点と線
本作ゆかりの東京ステーションホテル2033号室(発表当時の209号室)前
本作ゆかりの東京ステーションホテル2033号室(発表当時の209号室)前
訳題 Points and Lines/Tokyo Express
作者 松本清張
国 日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 雑誌連載
初出情報
初出 『旅』 1957年2月号 - 1958年3月号
出版元 日本交通公社
挿絵 佐藤泰治
刊本情報
刊行 『点と線』
出版元 光文社
出版年月日 1958年2月1日
装幀 吉岡堅二
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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『点と線』(てんとせん)は、松本清張の長編推理小説。雑誌『旅』に連載され(1957年2月号 - 1958年1月号、連載時の挿絵は佐藤泰治)、加筆訂正の上、1958年2月に光文社から単行本が刊行された。

福岡市香椎の海岸で発見された男女の情死体に疑問を持った2人の刑事の事件捜査を活写し、F・W・クロフツらによって確立されたアリバイ崩しのスタイルを継承したミステリー長編[注釈 1]。著者の最初の長編推理小説であり、松本清張ブームを巻き起こした作品である[注釈 2]。

1958年に東映系で映画化、また2007年にテレビドラマ化されている。

あらすじ

料亭「小雪」の女中2人と、東京駅の13番線プラットフォームで見送られていた機械工具商会を経営する安田辰郎。この3人は、向かいの15番線プラットフォームに、同じく「小雪」で働くお時が男性と夜行特急列車「あさかぜ」に乗り込むところを見つける。だが数日後、お時とその男・佐山は、香椎の海岸で情死体となって発見された。

一見ありふれた情死に見えたが、博多のベテラン刑事・鳥飼重太郎は、佐山が持っていた車内食堂の伝票から事件の裏の真相を探るため、1人、捜査をすることにする。

一方、佐山は現在社会をにぎわしている産業建設省の汚職事件の関係者であった。この事件を追っていた本庁の刑事・三原紀一は、心中事件を追って九州へ向かい、鳥飼と出会う。

捜査の結果、2人は、東京駅で13番線プラットフォームから15番線プラットフォームが見えるのは、1日の中で17時57分から18時01分のわずか4分間しかないことを突き止め、安田を容疑者として追及しようとする。だが、安田には完璧なアリバイがあった。

主な登場人物

鳥飼重太郎
福岡署の古参刑事。常にくたびれた服装をしている。
三原紀一
警視庁捜査二課[注釈 3]の警部補。銀座にある行きつけの喫茶店でコーヒーを飲むのが趣味。
安田辰郎
機械工具商・安田商会の経営者。
佐山憲一
××省の課長補佐。
お時
赤坂の割烹料亭「小雪」の女中で安田の係。本名は桑山秀子。
安田亮子
安田の妻。肺結核を患い鎌倉・極楽寺近辺で療養している。
石田芳男
××省の部長。
佐々木喜太郎
××省の事務官。

作品鑑賞

作品が書かれた当時はまだ新幹線が開業しておらず、飛行機の利用も一般的ではなかったため、日本国内の旅行・移動には、相当遠距離でも鉄道(主に急行列車)が用いられていたこと等、当時の社会状況が反映された内容になっている[1]。

また本作を推理小説として見た場合、古くからいくつかの問題点を指摘する見解も出されている[注釈 4]。

なお、清張が1961年に発表した作品である『時間の習俗』には、本作と同じく三原警部補と鳥飼刑事を再登場させている。

エピソード

当時の経緯

東京駅での寝台特急「あさかぜ」
(写真は国鉄20系客車だが、本作は同列車への20系導入前年に連載された)

作品の周辺

ギャラリー

翻訳

映画版

点と線
The Dead End
ポスター(1958)
監督 小林恒夫
脚本 井手雅人
松本清張(原作)
製作 根津昇(企画)
出演者 南広
山形勲
高峰三枝子
音楽 木下忠司
撮影 藤井静
編集 祖田富美夫
配給 東映
公開 日本の旗 1958年11月11日
上映時間 85分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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1958年11月11日公開。製作は東映東京、配給は東映。DVD化されている。原作小説ではタッチの差で安田夫妻が心中してしまい逮捕出来なかったことを三原が後日になって手紙で鳥飼に報告するという結末だが、映画化された本作では安田夫妻の心中現場に鳥飼も居合わせており、三原と鳥飼、二人の苦々しい表情で唐突に終わるという結末になっている。

キャスト

スタッフ

エピソード

ネット配信

テレビドラマ

松本清張 点と線
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『点と線』
脚本 竹山洋
監督 石橋冠
出演者 ビートたけし
ナレーター 石坂浩二
音楽 坂田晃一
製作
チーフ・プロデューサー 五十嵐文郎
プロデューサー 藤本一彦
制作 テレビ朝日
放送
映像形式文字多重放送
音声形式ステレオ放送
第1夜
放送期間2007年11月24日
放送時間土曜 21:03 - 23:21
放送分138分
回数1回
第2夜
放送期間2007年11月25日
放送時間日曜21:04 - 23:24
放送分140分
回数1回
2019年版(テレビ朝日開局60周年 夏の傑作選)
放送期間2019年8月4日
放送時間日曜 21:00 - 23:05
放送枠日曜プライム
放送分125分
回数1回
テレビ朝日開局60周年 夏の傑作選 松本清張生誕110周年記念「点と線」

特記事項:
平成19年度(第62回)文化庁芸術祭賞(テレビ部門・ドラマの部)大賞受賞(第2部)
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『松本清張 点と線』(まつもとせいちょう てんとせん)の題名で、テレビ朝日の開局50周年記念番組として、2007年11月24日と25日に、同局系列(フルネット24局)で二夜連続で放送した。視聴率(関東地区)は第1夜が23.8%、第2夜が23.7%であった。ホームページの「おさらい」では物語の結末を明かしている。2009年11月8日には「松本清張生誕100年記念特別バージョン」として前後編を再編集し、全国ネットでの再放送を行った(視聴率14.3%)。

2007年の文化庁主催の芸術祭テレビ部門参加作品ともなり、審査員からは「推理ドラマの枠組みをはるかに超えた人間ドラマで、見るものを圧倒した」と評価され、ドラマとしては4年ぶりとなる大賞を受賞。日本民間放送連盟賞のテレビドラマ番組において優秀賞を受賞した[3]。また2008年に民放連とNHKなどで作る「国際ドラマフェスティバル in TOKYO 実行委員会」が選ぶ東京ドラマアウォード2008のグランプリおよび特別賞も受賞している(特別賞は美術スタッフに対して)。

1957年の東京駅のホームや、福岡・東京の町並みを細部まで再現したオープンセット、さらには日本各地で昭和30年代の列車を再現してのロケーションが行われた。東京駅のプラットフォームのセットは、JR西日本の協力のもとに宮原総合運転所の敷地内に作られた。スタッフやキャストですら完成度に驚いたという。新宿行きの路面電車のシーンは昭和28年製の車両(元東武日光軌道線100形電車)が現存する、岡山で撮影された[注釈 25]。

また、同局の『土曜ワイド劇場』の主役級である、小林稔侍(『炎の警備隊長五十嵐杜夫』)、橋爪功(『新・赤かぶ検事奮戦記』)、市原悦子(『家政婦は見た!』、同シリーズの第1作は清張原作の『熱い空気』を『松本清張の熱い空気』のタイトルでドラマ化したもの)をはじめとした、多数のキャスト布陣も話題になった。鳥飼を演じたビートたけしは、「50年前に映画化されて以来、はじめてドラマ化されただけに、えらい気合が入って、すごく面白かったよ。2007年の主な仕事はドラマ『点と線』だと言えるくらい、時間をかけて演じた」とコメントしている[注釈 26]。

鳥飼が独断で東京に行き捜査すること、鳥飼や安田の太平洋戦争中のエピソードなど、テレビドラマ版独自の設定が追加されている。また、事件後は三原が報告に博多を訪れたのを最後に鳥飼と三原は会うことはなかったとしており、『時間の習俗』への連続性はなくなっている。

なお、再編集版の最後では鳥飼と三原が再び出会うシーンはカットされ、ナレーションならびに解説の石坂浩二が「鳥飼と三原がその後会ったかどうかさだかではなく、作品にも出会ったかどうかの記述はない」と述べた。

2019年8月4日には『テレビ朝日開局60周年 夏の傑作選』の第1弾として、『日曜プライム』枠で1本に再編集して放送された[4]。

放送日時

キャスト

主要登場人物

警察関係者

産業建設省

その他の登場人物

スタッフ

遅れネット局

BS局

その他

脚注

注釈

  1. ↑ ミステリー史上における本作の位置づけについて、平野謙は、アリバイ崩しそれ自体は、日本でも蒼井雄や鮎川哲也らが早くから手がけているが、本作はリアリティの点で卓越していると評価し、また、クロフツをアリバイ破りの完成者のひとりと位置づけながら、犯行動機をもっぱら個人悪に求めたクロフツに対して、本作では個人悪と組織悪の混合に求めている点が新しく、そこに清張のオリジナリティがあると分析している。『松本清張全集 第1巻』(1971年4月、文藝春秋)巻末の平野による解説を参照。
  2. ↑ このため、現在でもしばしば清張の代表作とみなされている。もっとも、著者自身は、光文社の単行本の「あとがき」において、「この小説では、いわゆる謎解きのほうにウエイトを置いて、動機の部分は狭くした」ため少々不満の残る旨を述べている。また江戸川乱歩に対して、『点と線』(と『眼の壁』)は習作的な作品にすぎないという発言もしている。「これからの探偵小説」(『宝石』1958年7月号掲載、『江戸川乱歩と13の宝石 第2集』(2007年、光文社文庫)等に収録)参照。ただし、『文藝年鑑』に提出する葉書の「代表作」欄には毎年「点と線」と書き続けており(藤井康栄『松本清張の残像』(2002年、文春新書)88-89頁参照)、清張が少なくとも建前上は本書を代表作としていたことは確かである。また、日本のミステリーの歴史において、この作品を、いわゆる社会派推理小説の発火点と位置づけることもあるが、社会派推理小説の呼称が喧伝されるようになるのは本作発売後しばらく後のことであり、本作の発売に相伴ってこのキャッチコピーが使われたわけではない。清張自身は、この呼称に距離を置き、また適当ではないと明言している。エッセイ集『随筆 黒い手帖』(1961年)、エッセイ『グルノーブルの吹奏』(1988年)など参照。
  3. ↑ 本作の4年後に刊行された『時間の習俗』では、捜査一課に転属している。
  4. ↑ 前述の平野謙は「いかにして空白の4分間に佐山とお時に15番線を確実に歩かせるのかトリックが説明されていない」と指摘している。『松本清張全集 第1巻』または新潮文庫版(1971年5月)の平野による解説を参照。なお、平野の『点と線』読解に関連して、巽昌章による補足的解釈も出されている。巽『論理の蜘蛛の巣の中で』(2006年、講談社)中「第十八回 トリックは語る」参照。また、近年の長所短所併せた評価として、有栖川有栖による文春文庫版(2009年)解説がある。
  5. ↑ 種村直樹『東京ステーションホテル物語』(1995年、集英社)中、「松本清張をめぐる「点と線」」参照。
  6. ↑ 『点と線』の原稿料は1枚1500円であった。塩澤実信『出版社の運命を決めた一冊の本』(1980年、流動出版)中の第7章「光文社と松本清張の『点と線』」参照。
  7. ↑ 戸塚文子「『点と線』の頃」(『松本清張全集 第1巻』付属の月報に掲載、後に『松本清張の世界』(1992年、文藝春秋臨時増刊、2003年、文春文庫)に再掲)を参照。
  8. ↑ 『週刊 松本清張』第1号(2009年、デアゴスティーニ・ジャパン)10頁参照。
  9. ↑ いわゆる空白の4分間を発見し著者に報告したのは交通公社の従業員だった、と清張自身述べたことがある。清張と斉藤美智子との対談「推理小説の魅力」(『主婦の友』1959年9月号掲載、『文学と社会-松本清張対談集』(1977年、新日本出版社)収録)参照。
  10. ↑ 岡田によれば、「「四」は「死」に通じるので、これは使えると思ったところが、さすが清張さんである」という。岡田喜秋「『点と線』の余韻」(『交通新聞』2011年1月25日付掲載)参照。また『週刊 松本清張』第1号 10頁も併せて参照。
  11. ↑ 岡田『旅する愉しみ』(1998年、ほるぷ出版)参照。
  12. ↑ 戸塚「『点と線』の頃」参照。
  13. ↑ 佐野洋との対談「清張ミステリーの奥義を探る」(『発想の原点-松本清張対談集』(1977年、双葉社、2006年、双葉文庫)収録)で、清張は以下のように発言している。「はっきり言って、『点と線』が自分では好きでなかったんだよ。むしろ同時に書いてた『眼の壁』の方に気合いが入っていたんだな。当時、『眼の壁』の方は非常に反響があったわけだけど、『点と線』は何の反響もないんだよ。何か、虚空に向かって球を投げているような感じだったんだ」。
  14. ↑ 戸塚「『点と線』の頃」、塩澤実信『ベストセラー作家 その運命を決めた一冊』(2009年、北辰堂出版)中の第2章「松本清張と『点と線』」参照。
  15. ↑ 戸塚「『点と線』の頃」に加えて、塩澤『ベストセラー作家 その運命を決めた一冊』も参照。
  16. ↑ 神吉晴夫『現場に不満の火を燃やせ』(1963年、オリオン社)55頁以降、または同著者による『カッパ兵法-人間は一回しか生きない』(1966年、華書房)59頁以降参照。
  17. ↑ 光文社の出版部門を担当していた伊賀弘三良によれば、単行本『点と線』の初版は5000部からのスタートであったが、20万部近くに達し、日本の推理小説の単行本としては空前の売れ行きとなった。2年後の1960年7月に刊行されたカッパ・ノベルス版では初版から10万部近くを刷り、カッパ・ノベルス版だけで100万部を突破した。塩澤実信『出版社の運命を決めた一冊の本』(1980年、流動出版)188頁掲載の部数データ(光文社営業調べ)、または佐野洋、半藤一利、郷原宏による座談会「週刊誌創刊時代の松本清張」(『松本清張研究』第8号(2007年、北九州市立松本清張記念館)に収録)を参照。
  18. ↑ 徳川夢声による連載対談「問答有用」第386回(『週刊朝日』1958年9月7日号掲載)参照。
  19. ↑ 『週刊 松本清張』第1号 6頁参照。
  20. ↑ 種村直樹『東京ステーションホテル物語』中、「松本清張をめぐる「点と線」」参照。
  21. ↑ 笠井潔『探偵小説論Ⅰ 氾濫の形式』(1998年、東京創元社)第七章「壊れた人間と平和な現在 - 松本清張論」参照。
  22. ↑ 『週刊 松本清張』第1号 19頁参照。
  23. ↑ 『松本清張(新潮日本文学アルバム)』(1994年、新潮社)88頁、『松本清張全集』第66巻(1996年、文藝春秋)巻末の翻訳出版目録、および Japanese Literature in Foreign Languages 1945-1995 (1997、the Japan P.E.N. Club)を参照。
  24. ↑ 『週刊 松本清張』第1号 21頁参照。
  25. ↑ テレビドラマ公式サイトを参照。
  26. ↑ DVD『ビートたけし×松本清張 点と線』収録インタビュー参照。

出典

  1. ↑ ミステリー研究21『ミステリー最高傑作はこれだ!』青春出版社、2004年7月1日、66頁。ISBN 9784413006859。
  2. 1 2 「175年続く割烹や老舗居酒屋の閉店相次ぐ… コロナ禍が決定打」『東京新聞』2020年10月31日。2021年1月14日閲覧。
  3. ↑ “2008年日本民間放送連盟賞”. 日本民間放送連盟. 2024年10月25日閲覧。
  4. ↑ “テレビ朝日開局60周年 夏の傑作選 松本清張生誕110周年記念「点と線」”. 日曜プライム. テレビ朝日. 2021年1月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月4日閲覧。
  5. ↑ “点と線 - ドラマ詳細データ - ◇テレビドラマデータベース◇”. テレビドラマデータベース. 2023年6月6日閲覧。

参考文献

外部リンク

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