対角化可能であるための必要十分条件
定義式を成分で表示すると、

両辺に左から P を掛けると:

ここで、P を列ベクトル
を並べて表記すると

上式は、次のように書き直せる:

つまり、P の構成する各列ベクトルは Aの固有ベクトルであり、対応する対角成分はその固有ベクトルに対応する固有値になっている。行列 P が正則であることは、これらの固有ベクトルが線形独立である(= n次元ベクトル空間の基底になっている)ことを意味する。
ここまでの議論は完全に逆向きにたどることができる。つまり、行列Aの固有ベクトルだけで n 次元ベクトル空間の基底が構成できるならば、それら縦ベクトルを横に並べた行列 P は正則行列となり、

が成り立ち、D の対角成分には A の固有値が並ぶ。
以上が行列が対角化できるための必要十分条件である。またこれは、実際に対角化を行うための手順にもなっている。
他にも同値な条件がいくつか知られている。
- (ここでは固有方程式が(重解を持つ場合も許容して)1次式の積に分解できることを前提とする。固有値・固有ベクトルが複素数でもよいのならこれはいつでも正しい(代数学の基本定理)が、実数だけで考えている場合は固有方程式の左辺が因数分解できないこともあり得る。)
- A の固有値を
とするとき、A が対角化可能であるための必要十分条件は、次の等式が成り立つことである:

- ここで、In は n 次単位行列を表す。
は固有値
の固有空間であるから、この条件はベクトル空間の基底として A の固有ベクトルが取れることを意味している。
- 上の条件は、
の各項が
の重複度と一致する、とも言い換えられる。一致しない場合はその固有空間の次元は
を下回り、総計が n には成り得ないからである。詳しくは固有空間の次元を参照。
- 行列 A の最小多項式が重根をもたないことも対角化可能であるための必要十分条件である。
A が実対称行列のとき、A は常に対角化可能であり、P として直交行列を取ることができる。また A がユニタリー行列 U を用いて対角化できるためには、A が正規行列であることが必要十分である。正規行列の中で応用上重要なクラスとして、対称行列とエルミート行列がある。