ちょうこくしつ座

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ちょうこくしつ座
Sculptor
Sculptor
属格形 Sculptoris
略符 Scl
発音 英語発音: [ˈskʌlptər]、属格:/skəlpˈtɒrɨs/
象徴 彫刻家のアトリエ[1][2]
概略位置:赤経  23h 06m 43.4319s -  01h 45m 50.1333s[3]
概略位置:赤緯 −24°.8042011 - −39°.3726234[3]
20時正中 11月下旬[4]
広さ 474.764平方度[5] (36位)
バイエル符号/
フラムスティード番号
を持つ恒星数
18
3.0等より明るい恒星数 0
最輝星 α Scl[6](4.27等)
メシエ天体数 0[7]
確定流星群 0[8]
隣接する星座 くじら座
みずがめ座
みなみのうお座
つる座
ほうおう座
ろ座
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ちょうこくしつ座(ちょうこくしつざ、ラテン語: Sculptor)は、現代の88星座の1つ。18世紀半ばにフランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユが考案した新しい星座で、彫刻家のアトリエがモチーフとされた[注 1]。

特徴

2004年8月に撮影されたちょうこくしつ座の全景。

北東をくじら座、北西をみずがめ座、西をみなみのうお座、南西をつる座、南をほうおう座、東をろ座に囲まれている[10]。20時正中は11月下旬頃[4]で、北半球では冬の星座とされ[9]、初秋から晩冬にかけて観ることができる[10]。赤緯−24°.80を北端としているため、人類が居住しているほぼ全ての地域から星座の一部を観ることができる[10]。一方、南端は−39°.37 としているため、北緯50°.6以北の地域[注 2]からは星座の全体を観ることができない[10]。面積では全天で36番目とそこそこ大きな星座だが、最も明るく見えるα星でも4等星と暗く、肉眼で見える目立つ天体はない。

南銀極(銀河南極、 00h 51m 26.3s−27° 07′ 42″)はこの星座の領域内にある[11][12]。銀極方向は銀河円盤の星間塵の影響が小さいため、遠方の系外銀河の観測に適している[12]。

由来と歴史

19世紀イギリスの星座カード集『ウラニアの鏡』に描かれたちょうこくしつ座。

ちょうこくしつ座は、18世紀中頃にニコラ=ルイ・ド・ラカイユによって考案された。ラカイユが考案し現在も使われている14の星座の中では最も大きい[2]。

1756年に刊行された1752年版のフランス科学アカデミーの紀要『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載されたラカイユの星図の中で、フランス語で「彫刻家のアトリエ」を意味する「l’Atelier du Sculpteur」として描かれたのが初出である[2][13][14]。ラカイユの死後1763年に刊行した著書『Coelum australe stelliferum』に掲載された第2版の星図では、ラテン語化された「Apparatus Sculptoris」と呼称が変更されている[2][15]。

現在の「Sculptor」という学名は、イギリスの天文学者ジョン・ハーシェルが提案したものである。ジョン・ハーシェルは、1844年のフランシス・ベイリー宛の書簡の中で、Apparatus Sculptoris を「Sculptor」と短縮することを提案した[2][16]。それを受けたベイリーが、翌年の1845年に刊行した『British Association Catalogue』において「Sculptor」と改めたことにより、以降この呼称が定着することとなった[2]。

1922年5月にローマで開催された国際天文学連合 (IAU) の設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Sculptor、略称は Scl と正式に定められた[17][18]。

中国

現在のちょうこくしつ座の領域は中国の歴代王朝の版図から見える位置にあったが、この領域の星が二十八宿の星官に充てられていたか否かは説が分かれている[2][19]。

神話

新しい星座であるため、星座にまつわる神話や伝承はない。

呼称と方言

世界で共通して使用されるラテン語の学名では、主格は Sculptor、属格は Sculptoris、略称は Scl と定められている[17][18]。Sculptor に対応する日本語の学術用語としては「ちょうこくしつ」という呼称が定められている[20]。現代の中国では「彫刻家」を意味する玉夫座と呼ばれている[21][22]。

日本では、1910年(明治43年)2月刊行の日本天文学会の会誌『天文月報』第2巻第11号で星座名の改訂が示された際に「彫刻室」という呼称が使われている[23]。この呼称は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』[24]や1928年(昭和3年)に天文同好会の編集により新光社から刊行された『天文年鑑』第1号[25]にもそのまま引き継がれている。戦後の1952年(昭和27年)7月、日本天文学会は「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[26]とした。このときに、Sculptor の訳名は「ちょうこくしつ」と定まり[27]、以降この呼び名が継続して用いられている。

京都帝国大学の山本一清は、Sculptorは「彫刻室」或は彫刻家の工作室の意味であるが,こうした藝術家の作業室を,近年我國では,フランス語を其のまゝ「アトリエ」と一般に呼ぶやうになつてゐる.だから今の吾々の場合にも,彫刻室などギコチない言葉を用ゐないで,「アトリエ」といふ新日本語を其のまゝ採用して置くのが良いと思はれる.[28]としており、自らが妥当と考える星座名の一覧では「アトリエ」という邦訳を充てていた[29]。

主な天体

南天にあるためメシエ天体こそないが、特徴のある銀河があることからアマチュア天文家の観測対象となっている。この星座の領域には銀河南極があるなど銀河円盤が相対的に薄い領域であるため、遠方の銀河を天の川銀河内の天体の影響を受けずに観測することができる。

恒星

ALMAによって撮像されたちょうこくしつ座R星とその周囲の奇妙な渦巻構造。

2026年9月時点で、国際天文学連合の恒星名称ワーキンググループ(英語版) (WGSN) によって2個の恒星に固有名が認証されている[30]。

HD 4208
太陽系から約111 光年の距離にある、見かけの明るさ7.79 等、スペクトル型 G7VFe-1CH-0.5 のG型主系列星で、8等星[31]。2001年にドップラー分光法により軌道長半径1.65±0.096 au(天文単位)の軌道を828.0±8.1 日の周期で公転する0.804±0.073 MJ(木星質量)の太陽系外惑星 HD 4208 b が発見された[32]。2019年に開催された IAU の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でニカラグア共和国に命名権が与えられ、主星は中央アメリカ最大の湖とされるニカラグア湖のナワトル語での名称にちなんだ Cocibolca、系外惑星b はニカラグアで2番目に大きな湖であるマナグア湖のナワトル語での名称にちなんだ Xolotlan と命名された[33]。
LTT 9779
太陽系から約264 光年の距離にある、見かけの明るさ9.76 等、スペクトル型 G7V のG型主系列星で、10等星[34]。2019年にトランジット法により軌道長半径0.01679±0.00014 auの軌道を0.7920641±0.00000014 日の周期で公転する太陽系外惑星LTT 9779 b が発見された[35]。2022年に開催された「NameExoWorlds 2022」で、主星はコロンビア共和国の先住民ウワ族(英語版)のウワ語(英語版)(トゥネボ語)で「星」「種」「目」を意味する言葉にちなんだ Uúba、系外惑星b はウワ語で日の出前に沈む朝の星を表す言葉にちなんだ Cuancoá と命名された[36]。

このほか、以下の恒星が知られている。

α星
見かけの明るさ4.27等の4等星[6]。変光星としては回転変光星の一種である「おひつじ座SX型変光星」に分類される[37]。ちょうこくしつ座で最も明るく見える恒星。
β星
見かけの明るさ4.37等の4等星[38]。ちょうこくしつ座で2番目に明るく見える恒星。
R星
漸近巨星分枝段階にある炭素星[39]。SRB型の半規則型変光星。赤色巨星としては初めて周囲に渦巻き構造と球殻構造を同時に持つことが発見された[40]。
HD 4113
G型主系列星のA星[41]、赤色矮星のB星[42]、褐色矮星のC星[43]からなる連星系。主星Aには太陽系外惑星が発見されている[41]。
HD 225213
太陽系から14.17 光年の距離にある赤色矮星[44]。太陽系から20 パーセク以内にある恒星のデータを集録した「グリーゼカタログ」の1番に上げられた恒星である[44]。

星団・星雲・銀河

いわゆる「メシエ天体」は1つもない[7]が、パトリック・ムーア(英語版)がアマチュア天文家の観測対象に相応しい星団・星雲・銀河を選んだコールドウェルカタログに銀河が3個選ばれている[45]。

NGC 253
天の川銀河から約1150万 光年離れた位置にあるセイファート銀河で、「ちょうこくしつ座銀河群」の中心にある渦巻銀河[46]。コールドウェルカタログの65番に選ばれている[45]。1783年にカロライン・ハーシェルが発見した[47]。英語では「Sculptor Galaxy」[47]や「Sculptor Filament」[46]、「Silver Coin Galaxy」[47][48]、「Silver Dollar Galaxy」[49]などの愛称で呼ばれている。
NGC 300
天の川銀河から約730万 光年離れた位置にある渦巻銀河[50]。コールドウェルカタログの70番に選ばれている[45]。
NGC 55
天の川銀河から約447万 光年離れた位置にある不規則銀河[51]。コールドウェルカタログの72番に選ばれている[45]。1826年にスコットランド生まれのオーストラリアの天文学者ジェームズ・ダンロップ(英語版)が発見した[52]。日本国内から見える範囲にある銀河としては、アンドロメダ銀河、さんかく座銀河に次いで3番目に明るい銀河とされる[53]。英語では「String of Pearl Galaxy」と呼ばれることもある[54]。
ちょうこくしつ座矮小銀河
太陽系から約27万4000 光年の位置にある矮小楕円銀河[55]で、天の川銀河の伴銀河[56]。1937年にハーロー・シャプレーが発見した[57]。
IC 5332
天の川銀河から約2500万 光年の位置にある渦巻銀河[58]。2022年にハッブル宇宙望遠鏡 (HST) とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) のそれぞれが撮像した画像が公表された[59]。
ちょうこくしつ座銀河群
天の川銀河が属する局所銀河群に最も近い銀河群の1つ。天の川銀河から約1270万 光年の距離にある。
Abell 2744
天の川銀河から約35億光年の距離にある銀河団[60]。その複雑な構造から「Pandora’s Cluster(パンドラの銀河団)」とも呼ばれる[60][61]。

流星群

IAUの流星データセンター (IAU Meteor Data Center) で確定された流星群 (Established meteor showers) とされた流星群のうち、ちょうこくしつ座の名前を冠するものは1つもない[8]。なお、2014年に58年ぶりに観測されたほうおう座流星群の放射点はこの星座の領域にあるとされた[65]。

脚注

注釈

  1. ↑ Sculptorというラテン語の学名を直訳すると「彫刻家」である[3]が、モチーフとなったのは彫刻家のアトリエである[9]。
  2. ↑ ウクライナ共和国の首都キーウ付近。

出典

  1. ↑ “The Constellations”. 国際天文学連合. 2025年3月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月14日閲覧。
  2. 1 2 3 4 5 6 7 Ridpath, Ian. “Sculptor”. Star Tales. 2026年10月10日閲覧。
  3. 1 2 3 “Constellation boundary”. 国際天文学連合. 2025年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月1日閲覧。
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  8. 1 2 “流星群の和名一覧(極大の日付順)”. 国立天文台 (2026年9月14日). 2026年10月10日閲覧。
  9. 1 2 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、195頁。ISBN 978-4-7699-0825-8。
  10. 1 2 3 4 『ステラナビゲータ11』(11.0i)AstroArts。
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  14. ↑ “Histoire de l'Académie royale des sciences” (フランス語). Gallica. 2023年1月7日閲覧。
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  25. ↑ 天文同好会 編『天文年鑑』1号、新光社、1928年、3-6頁。doi:10.11501/1138361。
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参考文献

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