メラミンを混入した企業は22社、逮捕者は60人に上っている。

地溝油

2010年ごろから社会問題として注目を集めたのが、いわゆる「地溝油(下水油)」である。これは、下水道の汚水や廃油、飲食店の残飯から抽出・精製した油を、再び食用油として安価で流通させる不正な商売であった[72]。国営ラジオ放送サイト・中国広播網が2010年3月17日に放送し、食用油の年間消費量の10%にあたる200万-300万トンが地溝油であることが明らかになった[73]。2011年には全国的な「大打撃」キャンペーン(一斉摘発)が行われ、同年9月には貴州省などで大規模な違法工場が摘発された[74]。事態の深刻さを受け、中国の最高人民法院(最高裁)、最高人民検察院、公安部は合同で、地溝油の製造・販売業者に対して最高で死刑を適用するという異例の厳罰化通知を公布した[75]。

カドミウム汚染米

2002年、中国政府農業部の「コメおよびコメ製品品質監督検査試験センター」が実施した抜き取り検査で、サンプルの中国米に含まれる重金属の基準値超過率は、鉛が28.4%、カドミウムが10.3%であった[76]。

2007年、南京農業大学農業資源環境研究所の潘根興教授は、中国の6地区(華東、東北、華中、西南、華南、華北)のコメを無作為に分析した。その結果、10%のコメに基準値を超えるカドミウムが含まれており、重金属汚染米は長江以南で生産される籼米(せんまい、インディカ米)で、湖南省と江西省は深刻な状況にあった[76]。

当時の中国のコメの年産量は約2億トンであったため、カドミウム汚染米の量は2000万トンとなり、日本の米生産量882万トン(2007年)の約2.3倍に上る[76]。カドミウム汚染米を食べた広西チワン族自治区桂林市陽朔県興坪鎮の思的村の住民が、骨軟化症や腎機能の低下、筋力低下、骨の激しい痛みを発症しており、これは日本でのカドミウム中毒によるイタイイタイ病と同様の症状である[76][77]。この思的村では、1960年以前からカドミウム汚染が存在していたとの調査報告もある[77]。

2008年4月の潘根興教授の再調査では、江西省、湖南省、広東省などの米の60%以上に、基準値を超えるカドミウムが含まれていた[76]。

中国南部の酸性土壌で「超級雑交稲(スーパー・ハイブリッド稲。袁隆平が開発した品種)」を栽培すると、通常の稲に比べてカドミウムの吸収量が高まる。また、土壌のカドミウム汚染が汚染米の根本的な原因とされた[76]。

2008年以降に限っても、中国の環境汚染による事故は100件以上発生し、ヒ素、カドミウム、鉛など重金属を原因とするものが30件を超え、2009年の湖南省瀏陽市のカドミウム中毒事件では、約500人がカドミウム中毒になり、2人が死亡した[78]。

2010年には、武漢大学環境法研究所の王樹義教授の調査でも、重金属類による土壌汚染が深刻だと指摘された。また、中国科学院生態環境研究センターの調査では、カドミウム、ヒ素、クロム、鉛など重金属汚染の影響を受けている面積は約2000万ヘクタールで、中国の総耕地面積の約5分の1に及ぶ。重金属類以外にも、農薬、抗生物質、病原菌などによる土壌汚染が進行している[79]。

この汚染により、中国全土で毎年1000万トン以上の穀物が減産となっている[79]。

2010年2月3日、中国政府は土壌汚染防治法の公布準備を開始し、法案立案の専門家チームは「中国の現行の土壌汚染防止関連法規は、汚染の管理や改善に重点が置かれており、防止や予防が疎かになっていた」と指摘した[79]。

2011年2月14日、中国で発行された週刊誌『新世紀週刊』で宮靖記者が「鎘米殺機(カドミウム米の殺意)」記事を掲載し、中国政府農業部や潘根興教授の調査に基づくカドミウム汚染米について報じた[76]。この記事は日本でも報道された[76][80]。『財新網』も、中国国内で販売されている米の10%がカドミウムに汚染されていると報じた[77]。

工場排水による土壌汚染などが原因とみられるが、2011年2月時点で、中国には重金属に汚染された土壌での栽培基準が存在しない[77]。北村豊によれば、中国の公害病は日本のかつての公害病よりもはるかに深刻であるが、2011年2月時点で、中国政府は公害病の存在を公式に認めていない[76]。

2013年には、中国最大の米産地の一つである湖南省の一部地域で生産された米が、有害な重金属であるカドミウムに高濃度で汚染されていることが発覚した[81]。基準値を超えるカドミウムを含有していたため、大量に焼却処分される事態となった[81]。

日本への中国米の輸入は増加傾向にあり、2011年上半期には1万5484トンだったが、2012年上半期には3万5965トンに上り、輸入量は2.3倍になった(財務省統計[82])。イオングループ、イトーヨーカ堂などのセブン&アイ・ホールディングス、ゼンショーホールディングスなどは、中国米を取り扱う予定はないとした[82]。

2013年2月14日発売の『週刊文春』によれば[78]、2002年の日本を基準値とすると、長江河口の汚染は、水銀が244倍、鉛が3500倍、ヒ素が1495倍、カドミウムが4.2倍となる[78]。重金属以外でも、BHCやDDTなどの有機塩素化合物による土壌汚染が指摘されている[78]。

中華人民共和国環境保護部の推計では、重金属汚染食料は年間1200万トンに上る[78]。中国の富裕層は中国国内の野菜を信用せず、日本の野菜を食べているのに対し、中国産野菜の日本への輸出は年々増加している[78][82]。

偽装羊肉問題

2013年の中国当局による食品安全の取り締まりで代表的な事件として、キツネ、ミンク、ネズミの肉に着色料などを添加し、ネズミ肉などを羊肉であるかのように装って上海や江蘇省蘇州の市場で販売していた業者関連の集団摘発がある[83]。ネズミ肉などを偽装して販売・流通していた件について、中国国内では限定的な報道にとどまり、外国メディアは驚きをもって伝えた[84][85]。

上海福喜食品期限切れ食肉問題

2014年7月20日、アメリカ企業OSIグループの傘下にある上海福喜食品有限公司が、期限切れの鶏肉を使用したナゲットを製造していたと、東方衛視が報道した[86][87]。従業員が床に落ちた肉を生産ラインに戻す映像が、世界中に配信された[88]。日本マクドナルドやファミリーマートなどは、同社が製造した鶏肉を使用していたとして、販売を中止した。

裸キムチ動画の流出

2021年3月、中国国内の漬物加工場で撮影した動画がSNSで拡散した。大きな泥水のような塩水プールの中で、上半身裸の男性作業員が直接浸かって白菜をかき混ぜる様子や、さびついたパワーショベルですくい上げる様子が映っていた。このほか、唐辛子の山の中に大量のネズミが住み着いていたり、作業員が靴を履いたまま白菜の上を歩いたりする場面もあった。中国当局は「輸出用ではなく、国内流通向けの一部」と説明したものの、海外で中国産加工食品に対する衛生面の不信が再燃した[89]。この出来事は、韓国で「裸キムチ」問題と呼ばれている[89]。

鼠頭鴨頸事件

2023年6月、江西省の大学食堂で提供された食事の中から、ネズミの頭部とみられる異物が見つかった[90]。地元当局は「アヒルの首である」と主張していたが[90]、世論の強い批判を受けて上級機関が改めて調査を実施し、最終的に「ネズミの頭だった」と公式に認定した[91]。

青島ビール放尿事件

2023年10月、歴史あるビールブランド「青島ビール」の工場で、作業員が麦芽を積んだコンテナに放尿する動画がSNSに投稿され、拡散した[92]。当局はこの男に行政拘留処分を下し[93]、企業側はAIを利用した監視体制の強化を発表した[94]。韓国では、中国産ビールの輸入量が前年同月比で急減した[95]。

食用油輸送事件

2024年7月、燃料用タンクローリーが化学液体を荷下ろしした後、コスト削減のために洗浄せず、食用大豆油を輸送していたことが発覚した[96]。これは輸送業界で公然の秘密として常態化していたとされ、当局は関与した企業に罰金を科した[96]。しかし、この問題をスクープした主任調査記者の連絡が途絶え、言論統制を疑う声が上がった[97][98]。

幼稚園の給食への絵の具混入事件

2024年、雲南省にある学校の食堂で腐敗した豚肉が使用された[99]。天水市内の幼稚園では、2024年5月以降、給食の見た目を良くして新規の入園者を増やす目的で、鉛を含有する「絵の具用顔料」で着色した蒸しパンや饅頭などを園児に提供していた。地元当局が2025年7月上旬に実施した検査では、蒸しパンなどから国家基準の2000倍を超える濃度の鉛を検出し、園児251人のうち233人の血中鉛濃度が異常値を示していたことも判明した[99]。この件は、多くの園児が数か月にわたり下痢や抜け毛、鼻血などの症状を訴えたことから発覚した[99]。中には脳障害や神経障害とみられる異常行動を示す園児もおり、201人の園児が「慢性鉛中毒」の疑いで緊急入院した[99]。当局は園長ら8人を刑事拘留し、幼稚園は事実上の閉鎖状態となった[100]。

事例

発がん性入りの着色料

1996年、中国は食品製造業者に対し、赤色着色料にスーダンレッドを使うことを禁止した。これは、他の先進諸国が、発がん性があるなど健康への影響を理由に使用を禁止している動きに合わせたものである。しかし2005年、質検総局と工商総局、国家食品薬品監督管理局は、中国の大都市の多くでスーダンレッドが使用されているのを発見した。北京ではハインツのチリソースに、広東省、浙江省、湖南省、福建省では野菜と麺に、中国国内の1200のケンタッキーフライドチキンや、上海では医薬品に、それぞれ赤色着色料としてスーダンレッドが使われていた。中国政府は、禁止したスーダンレッドを適切に規制できなかった理由として、食品の生産を監視する行政機関が多すぎ、抜け穴を作るなど十分に機能していなかったこと、また、政府機関に着色料を検出する食品検査の準備ができておらず、法を施行するには時期尚早だったことを挙げた。政府は、国家・地方レベルでの食品の安全性を確保するシステムを確立・再編すると発表した[101]。

茶から残留農薬の検出

2000年、日本での食用花、ハーブ茶、健康茶の検査において、中国茶のサンプルのすべてから、有機塩素系の残留農薬のDDTやMEP(フェニトロチオン)が検出された[102]。DDTは発がん性があるため、日本では1971年に農薬としての使用が禁止され、1981年には化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律で製造も禁止された。同調査では、日本製品のサンプルやその他の国のサンプルからも同様に検出され、検出された農薬の数は中国が14、日本が5、その他の国が7であった[102]。日本の食用花からは、エトフェンプロックス、MEP、PAP、クロルピリホス、プロチオホス、EPNが検出された。中国では「中国茶を飲むのは農薬を飲むのと同じようなもの」として農薬茶という言葉があり、最初の1杯を捨てるのは農薬を落とすためともされる[103]。2003年には、各国で使用が禁止されているDDTなど、肝臓などに障害を引き起こす有害農薬が、市販の中国茶から検出された。2005年にも、高級茶からDDTが検出される事件があった。こうしたお茶を長期にわたり飲み続けると、慢性中毒になるという[103]。農薬よりも毒性の強い成分を含んだものを、毒茶という[103]。日本ではペットボトルの茶系飲料の需要が急速に伸びた影響で、中国国内ではあまり売れない中級・下級のウーロン茶を輸出していたが、ポジティブリスト制度の影響で輸出量は大幅に減少した。地域によっては輸出量が半分以下になったという[103]。

健康食品から甲状腺ホルモンの検出

2000年(平成12年)から2001年にかけて、牛・豚・羊などの甲状腺を乾燥して粉末にした乾燥甲状腺(甲状腺ホルモン)[104]を含んだ中国製ダイエット食品を服用した後に、健康被害の症例が発生した[105]。無承認医薬品の「之素嚢」「ハイパータイト」「ドリームシェイプ」などから、甲状腺末成分のチロキシンなどが検出された[105]。2002年には、未承認医薬品「御芝堂減肥こう嚢」を服用した人に肝機能障害が発生し、1人が死亡した。また、未承認医薬品「せん之素こう嚢」からは乾燥甲状腺末とフェンフルラミンが検出され、厚生労働省は使用中止を呼びかけた[106]。このほか、「華北痩美」「蜀宝」「繊之素膠丸」の服用による肝機能障害があり、未承認医薬品「茶素減肥」「SITING」「チャレンジ41」「オロチンチャス」「COMET」「千百潤痩身」などからも同様の症例があった[107]。

春雨からホルマリンなどの禁止物質の検出

2003年、湖南省祁東県黄土鋪鎮大栄村の春雨工場で、ホルムアルデヒド系のホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(Sodium formaldehyde sulfoxylate)が検出された[108]。これは中国で「吊白塊(ディオバイカイ)」と呼ばれるが、日本では内装材接着剤としても使用が禁止されている[108]。この工場では当初、ピロ亜硫酸ナトリウムを使用していた[109]。2006年の当局調査でも、12社が吊白塊、工業用パラフィンなどを使用していた[109]。

2004年5月には、山東省煙台市竜口市で生産された「龍口春雨」が、鉛で汚染されていたことが行政検査で分かった[110]。緑豆の代わりにコーンスターチを利用し、それを透明にするために鉛の入った漂白剤を使用したことが原因とされ、山東省政府は業者を摘発した[110]。

2006年12月には、北京の食品安全局の調査で、山東省煙台市産の春雨から、工業用漂白剤であるホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムが検出され、煙台市当局は、発がん性があるとして販売停止を命じた[111][112]。この春雨は、香港、アメリカでも販売されていた[113]。ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムは、ロンガリットとも呼ばれる[114]。

2007年7月には、上海市の調査で、広東省仏山市の春雨工場で無認可の着色料と工業用パラフィンの使用が発覚した。また、鈴木譲仁の調査で、吊白塊(ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム)を使用していたことが分かった[115]。漂白剤の過酸化ベンゾイルを使用した「白馬小麦粉」も使われていた[115]。

蒸し米・菓子からホルムアルデヒドの検出

2004年、韓国食品医薬品局の調査で、韓国へ輸出された中国製の蒸し米や揚げ菓子などから、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムが検出された。韓国政府は8月13日に輸入を停止した[114]。

メタノール入りの酒

2004年、広州市と鐘落潭で4人が毒入りの酒を飲んで死亡し、8人が広州市人民医院に搬送された。行政調査によってメタノールの混合が発覚したため、地方当局は販売業者を摘発し、bulk 社工場を閉鎖した[116]。

汚染漬物

2004年6月、成都市品質管理局は、成都市で生産された漬物のうち、添加物の基準を満たしたのは23%にとどまると公表した。また、添加物の表示が推奨されていたラベルに、不正な表示があったことも見つかった。四川省の漬物工場では、工業用塩を使い、大量の出荷前に、有機リン系殺虫剤のジクロルボスを含む農薬を噴霧していた[117]。

茶から重金属の検出

2005年、「碧緑春」(蘇州の高級茶)から大量の鉛が検出された[103]。2005年の中国の国家質量監督検査検疫総局による中国茶の検査合格率は68.6%で、3割は不合格であった[103]。その後も、ジャスミン茶から殺虫剤が検出されるなどしている[103]。また、「ゴミ茶」という、農薬や重金属を含み、本来であれば廃棄されるべきお茶を指す言葉もある。レストランで無料で出てくるお茶に使われることがあり、飲み続けると中毒や肝臓・神経への悪影響があるとされる[103]。

健康食品からマジンドールの検出

2005年(平成17年)5月24日には、「天天素(てんてんそ)」からマジンドールや、日本で承認されていないシブトラミンなどが検出された[118]。マジンドールの服用量は、成人1日1回0.5mg、最高1日1.5mgと制限されているが、天天素1カプセルあたり1.4mgものマジンドールが検出された。また、シブトラミンはアメリカでも使用されているが、2002年のFDA報告では、これを含む薬で25人が死亡している[119]。ほかにも天天素からは、未承認下剤のフェノールフタレインとダイオウも検出された[119]。2006年7月12日までに、45製品から合計796人に健康被害が発生し、4人が死亡した[120]。

養殖ウナギからのマラカイトグリーンの検出

2005年、韓国に輸入された中国産ウナギから、発がん性物質のマラカイトグリーンが検出され、のちに日本に輸入されたウナギからも同物質が検出された。マラカイトグリーンは、主に抗菌剤や染料として使われている物質であり、日本では食品衛生法により、合成抗菌剤として食品中から検出されてはならないと規定している[121]。

ヒラメからの発がん性物質の検出

2006年、上海市食品薬品監督管理局は、ヒラメ30検体からニトロフランやクロロマイセチニンなどの残留物が基準値を超えて検出されたと発表した[122]。北京では、マラカイトグリーンを含む薬品を含んだ魚が見つかった。これらの化学物質は、発がん性物質として知られている。杭州市を含む他の都市では、ヒラメの調査を開始し、山東省からのヒラメの仕入れを禁止した[123]。

冷凍いんげんからの農薬の検出

2008年10月、中国山東省の煙台北海食品が製造したニチレイフーズの冷凍インゲンから、有機リン系農薬のジクロルボスが検出された[124]。検出量は最大で6900ppm(日本の食品安全基準0.2ppmの約34,500倍)だった[125]。同月、イトーヨーカドー南大沢店(東京都八王子市)で当該製品を購入した主婦は、調理後の味見の際に舌にしびれを感じ、すぐに吐き出したが、入院し、翌日に退院した。厚生省の見解では、検出量が残留農薬とは考えられないほど大きいので、原液が混入されたものとみている[126]。

鶏肉加工食品からの抗菌薬の検出

2008年5月9日、厚生労働省は、中国産鶏肉を使った加工食品のチキンカツと、ショウガ焼き用の鶏肉から、基準値以上の化学物質フラルタドンを検出したと発表した[127]。

乾燥卵からのメラミン検出

2008年10月16日、三井物産が中国から輸入し、キユーピータマゴに納入した乾燥卵から、メラミンが検出された。輸入した20トンのうち、400キロは市場に菓子パンの材料として流通していた。在庫19.6トンは、三井物産が回収済みである。ニワトリの飼料にメラミンが混入したことが原因と考えられている。検出された濃度は最大で4.6ppmだった[128]。同日、ジャパン・フード・サービス(兵庫県)が中国から輸入したフライドチキンからも、1.6ppmのメラミンが、市場への流通前に検出された[129]。

痩肉精豚

中国では、肉を赤くするために痩肉精(クレンブテロール)という赤身化剤を添加した肉が流通している。痩肉精は呼吸困難で死亡することもあり、有害である。また、重量を増やすために水を注入した「注水肉」なども流通している[1]。

2010年6月、ドイツ卓球協会は、ドーピングに用いられる痩肉精が検出された所属選手1人を2年間の出場停止処分(その後解除)とした。のちに、本人が意識的に摂取したものではなく、遠征先の中国蘇州市内のホテルで食べた豚肉に薬物が残留していたことが原因と判断されている[130]。

2011年3月、豚肉の6割から成長促進剤の痩肉精などの薬品が検出されたと報じられた。また、成長促進のための抗生物質や消毒薬の乱用、重金属の含有量超過が中国の豚に見られると指摘されている。中国中央電視台も、河南省にある10か所の養豚場が痩肉精を日常的に使用していると報じた[131]。「痩肉」とは脂身の少ない豚肉のことで、値段も脂肪が多いものより高く、この肉質を作るために使用されている薬品が「痩肉精」と呼ばれる。この豚肉は、日本国内への流通が懸念されていた。厚生労働省は、ちぬや冷食と、日本ハム系子会社の宝幸が輸入した冷凍豚串カツからクレンブテロールが検出されたことから、2009年6月、両社に対して中国産豚肉およびその加工品の自主検査を命じた。

粉ミルク・乳製品

2011年2月12日、中国農業部は、牛乳に革の廃棄物が含まれた「革牛乳」が話題になっていたことから、牛乳サンプルの一部の品質検査で「皮革たんぱく粉」の有無を調べるよう通達した[132]。「皮革たんぱく粉」は、古い皮革製品や動物の体毛を溶かして粉状にしたもので、毒性の強い六価クロムの一種の重クロム酸カリウムや重クロム酸ナトリウムが含まれ、人体に吸収されると中毒症状を起こし、死に至ることもあるとされる[133]。

冷凍イチゴ

2012年9月、ドイツの学校や幼稚園約500か所で約1万2000人が食中毒にかかった。ドイツの消費者保護・食品安全庁は、ソデクソが提供した給食の中国産冷凍イチゴに含まれていたノロウイルスが原因である可能性が高いと発表し、ソデクソは在庫のイチゴを処分した[134]。

キムチからホルマリンの検出

2012年11月、中国から韓国に輸出されているキムチの白菜に、防腐剤としてホルマリンが使われていることが報道され、安全性が話題となった[135]。2021年3月には、中国のキムチ工場で、漬かった白菜をさびた掘削機で運ぶ様子や、白菜を漬けている水槽に裸の作業員が入ってかき混ぜている様子、くぼみに置かれた大根を別の作業員が足で踏んで歩く様子など、不衛生な生産過程が明らかになり、韓国で不安が広がった[136]。

DEHP入りの酒

2012年11月には、湘西トゥチャ族ミャオ族自治州吉首市の高粱(コウリャン)を原料とする白酒の銘酒「酒鬼酒」に、フタル酸ジブチル(可塑剤)が混入していることが発覚した[137]。同年12月には、貴州産の茅台酒から、基準値の139%にあたる1リットルあたり3.3ミリグラムのフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)が検出された[138]。

病死豚の漂流事件

2013年3月23日の中国中央電視台の番組は、上海の黄浦江で病死した豚1万5000頭が漂流した事件や、病死した豚を買い付けて転売する違法業者についても報じ、河川汚染を指摘した[139]。

ゾンビ肉

2015年6月、押収された密輸肉の中に、約40年前に冷凍された「ゾンビ肉」が混入していたと報じられた[140]。中国では食肉需要が増加する一方で、政府は牛海綿状脳症(BSE)対策などを理由に、厳格な輸入規制を敷いていた。この需要と供給のギャップを突く形で、大規模な食肉密輸ネットワークが活動した[141]。コールドチェーンが何度も途切れ、腐敗が進んだ状態で流通しており、法規制を厳格化しても、ブラックマーケットの経済的な誘因が上回る構造が明らかになった[141]。

ケシ殻混入事件

2016年1月、中国国家食品薬品監督管理総局(CFDA)は、料理に「ケシの殻(罌粟殻)」を違法に混入させていた飲食店35店を公表し、刑事事件として立件した。火鍋店、ラーメン店、麻辣湯店などで、スープの風味を増して客のリピートを促す目的で、ケシの殻や粉末が使われていた。検査でモルヒネなどのアヘン系の成分が検出された[142]。

養殖魚介類への禁止薬品の投与問題

2016年11月、北京などの大手スーパーで、活魚が一斉に売り場から撤去された。食品安全検査の抜き打ち調査を恐れた販売店側が、自主的に販売を停止したことで発覚した[143]。養殖過程での病気予防や、長距離輸送中の生存率を上げるため、発がん性があり使用が禁止されているマラカイトグリーンや、過剰な抗生物質が日常的に投与されていた実態が問題視された[143]。

異臭塩騒動

2017年5月、河南、安徽、山東、陝西など複数の省で、手でこすって温めると強い足の臭いを放つ食塩が出回っているとの消費者の訴えが相次いだ[144]。調査の結果、河南省の製塩企業などが製造した岩塩であることが判明した。地下の岩塩層から採掘・精製する過程で、脱臭や不純物除去の工程を怠ったため、硫化水素などの悪臭の原因物質(プロピオン酸や酪酸、イソ吉草酸などの短鎖脂肪酸)が残留したまま、食用塩として出荷されていたことが確認され、人体への影響はないと結論づけられた。その後、全国規模で一斉回収・販売停止の措置が取られた[144]。

ナマコへのジクロルボス投入事件

2020年7月、中国中央テレビ(CCTV)の告発特番『3・15晩会』は、山東省青島市即墨のナマコ養殖現場の実態を告発した[145]。養殖池の底にいる他の海洋生物を駆除するため、有機リン系の殺虫剤のジクロルボスを大量に池へ投与していた。さらに、乾燥ナマコの重量を増やすため、加工時に産業用塩や添加物を使って何度も煮込んでいた実態も判明し、高級健康食品市場に波紋を広げた[145]。

羊肉への痩肉精添加問題

2021年3月、中国中央テレビ(CCTV)の『3・15晩会』は、中国有数の羊肉産地である河北省青県の大規模養殖場で、成長促進剤の痩肉精が組織的に投与されていた実態を告発した[146]。養殖場は、検査をすり抜ける隠蔽工作を行いながら、10年近くにわたり違法に投与を続け、北京や天津などの大都市圏へ大量に出荷していた。痩肉精は、人体に動悸や筋肉の震え、不整脈などの中毒症状を引き起こす有害物質であり、畜産流通ルートに対する抜き打ち検査と、厳罰による処分が行われた[146]。

土坑酸菜事件

2022年3月、有名即席麺ブランド(康師傅や統一企業など)に同封されている高菜の漬物が、不衛生な環境で製造されていることが明らかになった[147]。作業員らが、畑に掘った簡素な土の穴の中で、裸足のまま酸菜を踏みつけて漬け込みを行っていた。また、吸い殻を投げ捨てる様子が映っており、洗浄が不十分なまま多量の防腐剤を投入していた[147]。

国内市場向けには、コストを抑えるために不衛生なものを使用するという企業の二重基準があったとされ、大手企業は製品の全面回収と謝罪を行った[147]。

中国産アサリから日本産アサリの10倍のPFASの検出

2023年、市民団体「食の安全・監視市民委員会」は、京都大学の原田浩二准教授に依頼して、中国産4商品(加工品を含む)と日本産3商品の計7検体を対象に、代表的なPFASであるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の含有濃度を測定した。その結果、中国産アサリからは、PFOAが最大5,132ng/kgの濃度で検出された[148]。この濃度は、日本産に比べ、平均して約10倍だった。体重15kgの小児が、この中国産アサリ汁1杯(アサリ48g使用)を摂取した場合、耐容一日摂取量(TDI:20ng/kg/日)の約8割に達する[148]。

骨泥騒動

2024年3月、CCTVの告発番組『3・15晩会』は、安価なソーセージに、人間用としては推奨されない鶏骨泥が原材料として使われていると報じた[149]。成分表示にある「肉」は純粋な肉ではなく、ペットフードなどに使われる低コストな「鶏骨泥」であることが判明した。報道直後から、街頭のソーセージ屋台は客足が遠のき、売り上げが8割以上落ち込む業者が相次いだ。「安全性を証明できない」として休業・廃業する屋台の店主も出た[149]。

ビールから禁止物質が検出された事例

2025年7月29日、中国の国家市場監督管理総局は、同年上半期に食品安全に関する違法事件を18万1,000件摘発したと発表した[150]。同総局は、ギョーザへの未承認化学物質の使用や、ビールから「バイアグラ」効能のある禁止物質が検出された事例などを含む653件を、司法機関へ送致した[150]。

カビ毒であるアフラトキシンの検出

2025年2月、友盛貿易株式会社が扱い、日本に輸入された中国産の乾燥クコの実から、カビ毒のアフラトキシンが検出され、厚生労働省が全ロットの検査命令を出した[151]。また、同年5月には、株式会社貝塚正雄商店が扱う中国産ごまの種子から基準値を超えるアフラトキシンが検出され、厚生労働省が輸入者に対して検査命令を出した[152]。同年8月には、MARUSUN FOODSTUFF (RONGCHENG) CO.,LTD.が製造した落花生を含む中国産食品から、アフラトキシンが検出された[153]。

漂白鶏の足事件

2026年3月21日のKOREA WAVE(AFPBB)の報道によると、中国の食品加工工場で、過酸化水素を使って鶏の足を漂白していた実態が明らかになった[154]。衛生問題として波紋が広がる中、韓国当局は、中国産の「漂白鶏の足」が自国に輸入された事例はないと公式に発表した[154]。

豚肉へのリンコマイシン投与事件

2026年5月28日、中国の食肉大手・双匯発展の連結子会社が製造した豚肉から、基準値の37.5倍に上る抗生物質のリンコマイシンが検出された[155]。同社は、この問題について公式に謝罪した。5年連続の減収が続く中で起きた問題であり、同社の信頼と株価に影響を与えた[155]。

ホルマリンに漬けられた白菜

2026年8月25日、有害物質のホルムアルデヒドの溶液に浸した白菜が、中国北部から出荷されたことが明らかになった[156]。買い付け業者が鮮度を保つために行ったとみられるが、発がん性があるとされるホルムアルデヒドは、中国でも食品安全法規などで厳しく禁じられている[156]。中国当局はすでに関係者を摘発し、各地に流通しているかどうか、緊急に調査している[156]。

出荷場所は、白菜の生産が盛んな河北省の張家口市康保県である[156]。SNSに投稿された告発動画が出回ったことで当局が調べ、事実と確認した[156]。動画には、畑で収穫したばかりの白菜をその場でトラックに積み込む際、洗面器に入った液体のようなものに、一つ一つ軽く浸している様子が映っている[156]。

中国は世界最大の白菜生産国として知られる[156]。輸出先は主に近隣諸国で、韓国当局はホルムアルデヒドの検査を実施した[156]。日本の鈴木憲和農林水産大臣は25日午前の記者会見で、「厚生労働省と連携して必要な情報を収集する」と述べた[156]。厚生労働省の担当者は「中国政府を通じて確認中だが、現時点では日本への輸出は確認されていない」と明らかにした[156]。

違法甘味料を添加したヤマモモ

2026年5月、中国福建省漳州市のヤマモモ産地で、使用禁止の防腐剤や、砂糖の8000倍の甘さを持つ違法甘味料を使ったヤマモモが、大量に製造・販売されていたことが発覚した。潜入取材に対し、現場の作業員は「怖くて食べられない」と明かした。当局は、違法添加剤と大量のヤマモモを押収・廃棄し、関与した5人を刑事拘留した。業者が違法添加を行った背景には、健康被害を認識しつつも、早生品種特有の強い酸味や日持ちの悪さを補う目的や、「周囲の業者がみな使用しており、使わなければ売れない」という競争上の理由があった[157]。

広東省清遠市タケノコ違法加工事件

2026年9月、広東省清遠市で、食用タケノコを硫黄で殺虫・殺菌する違法行為が行われていたことが発覚した[158]。この事件は、動画配信者の男性が、タケノコを硫黄で殺虫・殺菌している現場をインターネット上に投稿したことで発覚した[158]。香港の新聞『星島日報』の報道によれば、この男性が独自に実施した調査で、対象のタケノコから安全基準を大幅に超える二酸化硫黄が検出されたとされる。硫黄を使うと、タケノコの漂白効果が得られ、長期保存も可能になるとされている[158]。

当局は、原材料と違法に加工された製品を差し押さえ、流通経路を追跡した。警察当局も関係者から事情を聴いた[158]。これを受け、中央政府の食品安全部門などは、違法行為に対して厳正な処分を行うよう指示した[158]。

食用ガエルへの抗生物質の過剰投与

2026年9月4日付の報道によると、中国で抗生物質が過剰に投与された食用ガエルが流通しており、福建省の業者が、基準値の約5倍の抗生物質が残留した個体を学校や飲食店などに出荷していたことが発覚した[159]。地元当局が調査を開始したものの、業者が検査時に問題のないカエルを提出して偽装するなど、基準値超えの常態化と隠蔽が指摘されており、食品安全に対する不信感が高まっている[159]。

茎レタスの違法着色

2026年9月、甘粛省蘭州市で、業者6社が茎レタスの黄ばみや傷を隠して新鮮に見せるため、生鮮野菜への使用が禁止されている食品用着色料(ブリリアントブルーおよびタートラジン)を違法に使用していたことが発覚し、当局が立件した。

厨房や生産環境の問題

闇工場問題

北京市朝陽区平房郷のちまきの闇工場では、濁った水でちまきの葉を洗い、汚水の中に食品ケースが漬けられたまま洗浄されていないことが報告されている。さらに、ここで働く低賃金労働者(民工)は、カビなどで食用に適さないとされた米をまかないとしているなど、労働環境の問題も報告されている[13]。

餓了麼の無許可・不衛生厨房問題

2016年、中国中央テレビ(CCTV)の告発特番『3・15晩会』は、大手デリバリーアプリ「餓了麼」の問題を報じた[160][161]。アプリ上では清潔なレストランのように見せていたが、実際は営業許可も衛生許可も持たない路地裏の無届け店舗(ゴースト・レストラン)が多数登録されていた。床に食材を直置きし、素手で調理し、害虫がはい回るような環境で調理していたことが判明し、急速に普及していたフードデリバリー業界全体への不信感が高まった[161]。

海底撈火鍋の不衛生厨房問題

2017年8月、中国最大の火鍋チェーン店「海底撈火鍋」の北京店舗で、記者の潜入取材により不衛生な状態が明らかになった。厨房内をネズミが歩き回って食品棚に入り込む様子や、油まみれの食器洗浄機、さらには客が食事に使う火鍋用の穴あきおたまで下水管の詰まりを掃除する様子などが撮影・報道された。中国で優良ブランドと見られていたため、外食産業のバックヤード管理の甘さを批判する声が上がった。問題があった2店舗が営業停止となり、同社は全面的に謝罪し、キッチンの可視化を進めるなどの対応を取った[162]。

辣条の製造現場の告発

2019年3月、中国中央テレビ(CCTV)の告発番組『3・15晩会』は、小麦粉スナック「辣条」の製造現場を告発した[163]。小学校周辺の売店で安価に売られている製品を調査したところ、河南や湖南の地下工場で、油で汚れた床、消毒していない手作業での袋詰め、十数種類もの化学添加物や保存料の投入、製造機械からにじみ出るグリースの粉塵の混入、原材料の地面への放置、従業員が素手で包装することなどが常態化していた[164]。報道の翌日、全国のスーパーやECサイトから該当商品が一斉に撤去された。これが、市場監督管理総局が辣条の全国統一の安全基準を策定するきっかけとなった[163]。また、湖北省食品医薬品局は、ソルビン酸やデヒドロ酢酸などは辣条をはじめとする小麦粉製品には適さず、これらを使用した製品を食用にしないよう呼びかけている[165]。

奈雪の茶の衛生管理基準の違反問題

2021年後半、中国の飲料ブランド奈雪の茶の複数店舗で、衛生管理基準の違反や期限切れ食品の提供などの食品安全問題が相次いで発覚した[166]。

2021年8月2日、北京市の市場監督管理部門は、管轄下の店舗で腐敗した果物が加工・使用されているとの情報を把握し、ただちに当該店舗へ立ち入り検査を実施した。違法・違反行為が確認されたため、立件し、調査・処分を行った[166]。

2021年10月22日、上海市市場監督管理局は、抜き取り検査で茶系飲料の一般生菌数が基準値を上回っていたとして、上海奈雪餐飲管理有限公司東長治路店に対し、5,000元の罰金を科した。同社は、飲料の生菌数超過や厨房作業手順の不備などを理由に、この処分を含む直近1か月間で、地方当局による違反公表リストに計3回掲載された[166]。

2021年10月25日、上海市当局は、虚偽の期日表示や期限切れ食品・食品添加物の取り扱いを理由に、同社傘下の上海奈雪餐飲管理有限公司南京西路分公司(梅龍鎮広場店)に対し、5万元の罰金を科した[166]。調査によると、同年9月4日に利用客が公式WeChatミニプログラム経由で購入した洋菓子(覇気葡萄缶入りケーキ)が、購入時点でラベルに記載された賞味期限を超過していたことが確認されている。

蜜雪氷城の衛生管理基準の違反問題

2024年6月12日の現地報道によると、中国の有名ミルクティーチェーン店「蜜雪氷城」の北京市朝陽区内の店舗で、男性スタッフが調理流し台で足を洗う様子を収めた映像がSNSで拡散した。本部は衛生問題の発生を認め、該当店舗の閉鎖や消毒作業などを指示した[167]。蜜雪氷城側は、映像の人物は店舗オーナーの父親で、やけどの急冷処置中だったと説明したものの、現地のインターネット上では批判が相次ぎ、衛生当局も防犯カメラの確認を経て、本社に口頭で警告し、指導を強化した[167]。

農業用殺虫剤の噴霧

2026年7月、福建省厦門市で、複数の飲食チェーンを顧客に持つ消毒会社が、数十店の飲食店で、農業用殺虫剤のジクロルボスを店内の食器や食材の近くに違法に噴霧していたことが、メディアの報道で発覚した[168][169]。これを受け、中国国務院食品安全委員会弁公室は、国家市場監督管理総局などと合同で中央作業チームを組織し、現地での実態調査や行政指導を行った。

偽装品

中国では、偽ミルク、偽薬などの偽装品が摘発されている。また日本でも、中国産食品を日本国産と偽る産地偽装がたびたび発覚しており、ほかにも雪印、赤福、白い恋人、船場吉兆、マクドナルドなどの食品偽装が発覚している[170]。松浦晋也は、日本の場合は「もったいない」という意識から食品の再利用や消費期限シールの張り替えが起き、中国の場合は「もうけるためなら、消費者に健康被害が出ようと知ったことではない」という考えが背景にあるため、このような問題が起こると指摘している[170]。

偽薬の製造

2007年、国家食品薬品監督管理局は、調査員が解決した偽薬を含む14件と、「健康事故」を含む17件を報告した[171]。その一つは、2006年5月に10人が注射を受けて死亡した偽亮菌甲素Aの事件である[172][173]。亮菌甲素Aの製造工場の薬品品質検査官は、薬品に化学物質ジグリコールを加えるのを忘れ、2006年7月、抗生物質と消毒剤を成分として飲み込んだ6人が死亡し、80人以上が病気になった[174]。2006年、政府は160の薬品製造者と小売店の営業免許を取り消した[174]。2007年、国際刑事警察機構のジョン・ニュートンによると、中国の犯罪組織が国境付近で大規模な偽薬の取引を行い、アフリカで発見されたことが明らかになった[175]。中国中央電視台は、その組織が偽のアルブミンの製造で300%の利益を得て、正規品の不足を補っていたという当局の発言を引用した[176]。

人工卵の製造

2010年12月、鶏卵に似せた「人工卵」が製造され、実際に中国で販売されているとされる。その素材や添加物により、長期に摂取し続けると肝障害など、人体に悪影響がある可能性が報じられている[177]。

着色料入りの蒸しパン

2011年4月、食品メーカーの上海盛禄食品有限公司は、使用が禁止されている着色料や添加物でマントウ(蒸しパン)を着色し、特定の食材を使っているかのように見せかけた「着色マントウ」を生産・販売していた。問題が発覚した時点で、同社は4個入りの袋を83,716袋販売していた。上海市政府は、問題のマントウの回収と専門調査委員会の設置を発表した[178]。

工業用ゼラチンによる医薬品カプセルとクロム検出

2012年、中国で廃棄された革靴などの革製品から抽出した工業用ゼラチンが、青海省、吉林省、四川省、河南省の製薬会社で薬用カプセルに加工され、当局の調査で重金属のクロムが検出されたことが発覚した[179][180][181]。

中国では、工業用ゼラチンは食品廃材から抽出されるため、食用利用は禁止されている。日本政府は、厚生労働省医薬食品局が、これらの製薬会社のカプセルを使用しないよう各自治体に通達した[181]。在中国日本大使館も、在中日本人にカプセル使用に注意するよう通達した[182]。CFDAの発表によれば、カプセル製造販売の中止命令を受けた製薬会社には、長春海外製薬グループ会社、吉林省輝南天宇薬業株式有限会社、丹東市通遠薬業有限会社、青海格拉丹東薬業有限会社、四川蜀中製薬株式有限会社、通化金馬薬業グループ株式有限会社、通化盛和薬業株式有限会社、通化頤生薬業株式有限会社、修正薬業グループ株式有限会社などがある[182]。また、カプセルの抜き取り調査でクロムが検出された製造会社には、浙江省新昌県の卓康カプセル有限会社、華星カプセル工場、瑞香カプセル有限会社、浙江康諾カプセル有限会社、浙江新大中山カプセル有限会社、新昌県沃洲カプセル有限会社、浙江林峰カプセル有限会社、誠欣カプセル有限会社、天林化工カプセル有限会社、重慶の匯祥カプセル有限会社、瑞迪カプセル有限会社、成都の正和薬用カプセル有限会社、金瑞薬用カプセル有限責任会社、河南省の焦作金箭実業総会社、昊海薬業有限会社などがある[181]。

人造フカヒレ

2013年1月、国営メディアは、中国各地で高級食材のフカヒレの偽物が大量に出回っていると報じた。そのフカヒレは、エイなど他の魚介類を用いた代用品ではなく、緑豆の粉と海藻由来コラーゲンを用いて人工的に製造した「人造フカヒレ」とされる[183]。

上海・偽有名ブランド粉ミルク大量流通事件

2016年春、アメリカ大手のアボット(雅培)や中国大手のベインメイト(貝因美)などの缶を偽造し、中身に安価で低品質な粉ミルクを詰めて販売していた組織が、上海市公安当局に摘発された。約1万7000缶の偽装粉ミルクが、複数の省で販売されていた。2008年のメラミン入りミルク事件以降、中国の消費者は国産・外国産を問わず粉ミルクの安全性に敏感になっていたため、有名ブランドの缶そのものが偽造されていた事実は、子育て世代を中心に強い反発を招いた。

天津・偽造調味料生産事件

2017年1月、天津市静海区独流鎮で、数十か所に及ぶ家庭内の地下工場が組織的に偽ブランド調味料を製造し、全国に流通させていた実態が報じられた[184]。ネスレ、李錦記、海天、クノールなどの大手ブランドの包装を精巧に偽造し、中身には、工業用塩、色素、食品添加物、賞味期限切れの廃棄原料、水道水などを混ぜ合わせた偽物の醤油、酢、コンソメ、香辛料を詰めて出荷していた。一帯では、10年以上にわたり年間数億元規模の偽物が作られていたとされる[184]。

偽食品・飲料の地方農村流通問題

2018年3月、淘宝や拼多多などのECサイトが普及する中で、有名メーカーの商標を偽造したり酷似させたりした粗悪な食品が、農村部や地方都市に大量に流通している実態を、CCTVの消費者向け告発番組が大きく取り上げた。コカ・コーラや王老吉などの有名飲料のパッケージに似せ、中身は着色料と甘味料と水道水だけで作った粗悪な飲料などが大量に摘発された[185]。

上海中芯国際学校の腐敗給食事件

2018年10月、上海の私立国際学校「民弁中芯学校」で、児童・生徒向け給食の厨房から、カビの生えたトマトやタマネギ、賞味期限切れの食材、日付を偽装したラベルを貼った調味料が大量に見つかった[186]。年間授業料が10万元を超える学校で、給食を請け負っていたのが世界大手の多国籍ケータリング企業だったことから、保護者の間に衝撃が広がった。当局の立ち入り調査で校長が免職となり、業者は多額の罰金と営業停止処分を受けた。さらに、中国全土の小中学校・幼稚園の給食サプライチェーンに対する一斉点検が命じられた[186]。

北京同仁堂の期限切れ蜂蜜リサイクル事件

2018年12月、350年以上の歴史を持つ「北京同仁堂」が販売する蜂蜜製品について、委託先工場が、使用期限切れ・回収品の蜂蜜5000トンをリサイクルし、再加工・出荷していた現場を、テレビ局が潜入取材で告発した[187]。同社は公式に謝罪し、製品を回収したほか、多額の罰金を科され、過去に受賞した国家品質賞の称号も剥奪された[187]。

卵に着色添加物を加え偽装した問題

2019年3月、「土鶏蛋(放し飼いの地鶏の卵)」の産地・品質の偽装が明らかになった[163]。黄身の色を濃く見せるため、一般的な養鶏場のニワトリに、赤・黄系の色素添加物(斑蝥黄/カンタキサンチンなど)を飼料に過剰に混ぜて与え、産卵させていた。消費者の「安全・オーガニック志向」を逆手に取った行為として、強い反発を呼んだ[163]。

湖南省郴州の粉ミルク偽装事件

2020年5月、湖南省郴州で、アレルギーを持つ乳幼児の保護者が、病院やベビー用品店で「アレルギー対応の特殊調整粉ミルク」として勧められた「倍氨敏」などを飲ませ続けたところ、乳幼児が栄養失調に陥り、頭部が肥大化して見える大頭症を発症した[188]。当該製品は粉ミルクではなく、栄養基準を満たさないプロテイン粉末飲料だった。販売店側が、高いマージンを得る目的で、粉ミルクと偽って販売していたことが判明した[188]。

バーガーキングの消費期限改ざん

2020年7月、CCTVの告発番組『3・15晩会』は、江西省南昌市などのバーガーキングの複数店舗での不正を告発した[189]。パンやチーズなどの消費期限ラベルを貼り替えて使い回し、変色した食材をそのままハンバーガーに使っていた。本部のマニュアルを無視し、店舗ぐるみで廃棄コストを浮かせるために、日常的に改ざんしていたことが、潜入カメラで捉えられた[189]。

偽の燕の巣販売・返金騒動

2020年10月、中国のショート動画で活動するトップライブ配信者の辛巴が、配信内で販売した高級食品「燕の巣ドリンク」について、大規模な偽装・返金問題が発生した[190]。購入者やネット上の鑑定者の指摘を受けて成分を分析したところ、本物のアナツバメの巣ではなく、砂糖水にアルギン酸ナトリウムやカルシウムなどを混ぜてゼリー状に加工した疑似食品であることが判明した。SNSで批判が相次ぎ、配信者側は、3倍の賠償金として総額6000万人民元を支払うと発表した。さらに当局は、市場監督管理法違反として約90万元の罰金を科し、アカウントを一時停止とした[190]。

偽サツマイモ春雨事件

2022年3月、禹州市の複数の加工業者が製造するサツマイモ春雨について、偽装の実態が明らかになった。原料にサツマイモの粉はほとんど使われず、はるかに安価なキャッサバ粉やトウモロコシ粉を混ぜ、見た目を似せるために工業用色素などを添加して、純サツマイモ製と偽って大量に流通させていた[191]。

食中毒

四川省崇州市の給食における食中毒

2006年9月1日、四川省崇州市の小学校で、給食を食べた300人以上の生徒が食中毒になった。そのうち、およそ200人の生徒が、頭痛や発熱、吐き気、下痢のため病院に運ばれた。学校は調査のため、一時閉鎖した[192]。同日、遼寧省の中学校でも、夕食を食べた生徒が食中毒を起こした。教育部は調査を依頼し、調査員は、食中毒の原因は学校の衛生状態であると推測した。夏休みの間、学校は清掃や消毒をしておらず、生徒が9月に戻ってくると、不衛生な食品を食べたり水を飲んだりすることになった[193]。

毒キノコ中毒

2006年12月、北京の大鴨梨烤鴨店(Dayali Roast Duck Restaurant)で、「ヤマドリタケ」(Boletus、牛肝菌)とされたキノコを食べた16人が、病院に搬送された。キノコは吐き気やめまいを引き起こし、食べた人は博愛病院と第307人民解放軍医院で治療を受けた[194]。2006年11月、衛生部の当局者は、同年7月から9月31日までに、31人が死亡し183人が食中毒にかかったとして、キノコによる食中毒の危機が高まっていると警告した。本物のヤマドリタケは無毒の食用キノコであるが、当局は、人々が有毒なものと無毒なものを正確に区別できないのではないかと懸念した[195]。

江西省吉安市万安県の給食における集団食中毒

2018年9月、江西省吉安市万安県の小中学校で、学校給食を原因とする集団食中毒が発生し、29人が腹痛や下痢などの症状を訴えて、病院に搬送された[196]。原因は、カビの生えた食材などが使われていたことである[196]。

四川省成都市の給食における集団食中毒

2019年3月12日、中国の微博で、成都市の成都七中実験学校の学校食堂の冷凍庫にあった、カビの生えた食材や変色した肉などの写真が投稿され、たちまち拡散した。約1か月にわたり、児童の間で下痢や血便が続いていたことを不審に思った保護者が、食堂のアルバイトに変装して内部に潜入し、問題の食材を発見・撮影したのが発端だった[197]。保護者の間で反発が広がったため、食堂を運営する管理会社は、給食の提供を停止しつつ「危険な食材はない」と声明を発表した。当局側は、「給食が腐っていたというSNS上の情報自体がフェイクニュースである」と主張した[197]。

黒竜江省の酸湯子食中毒死事件

2020年10月、黒竜江省鶏西市の民家で、発酵させたトウモロコシ麺の酸湯子を家族で食べたところ、9人全員が死亡する事故が発生した。冷蔵庫に1年間保存されていた麺から、致死率の高いカビ毒のアフラトキシンが生成されていたことが原因だった[198]。

仕事用の弁当

2024年8月31日、杭州で予定されていたマジシャンリュー・チェンの公演が、チームメンバーの食中毒による体調不良のため、急きょ中止になった。8月30日に約30人のチームメンバーが仕事用の弁当を食べた後、腹痛や嘔吐などの症状を発症し、病院に緊急搬送された。主催者によると、食事は30人民元の弁当で、数日前から同じものを食べていたが、この日に食中毒が発生した。公演の決行も一度は検討されたが、重要な助演者の体調不良により、最終的に中止が決まった[199]。

雲南省昆明市の臭肉事件

2024年10月、雲南省昆明市官渡区にある私立の官渡区長豊学校で、新学期が始まって以降、生徒の間で腹痛や消化器系の不調を訴える声が相次いだ。違和感を覚えた保護者らが、調理現場や異臭のする肉を動画に収めてSNSに投稿したところ、急速に拡散した。また、冷凍肉のパッケージに「2015」という表記があったことから、「10年前のゾンビ肉を使っているのではないか」という疑念も出て、中国全土で強い批判を受けた。

豚肉自体は当日解体されたものであったが、供給業者の輸送過程と食堂での保管時に、コールドチェーンが維持されず、常温で約9時間放置されたことで、急速に品質が劣化・腐敗したのが原因であった。

学校の校長と法定代表者は免職となった。また、学校側は、地元教育当局へ報告しないまま食堂の運営を外部業者に委託しており、その委託業者は、食堂を直接運営する資格を欠いていた。そのため、管轄区の教育体育局長や市場監督管理局の副局長らが、停職処分を受けた。食堂運営会社に対しては、約578万元(約1億2000万円)の罰金と違法所得の没収が命じられ、学校側にも10万元の罰金が科された[200]。

デマだった事例

段ボール肉まん

2007年7月11日、中国北京テレビは、北京市の工商当局が行った検査で、同市朝陽区の露店で「段ボール肉まん」が販売されていたと報道した。この肉まんは、段ボール片6に対して豚肉4の割合で製造されているとされ、病死した豚の肉も使っていたと報じた(京華時報、2007年7月12日付)。しかし、その後、北京テレビは同年7月18日、番組の中で「段ボール肉まん」はやらせ報道であったことを認め、謝罪した[201]。

プラスチック米騒動

2017年、インターネットで「中国で合成樹脂を固めた偽の米粒が製造されている」という情報が拡散した[202]。しかし、その後の検証機関による検査の結果、プラスチック米が市場に流通しているという主張は誤りであることが確認された[203]。中国当局は、デマ動画を投稿した人物に行政拘留処分を下した[204]。

国際社会の反応

ヨーロッパやアメリカ、日本、韓国などで、中国産の食品に関連する健康被害や事件が発生し、各国が問題視してきた。2008年9月のメラミン汚染粉ミルクについては、中国産粉ミルクを輸入していたシンガポール、EU、フィリピン、韓国、インドネシアなどが輸入を停止した。

EUなどでのポジティブリスト制度

2006年、残留農薬の指摘が相次いだ中国茶の主要輸入国であるEUは検査を強化し、日本は食品衛生法の規格基準の残留農薬基準にポジティブリスト制度(一律に基準値を上回る残留を禁止する制度で、ネガティブリストの対語)を導入した。

農薬の場合は、既存の個別食品の残留基準が設定されているものはその基準、設定されていない農薬についてはその合計が一律基準0.01ppm以下となるよう適用される[205]。この制度の導入の際、輸出量が減少した。

アジア開発銀行による勧告

2007年初頭、アジア開発銀行が、中国政府への批判と早急な改革を勧告する報告書を提出すると、中国の食品の安全性に対する不安が高まった。

同年、国家食品薬品監督管理局は、回答者の65%が食品の安全性に関心を持っているという調査結果を発表した。

その後、中国人民政治協商会議のメンバーの呂建中と、国務院副総理の呉儀は、謝罪と、食品の安全性を監視するシステムの確立を約束する声明を発表した[206][信頼性要検証]。

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では、米食品医薬品局(FDA)が2007年6月、中国産のウナギ、エビなど5種類の養殖魚介類について、アメリカで使用が禁止されている抗菌剤の検出が相次いだため、広範な輸入規制に乗り出すと発表した。

これらの抗菌剤が含まれていないことが証明されない限り、輸入を認めないとした[207]。

また、中国産原料を用いたペットフードを食べた犬や猫数百匹が死ぬ、2007年のペットフード大量リコール事件が起こった。メラミンとシアヌル酸が尿中で反応し、腎不全を引き起こした。

また、2007年7月ごろから、安全性に問題のある中国製の食材や原材料を使用していないことを意味するチャイナ・フリーというシールが、食品業界や飲食店で使われるようになった。チャイナ・フリーを「チャイナリスクの一つ」としてとらえる企業やエコノミストも少なくない。

日本の反応

日本における中国産輸入食品は、量自体が他国に比べて多いこともあり、2007年9月時点で、違反数・問題発生数も最も多かった[208]。

さらに、2007年12月下旬から2008年1月にかけて、天洋食品による中国製冷凍ギョーザ中毒事件が発生した。

それ以降、中国産野菜の輸入は急減し、2008年2月は前年同期比の4割減[209]、2008年全体でも25%減となった[210]。これは消費者の中国食品への疑念が影響したものである。

中国製冷凍ギョーザ中毒事件など、比較的注目を集めた安全性問題が複数起こり、マスメディアによる中国産食品の報道が増えた。その結果、中国産輸入食品の違反率や問題発生率が、他国からの輸入食品に比べて極端に大きいかのような印象が持たれた。中国産食品のイメージが悪化する中、日本の中国地方にある中国食品工業が、社名から風評被害を受けて2007年8月に倒産する事態も生じた[211]。

しかし、食品の輸入量に対する違反件数・問題発生件数の割合(違反件数または問題発生数÷輸入量)に関しては、中国産輸入食品の違反率と問題発生率は、どちらも中国以外の国からの輸入食品の違反率や問題発生率より低い値となっている[212]。[要検証]

韓国

朝鮮日報によれば、韓国が価格を重視するのに対し、日本は品質を重視し、日本企業は品質・安全性も重視して中国での生産工程を管理している[213]。

中国政府の対応

中国政府は、農産物の生産を監視するとともに、食品の包装、容器、添加物、薬品の製造・販売事業者に規制を課している。2003年、中国政府は国家食品薬品監督管理局を設立して食品の規制管理部門を統合したが、同局は、食品の安全問題を解決するよう求める国内外の圧力にさらされ続けてきた。

監督・関連機関

全人代[214]および全人代常務委員会と国務院は、食品の安全性に関する法的規制を施行する主要な責任を負っている[215]。以下に示すように、中国国務院下のおよそ10の監督機関および関連機関が食品の安全性を監視し[216]、食品に関する規制を指導している[217]。

1949年に創設[218][219]された衛生部は、医療・疾病・衛生政策や関連法律の施行、食品事故や食中毒事件などの緊急事態の危機管理を行い、食品の安全性の規制を監督している。また、農業農村部は農業政策を担当し、農作物における残留農薬問題なども担当する。商務部は、食品の商取引の規制、管理、海外投資、食品の流通、国内外の市場活動を指導する[220][221]。

1998年、国家医薬管理局、衛生部薬政局、国家中医薬管理局を統合して国家薬品監督管理局が設立され[222]、同局は2003年に国家食品薬品監督管理局[223]に改編された[224]。

2001年[225]に、輸出入食品を監視し検疫を行う国家質量監督検疫検験総局(質検総局)が設立され[226]、品質管理司、輸出入食品安全局など20の司部を管轄下に置く[227][228]。他に国家工商行政管理総局[229]や栄養・食品安全所がある[230]。栄養・食品安全所は、中国疾病予防管理センターと中国予防医学科学院と提携している[231]。

関連法規

1982年の食品衛生法は、1995年の食品衛生法に改正され、食品の安全性を規制した[232]。しかし、1995年の食品衛生法[233]の改正以来、食品や医薬品関連の大きな法改正はされていない[234]。

食の安全管理強化

果物については、「輸出果物の検査検疫監督管理方法」を2007年2月1日に施行するなど管理強化を図り、中国製品の国際競争力の強化と信頼性の回復を目指している[235]。

2007年10月、中国は食品の製造における品質向上と監視を目的として、新しい国家基準を法律で制定した。新法は、食品産業における生産の標準化と違法活動の撲滅を目指している。質検総局は、食品の生産、流通、販売をすべて対象とする新しい規制を起草し、複数の政府機関による監視を黙認してきた、つぎはぎの現行法に代わる国家基準を創設する[236]。

中国の抗弁

中国食品は安全性が高いとする報道

中国国際放送局(CRI)は、2007年9月14日に「日本週刊誌、輸入食品の基準超過率で中国は23位と発表」と題して報じた。この報道で、中国国家品質監督検査検疫総局は、週刊誌『AERA』の記事を引用し、中国大陸の基準超過率は0.58 %で23位であり、オランダ、イタリア、オーストラリアなど先進国の食品よりはるかに安全であると主張した。しかし、この記事は「買い付け」と「品質管理」の因果関係を検証するものではなかった。

要因

政府による規制強化が進む一方で、中国の食品安全の確保を難しくしている根本的な構造問題として、以下の要因が挙げられる。

生産環境における汚染

2009年の李銅山による調査では、重金属汚染耕地は2000万ヘクタール、農薬汚染耕地は900万ヘクタール、汚水灌漑汚染耕地は216.67万ヘクタール、大気汚染耕地は533.33万ヘクタール、固体廃棄物堆積・毀損耕地は13.33万ヘクタールとなっている[5]。また、中国の水質調査では、河川の70%が工場廃水によって汚染されており、そのうち40%は基本的に使用できない状態にある。さらに、都市部を流れる川の95%が重度の汚染状態にあると報告された[5]。

  • 水質・土壌汚染 - 工場廃水や排ガスなどによる、農作物や家畜を育てる水源・土壌の汚染[237][238]。
  • 飼育・栽培環境の不適正 - 家畜の飼育基準の不徹底(不衛生な生育環境や抗生物質の乱用)、多量の農薬散布や、他国で禁止されている高毒性農薬の使用[239]。

事業者モラルの欠如と食品偽装

製造・加工過程でのモラルの低下、不良品の混入が指摘されている[237]。

  • 製造・加工過程における衛生管理の軽視 - 経済的利益を優先した衛生意識の低さ、工業用原材料(工業塩など)や禁止添加物の流用、不適切な作業環境。
  • 意図的な食品偽装 - 利益増大を狙った内容物・添加物の偽装(偽粉ミルク、偽フカヒレ、偽羊肉など)が相次いでいる[6]。
  • 食品添加物・内容物の偽装[240]。

中国の食品規制体制

中国では、単独の行政機関がすべての食品の安全性の責任を負うのではなく、各部の職務はしばしば重複し[216]、地方の機関と中央政府との間に明確な上下関係はない。関係部局が複雑であったため、全人代は2003年、それを解消すべく国家食品薬品監督管理局を設立した。同局がすべての食品の安全性の監視・規制を単独で行うことが提案されたが、同局は単独の担当機関にはなれず、他の機関も継続して監視することになった。この不透明な責任の分裂は、各部の対立や、国民が不満を述べたい場合や大きな危機を解決する必要がある場合にどこへ行けばよいか分からないといった混乱を生んだ。中国の食品規制は複雑で、監視システムは責任の所在が明確でなく、部局は重複し、あいまいな義務を課している。関係部は食品の安全性の責任を共有し、地方行政機関も食品の生産と販売を監視している。2007年4月、WHOのヘンク・ベケダムは、これまで施行されてきた食品や医薬品関連の法律は、それ自体が基本法の目的に沿わない、その場しのぎの方法を生み出してきたと批判している[241]。

官民癒着と汚職構造

政府系企業と当局の癒着により、厳正な指導が行われにくく、適正な社会的監視や批判の自由に制約がある[242]。たとえば、2007年7月10日には、国家食品薬品監督管理局の元局長の鄭篠萸が、偽薬を認可する際に企業から賄賂を受け取っていたという不祥事があった。

脚注

注釈

  1. ↑ 中国大陸ではこのような不利な報道はタブーとされており、香港ならではのCMである[8]。
  2. ↑ タンパク質の定量反応の一つであるケルダール法などは、タンパク質以外にもメラミンなどのアンモニア性窒素に反応する。

出典

  1. 1 2 3 4 5 6 7 8 河原昌一郎「中国の食品安全問題」農林水産政策研究所レビューNo.47(2012年5月31日)。
  2. ↑ “中国共産党高級幹部だけに安全食品を供給する「特供」の実態”. NEWSポストセブン. 2014年9月14日. 2018年2月9日閲覧.
  3. ↑ 作者:乔志峰,编辑:洪涛三 (2011年7月25日). “特供制度已成为中国食品安全乱相的万恶之源” (中国語). 红网. 2015年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月6日閲覧。
  4. ↑ Gale, Fred. "Regions in China: One Market or Many?." April 2002. Agricultural Information Bulletin No. AIB775
  5. 1 2 3 4 河原昌一郎「中国の食品安全制度-食品安全に関する中国の現状と取組-」2012年10月2日、農林水産政策研究所。
  6. 1 2 「日中関係、深まる溝 朝日新聞社世論調査(朝刊)」『朝日新聞』朝日新聞社、2012年9月24日。
  7. ↑ “【中国視察2018】 [1 国家市場監督管理総局 | NGB株式会社]” (1970年1月1日). 2026年9月7日閲覧。
  8. ↑ テレビ朝日 ザ・スクープ
  9. ↑ 《毎周質量報告》:“毛髮水?油”??令人發毛(2004年1月の報道、中国語)
  10. ↑ "47 Detained for Selling Baby-Killer Milk." China Daily. May 5, 2004. China Daily News
  11. ↑ "China Fake Milk Scandal Deepens." BBC News. April 22, 2004. BBC News
  12. ↑ "Milk Powder Kills Babies, Premier Orders Investigation." People's Daily. June 25, 2004. People's Daily News
  13. 1 2 松浦晋也「書評 食品汚染、中国国内はもっと深刻」日経BP、2007年11月30日、p4「慄然とする食品加工の現場」。周勍、2007.
  14. 1 2 松浦晋也「書評 食品汚染、中国国内はもっと深刻」p.1、日経BP、2007年11月30日
  15. 1 2 3 4 p.1p.2 古森義久「第50回中国の有毒品に警戒強める米国・「死の風邪薬」にも中国産ジエチレングリコール」日経BP、2007年6月5日
  16. ↑ ジエチレングリコールを含有する中国製練り歯磨きの自主回収について 厚生労働省医薬食品局、2007年6月15日
  17. ↑ Chemical & Engineering News; Anatomy Of A Pet Food Catastrophe
  18. ↑ 中国産冷凍ギョウザ問題 内閣府
  19. ↑ 中国産冷凍ギョウザが原因と疑われる健康被害事例の発生について 厚生労働省
  20. ↑ “ギョーザ事件被告に無期懲役=「計画的で多数に被害」-日本の世論、配慮か・中国”. 時事通信社. 2014年1月20日. 2014年1月20日閲覧.
  21. ↑ “天洋食品元従業員を書類送検 毒ギョーザ事件、殺人未遂容疑で”. 琉球新報. 2014年12月19日. 2024年9月12日閲覧.
  22. ↑ <中国製食品>冷凍カツから猛毒農薬 山東仁木食品工場製 毎日新聞、2008年2月21日付(アーカイブ)
  23. ↑ モラルなき輸入が続く限り、メタミドホス騒動は繰り返す ダイヤモンド・オンライン、ダイヤモンド社、2008年2月26日、2024年12月26日閲覧。
  24. ↑ <中国製食品>中国検疫総局が日系企業の責任指摘 毎日新聞、2008年2月22日(アーカイブ)
  25. 1 2 3 「日清食品 冷凍食品・製めんのニッキーフーズを買収へ」毎日新聞、2008年6月7日付。
  26. ↑ “またも「毒ミルク事件」か、乳児14人が腎臓結石”. サーチナ. 2008年9月9日. 2008年9月12日閲覧.
  27. ↑ “ミルク製造元がメラミン混入認める―乳児の腎臓結石”. サーチナ. 2008年9月12日. 2008年9月12日閲覧.
  28. ↑ “乳児が相次ぎ腎臓結石に 衛生部が責任者を追及”. 朝日新聞. 2008年9月12日. 2008年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2008年10月6日閲覧.
  29. ↑ “液体乳製品からメラミン検出されず 最新の検査で”. 朝日新聞. 2008年9月27日. 2008年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2008年10月6日閲覧.
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  31. ↑ “一般粉ミルクにもメラミン 中国、汚染対象が拡大”. 共同通信. 2008年10月1日. 2008年10月6日閲覧.
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  36. ↑ “メラミン汚染の中国・石家荘市 構造的問題が続々判明”. 東京新聞. 2008年9月25日. 2008年10月2日閲覧.
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参考文献

関連事項

外部リンク