ボルダリング
ボルダリング (英: bouldering) とは、クライミングの一種で、最低限の道具(クライミングシューズとチョーク)で岩や人工の壁面などを登るスポーツである。「岩の塊」「大きい丸い岩」を意味する英語が語源である[1]。元々はフック(カラビナにハーネスに結びついたロープをかける)を使用したフリークライミングの練習的な位置づけだったが、クライミングからフックという要素が取り除かれ、より純粋に壁面を登る事に集中できる。また必要な装備が少なく[2]、手軽に始められる事から、室内でボルダリングを中心に行うクライマーが増えており、現在では独立したフリークライミングの一形態となっている。
なお、室内で行うインドアクライミングではホールドという突起が壁面に取り付けられており、それを足場にし、掴みながら登る形となっている[3]。ホールドはいくつかの種類に分類され、代表的なものにはガバ、ピンチ、ポケット、ハリボテ、カチ、ビスなどがある。
自宅の壁を補強・改修したうえで、つかむためのホールドを取り付け、室内で楽しむ人もいる[4]。
2021年に開催された2020東京オリンピックより、スポーツクライミングの1種目としてオリンピック競技に採用されている。[5]
課題とグレード

登る際のルートを指定する「課題(コース)」には難しさを表すグレードがあり、一般的なグレードとして日本式(段級グレード)、ヨーロッパ式(フレンチグレード)、アメリカ式(Vグレード)が使われている[6]。
しかし、ジムなどの屋内で行うインドアボルダリングでは独自のグレードが用意されていることが多く、これらのグレードを日本で目にする機会は少ない[7][8]
またインドアボルダリングでの課題はピンク色のテープの課題は何級、テープが交差して貼られているのはこの課題という具合で隣り合う交わる課題同士の混合を防ぎ、グレードを分類する[9][10]
なお、屋外で行うアウトドアボルダリングでは課題が設定されていないことも多い。
※表では下行ほど高難度である。
| 段級 | ヨーロッパ式 | V |
|---|---|---|
| 8級 | 1+ 2 | VB- |
| 7級 | 2+ 3 | VB VB+ |
| 6級 | 3+ 4 | V0- V0 |
| 5級 | 4+ 5 | V0+ V1 |
| 4級 | 5+ 6A | V2 |
| V3[※ 1] | ||
| 3級 | 6A+ 6B | |
| V4[※ 2] | ||
| 2級 | 6B+ 6C | |
| V5[※ 3] | ||
| 1級 | 6C+ 7A | V6 |
| 初段 | 7A+ 7B | V7 |
| V8[※ 4] | ||
| 二段(+) | 7B+ 7C | V9 |
| 三段(+) | 7C+ 8A | V10 V11 |
| 四段(+) | 8A+ 8B | V12 V13 |
| 五段(+) | 8B+ 8C | V14 V15 |
| 六段(+) | 8C+ | V16 |
| 出典:[6] | ||
ホールドの種類
インドアボルダリングでは、以下のようなホールドが使われる。
ガバ
非常に掴みやすいホールドを指す。「ガバッ」と指が入ることから名付けられた。高難易度の課題では、ランジを行った先やスタートなどに設定されることが多い。また足場としても非常に安定する[11]。
スローパー
指が引っかかりやすい角を持たないホールドを指す。一般的にわずかな凹凸に摩擦力を働かせて掴む必要があるため、初心者のクライマーからは嫌われやすい。角がまるでないことから、傾斜を表すスロープ(slope)に、名詞化する接続辞「er」をつけた和製英語で呼ばれる。ラップ持ちなどのムーブ(技)を用いるのも有効である。表面がツルツルとしたコーティングで覆われている場合もあり、その際は主に足場として利用するがスメアリングというムーブが必要となる。[12]
ピンチ
主に指を開いて挟み込むようにしてホールドを掴むムーブ、「ピンチ」を用いて掴むホールドを指す。他のホールドは指の力が主要となるのに対し、こちらは握力が必要なため疲れやすい[13]。
カチ
指がわずか第一関節ほどまでしか入らないホールドを指す。「カチッ」と指が嵌りそうなことから名付けられた。親指を用いる「カチ持ち」というムーブがあるが、必ずしもカチに対して用いられることはない。クライマーはわずかな指の引っ掛かりを頼りに登る必要があり、指の皮が剥けやすいため特に初心者のクライマーから嫌われやすい[3]。
ポケット
ホールドの中央に穴がある構造のホールド。指が三本以上入るものをスリーフィンガーポケット、指が二本入るものをツーフィンガーポケット、指が一本入るものをワンフィンガーポケットという。ツーフィンガーポケットには「俵持ち」という人差し指と薬指の間に中指を置くムーブで三本程度の指が入る場合もある。指が第一関節まで入るものもあれば、指がずぼりと入るもの、また穴の内部がツルツルにコーティングされているものなどがあり、掴みやすさにはばらつきがある。また穴に足を置くこともある。形がポケットに似ていることからその名がついた[3]。
ビス
他のホールドが主にボルトで固定されるのに対し、ビス(一般的なネジ)で固定することから名付けられたホールド。ごく小さいことが多く、多くの場合、足場やスラブでのバランス取りとして使われる。またガバの内側やポケットの穴の中などに設置し、そのホールドを掴みにくくするのにも使われる[3]。
ハリボテ
非常に大きいホールドで、そのホールドの上に上記のホールドが設置されることもある。一般的に足場やガバなどを取り付けて掴む手として使われる。膝をつっかえ棒とするニーバーというムーブも有効な場合がある[3]。
クラッシュパッドと安全対策

屋外で行われるアウトドアボルダリングでは、墜落時の安全のためにクラッシュパッドという、携帯式のマットを使用する。
クライミング用シューズは緩衝材が靴底に無く、アーチ状の形状により平衡を保った着地が難しいため、飛び降りると墜落時に踵などを負傷したり、転倒し頭などを打つリスクが高くなる。しかし、クラッシュパッドを使用することにより、踵や腰への負傷を予防する事ができ、特に前倒壁においては墜落時における背中や頭部への直撃を防ぐ事ができる。クラッシュパッドは携帯性を重視しているので、墜落時の衝撃を吸収するまでの機能は無い。あくまで怪我防止のための補助具として使用する。
なお、クライミングジムなどで行うインドアクライミングでは大型のクッションを導入しており、これは衝撃吸収機能が高いため安全性が高い[14]。
複数人でアウトドアボルダリングを行う場合、スポッターと呼ばれる補助を行う者が付くことがある。スポッターは墜落時に肩を押す事で、頭部からの墜落を防ぐ。また傾斜地ではクラッシュパッドごと滑り落ちない様に支える事もある。スポッターには、登攀中はクライマーに触れない、墜落時に自らが下敷きにならない、などの注意が必要となる。複数人でボルダリングを行うことにより、前記のようなスポッターによる補助のほか、各自が持ち寄ったクラッシュパッドを重ねることなどによる安全性の向上が期待できる。
なお、クラッシュパッド、大型のクッションのどちらがある場合でも、姿勢が悪いまま墜落するのは危険であり、なるべく姿勢を保ち、意図したタイミングで飛び降りることが推奨されている。
ボルダリング競技

日本で有名なボルダリングの競技会としてはB-Sessionがある。B-Sessionは1年間を通じてのシリーズ戦を行いその総合ポイントで年間チャンピオンを選出する。勝敗はクリアーした課題の数で順位を決定する。競技はインドアクライミングで行われ、毎回大会用に課題を新しく設定して初登にて競われる。
そのほかに、日本山岳・スポーツクライミング協会が主催するボルダリングジャパンカップが2005年から年一回の間隔で行われているほか、2008年チャレンジ!おおいた国体からは国民体育大会の山岳競技の一種目としてボルダリングが採用されており、またジムが主催となって大会を開催する場合もある。
過去の年間チャンピオン
B-Session
種目名
2023年2月、日本山岳・スポーツクライミング協会はパリ五輪における、新種目の名称が「Boulder & Lead (ボルダー&リード) 」となったことに合わせて、それまで「ボルダリング」と呼ばれていた種目と「ボルダー」が同一ではないという誤解を防ぐために、それまでの種目名「ボルダリング」を2023年4月1日から「ボルダー」に変更すると発表した[15][16][17][18]。
脚注
- ↑ 尾川とも子『誰でもはじめられるボルダリング』成美堂出版、2018年9月、15頁。ISBN 978-4-415-32560-6。OCLC 1056178654。
- ↑ “自分に挑戦!ボルダリング初心者の一人での始め方”. 【SPAIA】スパイア (2016年12月21日). 2020年11月17日閲覧。
- 1 2 3 4 5 “クライミング&ボルダリングのホールドの種類|MAMMUT - マムート - 公式オンラインストア”. マムート公式通販(MAMMUT ONLINE STORE). 2026年9月26日閲覧。
- ↑ 「自宅でボルダリング 補強した壁にホールド」朝刊、くらし面、『読売新聞』2018年10月1日。
- ↑ “8月6日の結果|スポーツクライミング|東京2020|JOC - 日本オリンピック委員会”. JOC - 日本オリンピック委員会. 2026年9月26日閲覧。
- 1 2 小山田大『小山田大 DVDでボルダリング』山と渓谷社、2009年12月9日、14頁。ISBN 978-4635912631。
- ↑ けー&ひーたん (2023年3月13日). “まずはボルダリングのルールを覚えよう - ボルダリング研究所”. routef.com. 2026年9月26日閲覧。
- ↑ 『インドアクライミング練習帳』山と渓谷社、2024年3月10日、4,5,6,12頁。
- ↑ “超初心者編!初めて行く前に確認したいボルダリングの基本ルール | 大阪市大正駅のクライミングジム ガレーラ”. galera-climbing.com. 2026年9月26日閲覧。
- ↑ 『インドアボルダリング練習帳』山と渓谷社、2024年3月10日、11頁。
- ↑ 『インドアボルダリング練習帳』山と渓谷社、2014年3月10日、12頁。
- ↑ 『PEAKS特別編集 最新版 インドアボルダリングBOOK (エイムック 3668)』PEAKS編集部、2017年3月23日、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15頁。
- ↑ 『インドアボルダリング練習帳』山と渓谷社、2014年3月10日、90,91頁。
- ↑ “調布店|クライミングジム ウエストロック”. ウエストロック. 2026年9月26日閲覧。
- ↑ 公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会 スポーツクライミング部技術委員会, 『JMSCAスポーツクライミング競技規則 令和5年(2023年)3月1日一部改定版 主要変更点』,[PDFファイルの名無しリンク]2023-02-07。
- ↑ 「ボルダリング」から「ボルダー」へ JMSCAが名称変更
- ↑ ボルダリングの名称「ボルダー」に スポーツクライミング
- ↑ 「ボルダリング」を「ボルダー」に呼称変更へ クライミング協会、4月から