現存しない星座

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現存しない星座の一つ、アルゴ座
1684年のActa Eruditorumに掲載されたGladii Electorales Saxonici

現存しない星座では、様々な理由により星座として認識されなくなった、または国際天文学連合(IAU)の公式の星座に採用されなかった、歴史的な星座について説明する[1]。1930年以前、これらの現存しない星座の多くは、少なくとも1つ以上の国や文化で伝統的なものだった。その中には、数十年しか続かなかったものもあれば、何世紀にもわたって言及されたものもあった。それらの全ては、現在では古典的または歴史的価値をだけを持つものと認識されている[2]。現存しない星座の多くは、物、人、あるいは神話や実在の生き物の名前にちなむ複雑なラテン語名を持っていた[2]。扱いにくい名前を持つ星座は便宜上短縮された。例えば、Scutum SobiescianumはScutum(たて座)に、Mons MensaeはMensa(テーブルさん座)に、Apparatus SculptorisはSculptor(ちょうこくしつ座)に省略された。

北半球の空の現存しない星座のいくつかは、伝統的な明るい星座の間の隙間を埋めるためだけに作られた。南半球の空では、赤道以南に到達した航海者によって15世紀ごろから新しい星座が作られるようになった。イギリス、フランス、オランダ、ドイツ、イタリアなどのヨーロッパ諸国は、自分たちが作った星座を普及させようとした。異なる星座の間で領域が重なり同じ星を含む場合もあった。これらの星座は、古い本、星図、星表によく見られる。

現代の88個の星座の名称と略称は1922年のIAU総会で認証され、星座の境界線はウジェーヌ・デルポルトの案を下に1930年に国際的な合意のもとでIAUによって標準化された[2][3]。現存していない星座のほぼ全ては、境界に赤経と赤緯の線に従わない部分があるため、現代の星座と指定された境界が異なる[4]。

注目すべき現存しない星座

アルゴ座

アルゴ座 (Argo) あるいはアルゴ船座 (Argo Navis) は、トレミーの48星座の中で唯一公式の星座から除外された星座である。星座が大きすぎるため、りゅうこつ座、ほ座、とも座の3つに分割された[5]。

壁面四分儀座

壁面四分儀座[6] (Quadrans Muralis) は1795年に作られ、現存する星座うしかい座とりゅう座の間に置かれた。しぶんぎ座流星群はこの星座にちなんで名付けられたものである。

ブランデンブルクのおうしゃく座

エリダヌス座53番星は、かつて所属していたブランデンブルクのおうしゃく座[7] (Sceptrum Brandenburgicum) から、王笏を意味するSceptrumの別名で呼ばれている[8][9]。

現存しない星座の一覧

日本語名 ラテン語名 意味 作成年 作成者 備考
アンティノウス座[10]Antinousアンティノウス132年ハドリアヌス[11]
蜜蜂座(北天)Apes蜜蜂1612年ペトルス・プランシウスヤコブス・バルチウスにより雀蜂→蠅と変更され、ジェミーソン星図でMusca Borealisとされる
蜜蜂座(南天)Apis蜜蜂1598年ペトルス・プランシウスみなみばえ座(省略してはえ座)に改称
アルゴ座Argo Navisアルゴー船2世紀プトレマイオスりゅうこつ座、ほ座、とも座に分割
ロバ座、飼い葉桶座Asselli, Praesepeディオニューソスのロバと飼い葉桶紀元前3世紀アラトス[12][13]ロバ座は現在のかに座γ星とかに座δ星。飼い葉桶座は現在のプレセペ星団
ボルタ電池座Battery of Voltaボルタ電池1807年トマス・ヤング
子蟹座Cancer Minor小さいカニ1613年ペトルス・プランシウス
カプラ、ハエディCapra, Haedi山羊・アマルテイアとその子紀元前3世紀アラトス[14]カプラはカペラと周辺の星。ハエディはぎょしゃ座ζ星、ぎょしゃ座η星
ケルベルス座Cerberusケルベロス1690年ヨハネス・ヘヴェリウス
フィルミアンの冠座Corona Firmianaかんむり座をザルツブルク大司教レオポルト・アントン・フォン・フィルミアン(英語版)を讃えて改称1730年Corbinianus Thomas
監視者メシエ座Custos Messiumシャルル・メシエを讃えたもの1775年ジェローム・ラランド[15]
デルタ座Deltotonさんかく座の旧名1540年ペトルス・アピアヌス[16]
猫座Felisネコ1799年ジェローム・ラランド
フリードリヒの栄誉座Frederici Honoresフリードリヒ大王を讃えて1787年ヨハン・ボーデ[17]
雄鶏座Gallus雄鶏1613年ペトルス・プランシウス
Gladii Electorales Saxoniciザクセン選帝侯領の紋章の交差した剣1684年ゴットフリート・キルヒ
軽気球座Globus Aerostaticus軽気球1798年ジェローム・ラランド[18]
ヨルダン座Jordanusヨルダン川1613年ペトルス・プランシウス
Leo Palatinusライン宮中伯カール・テオドールとその妻エリーザベト・アウグステを称えるライオン1785年Karl-Joseph König
測程索座Lochium Funis測程索1801年ヨハン・ボーデ[19]1888年にEliza A. BowenがLinea Nauticaに改称[20]
ゆり座Liliumフルール・ド・リス1679年オギュスタン・ロワーエ、Ignace-Gaston Pardies
Linum Piscium魚を結ぶ線1590年トーマス・フッド(英語版)1801年にボーデによってLinum AustrinumとLinum Boreumから改称。Lineolaとしても知られる
電気機械座 [21]Machina Electrica摩擦起電機とライデン瓶1800年ヨハン・ボーデ[22]
帆柱座Malusマスト1844年ジョン・ハーシェル
大理石の彫刻座Marmor Sculptile大理石の彫刻1810年William Croswellコロンブスの胸像
マエナルス山座Mons Maenalusメナロ山1690年ヨハネス・ヘヴェリウス[23]
北蠅座Musca Borealis北のハエ1822年アレクサンダー・ジェイミソン
梟座Noctuaフクロウ1822年アレクサンダー・ジェイミソン
印刷室座Officina Typographica印刷室1801年ヨハン・ボーデ[24]
フラミンゴ座Phoenicopterusフラミンゴ17世紀初頭[25]ペトルス・プランシウス/Paul Merulaつる座の旧称
Piscis Notus紀元前3世紀アラトス
ポロフィラックスPolophylax天の南極の守護者1592年ペトルス・プランシウス
帝国宝珠座Pomum Imperialeレオポルト1世の宝珠1688年ゴットフリート・キルヒ
パエトーン座Phaethonパエトーン中世アラトス/ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス
Pluteum胸墻(英語版)1881年Richard Andreeがか座の旧称
ジョージの琴座Psalterium Georgiiジョージ3世のプサルタリー1781年マクシミリアン・ヘル(英語版)[26]ラランドによってHarp Georgiiに改称
壁面四分儀座Quadrans Muralis壁面四分儀1795年ジェローム・ラランド[27]
Quadratum菱形1706年Carel Allardレチクル座の旧称
Ramus Pomifer実がなっているリンゴの枝1690年ヨハネス・ヘヴェリウス[28]
チャールズの樫の木座Robur Carolinumロイヤル・オーク1679年エドモンド・ハレー[29]
バラ座Rosaバラ1536年ペトルス・アピアヌス
南の矢座Sagitta Australis南の矢1613年ペトルス・プランシウス
ブランデンブルクの王笏座Sceptrum Brandenburgicumブランデンブルク選帝侯の王笏1688年ゴットフリート・キルヒ[30]
おうしゃく座Sceptrum et Manus Iustitiae王笏と正義の手1679年オギュスタン・ロワーエ
モモンガ座Sciurus Volansモモンガ1810年William Croswell[31]現在はきりん座の一部
蛇紋座Serpentarius大蛇紋年不明
ウーラニアーの六分儀座Sextants Uraniaeウーラニアーの六分儀1690年ヨハネス・ヘヴェリウスろくぶんぎ座(Sextans)の旧称
Siren, Ceneus, Langセイレーン、ラピテース族のカイネウス、オオハシ科17世紀初頭[32]不明/ウィレム・ブラウ(英語版)
日時計座Solarium日時計1822年アレクサンダー・ジェイミソン
ヴェロニカのヴェール座Sudarium Veronicaeヴェロニカのヴェール(英語版)1643年Antoine Marie Schyrle de Rheita[33]
馴鹿座Tarandus または Rangiferトナカイ1736年ピエール・シャルル・ルモニエ[34]
ポニアトフスキーのおうし座Taurus Poniatoviiポニャトフスキの紋章の牡牛1777年マルチン・ポツォブト=オドラニツキー(英語版)[35]
Tarabellum and Vexillumドリルと旗弁(英語版)12世紀マイケル・スコット[36]
ハーシェルの望遠鏡座Telescopium Herscheliiハーシェルの望遠鏡1781年マクシミリアン・ヘル(英語版)[37]1801年にボーデによってTubus Herschelii Majorから改称
Tubus Herschelii Minorハーシェルの反射望遠鏡1781年マクシミリアン・ヘル(英語版)
チグリス座Tigrisチグリス川1613年ペトルス・プランシウス
南極の三角座Triangulus Antarcticusみなみのさんかく座(Triangulum Australe)の旧称1589年ペトルス・プランシウス
大三角座Triangulum Majus大きな三角1690年ヨハネス・ヘヴェリウスさんかく座の旧称
小三角座Triangulum Minus小さい三角1690年ヨハネス・ヘヴェリウス[38]
つぐみ座Turdus Solitariusチャイロコツグミ1776年ピエール・シャルル・ルモニエ[39]後にふくろう座に改称
壺座Urnaみずがめ座の壺1596年Zacharias Bornmann
雀蜂座Vespaスズメバチ1624年ヤコブス・バルチウス[40]きたばえ座の旧称
メカジキ座Xiphiasメカジキ年不明

脚注

注釈

    出典

    1. ↑ “The Constellations”. IAU-International Astronomical Union. 2018年4月1日閲覧。
    2. 1 2 3 Ian Ridpath. “Constellation names, abbreviations and sizes”. 2018年4月1日閲覧。
    3. ↑ Marc Lachièze-Rey; Jean-Pierre Luminet; Bibliothèque Nationale de France. Paris (16 July 2001). Celestial Treasury: From the Music of the Spheres to the Conquest of Space. Cambridge University Press. p. 80. ISBN 978-0-521-80040-2
    4. ↑ “Constellation boundaries.”. 2018年4月1日閲覧。
    5. ↑ “Star Tales - Argo Navis”. www.ianridpath.com. 2019年3月24日閲覧。
    6. ↑ 原恵 2007, p. 274.
    7. ↑ 原恵 2007, p. 268.
    8. ↑ Barentine, John C. (2015). The Lost Constellations: A History of Obsolete, Extinct, or Forgotten Star Lore. New York, New York: Springer. p. 365
    9. ↑ “IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2017年6月30日閲覧。
    10. ↑ 原恵 2007, pp. 278–279.
    11. ↑ Allen 2013, p. 40.
    12. ↑ “Page:Popular Science Monthly Volume 30.djvu/774 - Wikisource, the free online library”. en.wikisource.org. 2019年3月27日閲覧。
    13. ↑ “Star Tales - Cancer”. www.ianridpath.com. 2019年3月27日閲覧。
    14. ↑ “AMALTHEA (Amaltheia) - Goat Nurse of Zeus in Greek Mythology”. www.theoi.com. 2019年3月27日閲覧。
    15. ↑ Allen 2013, p. 191.
    16. ↑ “Astrocultura UAI - Unione Astrofili Italiani- Sezione Mitologia Costellazioni estinte obsolete”. astrocultura.uai.it. 2019年3月27日閲覧。
    17. ↑ Allen 2013, p. 221.
    18. ↑ Allen 2013, p. 237.
    19. ↑ Allen 2013, p. 65.
    20. ↑ “Astrocultura UAI - Unione Astrofili Italiani- Sezione Mitologia Costellazioni estinte obsolete”. astrocultura.uai.it. 2019年3月27日閲覧。
    21. ↑ 原恵 2007, p. 276.
    22. ↑ Allen 2013, p. 289.
    23. ↑ Allen 2013, p. 290.
    24. ↑ Allen 2013, p. 297.
    25. ↑ “Star Tales - Grus”. www.ianridpath.com. 2019年3月27日閲覧。
    26. ↑ Allen 2013, p. 347.
    27. ↑ Allen 2013, p. 348.
    28. ↑ Allen 2013, p. 242.
    29. ↑ Allen 2013, p. 349.
    30. ↑ Allen 2013, p. 360.
    31. ↑ Kanas, Nick (2007). Star maps: history, artistry, and cartography. New York, New York: Springer. p. 131. ISBN 0-387-71668-8
    32. ↑ Gent, R.H. van. “A Pair of Puzzling Star Maps and Two Unknown Constellations”. www.staff.science.uu.nl. 2019年3月27日閲覧。
    33. ↑ “Astrocultura UAI - Unione Astrofili Italiani- Sezione Mitologia Costellazioni estinte obsolete”. astrocultura.uai.it. 2019年3月27日閲覧。
    34. ↑ Allen 2013, p. 377.
    35. ↑ Allen 2013, p. 413.
    36. ↑ “Nuova pagina 1”. Atlascoelestis.com. 2018年8月5日閲覧。
    37. ↑ Allen 2013, p. 414.
    38. ↑ Allen 2013, p. 417.
    39. ↑ Allen, 2013 & p418.
    40. ↑ Allen 2013, p. 292.

    参考文献

    外部リンク

    関連項目