テミス
Θέμις
法・掟の女神, 予言の女神
ラムヌース遺跡で発見された紀元前300年頃のテミス像
考古学者ヴァレリオス・スタイスの発掘調査による
位置づけ ティーターン
信仰の中心地 ラムヌース
住処 オリュムポス
シンボル 剣, 天秤
配偶神 ゼウス
親 ウーラノス, ガイア
兄弟 クロノス, オーケアノス, コイオス, クレイオス, ヒュペリーオーン, イーアペトス, テイア, レアー, ムネーモシュネー, ポイベー, テーテュース, キュクロープス, ヘカトンケイル, ギガース, メリアス, アプロディーテー, エリーニュス
子供 ホーラー(エウノミアー, ディケー, エイレーネー), モイラ(クロートー, ラケシス, アトロポス)
ローマ神話 ユースティティア
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テミス(古希: Θέμις、古代ギリシア語ラテン翻字: Thémis)は、ギリシア神話の法・掟の女神である。ヘーシオドスによれば、ウーラノス(天)とガイア(大地)の娘で、ティーターンの一柱である[1][2]。テミスとは古代ギリシア語で「不変なる掟」の意味であり、掟の擬人化である[3]。

概説

テミスは「正義の女神」と見なされることが多いが、近代・現代的な意味での「正義」とは異なっている。むしろ、古代ギリシア語で正義に該当する神は、ディケー女神である[4][注 1]。ギリシア神話においては、ティーターンとオリュンポス神の戦いの後、敗れたティーターンは主要な神の地位を失い、神話においても多くの神が言及されなくなり、また地位が低下している。オリュンポスの時代になって、なおその地位と威勢を変わりなく維持した神はテミスだけである[3]。

テミスの結婚と子供たち

ヘーシオドスの『神統記』によると、メーティスに次いで、ゼウスは二番目の妻としてテミスを娶り、二人のあいだには、エウノミアー(秩序)、ディケー(正義)、エイレーネー(平和)のホーラーの三女神が生まれた[5][6][7][注 2]。更に、クロートー、ラケシス、アトロポスのモイライの三女神が生まれた[5][7]。

ヘーラクレースの第11番目の課題は、ヘスペリデースの黄金の林檎を獲得することであった。アポロドーロスによると、ヘスペリデースの園を知る海神ネーレウスの居場所をヘーラクレースに教えたニュンペーたちは、ゼウスとテミスの間の娘であった[8][9]。またアイスキュロスによれば、プロメーテウスはテミスの子である[3]。

デウカリオーンとテミスの託宣

ポーキスの南岸、パルナッソス山の南麓にはデルポイの神託所があった。この神託所は、歴史時代にあってはアポローンのもので、ピューティアーと呼ばれる巫女が神託を授けていた。デルポイは往古、ピュートーと呼ばれ、そこにはゲー(ガイア)の託宣所があり、竜のピュートーンがガイアの代理としてその地を支配していた。アポローンはピュートーンを倒し、神託所を自分のものとした。ここよりピュートーはアポローンの聖地となった。一説に、これを記念して、ピューティア大祭がデルポイで開催されることとなる[10]。

他方、ピュートーに神託所を持っていたのはテミスであるとする伝説も古くからあった。テミスは予言の術に秀で、アポローンに予言の術を教えた。アポローンはこうして、後にデルポイに彼の神託所を持つことになる[3]。

大洪水と第四の人間

デウカリオーンとピュラー

ゼウスは「青銅の時代」の人間たちが暴乱の様をつのらせたのを知り、大洪水を起こして彼らを滅ぼす計画を立てた。こうしてほとんどすべての人間は滅ぼされたが、プロメーテウスの息子デウカリオーンとその妻ピュラーは、大洪水の起こることをあらかじめに父より教えられていたので、箱船を造り洪水の難を逃れた。

人間が滅び、一組の正しい男女だけが生き延びたことを知ったゼウスは、大洪水を終焉させる。二人が乗った箱船は、九日九夜、水の上を彷徨った後、パルナッソスの二つの高峰近くに止まった。天候の回復を知ったデウカリオーンは船より降り、ゼウスに犠牲を献げ、デルポイに託宣所を持っていたテミスにも感謝の祈りを捧げた。二人は人間がすべて滅び消えたことを知り、テミスに祈って、人間の種族を再び回復させる方法を尋ねた。テミスは二人の問いに答え、「爾らの大いなる母の骨を歩を進めつつ背後に投げよ」と教えた。二人は、地上の岩の塊(大いなる母の骨)を歩みつつ背後に投げるとそこから新しい人間の種族が生まれ出た[11]。

ローマ神話

テミスはローマ神話においてはユースティティア女神に対応するとされる。近代・現代において、秤を手に持ち、司法における法と正義の象徴として像に表現されるのは、テミスではなくローマ神話のユースティティアである。彼女は正義の女神として、欧米においては司法の象徴ともなっている。

脚注

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注釈

  1. ↑ テミスを現代日本語の概念に照らし合わせると「掟・法」の意味が近く、他方、ディケー(Dike)が「正義」の概念に近い[4]。
  2. ↑ ホーライは最初は、秩序・正義・平和のような人間のノモスの様態の神格化であったが、後には四季が代表する季節・時節の意味に変化する。

出典

  1. ↑ 『神統記』, p. [要ページ番号], l.133-l.135.
  2. ↑ 原語版『テオゴニアー』(神統記) Θεογονία l.135 引用:Θείαν τε Ῥείαν τε Θέμιν τε Μνημοσύνην τε
  3. 1 2 3 4 高津 2007, p. 163.
  4. 1 2 呉 1987, p. 55.
  5. 1 2 『神統記』, p. [要ページ番号], l.901-l.906.
  6. ↑ 原語版『テオゴニアー』(神統記) Θεογονία l.900-l.906 引用:δεύτερον ἠγάγετο λιπαρὴν Θέμιν,(以下略)
  7. 1 2 『ギリシア神話』, p. [要ページ番号], 第1巻 3・1
    原語版『ビブリオテーケー』(ギリシア神話) Βιβλιοθήκη Α 3,1 引用:ἐκ μὲν οὖν Θέμιδος τῆς Οὐρανοῦ γεννᾷ θυγατέρας ὥρας. Εἰρήνην Εὐνομίαν Δίκην, μοίρας, Κλωθὼ Λάχεσιν Ἄτροπον, ἐκ Διώνης δὲ Ἀφροδίτην,
  8. ↑ 『ギリシア神話』, p. [要ページ番号], 第2巻 5・11.
  9. ↑ 原語版『ビブリオテーケー』(ギリシア神話) Βιβλιοθήκη Β 5,11 引用:βαδίζων δὲ δι᾽ Ἰλλυριῶν, καὶ σπεύδων ἐπὶ ποταμὸν Ἠριδανόν, ἧκε πρὸς νύμφας Διὸς καὶ Θέμιδος.
  10. ↑ 呉 1987, p. 78.
  11. ↑ 呉 1987, pp. 40–42.

参考文献

関連項目

外部リンク

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